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第七十八話 解ける洗脳
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「聖女、アリア様……?」
広場にいた誰かが呟いたその声は、静寂の中で大きく響き渡った。
それは、疑いと、そしてかすかな希望が入り混じった震える声だった。
私はゆっくりと立ち上がった。
そして、私の姿をその目に焼き付けるように見つめる何千という民衆と兵士たちに向かって、はっきりと語りかけた。
「―――そうです。私がアリアです」
その声は、カイザーの魔法による増幅などなくとも広場の隅々まで凛として響き渡った。聖女としての威厳と、そして一人の女性としての強い意志を乗せて。
民衆の間に、大きなどよめきが広がる。
「本物のアリア様だ……!」
「だが、なぜ……竜と共に……」
「あの光……間違いない。あれこそ我らが知る、聖女様の癒やしの光だ……!」
混乱と困惑。
彼らが教皇から聞かされていた物語―――私が竜に魂を売り渡した堕ちた魔女であるという物語と。
今、目の前で敵味方の区別なく全ての人々を癒やした私の姿。
そのあまりにも大きな矛盾が、彼らの心を激しく揺さぶっていた。
一人の年老いた兵士が、恐る恐る一歩前に出た。彼は先ほどの戦いで腕に深い傷を負っていたはずだった。だが今、その腕には傷跡一つ残っていない。
「聖女様……。もしあなたが本当に我らがアリア様であるならば、なぜあの邪悪なる竜と共におられるのですか。あなたは奴に操られているのでは……」
その問い。
それはこの場にいる全ての人間が抱いている最大の疑問だった。
私はその老兵の瞳を真っ直ぐに見つめ返した。
そして、静かに首を振る。
「私は操られてなどいません」
私は隣に立つ人型のカイザーの大きな手をそっと握った。
彼は驚いたように私を見つめたが、何も言わずにその手を強く握り返してくれた。
その温もりを力に変えて。
私は宣言した。
「この方は邪悪なる竜などではありません。彼は私を絶望の淵から救い出してくれた命の恩人です。そして……私が心から愛する、ただ一人のお方です」
そのあまりにも衝撃的な告白。
広場は水を打ったように静まり返った。
聖女が竜を愛している。
それは彼らの常識を根底から覆す言葉だった。
私は続けた。
人々の心の混乱を、真実の光で照らすために。
「皆さんは騙されているのです!」
私の声が力を帯びる。
「私を堕ちた魔女だと貶め、皆さんを扇動している者こそが真の悪なのです! 教皇は皆さんを利用している! 自らの恐ろしい野望のために!」
「……なっ!」
「教皇猊下が悪だと……!?」
民衆が再びざわめき始める。
教皇は彼らにとって神にも等しい存在。その絶対的な信仰は、そう簡単には揺るがない。
だが、私の祈りの光は彼らの心に確かに作用していた。
教皇が植え付けた盲目的な狂信。
それは一種の強力な洗脳魔法だった。
だが、私の純粋な聖なる光は、その邪な魔法を浄化し、解きほぐす効果を持っていたのだ。
彼らの瞳から狂信の濁った光が少しずつ消えていく。
代わりに浮かび上がってきたのは、理性と、そして疑念の光。
「……考えてもみてください」
私は静かに語りかける。
「なぜ魔王が倒された後、急に魔物が活発になったのですか。なぜ聖女である私が攫われた後、都合よく新たな聖女が現れたのですか。なぜ王国の騎士団はあれほど無残に敗れ去ったのですか」
私の問いかけ。
一つ一つが彼らの心に突き刺さる。
今まで熱狂の中で見過ごしてきた数々の不自然な点。
それらが冷静になった頭の中で、一つの恐ろしい可能性へと結びついていく。
「全ては仕組まれていたのです。教皇によって」
私は真実のとどめを刺した。
「彼は自ら混乱を引き起こし、そして自らがその救世主となることでこの国を完全に掌握しようとした。そしてその先にある彼の本当の目的は……この世界そのものを破滅させることです!」
そのあまりにも信じがたい、しかし否定しきれない言葉。
人々の心に植え付けられていた教皇への絶対的な信仰が、音を立てて崩れ落ちていく。
洗脳が解けていく。
彼らはようやく気づき始めたのだ。
自分たちが誰を信じ、誰と戦おうとしていたのか。
その真実の姿に。
「そんな……馬鹿な……」
老兵はその場にへなへなと崩れ落ちた。
その手から剣が滑り落ちる乾いた音が、広場に響き渡った。
それはまるで合図だった。
一人、また一人と兵士たちが武器を捨てていく。
戦う意味を見失ったのだ。
偽りの正義のために真の聖女に刃を向けることの愚かさに、ようやく気づいたのだ。
広場を支配していた敵意と殺気は完全に消え失せていた。
後に残されたのは、ただ深い、深い混乱と、そして真実を知ってしまったことへの静かな絶望だけだった。
私の言葉は届いた。
私は力ではなく、ただ祈りと真実だけで彼らの戦意を完全に打ち砕いたのだ。
