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第1話:地味すぎる戦い方
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湿った土と獣の腐臭が鼻をつく。ゴブリンの巣穴特有の淀んだ空気だ。俺、アランは洞窟の壁に背を預け、短剣の柄を握り直した。四十という年齢は冒険者としては大ベテランの域だが、俺が所属する中堅ギルド「赤獅子の牙」ではただの古株でしかない。
「行くぞ! 雑魚は蹴散らせ!」
パーティリーダーのレオナルドが高らかに叫ぶ。年の頃は二十代半ば。魔術師ギルドの推薦を受けて若くしてリーダーになった、才能とプライドに満ちた男だ。彼の掲げた杖の先端に炎が渦巻き、洞窟の闇を払う。
「炎槍よ、敵を貫け! フレイムランス!」
詠唱と共に放たれた炎の槍が、洞窟の通路の奥から現れたゴブリンの胸を正確に貫いた。断末魔を上げて燃え尽きるゴブリン。派手な演出だ。他の仲間からも歓声が上がる。
「さすがレオさん! 今のカッコよかったっす!」
「あの距離から一撃とは、見事な腕前ですね」
筋骨隆々の戦士ダリオスが大剣を肩に担ぎ、快活に笑う。女神官のセーラは胸の前で手を組み、うっとりとした表情でレオナルドを見つめていた。彼らは若く、才能があり、そして何より派手な戦いを好んだ。
ゴブリンの集団が雄叫びを上げて通路の奥から殺到してくる。数は二十といったところか。
「ダリオス、前線を頼む! セーラは援護を!」
「おう、任せとけ! うおおお!」
ダリオスが咆哮と共に突進し、大剣を横薙ぎに振るう。豪快な一撃は二体のゴブリンをまとめて肉塊に変えた。しかし、その動きは大振りで隙だらけだ。一体のゴブリンがその隙を突いてダリオスの足元に忍び寄り、錆びた剣を振り上げる。
「ダリオスさん、危ない!」
セーラの悲鳴が響く。だが、ゴブリンの刃がダリオスに届くことはなかった。
カツン、と乾いた音が洞窟に響く。
俺が足元から拾って投げた小石が、ゴブリンのこめかみを正確に打ち抜いていた。ゴブリンは白目を剥いてその場に崩れ落ちる。
「ちっ、助かったぜアランさん」
ダリオスは忌々しげに舌打ちをしながらも、礼だけは口にした。俺は何も答えず、壁際を静かに移動する。レオナルドの魔法とダリオスの剣が敵の注意を引きつけている間に、俺は影のように敵の側面へと回り込んでいた。
レオナルドが次の魔法の詠唱を始める。
「集え、紅蓮の魔力よ。敵を焼き払う炎の渦となれ――」
その長い詠唱の間に、俺は三体のゴブリンを処理していた。一体目は背後から忍び寄り、首筋に短剣を突き立てる。声も出させずに絶命させた。二体目は一体目のゴブリンを盾にしながら接近し、その足首を蹴り払って体勢を崩す。倒れ込んだところを踏みつけ、喉を掻き切った。三体目は俺の存在に気づいて振り向いたが、その顔面に隠し持っていた砂を投げつける。怯んだ隙に、心臓へ短剣を突き刺した。
一連の動作に無駄はない。音もなく、血飛沫も最小限。それは戦いというより、解体作業に近いものだった。
「――ファイアボール!」
レオナルドの詠唱が終わり、巨大な火球がゴブリンの群れの中心で炸裂した。轟音と共に熱風が吹き荒れ、五体ほどのゴブリンが黒焦げになる。
「ははは! どうだ!」
レオナルドは自らの魔法の威力に満足げな笑みを浮かべた。しかし、その爆発で洞窟の一部が崩れ、新たな通路が出現する。そこから、一回りも二回りも大きな体躯を持つゴブリンキングが姿を現した。
「キングだと!?」
「まずい、聞いてないぞ!」
動揺する仲間たち。ゴブリンキングは巨大な棍棒を振りかぶり、ダリオス目掛けて突進してくる。
「聖なる光よ、彼の者を守り給え! プロテクション!」
セーラの障壁がダリオスを包むが、ゴブリンキングの一撃はそれをガラスのように粉砕した。ダリオスは辛うじて大剣で攻撃を受け止めるが、その衝撃に膝をつく。
「くそっ、なんて力だ…!」
「レオナルドさん、魔法を!」
セーラが悲鳴を上げるが、レオナルドは次の大魔法の準備に時間がかかっていた。絶体絶命。誰もがそう思っただろう。
