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第七十六話 王都解放戦、開始
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楔は放たれた。
カイザーを先端とする私たちの連合軍は、一直線に教皇軍の分厚い陣形へと突っ込んだ。
それはあまりにも無謀な、少数による大軍への突撃。
敵の騎士たちは最初、嘲笑を浮かべていた。自ら死地に飛び込んでくる愚かな者たち、と。
だが、その笑みは次の瞬間、驚愕と恐怖に変わった。
先頭を行くカイザー。
その山のように巨大な黒竜の体躯は、それ自体が最強の攻城兵器だった。
「なぎ払え!」
カイザーの念話が響き渡る。
彼は炎のブレスを吐くことも、必殺の魔法を放つこともしなかった。
ただ、その巨大な翼を一度大きく薙ぎ払っただけ。
ゴウッ、と凄まじい風圧の刃が嵐となって敵陣を切り裂いた。
ワイバーンたちが木の葉のように吹き飛ばされる。騎士たちは悲鳴を上げる間もなくその背から振り落とされていく。陣形はいとも簡単に巨大な穴を開けられた。
「怯むな! 隊列を組み直せ!」
聖騎士団長が金切り声を上げる。
だが、その穴から第二、第三の災厄が雪崩れ込んできた。
「―――道を開けろ!」
レオンの雄叫び。
金色のオーラを纏った彼は、空中を縦横無尽に駆け巡る光の弾丸だった。
その手にした聖剣が一閃するたびに、白銀の斬撃が放射状に迸る。
彼の狙いは騎士そのものではない。
彼らが構える槍や剣。
斬撃は騎士たちの武器だけを的確に弾き飛ばし、あるいはへし折っていく。
武器を失った騎士たちはなす術もなく、ただ呆然とその場に取り残される。
「甘いわね、勇者」
その背後から氷の女王が囁くように現れた。
ゼノヴィア。
彼女の戦い方はレオンとは対照的だった。
冷徹で、そしてどこまでも効率的。
「―――凍てつく棺(コフィン)」
彼女が指を鳴らす。
すると彼女の周囲の空間に、無数の巨大な氷の槍が出現した。
槍は騎士たちを直接狙うのではない。
彼らが乗るワイバーンの翼を的確に狙うのだ。
バキバキ、と翼を氷漬けにされたワイバーンたちは飛翔能力を失い、悲鳴を上げながらきりもみ状態となって落下していく。
もちろん、その高さから落ちればただでは済まない。
だが、殺しはしない。
それがこの戦いにおける私たちの流儀だった。
そして両翼からは数十頭の竜たちが、雪崩を打って襲いかかった。
「我ら竜の力を侮るなよ、人間ども!」
援軍のリーダー、青銅竜のバルドスが咆哮する。
彼らはカイザーのように圧倒的な一体ではない。
だが、彼らは群れとしての戦い方を熟知していた。
数頭が陽動として敵の注意を引きつけ、その隙に別の数頭が死角から襲いかかる。
鋭い爪は騎士の鎧を紙のように引き裂き、強靭な尾の一撃はワイバーンをまとめて吹き飛ばした。
阿鼻叫喚。
千を超える大軍勢は、たった数十の神話の軍勢の前に、赤子の手をひねられるように蹂躙されていく。
数の優位など何の意味もなしていなかった。
個々の力の差があまりにも違いすぎたのだ。
私はその壮絶な戦いの全てをカイザーの背中の上で見つめていた。
戦場の匂い。
血と鉄と、そして魔法の残滓が混じり合ったむせ返るような匂い。
私の心は痛んだ。
たとえ敵だとしても、傷ついていく人々の姿を見るのは辛かった。
けれど私は目を逸らさなかった。
これも現実。
これも私たちが選んだ戦い。
薬指の指輪をぎゅっと握りしめる。
カイザーの温かい魔力が私の心を支えてくれる。
大丈夫。
私たちは間違っていない。
私たちは中央を一直線に突破していく。
敵の陣形は完全に崩壊していた。
聖騎士団長は顔面蒼白になりながら必死で再編を試みているが、恐怖に支配された兵士たちはもはや彼の命令を聞こうとはしなかった。
「行かせろ!」
レオンが最後の抵抗勢力を聖剣の一振りで蹴散らす。
道が開けた。
目の前にはもう遮るものは何もない。
王都の象徴、巨大な大聖堂の白亜の尖塔が目前に迫っていた。
「―――行くぞ!」
カイザーが速度を上げる。
私たちの勝利は目前だった。
そう思った、その瞬間。
地上が光った。
王都の市街地、その至る所から無数の光の矢がまるで噴水のように噴き上がってきたのだ。
それは弓兵部隊による一斉射撃。
そして城壁の上にずらりと並んだ魔道士たちによる対空迎撃魔法。
「……ちっ!」
カイザーが忌々しげに舌打ちをする。
教皇は空中での迎撃が失敗した場合の第二陣を用意していたのだ。
しかもその攻撃は無差別だった。
矢の何本かは逃げ惑う味方のワイバーンにさえ突き刺さっている。
彼は地上の兵士たちを、そして王都の民衆をも盾にするつもりなのだ。
「卑劣な……!」
レオンが怒りに声を震わせる。
戦いの舞台は空から地上へ。
王都そのものを巻き込んだ壮絶な市街戦へと移ろうとしていた。
私は杖を固く握りしめた。
いよいよ私の出番だ。