だが、これはまだ始まりに過ぎない。
本当の戦いはここからなのだ。
広場にいた誰かが呟いたその声は、静寂の中で大きく響き渡った。
それは、疑いと、そしてかすかな希望が入り混じった震える声だった。
私はゆっくりと立ち上がった。
そして、私の姿をその目に焼き付けるように見つめる何千という民衆と兵士たちに向かって、はっきりと語りかけた。
「―――そうです。私がアリアです」
その声は、カイザーの魔法による増幅などなくとも広場の隅々まで凛として響き渡った。聖女としての威厳と、そして一人の女性としての強い意志を乗せて。
民衆の間に、大きなどよめきが広がる。
「本物のアリア様だ……!」
「だが、なぜ……竜と共に……」
「あの光……間違いない。あれこそ我らが知る、聖女様の癒やしの光だ……!」
混乱と困惑。
彼らが教皇から聞かされていた物語―――私が竜に魂を売り渡した堕ちた魔女であるという物語と。
今、目の前で敵味方の区別なく全ての人々を癒やした私の姿。
そのあまりにも大きな矛盾が、彼らの心を激しく揺さぶっていた。
一人の年老いた兵士が、恐る恐る一歩前に出た。彼は先ほどの戦いで腕に深い傷を負っていたはずだった。だが今、その腕には傷跡一つ残っていない。
「聖女様……。もしあなたが本当に我らがアリア様であるならば、なぜあの邪悪なる竜と共におられるのですか。あなたは奴に操られているのでは……」
その問い。
それはこの場にいる全ての人間が抱いている最大の疑問だった。
私はその老兵の瞳を真っ直ぐに見つめ返した。
そして、静かに首を振る。
「私は操られてなどいません」
私は隣に立つ人型のカイザーの大きな手をそっと握った。
彼は驚いたように私を見つめたが、何も言わずにその手を強く握り返してくれた。
その温もりを力に変えて。
私は宣言した。
「この方は邪悪なる竜などではありません。彼は私を絶望の淵から救い出してくれた命の恩人です。そして……私が心から愛する、ただ一人のお方です」
そのあまりにも衝撃的な告白。
広場は水を打ったように静まり返った。
聖女が竜を愛している。
それは彼らの常識を根底から覆す言葉だった。
私は続けた。
人々の心の混乱を、真実の光で照らすために。
「皆さんは騙されているのです!」
私の声が力を帯びる。
「私を堕ちた魔女だと貶め、皆さんを扇動している者こそが真の悪なのです! 教皇は皆さんを利用している! 自らの恐ろしい野望のために!」
「……なっ!」
「教皇猊下が悪だと……!?」
民衆が再びざわめき始める。
教皇は彼らにとって神にも等しい存在。その絶対的な信仰は、そう簡単には揺るがない。
だが、私の祈りの光は彼らの心に確かに作用していた。
教皇が植え付けた盲目的な狂信。
それは一種の強力な洗脳魔法だった。
だが、私の純粋な聖なる光は、その邪な魔法を浄化し、解きほぐす効果を持っていたのだ。
彼らの瞳から狂信の濁った光が少しずつ消えていく。
代わりに浮かび上がってきたのは、理性と、そして疑念の光。
「……考えてもみてください」
私は静かに語りかける。
「なぜ魔王が倒された後、急に魔物が活発になったのですか。なぜ聖女である私が攫われた後、都合よく新たな聖女が現れたのですか。なぜ王国の騎士団はあれほど無残に敗れ去ったのですか」
私の問いかけ。
一つ一つが彼らの心に突き刺さる。
今まで熱狂の中で見過ごしてきた数々の不自然な点。
それらが冷静になった頭の中で、一つの恐ろしい可能性へと結びついていく。
「全ては仕組まれていたのです。教皇によって」
私は真実のとどめを刺した。
「彼は自ら混乱を引き起こし、そして自らがその救世主となることでこの国を完全に掌握しようとした。そしてその先にある彼の本当の目的は……この世界そのものを破滅させることです!」
そのあまりにも信じがたい、しかし否定しきれない言葉。
人々の心に植え付けられていた教皇への絶対的な信仰が、音を立てて崩れ落ちていく。
洗脳が解けていく。
彼らはようやく気づき始めたのだ。
自分たちが誰を信じ、誰と戦おうとしていたのか。
その真実の姿に。
「そんな……馬鹿な……」
老兵はその場にへなへなと崩れ落ちた。
その手から剣が滑り落ちる乾いた音が、広場に響き渡った。
それはまるで合図だった。
一人、また一人と兵士たちが武器を捨てていく。
戦う意味を見失ったのだ。
偽りの正義のために真の聖女に刃を向けることの愚かさに、ようやく気づいたのだ。
広場を支配していた敵意と殺気は完全に消え失せていた。
後に残されたのは、ただ深い、深い混乱と、そして真実を知ってしまったことへの静かな絶望だけだった。
私の言葉は届いた。
私は力ではなく、ただ祈りと真実だけで彼らの戦意を完全に打ち砕いたのだ。
だが、これはまだ始まりに過ぎない。
本当の戦いはここからなのだ。
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