だが、俺は冷静だった。ゴブリンキングがダリオスに気を取られている一瞬。俺は天井の岩の僅かな亀裂を見逃さなかった。壁を蹴り、僅かな突起を足場に一気に天井近くまで駆け上がる。そして、狙いを定めて亀裂に短剣を突き立て、体重をかけて抉るように捻った。
パラパラと土が落ち、亀裂が広がる。俺はすぐにそこから飛びのき、壁を伝って静かに着地した。
ゴブリンキングがダリオスに止めの一撃を加えようと棍棒を振り上げた、その瞬間。
ゴゴゴゴゴ、と地響きが鳴り、天井の巨大な岩盤がゴブリンキングの真上に崩落した。キングは異変に気づいて見上げたが、もう遅い。轟音と共に、その巨体は岩の下敷きになった。
静寂が洞窟を支配する。残ったゴブリンたちは王の死に恐れをなしたのか、蜘蛛の子を散らすように逃げていった。
「……終わった、のか?」
ダリオスが呆然と呟く。セーラは腰を抜かしてその場に座り込んでいた。
「アランさん、あんたがやったのか?」
レオナルドが疑わしげな目で俺を見る。
「偶然だ。お前の魔法の衝撃で天井が緩んでいたんだろう」
俺は淡々と答えると、ゴブリンキングが落とした魔石を拾い上げ、袋にしまった。これが今回の依頼の主な換金アイテムだ。
「そうか…。まあいい。俺たちの勝利だ! ギルドに戻って祝杯をあげよう!」
レオナルドはすぐに気を取り直し、勝ち誇ったように言った。ダリオスとセーラもそれに同調し、自分たちの武勇伝を語り始める。誰一人、俺の戦い方には触れなかった。いつも通りのことだ。
ギルドへの帰り道。レオナルドは不意に足を止め、俺の方を振り返った。その顔には、先程までの上機嫌さはなく、あからさまな不満が浮かんでいた。
「なあ、アランさん」
「なんだ」
「あんたの戦い方は、地味すぎるんだよ」
吐き捨てるような口調だった。ダリオスとセーラも、同意するように頷いている。
「見てるこっちの士気が下がる。ゴブリンを倒すのに砂を投げたり、石ころを投げたり。そんなのは冒険者の戦いじゃない。ただのチンピラの喧嘩だ」
レオナルドの言葉は続く。
「最後の落盤だってそうだ。偶然じゃなかったらどうするつもりだったんだ? 俺の魔法やダリオスの剣のように、確実な一撃というものがない。あんたの戦い方は、あまりにも不確定要素が多すぎる」
それは違う、と俺は心の中で反論した。あの落盤は偶然ではない。岩の材質、亀裂の深さ、キングの立ち位置、全てを計算した上での一撃だ。砂や石ころも、敵の動きを確実に止め、こちらの被害を最小限に抑えるための最善手だ。だが、それをこの男に説明しても無駄だろう。彼が求めているのは効率ではなく、見栄えの良い英雄譚なのだから。
「それに、あんたはいつもそうだ。俺たちが必死に戦ってる間、こそこそと影に隠れてばかり。あれじゃあパーティの一員とは言えない。まるでハイエナだ」
ダリオスが追い打ちをかけるように言った。
「そうですよ。アランさんの戦い方って、なんだか見ていて不安になります。正々堂々としていないというか…」
セーラまでが、怯えたような目で俺を見る。
なるほどな。俺は静かに納得した。彼らにとって、戦いとは観客に披露する劇のようなものなのだろう。主役は派手な魔法を放つ魔術師と、豪快な剣を振るう戦士。俺のような地味な役者は、舞台にいるだけで邪魔なのだ。
俺が黙っていると、レオナルドは決定的な言葉を口にした。
「もう限界だ。アランさん。あんたがいるとパーティの連携が乱れる。士気が下がる。だから――今日限りでクビだ」
冷たい宣告だった。だが、俺の心は不思議なほど凪いでいた。驚きも、怒りも、悲しみも湧いてこない。ただ、ああ、やっとか、という安堵にも似た感情が胸に広がった。
「分かった」
「…なんだよ、その態度は。少しは悔しがったらどうなんだ」
俺の淡々とした返事に、レオナルドは逆に苛立ちを募らせる。
「報酬の分け前はどうなる。今回のゴブリンキングの魔石は、俺が回収した」
俺は事務的に尋ねた。金は必要だ。今後の生活のために。
「……ちっ。規定通り、四等分だ。それで文句ないだろ!」
「ああ、問題ない」
レオナルドは舌打ちし、仲間たちと共にさっさとギルドの方へ歩いて行ってしまった。その背中を見送りながら、俺は一人、その場に立ち尽くす。
十年間。俺はこの王都で、冒険者として生きてきた。目立たず、騒がれず、ただ静かに日銭を稼ぐためだけに。だが、それも今日で終わりだ。
