ドラゴンに攫われた聖女ですが、このドラゴン、めちゃくちゃ過保護でイケメンです

夏見ナイ

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第六十九話 決戦の地は王都

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儀式の場所が王都の地下に眠る古代遺跡であると特定された。
その瞬間、書斎の空気は決戦前の静かな、しかし熱い緊張感に包まれた。
「……ならば、我々が為すべきことは一つ」
カイザーが机の上に広げられた地図を見下ろしながら、重々しく口を開いた。
「王都へ進軍する。そして教皇が儀式を完了させる前に、その首を刎ねる」
そのあまりにも直接的で、そして力強い宣言に、レオンが腕を組みながら頷いた。
「ああ。だが、問題はどうやって王都の中心部、大聖堂の地下までたどり着くかだ」
彼の指摘は的確だった。
「今の王都は教皇の息がかかった兵士たちと、彼を狂信的に支持する民衆で溢れ返っている。我々が姿を現しただけで、街全体が敵となるだろう」
「それに、あの異端審問官たちもいるわ」
ゼノヴィアが冷ややかに付け加える。
「彼らは影に潜み、我々の隙を狙ってくるはず。正面からの強行突破は愚策ね」
竜王、勇者、魔将。
これだけの戦力が集まっていても、なお王都への侵攻は困難を極める。
それほどまでに、教皇は周到に、そして狡猾に自らの牙城を固めていたのだ。
三人の英雄たちが腕を組み、黙り込む。
その重苦しい沈黙を破ったのは、今まで黙って彼らの議論を聞いていた私だった。
「……あの」
私のか細い声に、三つの鋭い視線が一斉に向けられる。
私は少し気圧されながらも、意を決して続けた。
「もし……もし私が皆さんの前に立てば……事態は変わるのではないでしょうか」
「……どういうことだ、アリア」
カイザーが訝しげに問いかける。
「民衆は私が竜に誑かされた堕ちた聖女だと信じ込まされています。ですが、それは教皇が作り上げた偽りの物語です」
私は一度息を吸った。
そして自分の覚悟を告げた。
「私が彼らの前に姿を現し、真実を語るのです。私の声で。私の言葉で。教皇の嘘を暴き、そして人々の目を覚まさせるのです」
私のあまりにも大胆な提案に、三人は息を呑んだ。
「……無謀だ」
最初に反対したのはカイザーだった。
「お前をそんな危険な矢面に立たせることなどできん! もし狂信者の一人がお前に刃を向けたらどうする!」
「その時は俺がアリアを守る」
レオンが静かに、しかし力強く言った。
「それに……彼女の案は、あるいは最も有効な一手かもしれない。力だけで全てをねじ伏せようとすれば、必ず大きな犠牲が出る。だが民衆の心を味方につけることができれば……戦わずして道は開けるかもしれん」
「……私も勇者に賛成ね」
ゼノヴィアも頷いた。
「教皇の力の源泉は民衆の盲目的な信仰。その土台を切り崩すことこそが、最も効果的な攻撃となるわ」
レオンとゼノヴィア。
二人の、かつての敵同士が今、私の作戦を支持してくれている。
カイザーは苦虫を噛み潰したような顔で黙り込んだ。
彼の私を案ずる気持ちは、痛いほど分かる。
私は彼の前に進み出ると、その大きな手をそっと握った。
「カイザー様。私はもう、ただ守られるだけの存在ではありません」
私は彼の瞳を真っ直ぐに見つめ返した。
「私も戦いたいのです。私のやり方で。私の力で。この戦いを終わらせるための、一助となりたいのです」
私の揺るぎない決意を感じ取って、カイザーは深く、深くため息をついた。
そして観念したように呟いた。
「……分かった。お前の覚悟を信じよう」
彼は私の手を強く握り返した。
「だが、約束しろ。決して無茶はしない、と。常に俺か勇者のそばを離れるな」
「はい。約束します」
こうして、私たちの壮大な作戦の骨子が固まった。
作戦名は「王都解放」。
第一段階。カイザーの背に乗った私を筆頭に、連合軍(と言ってもまだ数人だが)が王都の上空に出現する。
第二段階。私が民衆に呼びかけ真実を語り、彼らの洗脳を解く。レオンはその間、私の護衛に徹する。
第三段階。ゼノヴィア率いる魔族の別動隊が混乱に乗じて、王都の地下道から遺跡への潜入ルートを確保する。
そして最終段階。
民衆を味方につけた我々本隊が、大聖堂の地下遺跡へと突入し、教皇との最終決戦に臨む。
それはあまりにも綱渡りで、そして危険な作戦だった。
一つの歯車が狂えば、全てが崩壊する可能性を孕んでいる。
だが、今の私たちにはこれしか道はなかった。
「……決まりだな」
カイザーが机の上の地図を見下ろしながら言った。
その声にはもう迷いはなかった。
「決戦の地は王都。目標は王都の解放と儀式の阻止」
レオンが聖剣の柄を握りしめる。
「面白いじゃない。血が騒ぐわね」
ゼノヴィアが不敵な笑みを浮かべる。
そして私は。
これから始まる人生で最大の戦いを前にして、固く拳を握りしめた。
私の声が、世界を変える。
そう信じて。
書斎に集った四人の英雄たち。
その心は今、確かに一つになっていた。
決戦の時は、近い。
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