無能と追放された俺の【システム解析】スキル、実は神々すら知らない世界のバグを修正できる唯一のチートでした

夏見ナイ

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第50話 砕け散った心、そして残された者たち

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勇者アレクサンダーが、砂となって風に消える。
その、あまりにもあっけない、しかし、決定的な終焉を、残された三人は、ただ、声もなく見つめていた。
彼らの心は、完全に、砕け散っていた。
自分たちが信じていた「正義」。そのために捧げてきた、全て。それが、ただ、神々の都合の良い、使い捨ての道具として、弄ばれていたという、残酷な事実。そして、その終着点が、仲間の、魂ごとのはかない消滅。
その現実は、彼らが、これからの人生で、永遠に背負い続けなければならない、重すぎる十字架だった。

「…………」
俺は、そんな彼らに、背を向けたまま、何も言わなかった。
かける言葉など、見つからない。いや、そもそも、かける必要すらなかった。俺たちの道は、もう、決して交わることはないのだから。

「……行こうぜ、カイト」
フレアが、俺の肩を叩いた。その声には、彼女なりの、気遣いが滲んでいる。
「ああ」
俺は、短く応えると、仲間たちと共に、その場を去ろうとした。
だが、その時。

「……待って、ください……」

か細い、しかし、芯の通った声が、俺の背中に、突き刺さった。
振り返ると、そこに立っていたのは、聖女セシリアだった。
彼女は、涙でぐしょぐしょの顔を、必死で上げ、俺のことを、真っ直ぐに、見つめていた。その隣で、レオンとマリアは、まだ、地面に座り込んだまま、動けないでいる。
「……カイトさん。いえ、相馬海斗様」
彼女は、俺の、元の世界の名前を、呼んだ。
「……もう、謝罪の言葉など、あなたには、届かないことは、分かっています。ですが、それでも……言わせてください。本当に……本当に、申し訳、ありませんでした」
彼女は、その場で、額が地面につくほど、深く、深く、頭を下げた。
「私たちは、あなたの優しさに、甘え、あなたの価値を見ようとせず、あなたを、絶望の淵に、突き落としました。その罪は、万死に値します。どんな罰でも、受ける覚悟です」

その、あまりにも真摯な、魂からの謝罪に、俺は、少しだけ、心が揺らいだ。
だが、許すことは、できなかった。
俺が味わった、あの絶望と、孤独は、決して、消えることはないのだから。

「……今さら、謝って、何になる」
俺の口から出たのは、冷たい、拒絶の言葉だった。
「お前たちが、俺にしたことは、永遠に消えない。俺が、それを忘れることもない。それだけだ」
「……はい。存じております」
セシリアは、顔を上げずに、答えた。
「ですが、せめて、最後に、一つだけ、お願いがあります」
「……なんだ」
「……私たちを、あなたの、旅の、片隅に、置いていただけないでしょうか」

その、予想外の言葉に、俺だけでなく、フレアも、ルナも、目を見開いた。
「私たちは、もう、勇者でも、聖女でもありません。ただの、全てを失った、罪人です。ですが、だからこそ、この目で、見届けたいのです。あなたが、この世界の、理不-尽な運命に、どう立ち向かうのか。そして、もし、万が一、この、無力な身でも、何か、お役に立てることがあるのならば……。それが、私たちにできる、唯一の、贖罪だと思うのです」

彼女の瞳には、かつての、偽善的な光はなかった。
あるのはただ、全てを失い、それでも、何かを為さなければならないという、悲痛なまでの、覚悟の色だけだった。
レオンとマリアも、いつの間にか、彼女の後ろに立ち、同じように、俺に、頭を下げていた。彼らの心境もまた、同じなのだろう。

俺は、しばらく、黙って、考えていた。
彼らを、連れていく?
足手まといになるだけだ。それに、彼らの顔を見るたびに、俺は、あの日の屈辱を、思い出すことになる。
だが――。
彼らを、このまま、ここに、放置していくのか?
力を失い、目的を失い、ただ、罪悪感だけを抱えて、生きていく。それもまた、一つの、地獄だ。
俺は、彼らを、そんな地獄に、突き落としたいわけでは、なかった。