王都の喧騒が遠くに聞こえる。俺はギルドとは逆の方向へ、ゆっくりと歩き始めた。
追放された。それは事実だ。
だが、見方を変えれば、これは解放でもある。
長年俺を縛り付けていた鎖が、断ち切られたのだ。
これからは、どこへ行こうか。何をしようか。
血の匂いも、怒声も、悲鳴も聞こえない場所がいい。
朝日と共に起き、土を耕し、夜は静かに星を眺める。
そんな、夢物語のような生活。
俺の口元に、自分でも気づかないうちに微かな笑みが浮かんでいた。
四十歳からの再出発。悪くないかもしれない。
そう思うと、足取りが少しだけ軽くなった気がした。
「行くぞ! 雑魚は蹴散らせ!」
パーティリーダーのレオナルドが高らかに叫ぶ。年の頃は二十代半ば。魔術師ギルドの推薦を受けて若くしてリーダーになった、才能とプライドに満ちた男だ。彼の掲げた杖の先端に炎が渦巻き、洞窟の闇を払う。
「炎槍よ、敵を貫け! フレイムランス!」
詠唱と共に放たれた炎の槍が、洞窟の通路の奥から現れたゴブリンの胸を正確に貫いた。断末魔を上げて燃え尽きるゴブリン。派手な演出だ。他の仲間からも歓声が上がる。
「さすがレオさん! 今のカッコよかったっす!」
「あの距離から一撃とは、見事な腕前ですね」
筋骨隆々の戦士ダリオスが大剣を肩に担ぎ、快活に笑う。女神官のセーラは胸の前で手を組み、うっとりとした表情でレオナルドを見つめていた。彼らは若く、才能があり、そして何より派手な戦いを好んだ。
ゴブリンの集団が雄叫びを上げて通路の奥から殺到してくる。数は二十といったところか。
「ダリオス、前線を頼む! セーラは援護を!」
「おう、任せとけ! うおおお!」
ダリオスが咆哮と共に突進し、大剣を横薙ぎに振るう。豪快な一撃は二体のゴブリンをまとめて肉塊に変えた。しかし、その動きは大振りで隙だらけだ。一体のゴブリンがその隙を突いてダリオスの足元に忍び寄り、錆びた剣を振り上げる。
「ダリオスさん、危ない!」
セーラの悲鳴が響く。だが、ゴブリンの刃がダリオスに届くことはなかった。
カツン、と乾いた音が洞窟に響く。
俺が足元から拾って投げた小石が、ゴブリンのこめかみを正確に打ち抜いていた。ゴブリンは白目を剥いてその場に崩れ落ちる。
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一連の動作に無駄はない。音もなく、血飛沫も最小限。それは戦いというより、解体作業に近いものだった。
「――ファイアボール!」
レオナルドの詠唱が終わり、巨大な火球がゴブリンの群れの中心で炸裂した。轟音と共に熱風が吹き荒れ、五体ほどのゴブリンが黒焦げになる。
「ははは! どうだ!」
レオナルドは自らの魔法の威力に満足げな笑みを浮かべた。しかし、その爆発で洞窟の一部が崩れ、新たな通路が出現する。そこから、一回りも二回りも大きな体躯を持つゴブリンキングが姿を現した。
「キングだと!?」
「まずい、聞いてないぞ!」
動揺する仲間たち。ゴブリンキングは巨大な棍棒を振りかぶり、ダリオス目掛けて突進してくる。
「聖なる光よ、彼の者を守り給え! プロテクション!」
セーラの障壁がダリオスを包むが、ゴブリンキングの一撃はそれをガラスのように粉砕した。ダリオスは辛うじて大剣で攻撃を受け止めるが、その衝撃に膝をつく。
「くそっ、なんて力だ…!」
「レオナルドさん、魔法を!」
セーラが悲鳴を上げるが、レオナルドは次の大魔法の準備に時間がかかっていた。絶体絶命。誰もがそう思っただろう。
だが、俺は冷静だった。ゴブリンキングがダリオスに気を取られている一瞬。俺は天井の岩の僅かな亀裂を見逃さなかった。壁を蹴り、僅かな突起を足場に一気に天井近くまで駆け上がる。そして、狙いを定めて亀裂に短剣を突き立て、体重をかけて抉るように捻った。
パラパラと土が落ち、亀裂が広がる。俺はすぐにそこから飛びのき、壁を伝って静かに着地した。
ゴブリンキングがダリオスに止めの一撃を加えようと棍棒を振り上げた、その瞬間。
ゴゴゴゴゴ、と地響きが鳴り、天井の巨大な岩盤がゴブリンキングの真上に崩落した。キングは異変に気づいて見上げたが、もう遅い。轟音と共に、その巨体は岩の下敷きになった。
