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第24話:執事と騎士団長
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オルゴールの音色が屋敷に響いたあの日から、公爵邸の空気はまた一段と温かみを増したように感じられた。
アシュレイ様の笑顔を見る機会が、格段に増えたのだ。それは、私と二人きりの時に見せてくれる特別な笑顔だけではない。執務中にふと書類から顔を上げた時や、使用人たちに指示を出すほんの僅かな合間にも、その口元には穏やかな笑みが浮かんでいることが多くなった。
その変化は、屋敷に住む全ての人々の心を明るく照らしていた。誰もが、主君の心の氷が溶けていくのを、自分のことのように喜んでいた。
私もまた、その幸せな空気の中で、穏やかな日々を送っていた。彼を癒やし、彼に癒やされる。その温かい循環が、私の日常の全てだった。
その日の午後、私はマーサさんから頼まれて、アシュレイ様の書斎へ焼き菓子と新しい紅茶を運んでいた。彼は午前中からずっと、領地から届いた報告書の確認に追われているらしかった。
書斎の扉をそっとノックすると、中から「入れ」という、いつもより少しだけ低い声が聞こえた。仕事に集中している時の彼の声だ。
「失礼いたします、アシュレイ様。お茶をお持ちいたしました」
私が声をかけると、机に向かっていた彼ははっとしたように顔を上げた。そして、私の姿を認めた瞬間、それまでの厳しい表情が嘘のようにふわりと綻ぶ。
「ああ、リナリアか。ありがとう。ちょうど一息つきたいと思っていたところだ」
その変わり身の早さに、彼の隣に控えていた壮年の執事は、表情こそ変えなかったが、その眉をかすかに動かした。
この方こそ、アイゼンベルク公爵家に長年仕える執事長のセバスチャンさんだ。銀色になり始めた髪を綺麗に整え、常に背筋を伸ばしたその佇まいは、非の打ち所がない完璧な執事そのものだった。彼は、アシュレイ様が幼い頃からその成長を見守ってきた、最も信頼の厚い側近の一人だとマーサさんから聞いていた。
私はセバスチャンさんに小さく会釈をしてから、アシュレイ様の机の空いているスペースにトレイを置いた。
「クッキーが焼きたてでしたので。お仕事の邪魔にならないと良いのですが」
「邪魔なものか。君が来てくれただけで、凝り固まった頭がほぐれるようだ」
アシュレイ様はそう言うと、私が淹れた紅茶を一口飲み、心底安らいだように息をついた。そして、クッキーを一つ手に取ると、悪戯っぽく微笑んで私に差し出した。
「君も、一つどうだ? 味見をしてもらわないと、毒見役が務まらないだろう?」
「も、もう! アシュレイ様!」
以前の私なら恐縮して固まってしまうところだったが、最近では彼のこういう冗談にも、少しだけ慣れてきていた。私が頬を膨らませて見せると、彼は楽しそうに笑い、そのクッキーを自分の口へと運んだ。
その一連のやりとりを、セバスチャンさんはただ静かに見守っていた。彼の老練な瞳には、主君のこれまでにない人間らしい姿に対する深い感慨と、その変化をもたらした私という存在への、静かな査定の色が浮かんでいるように見えた。
私がお茶を出し終えて書斎を辞去しようとした時、廊下の向こうからがっしりとした体躯の男性がこちらへ向かってくるのが見えた。
赤みがかった茶色の髪を短く刈り込み、日に焼けた肌には歴戦の証である古傷がいくつか刻まれている。公爵邸の豪華な内装には少し不釣り合いなほど、武骨で精悍な印象の人物だった。
彼こそ、アシュレイ様が率いる騎士団の団長、ギルバート・フォン・シュタイナー様。アシュレイ様の右腕として戦場を駆け、その背中を幾度となく守ってきた、最も信頼する戦友でもある。
ギルバート団長は、書斎から出てきた私と鉢合わせになると、少し驚いたように足を止めた。そして、私の質素な身なりと、どこにでもいるような控えめな様子を見て、怪訝そうに眉をひそめた。