俺の心の中の、天秤が、揺れる。
その時、俺の袖を、ルナが、そっと、引いた。
「……海斗さん」
彼女は、俺の目を見て、静かに、しかし、はっきりと、言った。
「……連れて行って、あげましょう」
「ルナ……?」
「彼らもまた、あなたが、救うべき、この世界の『バグ』の、被害者なのですから」
その言葉に、俺は、ハッとした。

そうだ。
俺の目的は、この世界の、理不尽に苦しむ、全ての人々を、救うこと。
それは、たとえ、俺を裏切った者たちであっても、例外ではないはずだ。
彼らを許すことはできない。だが、彼らに、贖罪の機会を与えることは、できるかもしれない。
俺が、本当に、この世界の、歪みを、正そうとするのなら。
俺自身の、個人的な感情もまた、乗り越えなければならない、一つの「バグ」なのかもしれない。

俺は、長いため息を、一つ、ついた。
そして、彼らに、言った。
「……好きにしろ」
その、ぶっきらぼうな言葉に、セシリアたちが、驚いて、顔を上げた。
「ただし、勘違いするな。お前たちを、仲間として、認めたわけじゃない。俺たちの足手まといになるようなら、その時は、容赦なく、切り捨てる。それでもいいのなら、ついてくればいい」
それは、俺なりの、最大限の、譲歩だった。

「……っ! ありがとうございます……! ありがとうございます……!」
セシリアは、涙で、言葉にならなかった。
レオンとマリアも、ただ、深く、深く、頭を下げ続けるだけだった。

こうして、俺たちの、奇妙な旅の一行に、元勇者パーティーの、三人が加わることになった。
彼らの、砕け散った心は、この先、癒えることがあるのだろうか。
そして、彼らが、本当に、自らの罪を、償える日が、来るのだろうか。
それは、まだ、誰にも、分からない。

だが、確かなことは、一つだけ。
俺たちの、神々への反逆の旅は、さらに、複雑で、そして、奇妙な様相を、呈し始めたということだ。
勇者という、物語の主役を失った世界で。
俺たち、追放された者たちと、贖罪を求める者たちが、共に、世界の夜明けを目指す。
その、前代未聞の物語の、新たなページが、今、静かに、めくられようとしていた。

**第三部 魔王と神々編 ―完―**
***
### 第三部 まとめとキャラクターシート、第四部の構想

#### これまでの流れ(第三部:魔王と神々編)
世界の崩壊を止めるため、魔王との対話を決意したカイトたちは、魔王城への潜入を開始する。道中、カイトの【ワールド・エディタ】は、四天王が仕掛けた悪質な精神攻撃トラップや、バグに苦しむ彼ら自身を「デバッグ」し、無力化、あるいは救済していく。

心服した四天王たちの協力を得て、ついに玉座の間にて魔王と対面。しかし、長年の汚染により、魔王アレスの魂は、世界のバグの集合体に乗っ取られ、暴走状態にあった。カイトは、仲間の助けを借り、自らの魂を魔王の精神世界へとダイブさせ、壮絶な戦いの末に、バグの本体を浄化。魔王を、本来の英雄の姿へと再生させることに成功する。

正気を取り戻したアレスと、カイトたちは、世界のシステムそのものを作り直すという、共通の目的のために、共闘を誓う。魔王軍もまた、世界の未来を取り戻すための、心強い仲間となった。

そこへ、何も知らない勇者パーティーが乱入。しかし、再生したアレスの圧倒的な力の前に、一瞬で無力化される。さらに、彼らは、追ってきた神々の手によって、魂を燃料とする殺戮人形へと改造され、カイトたちに襲いかかる。カイトは、【ワールド・エディタ】で彼らを縛る呪いを解き、暴走を止めるが、力の反動で勇者アレクサンダーは消滅。残された三人は、全てを失い、カイトに贖罪のための同行を懇願。カイトは、複雑な思いを抱えながらも、それを受け入れた。

こうして、カイトたちの「連合軍」は、神々との最終決戦に向け、新たな、そして、いびつな形で、その旅を再開することになった。

---

#### キャラクターシート(第三部終了時点)

*   **相馬 海斗(ソウマ・カイト)**
    *   **クラス:** ワールドエディター
    *   **レベル:** 45
    *   **スキル:** 【ワールド・エディタ】 (魂へのダイブ、限定的な法則の書き換えなど、その権限はさらに拡大)
    *   **役割:** 連合軍の総司令官にして、世界のバグを修正できる唯一の存在。
    *   **人物像:** 仲間や、世界の理不尽に苦しむ者たちを救うという、確固たる意志を持つ。個人的な復讐心を乗り越え、かつての敵すらも、救うべき対象として受け入れる、大きな器量を見せ始めた。

