スキル【土いじり】でパーティを追放された俺、開墾した畑からダンジョンが生えてきた。

夏見ナイ

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第57話:オリハルコン装備のゴーレム部隊

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「アルフォンス!」
中央広場に一人で立ちはだかる俺の名を、ガイウスは憎悪を込めて吐き出した。その巨体から放たれるプレッシャーは嵐のように広場全体を圧する。
だが俺は一歩も引かなかった。
聖銀樹が放つ穏やかな光が、俺の背中を優しく支えてくれているかのようだった。

「グルオオオオオ!」
ガイウスが咆哮し突進してくる。その速度は巨体からは想像もつかないほど速い。大地が揺れ、石畳がその衝撃で砕け散る。
俺は冷静にその動きを見極めていた。
そして彼が俺の間合いに入る寸前、地面に向かってガイアズ・エッジを突き立てた。

「――目覚めよ、大地の守護者!」

俺の号令に応え、広場の石畳がまるで生き物のように隆起し始めた。
だが今回現れたのは、ただの土のゴーレムではなかった。
その体は黒曜石のように硬質化した土で形成され、その表面にはリズベットが精錬したディバインメタルの板金が鎧のように装着されている。そして、その両腕に握られているのは鈍い黄金色の輝きを放つ、オリハルコン製の巨大な戦斧と大盾。

一体、また一体と大地から現れるその異形のゴーレムたち。
その数、わずか十体。
だが一体一体が放つ存在感は、これまでのゴンスケ百体分にも匹敵する圧倒的なものだった。
俺の【神の農園】スキルとリズベットの【神匠】の技術、そしてこのダンジョンが生み出す伝説級の素材。そのすべてを結集して生み出された、アルカディア村が誇る究極の決戦兵力。
『ガイア・ガーディアン』部隊だ。

「なっ……!?」
突進してきたガイウスは、目の前に突如として出現した異形のゴーレム軍団に思わず足を止めた。
その一瞬の躊躇が命取りだった。

ズシン!
一体のガイア・ガーディアンがオリハルコンの大盾を構え、ガイウスの突進を正面から受け止めた。
凄まじい衝撃音。
だがガーディアンは一歩も引かない。それどころか、ガイウスの巨体の方がその衝撃に押し返されていた。

「ギイイイ!?」
信じられないというようにガイウスが呻く。
その隙を他のガーディアンたちが見逃すはずはなかった。
左右から、後方から、オリハルコンの戦斧がガイウスの黒曜石の体に同時に叩きつけられた。

ガキン! ゴギン! ギャリン!
これまでどんな攻撃も弾き返してきたガイウスの無敵の鎧が、神々の金属によって鍛えられた刃の前では、まるでガラスのようにいともたやすく砕け散っていく。
「グルアアアアアアアッ!」
ガイウスの生まれて初めて聞くかのような、本物の絶叫が夜空に響き渡った。

戦いはもはや一方的な蹂躙だった。
ガイウスはその再生能力で傷を癒やそうとするが、ガーディアンたちの攻撃はそれを遥かに上回る速度と威力で彼の体を破壊していく。
腕が砕かれ、足が断たれ、背中の翼が引きちぎられる。
だがガーディアンたちは決してとどめは刺さなかった。
彼らの命令はただ一つ、『敵の無力化』。
それは俺がガイウスに最後の問いを投げかけるために与えた命令だった。

やがてガイウスは手足のほとんどを失い、だるまのような無残な姿で広場の中央に転がっていた。
その瞳から憎悪の炎は消え、代わりに完全な敗北と死への恐怖だけが浮かんでいる。
ガイア・ガーディ-アンたちはその周りを静かに、そして無慈悲に包囲していた。

建物の屋上からその光景を見下ろしていたシルフィとリズベットは、言葉を失っていた。
「……おいおい、マジかよ。あのお頭、あんなとんでもねえモンを隠し持ってやがったのか」
リズベットが呆然と呟く。
「……あれがアルフォンスの、そしてこの村の本当の力なのですね」
シルフィもまた、その圧倒的な光景に畏怖の念を禁じ得なかった。

俺は静かに、無力化されたガイウスの前に立った。
「……なぜだ」
ガイウスが血の泡を吹きながら、かすれた声で尋ねてきた。「なぜ、お前は……そこまで強い……」
「言ったはずだ、ガイウス」
俺はガイアズ・エッジの切っ先を、彼の喉元に突きつけた。「守るものがある力は強い、と」

俺は彼を見下ろし、最後の問いを投げかけた。
「……誰にこれをやらされた? セレスティアか? 彼女の目的はなんだ」
これが俺が彼を生かしておいた唯一の理由だった。
邪教団に関する、わずかでも多くの情報を引き出すために。

ガイウスはしばらく、虚ろな目で宙を見つめていた。
だがやがて、彼の口元に自嘲するような乾いた笑みが浮かんだ。
「……ふ……ふふ……。今更そんなことを聞いてどうする……」
彼はもはやセレスティアに裏切られた絶望から、何もかもを諦めていた。
「……教えるものか。俺はお前にだけは何も……。お前は俺の絶望を見届ければいい……。そしていずれ……お前も俺と同じ……闇に……」

それが彼の最後の言葉だった。
彼の体から急激に生命力が失われていく。邪神の力で無理やり生かされていたその肉体が、ついに限界を迎えたのだ。
彼の体は黒い塵となってサラサラと崩れ始め、やがて跡形もなく消え去っていった。
後に残されたのは、彼の憎悪が凝り固まったかのような小さな黒い魔石だけだった。

静寂が広場に戻る。
俺とガイウスの長くて歪んだ因縁は、今、ここで本当に終わりを告げた。
その結末はあまりにも空虚だった。

俺はガイウスが遺した魔石を静かに拾い上げた。
そこからはセレスティアのものと同じ種類の、禍々しい魔力が放たれている。
「……手掛かりはこれだけか」
俺は静かに呟いた。

戦いは終わった。
だが俺たちの本当の敵は、まだその姿さえはっきりと見せてはいない。
俺は静まり返った広場で仲間たちと共に、次なる戦いに備え決意を新たにしていた。
この勝利は決して終わりではない。
本当の夜明けはまだ遠い。
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