静寂が洞窟を支配する。残ったゴブリンたちは王の死に恐れをなしたのか、蜘蛛の子を散らすように逃げていった。
「……終わった、のか?」
ダリオスが呆然と呟く。セーラは腰を抜かしてその場に座り込んでいた。
「アランさん、あんたがやったのか?」
レオナルドが疑わしげな目で俺を見る。
「偶然だ。お前の魔法の衝撃で天井が緩んでいたんだろう」
俺は淡々と答えると、ゴブリンキングが落とした魔石を拾い上げ、袋にしまった。これが今回の依頼の主な換金アイテムだ。
「そうか…。まあいい。俺たちの勝利だ! ギルドに戻って祝杯をあげよう!」
レオナルドはすぐに気を取り直し、勝ち誇ったように言った。ダリオスとセーラもそれに同調し、自分たちの武勇伝を語り始める。誰一人、俺の戦い方には触れなかった。いつも通りのことだ。
ギルドへの帰り道。レオナルドは不意に足を止め、俺の方を振り返った。その顔には、先程までの上機嫌さはなく、あからさまな不満が浮かんでいた。
「なあ、アランさん」
「なんだ」
「あんたの戦い方は、地味すぎるんだよ」
吐き捨てるような口調だった。ダリオスとセーラも、同意するように頷いている。
「見てるこっちの士気が下がる。ゴブリンを倒すのに砂を投げたり、石ころを投げたり。そんなのは冒険者の戦いじゃない。ただのチンピラの喧嘩だ」
レオナルドの言葉は続く。
「最後の落盤だってそうだ。偶然じゃなかったらどうするつもりだったんだ? 俺の魔法やダリオスの剣のように、確実な一撃というものがない。あんたの戦い方は、あまりにも不確定要素が多すぎる」
それは違う、と俺は心の中で反論した。あの落盤は偶然ではない。岩の材質、亀裂の深さ、キングの立ち位置、全てを計算した上での一撃だ。砂や石ころも、敵の動きを確実に止め、こちらの被害を最小限に抑えるための最善手だ。だが、それをこの男に説明しても無駄だろう。彼が求めているのは効率ではなく、見栄えの良い英雄譚なのだから。
「それに、あんたはいつもそうだ。俺たちが必死に戦ってる間、こそこそと影に隠れてばかり。あれじゃあパーティの一員とは言えない。まるでハイエナだ」
ダリオスが追い打ちをかけるように言った。
「そうですよ。アランさんの戦い方って、なんだか見ていて不安になります。正々堂々としていないというか…」
セーラまでが、怯えたような目で俺を見る。
なるほどな。俺は静かに納得した。彼らにとって、戦いとは観客に披露する劇のようなものなのだろう。主役は派手な魔法を放つ魔術師と、豪快な剣を振るう戦士。俺のような地味な役者は、舞台にいるだけで邪魔なのだ。
俺が黙っていると、レオナルドは決定的な言葉を口にした。
「もう限界だ。アランさん。あんたがいるとパーティの連携が乱れる。士気が下がる。だから――今日限りでクビだ」
冷たい宣告だった。だが、俺の心は不思議なほど凪いでいた。驚きも、怒りも、悲しみも湧いてこない。ただ、ああ、やっとか、という安堵にも似た感情が胸に広がった。
「分かった」
「…なんだよ、その態度は。少しは悔しがったらどうなんだ」
俺の淡々とした返事に、レオナルドは逆に苛立ちを募らせる。
「報酬の分け前はどうなる。今回のゴブリンキングの魔石は、俺が回収した」
俺は事務的に尋ねた。金は必要だ。今後の生活のために。
「……ちっ。規定通り、四等分だ。それで文句ないだろ!」
「ああ、問題ない」
レオナルドは舌打ちし、仲間たちと共にさっさとギルドの方へ歩いて行ってしまった。その背中を見送りながら、俺は一人、その場に立ち尽くす。
十年間。俺はこの王都で、冒険者として生きてきた。目立たず、騒がれず、ただ静かに日銭を稼ぐためだけに。だが、それも今日で終わりだ。
王都の喧騒が遠くに聞こえる。俺はギルドとは逆の方向へ、ゆっくりと歩き始めた。
追放された。それは事実だ。
だが、見方を変えれば、これは解放でもある。
長年俺を縛り付けていた鎖が、断ち切られたのだ。
これからは、どこへ行こうか。何をしようか。
血の匂いも、怒声も、悲鳴も聞こえない場所がいい。
朝日と共に起き、土を耕し、夜は静かに星を眺める。
そんな、夢物語のような生活。
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