この狂ってしまった戦いを終わらせるための、私の戦いが始まろうとしていた。
カイザーを先端とする私たちの連合軍は、一直線に教皇軍の分厚い陣形へと突っ込んだ。
それはあまりにも無謀な、少数による大軍への突撃。
敵の騎士たちは最初、嘲笑を浮かべていた。自ら死地に飛び込んでくる愚かな者たち、と。
だが、その笑みは次の瞬間、驚愕と恐怖に変わった。
先頭を行くカイザー。
その山のように巨大な黒竜の体躯は、それ自体が最強の攻城兵器だった。
「なぎ払え!」
カイザーの念話が響き渡る。
彼は炎のブレスを吐くことも、必殺の魔法を放つこともしなかった。
ただ、その巨大な翼を一度大きく薙ぎ払っただけ。
ゴウッ、と凄まじい風圧の刃が嵐となって敵陣を切り裂いた。
ワイバーンたちが木の葉のように吹き飛ばされる。騎士たちは悲鳴を上げる間もなくその背から振り落とされていく。陣形はいとも簡単に巨大な穴を開けられた。
「怯むな! 隊列を組み直せ!」
聖騎士団長が金切り声を上げる。
だが、その穴から第二、第三の災厄が雪崩れ込んできた。
「―――道を開けろ!」
レオンの雄叫び。
金色のオーラを纏った彼は、空中を縦横無尽に駆け巡る光の弾丸だった。
その手にした聖剣が一閃するたびに、白銀の斬撃が放射状に迸る。
彼の狙いは騎士そのものではない。
彼らが構える槍や剣。
斬撃は騎士たちの武器だけを的確に弾き飛ばし、あるいはへし折っていく。
武器を失った騎士たちはなす術もなく、ただ呆然とその場に取り残される。
「甘いわね、勇者」
その背後から氷の女王が囁くように現れた。
ゼノヴィア。
彼女の戦い方はレオンとは対照的だった。
冷徹で、そしてどこまでも効率的。
「―――凍てつく棺(コフィン)」
彼女が指を鳴らす。
すると彼女の周囲の空間に、無数の巨大な氷の槍が出現した。
槍は騎士たちを直接狙うのではない。
彼らが乗るワイバーンの翼を的確に狙うのだ。
バキバキ、と翼を氷漬けにされたワイバーンたちは飛翔能力を失い、悲鳴を上げながらきりもみ状態となって落下していく。
もちろん、その高さから落ちればただでは済まない。
だが、殺しはしない。
それがこの戦いにおける私たちの流儀だった。
そして両翼からは数十頭の竜たちが、雪崩を打って襲いかかった。
「我ら竜の力を侮るなよ、人間ども!」
援軍のリーダー、青銅竜のバルドスが咆哮する。
彼らはカイザーのように圧倒的な一体ではない。
だが、彼らは群れとしての戦い方を熟知していた。
数頭が陽動として敵の注意を引きつけ、その隙に別の数頭が死角から襲いかかる。
鋭い爪は騎士の鎧を紙のように引き裂き、強靭な尾の一撃はワイバーンをまとめて吹き飛ばした。
阿鼻叫喚。
千を超える大軍勢は、たった数十の神話の軍勢の前に、赤子の手をひねられるように蹂躙されていく。
数の優位など何の意味もなしていなかった。
個々の力の差があまりにも違いすぎたのだ。
私はその壮絶な戦いの全てをカイザーの背中の上で見つめていた。
戦場の匂い。
血と鉄と、そして魔法の残滓が混じり合ったむせ返るような匂い。
私の心は痛んだ。
たとえ敵だとしても、傷ついていく人々の姿を見るのは辛かった。
けれど私は目を逸らさなかった。
これも現実。
これも私たちが選んだ戦い。
薬指の指輪をぎゅっと握りしめる。
カイザーの温かい魔力が私の心を支えてくれる。
大丈夫。
私たちは間違っていない。
私たちは中央を一直線に突破していく。
敵の陣形は完全に崩壊していた。
聖騎士団長は顔面蒼白になりながら必死で再編を試みているが、恐怖に支配された兵士たちはもはや彼の命令を聞こうとはしなかった。
「行かせろ!」
レオンが最後の抵抗勢力を聖剣の一振りで蹴散らす。
道が開けた。
目の前にはもう遮るものは何もない。
王都の象徴、巨大な大聖堂の白亜の尖塔が目前に迫っていた。
「―――行くぞ!」
カイザーが速度を上げる。
私たちの勝利は目前だった。
そう思った、その瞬間。
地上が光った。
王都の市街地、その至る所から無数の光の矢がまるで噴水のように噴き上がってきたのだ。
それは弓兵部隊による一斉射撃。
そして城壁の上にずらりと並んだ魔道士たちによる対空迎撃魔法。
「……ちっ!」
カイザーが忌々しげに舌打ちをする。
教皇は空中での迎撃が失敗した場合の第二陣を用意していたのだ。
しかもその攻撃は無差別だった。
矢の何本かは逃げ惑う味方のワイバーンにさえ突き刺さっている。
彼は地上の兵士たちを、そして王都の民衆をも盾にするつもりなのだ。
「卑劣な……!」
レオンが怒りに声を震わせる。
戦いの舞台は空から地上へ。
王都そのものを巻き込んだ壮絶な市街戦へと移ろうとしていた。
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いよいよ私の出番だ。
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