「……あんたが、噂の?」
その声は、彼の屈強な見た目通り、低く、腹に響くような声だった。
私は彼の無遠慮な視線に少しだけ怯みながらも、スカートの裾をつまんで丁寧にお辞儀をした。
「リナリア・エルフィールドと申します」
「……ギルバートだ」
彼はぶっきらぼうに名乗ると、私の背後にある書斎の扉へと視線を向けた。その時、扉が内側から開かれ、アシュレイ様が顔を覗かせた。
「ギルバートか。ちょうどいいところに来た。入れ」
「はっ。失礼します、公爵様」
ギルバート団長は、アシュレイ様に対しては完璧な騎士としての礼を取った。しかし、彼の視線は、アシュレイ様が私に向ける表情を見て、再び驚きに固まった。
アシュレイ様は、ギルバート団長が来たことで、私との時間が終わってしまうのが名残惜しいとでも言うように、少しだけ不満げな顔をしていたのだ。
「リナリア、下がっていい。だが、夕食は必ず一緒に。君の好きな魚料理を用意させてあるからな」
「はい、アシュレイ様」
私にそう告げる声は、とろけるように甘い。その声色と、団長に向ける厳格な主君としての声色との差に、おそらくギルバート団長は眩暈でも覚えたことだろう。彼は唖然とした表情で、私とアシュレイ様を交互に見比べていた。
その日の夕方。私は庭で、マーサさんと共にハーブを摘んでいた。
そこへ、執務室での報告を終えたらしいギルバート団長が、セバスチャンさんと共にやってきた。
「……リナリア嬢」
先ほどよりは幾分か和らいだ声で、ギルバート団長が私を呼んだ。
「少し、よろしいかな」
私は立ち上がって彼に向き直る。彼の真剣な眼差しに、少しだけ緊張した。
「先ほど、公爵閣下から全て伺った。あんたの持つ不思議な力のこと、そして、あの方の呪いを癒しているということも」
彼はそう言うと、ごしごしと自分の頭を掻いた。
「正直、まだ信じられん。だが……」
彼はそこで言葉を切ると、私をまっすぐに見つめた。
「閣下の、あんなお顔を拝見したのは、何年ぶりだろうな。……いや、戦場でお会いしてから、初めてかもしれん」
その声には、深い実感がこもっていた。
「俺は、呪いに苦しむ閣下の姿を、誰よりも近くで見てきた。戦友として、何もできん自分が、歯がゆくてならなかった。……だが、あんたは、それを成し遂げている」
彼は、私の目の前まで来ると、その屈強な身体をためらいなく折り曲げ、深く、深く頭を下げた。
「……団長様!?」
私は驚いて声を上げた。騎士団長という高位の貴族が、私のような者に頭を下げるなど、あってはならないことだった。
「礼を言う、リナリア嬢。我が主君を救ってくれて、心から感謝する」
彼は顔を上げずに、そう言った。
「そして、これは俺個人からのお願いだ。どうか、これからも、閣下のことをよろしく頼む。あの方の傍に、居てやってくれ」
その声は、主君を心から敬愛する、忠実な騎士の声だった。
私の胸に、熱いものが込み上げてくる。
「……はい」
私は、涙声になるのをこらえて、はっきりと答えた。
「もちろんです。それが、私の役目ですから」
私のその返事を聞いて、ギルバート団長はようやく顔を上げた。その武骨な顔には、吹っ切れたような、晴れやかな笑みが浮かんでいた。
その様子を、少し離れた場所から見ていたセバスチャンさんが、静かに私に近づいてきた。
「リナリア様」
彼は、初めて私を「様」付けで呼んだ。そして、完璧な所作で、深々とお辞儀をした。
「このセバスチャンも、ギルバートと同じ想いでございます。リナリア様こそ、このアイゼンベルク公爵家が長年待ち望んだ、真の『主』のお一人。今後は、この身の全てを懸けて、リナリア様をお守りし、お仕えする所存でございます」
その言葉は、メイド長のマーサさんが誓ってくれた時と同じくらい、私の心を強く、温かく震わせた。
執事長セバスチャン、騎士団長ギルバート。
アシュレイ様が最も信頼する二人の側近が、今、私を認め、忠誠を誓ってくれた。
私はもう、一人ではない。
この公爵邸には、私を支え、守ってくれる人たちが、こんなにもいる。
