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第70話 エピローグ④(最終話) 今日、どんな未来を創ろうか
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俺が、丘の上の、我が家へと続く、最後の坂道を登りきると、ドアの前で、エプロン姿のルナとフレアが、腕を組んで、俺を待ち構えていた。
「「おっそーい!」」
二人の声が、綺麗に、ハモった。
「どこまで、寄り道してたんだよ、カイト! せっかく、ケーキが、焼きあがったってのに!」
フレアが、頬を、ぷくーっと、膨らませる。
「申し訳ありません、海斗さん。ですが、あなたの分は、もう、ありません。わたくしたちと、遊びに来ていた、ヴォルグさんたちで、全て、食べてしまいましたから」
ルナも、少し、意地悪そうな笑みを浮かべて、俺を、からかってくる。
こんな、何気ない、やり取りが、俺にとって、何よりも、幸せな時間だった。
「はは、悪い悪い。ちょっと、面白い『バグ』を見つけちまってな」
俺が、そう言って笑うと、二人は、顔を見合わせ、やれやれ、といったように、肩をすくめた。
「ったく、お前は、本当に、好きだよな、そういうの」
「ですが、そんな、あなただからこそ、わたくしたちは……」
二人は、そう言うと、どちらからともなく、俺の両腕に、ぎゅっと、絡みついてきた。
右腕には、ルナの、柔らかな、温もり。
左腕には、フレアの、少しだけ、活発な、体温。
この、二つの、かけがえのない、温もりが、俺の、帰る場所。
俺たちが、家の中に入ると、そこには、思いがけない、客たちが、集まっていた。
「おお、カイト! 貴様の帰りを、待っていたぞ!」
リビングの、一番、良いソファに、ふんぞり返って、本を読んでいたのは、アレスだった。賢王としての、威厳は、どこへやら、その姿は、まるで、休日に、くつろぐ、普通の、青年のようだ。
「アレス様! また、お仕事を、サボって……!」
その隣では、リリスが、呆れたように、ため息をついている。
キッチンでは、ギルバートとエルロンドが、ドワーフの酒と、エルフの果実酒、どちらが、優れているかで、子供のような、言い争いをしていた。
そして、テラスでは、グライフ氏が、ヴォルグ相手に、新しい、商売の計画を、熱心に、語っている。
いつの間にか、俺の家は、この、新しい世界の、中心人物たちが、何の、気兼ねもなく、集う、溜まり場に、なっていた。
「……なんだよ、お前ら。全員、集合して」
俺が、呆れながらも、嬉しそうに言うと、アレスが、本から、顔を上げた。
「決まっているだろう、カイト。今日は、特別な日だからな」
「特別、だって?」
「ああ」
彼は、にやり、と笑った。
「君が、この世界に、来てから、ちょうど、五年目の、記念日だ」
その言葉に、俺は、ハッとした。
そうか。
あの、過労死寸前の、オフィスで、意識を失い、この、理不尽で、しかし、愛おしい世界に、迷い込んでから、もう、そんなに、時が、経ったのか。
追放され、絶望し、仲間と出会い、世界を、救うために、戦った、あの日々。
まるで、昨日のことのようにも、遥か、遠い昔の、夢のようにも、思える。
「……そうか。もう、五年か……」
俺が、感慨深げに、呟くと、仲間たちが、次々と、俺の周りに、集まってきた。
「五年、ねえ。色々、あったよな、本当に」
フレアが、遠い目をしながら、言う。
「ですが、その、全ての日々が、今の、この、幸せな時間に、繋がっているのですね」
ルナが、俺の腕を、さらに、強く、握りしめる。
「カイト殿と、出会わなければ、我らは、今頃、まだ、世界の歪みに、苦しみ続けていただろうな」
ヴォルグが、しみじみと、呟く。
「あなたという、最大の『バグ』が、この世界を、救った。皮肉なものですね」
リリスが、静かに、微笑む。
そして、最後に、アレスが、俺の、肩を、強く、叩いた。
「――ありがとう、カイト。我が友よ。君が、この世界に、来てくれて、本当によかった」
その、心からの、言葉に、俺は、少しだけ、目頭が、熱くなるのを、感じた。
俺は、テラスに出て、丘の上から、俺たちが、創り上げた、美しい、都を、見下ろした。
夕日が、街並みを、黄金色に、染め上げている。
子供たちの、笑い声。
恋人たちの、囁き。
家族の、団欒。
その、一つ一つが、俺たちが、守り抜いた、かけがえのない、宝物だ。
「……なあ」
俺は、隣に立つ、仲間たちに、語りかけた。
「俺は、この世界に、来て、本当に、良かったと、思ってる」
俺は、ルナと、フレアの手を、強く、握った。
「お前たちという、最高の、パートナーに、出会えた。アレスという、最高の、ダチ公もできた。そして、こんなに、たくさんの、頼れる、仲間たちが、いる」
俺は、全員の顔を、見回した。
「俺は、もう、一人じゃない」
その言葉に、皆が、優しく、微笑んだ。
夕日が、地平線の、向こうに、沈んでいく。
世界に、穏やかな、夜が、訪れる。
だが、その闇は、もはや、絶望の色ではない。
明日への、希望を、育む、優しい、夜だ。
俺は、仲間たちに囲まれながら、夜空に、輝き始めた、一番星を、見上げていた。
そして、心の中で、静かに、呟いた。
「さて、と」
