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第15話:メイド長の心変わり
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『癒やしの時間』を終え、私は心地よい疲労感と共にサンルームを後にした。繋いでいた手から伝わるアシュレイ様の温もりが、まだ自分の手のひらに残っているような気がして、胸の奥がじんわりと温かい。
扉の外では、いつものようにメイド長のマーサが静かに控えていた。
「お疲れ様でございました。リナリア様」
彼女はそう言うと、いつも通り深々とお辞儀をした。けれど、今日の彼女の様子は、どこかいつもと違うように感じられた。硬質的だった声の響きが、ほんの少しだけ柔らかい。私を見つめるその瞳から、以前のような鋭さが消えている。
「ありがとうございます、マーサさん」
私が微笑み返すと、彼女は少しだけ逡巡するような素振りを見せた後、口を開いた。
「リナリア様。もし、お疲れでなければ、少しだけお付き合いいただきたい場所がございます」
「場所、ですか?」
てっきり自室へ案内されるものだと思っていた私は、少し驚いて聞き返した。
「はい。アシュレイ様には、リナリア様は少し休憩なさるとお伝えしております」
その言葉は、アシュレイ様には内緒だというニュアンスを含んでいた。私は興味を惹かれ、こくりと頷いた。
「はい。喜んで」
マーサは私の返事を聞くと、わずかに口元を綻ばせた。彼女が笑ったのを、私は初めて見たかもしれない。それは、とても優しくて、温かい微笑みだった。
彼女に導かれて歩き出した先は、客間や広間のある賓客用のエリアではなかった。磨き上げられた大理石の廊下から、温かみのある木の床の廊下へと変わる。ここは、使用人たちが日常的に使うための生活区域なのだろう。
やがて私たちが辿り着いたのは、屋敷の厨房の隣にある、小さな部屋だった。中からは、甘くて香ばしい匂いが漂ってくる。
「ここは?」
「メイドたちの休憩室でございます。どうぞ」
部屋の中は、華美な装飾こそないが、清潔でとても居心地が良さそうだった。中央には大きな木のテーブルが置かれ、壁際には使い込まれた様子のソファが並んでいる。
マーサは私をテーブルの席に座らせると、手際よく戸棚からティーカップと小皿を取り出した。そして、オーブンから取り出したばかりであろう、まだ温かい焼き菓子を皿に乗せ、私の前にそっと置いてくれる。こんがりと焼き色のついた、素朴なバタークッキーだった。
「まあ……! 美味しそう」
甘い香りに、思わず顔が綻ぶ。
「お口に合うか分かりませんが」
そう言って、彼女は私のカップに琥珀色のカモミールティーを注いでくれた。
メイド長自らが、私のためにお茶を淹れてくれている。その事実に、私は恐縮すると同時に、彼女の心遣いをとても嬉しく感じた。
私はクッキーを一つ手に取り、おずおずと口に運んだ。サクッとした食感の後、バターの豊かな風味と優しい甘さが口いっぱいに広がる。
「美味しいです! とても!」
私が素直な感想を伝えると、マーサは心底ほっとしたように息をついた。
「……良かった」
しばらくの間、私たちは静かにお茶を飲んだ。窓から差し込む午後の光が、部屋の中を穏やかに照らしている。
やがて、マーサが静かな口調で語り始めた。
「リナリア様がこのお屋敷にいらしてから、アシュレイ様は変わられました」
その声は、どこか遠い昔を懐かしむような響きを持っていた。
「呪いをお受けになられてから、あの方はご自分の殻に閉じこもるようになられました。心を凍らせる呪いは、その名の通り、あの方から感情だけでなく、人としての温もりさえも奪っていったのです」
私は黙って、彼女の言葉に耳を傾けた。
「私は、幼い頃のアシュレイ様を知っております。先代の公爵夫人様……あの方のお母様は、とてもお優しく、慈愛に満ちた方でした。アシュレイ様も、昔はよく笑う、心優しい少年でいらっしゃった」
マーサの瞳が、切なげに揺れる。彼女は、アシュレイ様にとって乳母のような存在だったのかもしれない。
「ですが、お母様を病で亡くされ、その後すぐに戦場へ赴き、呪いを受けてお帰りになった。それからのあの方は、まるで氷の鎧を纏っているかのようでした。誰にも心を開かず、ただ一人で、暗い闇の中を歩いておられるようでした」
その言葉から、彼女がどれほどアシュレイ様のことを案じ、心を痛めてきたかが痛いほど伝わってきた。
「夜中に、苦悶の声で目を覚まされることも少なくありませんでした。私には、ただお傍に控えていることしかできず……自分の無力さを、何度も呪いました」
彼女はそこで一度言葉を切り、カップの中の紅茶を見つめた。
「ですが、リナリア様。あなた様がいらしてから、全てが変わりました」
マーサは顔を上げ、私をまっすぐに見つめた。その瞳には、深い感謝の色が浮かんでいた。