その温かい事実に、私の心は、どこまでも満たされていくのだった。
アシュレイ様の笑顔を見る機会が、格段に増えたのだ。それは、私と二人きりの時に見せてくれる特別な笑顔だけではない。執務中にふと書類から顔を上げた時や、使用人たちに指示を出すほんの僅かな合間にも、その口元には穏やかな笑みが浮かんでいることが多くなった。
その変化は、屋敷に住む全ての人々の心を明るく照らしていた。誰もが、主君の心の氷が溶けていくのを、自分のことのように喜んでいた。
私もまた、その幸せな空気の中で、穏やかな日々を送っていた。彼を癒やし、彼に癒やされる。その温かい循環が、私の日常の全てだった。
その日の午後、私はマーサさんから頼まれて、アシュレイ様の書斎へ焼き菓子と新しい紅茶を運んでいた。彼は午前中からずっと、領地から届いた報告書の確認に追われているらしかった。
書斎の扉をそっとノックすると、中から「入れ」という、いつもより少しだけ低い声が聞こえた。仕事に集中している時の彼の声だ。
「失礼いたします、アシュレイ様。お茶をお持ちいたしました」
私が声をかけると、机に向かっていた彼ははっとしたように顔を上げた。そして、私の姿を認めた瞬間、それまでの厳しい表情が嘘のようにふわりと綻ぶ。
「ああ、リナリアか。ありがとう。ちょうど一息つきたいと思っていたところだ」
その変わり身の早さに、彼の隣に控えていた壮年の執事は、表情こそ変えなかったが、その眉をかすかに動かした。
この方こそ、アイゼンベルク公爵家に長年仕える執事長のセバスチャンさんだ。銀色になり始めた髪を綺麗に整え、常に背筋を伸ばしたその佇まいは、非の打ち所がない完璧な執事そのものだった。彼は、アシュレイ様が幼い頃からその成長を見守ってきた、最も信頼の厚い側近の一人だとマーサさんから聞いていた。
私はセバスチャンさんに小さく会釈をしてから、アシュレイ様の机の空いているスペースにトレイを置いた。
「クッキーが焼きたてでしたので。お仕事の邪魔にならないと良いのですが」
「邪魔なものか。君が来てくれただけで、凝り固まった頭がほぐれるようだ」
アシュレイ様はそう言うと、私が淹れた紅茶を一口飲み、心底安らいだように息をついた。そして、クッキーを一つ手に取ると、悪戯っぽく微笑んで私に差し出した。
「君も、一つどうだ? 味見をしてもらわないと、毒見役が務まらないだろう?」
「も、もう! アシュレイ様!」
以前の私なら恐縮して固まってしまうところだったが、最近では彼のこういう冗談にも、少しだけ慣れてきていた。私が頬を膨らませて見せると、彼は楽しそうに笑い、そのクッキーを自分の口へと運んだ。
その一連のやりとりを、セバスチャンさんはただ静かに見守っていた。彼の老練な瞳には、主君のこれまでにない人間らしい姿に対する深い感慨と、その変化をもたらした私という存在への、静かな査定の色が浮かんでいるように見えた。
私がお茶を出し終えて書斎を辞去しようとした時、廊下の向こうからがっしりとした体躯の男性がこちらへ向かってくるのが見えた。
赤みがかった茶色の髪を短く刈り込み、日に焼けた肌には歴戦の証である古傷がいくつか刻まれている。公爵邸の豪華な内装には少し不釣り合いなほど、武骨で精悍な印象の人物だった。
彼こそ、アシュレイ様が率いる騎士団の団長、ギルバート・フォン・シュタイナー様。アシュレイ様の右腕として戦場を駆け、その背中を幾度となく守ってきた、最も信頼する戦友でもある。
ギルバート団長は、書斎から出てきた私と鉢合わせになると、少し驚いたように足を止めた。そして、私の質素な身なりと、どこにでもいるような控えめな様子を見て、怪訝そうに眉をひそめた。
「……あんたが、噂の?」
その声は、彼の屈強な見た目通り、低く、腹に響くような声だった。
私は彼の無遠慮な視線に少しだけ怯みながらも、スカートの裾をつまんで丁寧にお辞儀をした。
「リナリア・エルフィールドと申します」
「……ギルバートだ」