俺は、微笑んだ。
新しい、一日が、また、始まる。
この、愛すべき、仲間たちと、共に。
「――今日は、どんなバグ(みらい)を、創ろうか」
おわり
「「おっそーい!」」
二人の声が、綺麗に、ハモった。
「どこまで、寄り道してたんだよ、カイト! せっかく、ケーキが、焼きあがったってのに!」
フレアが、頬を、ぷくーっと、膨らませる。
「申し訳ありません、海斗さん。ですが、あなたの分は、もう、ありません。わたくしたちと、遊びに来ていた、ヴォルグさんたちで、全て、食べてしまいましたから」
ルナも、少し、意地悪そうな笑みを浮かべて、俺を、からかってくる。
こんな、何気ない、やり取りが、俺にとって、何よりも、幸せな時間だった。
「はは、悪い悪い。ちょっと、面白い『バグ』を見つけちまってな」
俺が、そう言って笑うと、二人は、顔を見合わせ、やれやれ、といったように、肩をすくめた。
「ったく、お前は、本当に、好きだよな、そういうの」
「ですが、そんな、あなただからこそ、わたくしたちは……」
二人は、そう言うと、どちらからともなく、俺の両腕に、ぎゅっと、絡みついてきた。
右腕には、ルナの、柔らかな、温もり。
左腕には、フレアの、少しだけ、活発な、体温。
この、二つの、かけがえのない、温もりが、俺の、帰る場所。
俺たちが、家の中に入ると、そこには、思いがけない、客たちが、集まっていた。
「おお、カイト! 貴様の帰りを、待っていたぞ!」
リビングの、一番、良いソファに、ふんぞり返って、本を読んでいたのは、アレスだった。賢王としての、威厳は、どこへやら、その姿は、まるで、休日に、くつろぐ、普通の、青年のようだ。
「アレス様! また、お仕事を、サボって……!」
その隣では、リリスが、呆れたように、ため息をついている。
キッチンでは、ギルバートとエルロンドが、ドワーフの酒と、エルフの果実酒、どちらが、優れているかで、子供のような、言い争いをしていた。
そして、テラスでは、グライフ氏が、ヴォルグ相手に、新しい、商売の計画を、熱心に、語っている。
いつの間にか、俺の家は、この、新しい世界の、中心人物たちが、何の、気兼ねもなく、集う、溜まり場に、なっていた。
「……なんだよ、お前ら。全員、集合して」
俺が、呆れながらも、嬉しそうに言うと、アレスが、本から、顔を上げた。
「決まっているだろう、カイト。今日は、特別な日だからな」
「特別、だって?」
「ああ」
彼は、にやり、と笑った。
「君が、この世界に、来てから、ちょうど、五年目の、記念日だ」
その言葉に、俺は、ハッとした。
そうか。
あの、過労死寸前の、オフィスで、意識を失い、この、理不尽で、しかし、愛おしい世界に、迷い込んでから、もう、そんなに、時が、経ったのか。
追放され、絶望し、仲間と出会い、世界を、救うために、戦った、あの日々。
まるで、昨日のことのようにも、遥か、遠い昔の、夢のようにも、思える。
「……そうか。もう、五年か……」
俺が、感慨深げに、呟くと、仲間たちが、次々と、俺の周りに、集まってきた。
「五年、ねえ。色々、あったよな、本当に」
フレアが、遠い目をしながら、言う。
「ですが、その、全ての日々が、今の、この、幸せな時間に、繋がっているのですね」
ルナが、俺の腕を、さらに、強く、握りしめる。
「カイト殿と、出会わなければ、我らは、今頃、まだ、世界の歪みに、苦しみ続けていただろうな」
ヴォルグが、しみじみと、呟く。
「あなたという、最大の『バグ』が、この世界を、救った。皮肉なものですね」
リリスが、静かに、微笑む。
そして、最後に、アレスが、俺の、肩を、強く、叩いた。
「――ありがとう、カイト。我が友よ。君が、この世界に、来てくれて、本当によかった」
その、心からの、言葉に、俺は、少しだけ、目頭が、熱くなるのを、感じた。
俺は、テラスに出て、丘の上から、俺たちが、創り上げた、美しい、都を、見下ろした。
夕日が、街並みを、黄金色に、染め上げている。
子供たちの、笑い声。
恋人たちの、囁き。
家族の、団欒。
その、一つ一つが、俺たちが、守り抜いた、かけがえのない、宝物だ。
「……なあ」
俺は、隣に立つ、仲間たちに、語りかけた。
「俺は、この世界に、来て、本当に、良かったと、思ってる」
俺は、ルナと、フレアの手を、強く、握った。
「お前たちという、最高の、パートナーに、出会えた。アレスという、最高の、ダチ公もできた。そして、こんなに、たくさんの、頼れる、仲間たちが、いる」
俺は、全員の顔を、見回した。
「俺は、もう、一人じゃない」
その言葉に、皆が、優しく、微笑んだ。
夕日が、地平線の、向こうに、沈んでいく。
世界に、穏やかな、夜が、訪れる。
だが、その闇は、もはや、絶望の色ではない。
明日への、希望を、育む、優しい、夜だ。
俺は、仲間たちに囲まれながら、夜空に、輝き始めた、一番星を、見上げていた。
そして、心の中で、静かに、呟いた。
「さて、と」
俺は、微笑んだ。
新しい、一日が、また、始まる。
この、愛すべき、仲間たちと、共に。
「――今日は、どんなバグ(みらい)を、創ろうか」
おわり
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