「アシュレイ様は、夜中に苦しむことがなくなりました。穏やかに朝をお迎えになる。執務中の難しい顔も和らぎ、我々使用人に対するお言葉も、以前とは比べものにならないほどお優しくなりました。……そして何より」
彼女は、ふっと微笑んだ。
「あなた様と過ごされている時のあの方は、まるで、呪いを受ける前の、あの頃の少年に戻ったかのようです。あのような心からの笑顔を、私はもう何年も見ておりませんでした」
その言葉に、私の胸の奥がじんわりと熱くなる。
アシュレイ様は、少しずつ、本来の自分を取り戻し始めている。そして、その変化を、彼のことを誰よりも大切に思っているこの人が、こんなにも喜んでくれている。
「私が、アシュレイ様のお力になれているのなら……こんなに嬉しいことはありません」
私も、素直な気持ちを口にした。
「私は、今までずっと、自分は何の役にも立たない出来損ないだと思って生きてきました。でも、アシュレイ様は私を必要としてくださった。私の力に、意味を与えてくださいました。だから、私は……あの方の呪いを癒して、いつか、本当の笑顔を取り戻していただきたいんです」
私の決意を聞いて、マーサはゆっくりと席を立った。
そして、私の前に来ると、何のためらいもなく、その場に深く膝を折った。
「マーサさん!?」
私は驚いて立ち上がろうとするが、彼女はそれを静かに手で制した。
「リナリア様。先日、私はあなた様に申し上げました。『もし、あなたがアシュレイ様の御心を癒す存在であるのならば、生涯の主としてお仕えしましょう』と」
彼女は顔を上げ、澄んだ瞳で私を見据えた。
「その言葉に、偽りはございません。このマーサ、今日この時より、あなた様を我が主と認め、生涯をかけてお仕えする覚悟でございます」
その声は、騎士の誓いのように、厳かで、力強かった。
「どうか、これからはこのマー-サを、あなたの手足と心得て、何なりとお申し付けください。そして……」
彼女は、深々と頭を下げた。
「私どもの大切な主君、アシュレイ様のことを、どうか、よろしくお願い申し上げます」
その姿に、私は胸がいっぱいになった。
彼女は私を、アシュレイ様のパートナーとして、未来の公爵夫人として、完全に認めてくれたのだ。
「……はい」
私は涙声になるのを必死でこらえ、はっきりと頷いた。
「こちらこそ、よろしくお願いいたします、マーサさん」
この瞬間、私は公爵邸で、初めて心からの味方を得た。
それは、アシュレイ様から与えられる庇護とはまた違う、温かくて心強い繋がりだった。この屋敷が、もうただの仮の住まいではない。私の本当の『居場所』になったのだと、確信できた。
マーサという強力な味方を得て、私の心は、また一つ強く、前を向くことができたのだった。
扉の外では、いつものようにメイド長のマーサが静かに控えていた。
「お疲れ様でございました。リナリア様」
彼女はそう言うと、いつも通り深々とお辞儀をした。けれど、今日の彼女の様子は、どこかいつもと違うように感じられた。硬質的だった声の響きが、ほんの少しだけ柔らかい。私を見つめるその瞳から、以前のような鋭さが消えている。
「ありがとうございます、マーサさん」
私が微笑み返すと、彼女は少しだけ逡巡するような素振りを見せた後、口を開いた。
「リナリア様。もし、お疲れでなければ、少しだけお付き合いいただきたい場所がございます」
「場所、ですか?」
てっきり自室へ案内されるものだと思っていた私は、少し驚いて聞き返した。
「はい。アシュレイ様には、リナリア様は少し休憩なさるとお伝えしております」
その言葉は、アシュレイ様には内緒だというニュアンスを含んでいた。私は興味を惹かれ、こくりと頷いた。
「はい。喜んで」
マーサは私の返事を聞くと、わずかに口元を綻ばせた。彼女が笑ったのを、私は初めて見たかもしれない。それは、とても優しくて、温かい微笑みだった。
彼女に導かれて歩き出した先は、客間や広間のある賓客用のエリアではなかった。磨き上げられた大理石の廊下から、温かみのある木の床の廊下へと変わる。ここは、使用人たちが日常的に使うための生活区域なのだろう。
やがて私たちが辿り着いたのは、屋敷の厨房の隣にある、小さな部屋だった。中からは、甘くて香ばしい匂いが漂ってくる。
「ここは?」
「メイドたちの休憩室でございます。どうぞ」
部屋の中は、華美な装飾こそないが、清潔でとても居心地が良さそうだった。中央には大きな木のテーブルが置かれ、壁際には使い込まれた様子のソファが並んでいる。
マーサは私をテーブルの席に座らせると、手際よく戸棚からティーカップと小皿を取り出した。そして、オーブンから取り出したばかりであろう、まだ温かい焼き菓子を皿に乗せ、私の前にそっと置いてくれる。こんがりと焼き色のついた、素朴なバタークッキーだった。
「まあ……! 美味しそう」
甘い香りに、思わず顔が綻ぶ。
「お口に合うか分かりませんが」
そう言って、彼女は私のカップに琥珀色のカモミールティーを注いでくれた。
