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第37話 眩しい君と潮風
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約束の日曜日。
夏の太陽が容赦なく照りつける駅前で、俺は人生で初めて「女の子の水着姿」というものを直視する覚悟を決めていた。
健太を中心に集まったメンバーは、男女合わせて総勢八名。男子は俺と健太を含めたサッカー部の面々、女子は天野さん、白石さん、そして雫と、天野さんの友人二人。まさに、クラスの陽キャオールスターズといった様相だ。
俺は場違いな雰囲気に少しだけ気圧されながらも、心の中は一つのことでいっぱいだった。
雫の、水着姿。
その四文字を思うだけで、心臓が爆発しそうになる。潮さんが「最高に可愛いのを選んであげる」と豪語していたが、一体どんな水着なのだろう。派手なビキニだったらどうしよう。いや、彼女の性格からして、それはないか。でも、もし……。
そんな煩悩まみれの妄想を繰り広げていると、健太が俺の脇腹を肘で突いてきた。
「おい航、顔がニヤけてんぞ。気持ち悪い」
「にやけてねえよ!」
俺は慌てて表情を引き締める。
電車を乗り継ぎ、一時間ほどで目的の海水浴場に到着した。
目の前に広がる、青い空と、どこまでも続く水平線。潮の香りが、俺たちの気分を高揚させる。
「うおー! 海だー!」
健太たちが雄叫びを上げて、砂浜へと駆け出していく。俺も、その非日常的な光景に、自然と笑みがこぼれた。
隣を見ると、雫は初めて見る海の広さに、目をきらきらと輝かせていた。その無邪気な表情に、俺の心は温かくなる。
俺たちは海の家の更衣室で着替えを済ませ、パラソルの下で合流することになった。
先に着替えを終えた俺が砂浜で待っていると、女子たちがキャッキャとはしゃぎながら更衣室から出てきた。
「お待たせー!」
天野さんたちは、カラフルなビキニにパレオという、まさに「夏のヒロイン」といった出で立ちだ。眩しすぎる。男子たちが「うおー!」と歓声を上げる。
だが、俺の目は、その華やかなグループの一番後ろにいた、一人の少女に釘付けになっていた。
雫だった。
その姿を認めた瞬間、俺の周りの喧騒が、また遠くに聞こえなくなった。
彼女が着ていたのは、潮さんが選んだであろう、白地に淡い水色の花柄がプリントされた、ワンピースタイプのスクール水着に似たデザインのものだった。
派手さはない。むしろ、とても控えめだ。
だが、そのシンプルなデザインが、彼女の透き通るような白い肌と、華奢でしなやかなスタイルの良さを、何よりも雄弁に引き立てていた。
濡れた砂浜に映える、白い足首。
少しだけ日差しを浴びて、ほんのりと赤らんだ肩。
そして、緊張と恥じかしさで、潤んだ瞳。
その全てが、どんな派手なビキニよりも、扇情的で、俺の心を強く、強く揺さぶった。
「……!」
言葉が出ない。
ただ、その光景に、心を奪われる。
俺は、無意識のうちに、彼女から目を逸らせずにいた。
俺の視線に気づいたのか、雫は恥ずかしそうに、腕で自分の体を隠すようにしながら、俯いてしまった。その仕草が、たまらなく健気で、愛おしい。
同時に、俺の心の中には、今まで感じたことのない、黒い感情が芽生えていた。
独占欲。
この姿を、他の男に、誰にも見せたくない。
健太たちが「月宮さん、めっちゃ可愛いじゃん!」と囃し立てる声が聞こえる。
その言葉に、俺の心はチリチリと焦げるような痛みを感じた。
うるさい。見るな。彼女は、俺のものだ。
そんな、身勝手で、傲慢な考えが、頭の中を支配する。
俺は、ほとんど衝動的に行動していた。
「雫、これ」
俺は自分のバッグから、ラッシュガードを取り出すと、彼女のそばに駆け寄り、その肩にそっと掛けてやった。
「日差し、強いから。火傷すると大変だろ」
我ながら、見え透いた口実だ。
でも、そうせずにはいられなかった。
俺の突然の行動に、雫は驚いたように顔を上げた。
その瞳には、俺の意図を察したかのような、戸惑いの色が浮かんでいる。
「おーおー、相田くんは過保護だねえ」
天野さんたちが、ひゅーひゅーと冷やかす声が聞こえる。
俺は、その声を無視して、雫の目を真っ直ぐに見つめた。
そして、誰にも聞こえないように、小さな声で呟く。
「……他の奴に、見せたくない」
その言葉は、ほとんど声にならなかったかもしれない。
でも、彼女には、確かに伝わっていた。
彼女は、俺の言葉の意味を理解した瞬間、顔を真っ赤にして、また俯いてしまった。
でも、俺が掛けてやったラッシュガードの袖を、その小さな手で、ぎゅっと、強く握りしめている。
その仕草が、彼女の答えの全てだった。
潮風が、俺たちの間を吹き抜けていく。
夏の太陽が、俺の独占欲を、静かに、しかし確実に、燃え上がらせていた。
眩しい君と、潮風と、そしてどうしようもない嫉もどかしさ。
