《レベル∞》の万物創造スキルで追放された俺、辺境を開拓してたら気づけば神々の箱庭になっていた

夏見ナイ

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第39話 要塞都市アステル

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アステル村の迎撃準備は、カイの《万物創造》という規格外の力と、エルウィンの緻密な知識、そしてボルグたちの職人技が融合した、まさに芸術の域に達していた。それはもはや単なる村ではなく、一つの巨大な生命体のように機能する、難攻不落の「要塞都市」だった。

**第一防衛線:『欺瞞の森(フォレスト・オブ・デセプション)』**
アステル村へと至る道程に広がる、深い森。一見、何の変哲もないこの森は、カイとエルウィンによって、敵軍を足止めし、消耗させるための最初の罠と化していた。
森の木々一本一本、草の一葉一葉に、カイは微弱な幻惑魔法を付与した。それらは単体では何の効果も持たないが、森全体としては、侵入者の五感を微妙に狂わせる巨大な魔法陣を形成している。
まっすぐ進んでいるつもりが、いつの間にか同じ場所をぐるぐると回らされる。仲間がすぐそばにいるはずなのに、その声は全く違う方向から聞こえてくる。コンパスや魔法の地図は、エルウィンが構築した「魔法阻害フィールド」によって、一切の機能を失う。
さらに、森の奥深くには、リリの獣人部隊が潜んでいた。彼らは直接戦うことはない。ただ、木の影から小石を投げて注意を引いたり、不気味な獣の鳴き真似をして敵の恐怖心を煽ったりするだけだ。だが、方向感覚を失い、疑心暗鬼に陥った兵士たちにとって、その些細な嫌がらせは、見えない亡霊に襲われているかのような、凄まじい精神的プレッシャーとなる。

**第二防衛線:『ゴーレム軍団(ゴーレム・レギオン)』**
欺瞞の森を運良く、あるいは力ずくで突破したとしても、その先に待っているのは、絶望的な光景だった。
地平線まで続くかと思われる広大な平原に、百体を超える鋼鉄のゴーレム軍団が、整然と隊列を組んで待ち構えているのだ。
一体一体が、並の騎士を遥かに凌駕するパワーと、ボルグのドワーフたちが鍛え上げた分厚い重装甲を誇る。その装甲には、エルウィンによって魔法耐性を高めるルーン文字がびっしりと刻み込まれていた。
ゴーレムたちは、エルウィンが情報室から遠隔で指揮する。単純な突撃だけではない。敵の陣形に応じて、両翼から包囲したり、一点集中突破を図ったりと、まるで熟練の将軍が率いる軍隊のように、有機的で高度な戦術を展開する。
そして、この軍団の真の恐怖は、その「無限性」にあった。カイが平原の地下に創造した巨大な格納庫から、破壊されたゴーレムに代わって、次から次へと新たなゴーレムがせり出してくるのだ。倒しても倒しても尽きることのない、鋼鉄の悪夢。それは、どんな屈強な兵士の心をも、絶望でへし折るのに十分だった。

**第三防衛線:『天空の城壁(セレスティアル・ウォール)』**
万が一、ゴーレム軍団をも突破するほどの強者が現れたとしても、その前に、アステル村そのものが、最後の、そして絶対的な障壁として立ちはだかる。
村を囲む黒曜石の城壁は、カイによってその高さが倍以上に引き上げられ、もはや物理的に乗り越えることは不可能となっていた。
そして、その城壁の上空には、カイが創造した巨大な岩盤が、いくつも浮遊している。それらは鎖で城壁と結ばれ、村全体を覆う、巨大な屋根のようになっていた。これが「天空の城壁」だ。
この浮遊城郭は、上空からの攻撃を完全にシャットアウトする。たとえワイバーンやグリフォンのような飛行部隊が攻めてきても、この天空の要塞を突破することはできない。
さらに、城壁と浮遊城郭には、エルウィンが設計した、村のマナを利用した自動迎撃システムが何重にも張り巡らされている。一定距離内に侵入した敵性存在を自動で感知し、追尾式の高熱光線や、対象を氷漬けにする絶対零度の吹雪を、寸分の狂いもなく浴びせるのだ。
そこは、近づく者全ての存在を許さない、神々の怒りを体現したかのような、絶対不可侵の聖域と化していた。

これらの三つの防衛ラインが、要塞都市アステルを構成する、絶望的なまでの迎撃システムだった。
カイは、監視塔の最上階から、自らが創り上げたこの要塞都市を見下ろしていた。
それは、もはや「村」と呼べるような代物ではない。一つの国家が、その存亡を懸けて築き上げるような、あまりにも規格外の戦争機械。
これを、自分はたった数日で創り上げてしまった。

(俺は、一体、何を創り出してしまったんだ……)

一瞬、カイは自分の力の途方もなさに、畏怖を覚えた。
だが、すぐにその思いを振り払う。
後悔はない。これは、大切な仲間たちと、自分たちが愛する故郷を守るために、必要な力なのだ。

「カイ」
隣に立っていたセリアが、心配そうにカイの顔を覗き込んだ。彼女は、この要塞都市の圧倒的なまでの殺意に、聖女として、心の痛みを感じているようだった。
「……大丈夫だ、セリア」
カイは、彼女を安心させるように、穏やかに言った。
「これは、誰も傷つけないための力なんだ。この力を見せつければ、アレスも、きっと戦うことの無意味さを悟ってくれるはずだ」

それは、カイの偽らざる本心だった。彼は、この要塞で、敵を殲滅したいわけではない。ただ、相手に「戦っても無駄だ」と諦めさせ、戦わずして勝利すること。それこそが、彼の望む結末だった。

だが、カイはまだ知らなかった。
嫉妬と狂気に囚われた勇者が、カイのその甘い期待を、無惨に打ち砕くことになるということを。
アレスは、この絶望的なまでの要塞を前にしても、決して諦めはしなかった。むしろ、その力を奪い取ろうと、さらに激しい執念を燃やすことになるのだ。

要塞都市アステル。
それは、楽園の創造主が、その楽園を守るために創り出した、究極の盾。
そして、皮肉にも、さらなる争いの火種を呼び込むことになる、巨大な力の象徴でもあった。
運命の歯車は、もはや誰にも止められない速度で、最終局面へと向かって回り始めていた。
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