メイド長自らが、私のためにお茶を淹れてくれている。その事実に、私は恐縮すると同時に、彼女の心遣いをとても嬉しく感じた。
私はクッキーを一つ手に取り、おずおずと口に運んだ。サクッとした食感の後、バターの豊かな風味と優しい甘さが口いっぱいに広がる。
「美味しいです! とても!」
私が素直な感想を伝えると、マーサは心底ほっとしたように息をついた。
「……良かった」
しばらくの間、私たちは静かにお茶を飲んだ。窓から差し込む午後の光が、部屋の中を穏やかに照らしている。
やがて、マーサが静かな口調で語り始めた。
「リナリア様がこのお屋敷にいらしてから、アシュレイ様は変わられました」
その声は、どこか遠い昔を懐かしむような響きを持っていた。
「呪いをお受けになられてから、あの方はご自分の殻に閉じこもるようになられました。心を凍らせる呪いは、その名の通り、あの方から感情だけでなく、人としての温もりさえも奪っていったのです」
私は黙って、彼女の言葉に耳を傾けた。
「私は、幼い頃のアシュレイ様を知っております。先代の公爵夫人様……あの方のお母様は、とてもお優しく、慈愛に満ちた方でした。アシュレイ様も、昔はよく笑う、心優しい少年でいらっしゃった」
マーサの瞳が、切なげに揺れる。彼女は、アシュレイ様にとって乳母のような存在だったのかもしれない。
「ですが、お母様を病で亡くされ、その後すぐに戦場へ赴き、呪いを受けてお帰りになった。それからのあの方は、まるで氷の鎧を纏っているかのようでした。誰にも心を開かず、ただ一人で、暗い闇の中を歩いておられるようでした」
その言葉から、彼女がどれほどアシュレイ様のことを案じ、心を痛めてきたかが痛いほど伝わってきた。
「夜中に、苦悶の声で目を覚まされることも少なくありませんでした。私には、ただお傍に控えていることしかできず……自分の無力さを、何度も呪いました」
彼女はそこで一度言葉を切り、カップの中の紅茶を見つめた。
「ですが、リナリア様。あなた様がいらしてから、全てが変わりました」
マーサは顔を上げ、私をまっすぐに見つめた。その瞳には、深い感謝の色が浮かんでいた。
「アシュレイ様は、夜中に苦しむことがなくなりました。穏やかに朝をお迎えになる。執務中の難しい顔も和らぎ、我々使用人に対するお言葉も、以前とは比べものにならないほどお優しくなりました。……そして何より」
彼女は、ふっと微笑んだ。
「あなた様と過ごされている時のあの方は、まるで、呪いを受ける前の、あの頃の少年に戻ったかのようです。あのような心からの笑顔を、私はもう何年も見ておりませんでした」
その言葉に、私の胸の奥がじんわりと熱くなる。
アシュレイ様は、少しずつ、本来の自分を取り戻し始めている。そして、その変化を、彼のことを誰よりも大切に思っているこの人が、こんなにも喜んでくれている。
「私が、アシュレイ様のお力になれているのなら……こんなに嬉しいことはありません」
私も、素直な気持ちを口にした。
「私は、今までずっと、自分は何の役にも立たない出来損ないだと思って生きてきました。でも、アシュレイ様は私を必要としてくださった。私の力に、意味を与えてくださいました。だから、私は……あの方の呪いを癒して、いつか、本当の笑顔を取り戻していただきたいんです」
私の決意を聞いて、マーサはゆっくりと席を立った。
そして、私の前に来ると、何のためらいもなく、その場に深く膝を折った。
「マーサさん!?」
私は驚いて立ち上がろうとするが、彼女はそれを静かに手で制した。
「リナリア様。先日、私はあなた様に申し上げました。『もし、あなたがアシュレイ様の御心を癒す存在であるのならば、生涯の主としてお仕えしましょう』と」
彼女は顔を上げ、澄んだ瞳で私を見据えた。
「その言葉に、偽りはございません。このマーサ、今日この時より、あなた様を我が主と認め、生涯をかけてお仕えする覚悟でございます」
その声は、騎士の誓いのように、厳かで、力強かった。
「どうか、これからはこのマー-サを、あなたの手足と心得て、何なりとお申し付けください。そして……」
彼女は、深々と頭を下げた。
「私どもの大切な主君、アシュレイ様のことを、どうか、よろしくお願い申し上げます」
その姿に、私は胸がいっぱいになった。
彼女は私を、アシュレイ様のパートナーとして、未来の公爵夫人として、完全に認めてくれたのだ。
「……はい」
私は涙声になるのを必死でこらえ、はっきりと頷いた。
「こちらこそ、よろしくお願いいたします、マーサさん」
この瞬間、私は公爵邸で、初めて心からの味方を得た。
それは、アシュレイ様から与えられる庇護とはまた違う、温かくて心強い繋がりだった。この屋敷が、もうただの仮の住まいではない。私の本当の『居場所』になったのだと、確信できた。
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