俺たちの夏は、甘いだけじゃない、少しだけ苦くて、焦げるような匂いをさせながら、始まろうとしていた。
夏の太陽が容赦なく照りつける駅前で、俺は人生で初めて「女の子の水着姿」というものを直視する覚悟を決めていた。
健太を中心に集まったメンバーは、男女合わせて総勢八名。男子は俺と健太を含めたサッカー部の面々、女子は天野さん、白石さん、そして雫と、天野さんの友人二人。まさに、クラスの陽キャオールスターズといった様相だ。
俺は場違いな雰囲気に少しだけ気圧されながらも、心の中は一つのことでいっぱいだった。
雫の、水着姿。
その四文字を思うだけで、心臓が爆発しそうになる。潮さんが「最高に可愛いのを選んであげる」と豪語していたが、一体どんな水着なのだろう。派手なビキニだったらどうしよう。いや、彼女の性格からして、それはないか。でも、もし……。
そんな煩悩まみれの妄想を繰り広げていると、健太が俺の脇腹を肘で突いてきた。
「おい航、顔がニヤけてんぞ。気持ち悪い」
「にやけてねえよ!」
俺は慌てて表情を引き締める。
電車を乗り継ぎ、一時間ほどで目的の海水浴場に到着した。
目の前に広がる、青い空と、どこまでも続く水平線。潮の香りが、俺たちの気分を高揚させる。
「うおー! 海だー!」
健太たちが雄叫びを上げて、砂浜へと駆け出していく。俺も、その非日常的な光景に、自然と笑みがこぼれた。
隣を見ると、雫は初めて見る海の広さに、目をきらきらと輝かせていた。その無邪気な表情に、俺の心は温かくなる。
俺たちは海の家の更衣室で着替えを済ませ、パラソルの下で合流することになった。
先に着替えを終えた俺が砂浜で待っていると、女子たちがキャッキャとはしゃぎながら更衣室から出てきた。
「お待たせー!」
天野さんたちは、カラフルなビキニにパレオという、まさに「夏のヒロイン」といった出で立ちだ。眩しすぎる。男子たちが「うおー!」と歓声を上げる。
だが、俺の目は、その華やかなグループの一番後ろにいた、一人の少女に釘付けになっていた。
雫だった。
その姿を認めた瞬間、俺の周りの喧騒が、また遠くに聞こえなくなった。
彼女が着ていたのは、潮さんが選んだであろう、白地に淡い水色の花柄がプリントされた、ワンピースタイプのスクール水着に似たデザインのものだった。
派手さはない。むしろ、とても控えめだ。
だが、そのシンプルなデザインが、彼女の透き通るような白い肌と、華奢でしなやかなスタイルの良さを、何よりも雄弁に引き立てていた。
濡れた砂浜に映える、白い足首。
少しだけ日差しを浴びて、ほんのりと赤らんだ肩。
そして、緊張と恥じかしさで、潤んだ瞳。
その全てが、どんな派手なビキニよりも、扇情的で、俺の心を強く、強く揺さぶった。
「……!」
言葉が出ない。
ただ、その光景に、心を奪われる。
俺は、無意識のうちに、彼女から目を逸らせずにいた。
俺の視線に気づいたのか、雫は恥ずかしそうに、腕で自分の体を隠すようにしながら、俯いてしまった。その仕草が、たまらなく健気で、愛おしい。
同時に、俺の心の中には、今まで感じたことのない、黒い感情が芽生えていた。
独占欲。
この姿を、他の男に、誰にも見せたくない。
健太たちが「月宮さん、めっちゃ可愛いじゃん!」と囃し立てる声が聞こえる。
その言葉に、俺の心はチリチリと焦げるような痛みを感じた。
うるさい。見るな。彼女は、俺のものだ。
そんな、身勝手で、傲慢な考えが、頭の中を支配する。
俺は、ほとんど衝動的に行動していた。
「雫、これ」
俺は自分のバッグから、ラッシュガードを取り出すと、彼女のそばに駆け寄り、その肩にそっと掛けてやった。
「日差し、強いから。火傷すると大変だろ」
我ながら、見え透いた口実だ。
でも、そうせずにはいられなかった。
俺の突然の行動に、雫は驚いたように顔を上げた。
その瞳には、俺の意図を察したかのような、戸惑いの色が浮かんでいる。
「おーおー、相田くんは過保護だねえ」
天野さんたちが、ひゅーひゅーと冷やかす声が聞こえる。
俺は、その声を無視して、雫の目を真っ直ぐに見つめた。
そして、誰にも聞こえないように、小さな声で呟く。
「……他の奴に、見せたくない」
その言葉は、ほとんど声にならなかったかもしれない。
でも、彼女には、確かに伝わっていた。
彼女は、俺の言葉の意味を理解した瞬間、顔を真っ赤にして、また俯いてしまった。
でも、俺が掛けてやったラッシュガードの袖を、その小さな手で、ぎゅっと、強く握りしめている。
その仕草が、彼女の答えの全てだった。
潮風が、俺たちの間を吹き抜けていく。
夏の太陽が、俺の独占欲を、静かに、しかし確実に、燃え上がらせていた。
眩しい君と、潮風と、そしてどうしようもない嫉もどかしさ。
俺たちの夏は、甘いだけじゃない、少しだけ苦くて、焦げるような匂いをさせながら、始まろうとしていた。
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