*   **ルナ**
    *   **クラス:** 大精霊の巫女姫
    *   **レベル:** 55
    *   **役割:** 連合軍の主戦力の一人。その聖なる魔力は、神々の呪いすら打ち破る可能性を秘める。カイトの精神的な支えとして、不可欠な存在。
    *   **人物像:** カイトとの絆は、もはや恋人以上の、魂の伴侶と呼べるレベルに達している。慈愛に満ち、かつての敵であったセシリアたちにも、救いの手を差し伸べる優しさを持つ。

*   **フレア**
    *   **クラス:** 剣神
    *   **レベル:** 52
    *   **役割:** 連合軍の切り込み隊長。その剣技は、神速の域を超え、法則そのものを断ち切るほどの鋭さを見せ始めている。
    *   **人物像:** カイトへの絶対的な信頼は変わらず。仲間思いで、熱い魂を持つ。複雑な状況は苦手だが、その真っ直ぐさが、パーティーの雰囲気を明るく保っている。

*   **アレス**
    *   **クラス:** 元英雄/元魔王
    *   **レベル:** ?? (測定不能)
    *   **役割:** 連合軍の最高戦力。世界の理に関する深い知識を持ち、カイトの参謀役も務める。
    *   **人物像:** 呪いから解放され、本来の、理知的で心優しい英雄の姿を取り戻した。カイトを「友」と呼び、対等な立場で、世界の未来のために戦うことを誓う。

*   **セシリア、レオン、マリア**
    *   **クラス:** 元聖女、元賢者、元戦士 (力を失っている)
    *   **役割:** 現状では、戦闘能力はほぼ皆無。贖罪のため、カイトたちの身の回りの世話や、情報整理などを買って出る、従者のような立場。
    *   **人物像:** 全てを失い、砕け散った心に、罪悪感と、カイトへの贖罪の念だけを抱えている。彼らの心が、再び、光を取り戻す日は来るのか。

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#### 第四部の構想(新世界創造編)

**◆第六章:神の使徒 (51-65話)**

*   **目的:** 神域への扉を開くための三つの「神器」を、仲間たちと手分けして集める。
*   **展開:**
    *   **神器探索(51-55話):** カイト・ルナ・ヴォルグ組は、エルフの森へ。ルナは、同胞との確執と、自らの過去を乗り越え、神器の一つ『精霊の涙』を手に入れる。一方、アレス・フレア・リリス組は、王都に潜入。リリスの空間転移と、フレアの突破力で、王家の宝物庫から、二つ目の神器『王権の聖杯』を奪取する。
    *   **神の使徒の襲来(56-58話):** 神器の強奪に気づいた神々が、ついに本格的な介入を開始。最強の尖兵である「神の使徒(エンジェル)」を、地上に派遣する。神の使徒は、世界の法則を、限定的に書き換える能力を持ち、アレスですら苦戦するほどの強敵。
    *   **カイト vs 神の使徒(59-60話):** カイトと神の使徒による、世界の法則をリアルタイムで書き換えあう、壮絶な「エディター同士」の戦いが繰り広げられる。カイトは、仲間の援護を受け、辛くも、神の使徒を撃退する。
    *   **最後の神器と連合軍結成(61-63話):** 撃退した神の使徒から得た情報で、最後の神器の在り処が判明。それは、かつて勇者アレクサンダーが持っていた、聖剣アスカロン(偽)こそが、真の姿を隠した神器『始まりの剣』だった。彼の消滅した場所から、それを回収。全ての神器が揃う。同時に、カイトたちの戦いを見て、世界の真実を知った、各国の王や、種族の長たちが、利害を超えて協力し、対神々連合軍が結成される。
    *   **決戦前夜(64-65話):** 全ての準備が整い、決戦前夜。仲間たちとの最後の絆を確かめ合う。ルナやフレアからの、最終的な告白イベントも発生。そして、三つの神器の力で、ついに、神域への扉が開かれる。全軍、突撃。物語は、最終決戦へと向かう。
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