彼はぶっきらぼうに名乗ると、私の背後にある書斎の扉へと視線を向けた。その時、扉が内側から開かれ、アシュレイ様が顔を覗かせた。
「ギルバートか。ちょうどいいところに来た。入れ」
「はっ。失礼します、公爵様」
ギルバート団長は、アシュレイ様に対しては完璧な騎士としての礼を取った。しかし、彼の視線は、アシュレイ様が私に向ける表情を見て、再び驚きに固まった。
アシュレイ様は、ギルバート団長が来たことで、私との時間が終わってしまうのが名残惜しいとでも言うように、少しだけ不満げな顔をしていたのだ。
「リナリア、下がっていい。だが、夕食は必ず一緒に。君の好きな魚料理を用意させてあるからな」
「はい、アシュレイ様」
私にそう告げる声は、とろけるように甘い。その声色と、団長に向ける厳格な主君としての声色との差に、おそらくギルバート団長は眩暈でも覚えたことだろう。彼は唖然とした表情で、私とアシュレイ様を交互に見比べていた。
その日の夕方。私は庭で、マーサさんと共にハーブを摘んでいた。
そこへ、執務室での報告を終えたらしいギルバート団長が、セバスチャンさんと共にやってきた。
「……リナリア嬢」
先ほどよりは幾分か和らいだ声で、ギルバート団長が私を呼んだ。
「少し、よろしいかな」
私は立ち上がって彼に向き直る。彼の真剣な眼差しに、少しだけ緊張した。
「先ほど、公爵閣下から全て伺った。あんたの持つ不思議な力のこと、そして、あの方の呪いを癒しているということも」
彼はそう言うと、ごしごしと自分の頭を掻いた。
「正直、まだ信じられん。だが……」
彼はそこで言葉を切ると、私をまっすぐに見つめた。
「閣下の、あんなお顔を拝見したのは、何年ぶりだろうな。……いや、戦場でお会いしてから、初めてかもしれん」
その声には、深い実感がこもっていた。
「俺は、呪いに苦しむ閣下の姿を、誰よりも近くで見てきた。戦友として、何もできん自分が、歯がゆくてならなかった。……だが、あんたは、それを成し遂げている」
彼は、私の目の前まで来ると、その屈強な身体をためらいなく折り曲げ、深く、深く頭を下げた。
「……団長様!?」
私は驚いて声を上げた。騎士団長という高位の貴族が、私のような者に頭を下げるなど、あってはならないことだった。
「礼を言う、リナリア嬢。我が主君を救ってくれて、心から感謝する」
彼は顔を上げずに、そう言った。
「そして、これは俺個人からのお願いだ。どうか、これからも、閣下のことをよろしく頼む。あの方の傍に、居てやってくれ」
その声は、主君を心から敬愛する、忠実な騎士の声だった。
私の胸に、熱いものが込み上げてくる。
「……はい」
私は、涙声になるのをこらえて、はっきりと答えた。
「もちろんです。それが、私の役目ですから」
私のその返事を聞いて、ギルバート団長はようやく顔を上げた。その武骨な顔には、吹っ切れたような、晴れやかな笑みが浮かんでいた。
その様子を、少し離れた場所から見ていたセバスチャンさんが、静かに私に近づいてきた。
「リナリア様」
彼は、初めて私を「様」付けで呼んだ。そして、完璧な所作で、深々とお辞儀をした。
「このセバスチャンも、ギルバートと同じ想いでございます。リナリア様こそ、このアイゼンベルク公爵家が長年待ち望んだ、真の『主』のお一人。今後は、この身の全てを懸けて、リナリア様をお守りし、お仕えする所存でございます」
その言葉は、メイド長のマーサさんが誓ってくれた時と同じくらい、私の心を強く、温かく震わせた。
執事長セバスチャン、騎士団長ギルバート。
アシュレイ様が最も信頼する二人の側近が、今、私を認め、忠誠を誓ってくれた。
私はもう、一人ではない。
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その温かい事実に、私の心は、どこまでも満たされていくのだった。
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