《レベル∞》の万物創造スキルで追放された俺、辺境を開拓してたら気づけば神々の箱庭になっていた

夏見ナイ

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第72話 変異魔物の襲来

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アステル公国の中心部で突如として発生した変異魔物の大群。それは平和な日常を送っていた住民たちにとって、まさに青天の霹靂だった。
聖なる泉の周辺の森から溢れ出したおぞましい姿の魔物たちは、本能的な破壊衝動に駆られるまま、近くの建物や畑へと牙を剥いて殺到した。

「ぎゃあああっ!」
「魔物だ! 村の中に魔物が!」
住民たちはパニックに陥り逃げ惑う。穏やかだった村は、一瞬にして阿鼻叫喚の地獄絵図へと変わった。

「させるものですか!」
魔物の大群の前に敢然と立ちはだかったのは、聖女セリアだった。
彼女は両手を広げ、祈りを捧げる。その身体から黄金色の温かい光が溢れ出し、巨大な光の壁を形成した。
「聖域結界(サンクチュアリ)!」

変異魔物たちはその聖なる光の壁に触れた途端、その身を焼かれ苦し悶えながら後退する。セリアの結界はかろうじて魔物たちの第一波を食い止めていた。
しかし、その顔にはびっしりと脂汗が浮かんでいた。
(なんて邪悪な力……! 私の聖なる力が削られていく……!)
変異魔物たちが放つ歪みのオーラは、彼女の聖域結 Předchozí (Kopírovat)
界を内側から侵食していくようだった。このままでは長くは持たない。

その絶体絶命の危機に救援が駆けつけた。

「セリア様! ご無事ですか!」
最初に駆けつけたのはライナー率いるアステル騎士団だった。彼らは村の中心で訓練中に異変を察知し、即座に現場へと急行したのだ。
「全隊、構え! 魔物を一匹たりとも住民に近づけるな!」

ライナーの号令一下、騎士たちは見事な連携で陣形を組んだ。
屈強なドワーフ出身の騎士たちが大盾を構えて前線に立ち、壁となる。その後方から身軽なエルフや人間の騎士たちが、長槍や剣で結界から漏れ出てくる魔物を的確に仕留めていく。
彼らの動きに一切の無駄はない。日々の過酷な訓練の賜物だった。

さらに地響きと共に第二の援軍が到着した。
ボルグが指揮するゴーレム部隊だ。
「野郎ども! 蹴散らせぇい!」
鋼鉄の巨人たちはその圧倒的なパワーで変異魔物の群れへと突っ込んだ。巨大な拳が薙ぎ払うたびに、数体の魔物が肉塊となって吹き飛ぶ。

騎士団とゴーレム部隊。アステル公国が誇る二大戦力がついにその牙を剥いた。
戦況は一気に公国側へと傾いたかに見えた。

しかし変異魔物は、ただ凶暴なだけではなかった。
彼らは歪みの力によって、厄介な特殊能力を身につけていたのだ。

猪の変異魔物が身体を丸め、高速で回転しながらドワーフの盾の壁に突っ込んできた。その突進力は凄まじく、大盾を構えた屈強なドワーフの騎士が数人まとめて吹き飛ばされる。
鹿の変異魔物はその禍々しくねじれた角から、対象の精神を直接攻撃する呪いの光線を放った。光線を浴びた騎士は幻覚に囚われ、味方に対して剣を振り上げ始めた。
「しっかりしろ! 目を覚ませ!」
ライナーが必死に仲間を正気に戻そうとする。

「こいつら……! ただの獣とは訳が違うぞ!」
ボルグもゴーレムを操りながら苦戦を強いられていた。
リスの変異魔物はその素早い動きでゴーレムの巨体に張り付くと、酸性の体液を吐きかけた。特殊合金の重装甲がジュウジュウと音を立てて溶けていく。

戦いは熾烈を極めた。
アステル騎士団もゴーレM部隊も奮戦している。だが次から次へと森の奥から湧き出してくる変異魔物の物量の前に、少しずつ防衛線が押し下げられていった。
このままではジリ貧だ。

そして、その全ての混乱を泉の茂みに隠れたまま、ゼノは愉悦の表情で眺めていた。
「ふははは……! 良いぞ、良いぞ! 踊れ、光の使徒ども! 貴様らの誇る秩序とやらが混沌に飲み込まれていく様は、実に見事だ!」
彼の目的は、この混乱を作り出すことそのものだった。
そしてこの騒ぎの中心にいるであろうカイという『器』をおびき出すこと。

そのゼノの思惑通り。
戦場についにこの国の主が姿を現した。
上空から一体の黒銀の機体が、凄まじい速度で降下してきたのだ。
アレスター・カイカスタム。
そのコックピットの中で、カイは眼下に広がる惨状を唇を噛み締めながら見つめていた。

(俺の村が……。俺の仲間たちが……!)

カイの全身からこれまで感じたことのないほどの、静かで、しかし底知れない怒りのオーラが溢れ出した。
彼はもはや躊躇しなかった。
自分の力の全てを解放することを。

『――そこを、どけ』

カイの思考がアレスターの機体に伝わる。
アレスターは戦場のど真ん中に着地すると、その両腕をゆっくりと広げた。
そして次の瞬間。
アレスターの全身から純白の眩いほどの光が迸った。
その光は波紋のように戦場全体に広がり、全ての変異魔物を飲み込んでいく。

それはカイがセリアの聖なる力を解析し、自らの《万物創造》の力で再現し、そして増幅させた究極の浄化の光。
『聖絶浄化波(ホーリー・パージ)』。

光に触れた変異魔物たちは、そのおぞましい変異を維持できなくなり、その身を構成していた歪みのエネルギーが霧散していく。
彼らは苦しむこともなく、ただ静かに元のただの動物の姿へと戻っていくか、あるいは光の中へと溶けるように消滅していった。

ほんの数秒。
あれほど熾烈を極めていた戦場が嘘のように静まり返った。
後に残されたのは傷つき、呆然と立ち尽くす騎士たちとゴーレム。
そして光の中心で静かに佇む、一体の黒銀の騎士だけだった。

カイの圧倒的な直接介入。
それは戦いの流れを一瞬で決定づける、まさに神の一撃だった。
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