スキル【土いじり】でパーティを追放された俺、開墾した畑からダンジョンが生えてきた。

夏見ナイ

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第78話:セレスティアの目的

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俺たちが世界各地の厄災を鎮めるためにアルカディアを旅立った頃。
漆黒の祭壇が置かれた邪教団の本拠地。
セレスティアは黒い水晶玉に映し出される、三つに分かれて進む俺たちの姿を満足げに眺めていた。

「……かかりましたわね」
彼女の蠱惑的な唇が、三日月のような笑みを形作る。
「実に愚かで、そして実に英雄的。アルフォンス様らしい選択ですこと」

彼女の背後に控える『影』の一人が、疑問を呈した。
「……よろしいので? セレスティア様。彼らを分散させたとはいえ、それぞれが神話級の力を持っております。万が一、各地の災厄が本当に鎮められてしまった場合、我々の計画に遅れが生じるのでは?」
その問いに、セレスティアはくすくすと喉を鳴らして笑った。

「あなた、まだ分かっていらっしゃらないのね」
彼女は水晶玉を愛おしそうに撫でながら言った。「各地の災厄など、どうでもよろしいのですわ。あれらは所詮、時間稼ぎのためのただの『騒音』。鎮められるなら、鎮められるで結構」
「……では、真の目的は?」

「決まっているではありませんか」
セレスティアの瞳が狂信的な光を爛々と輝かせた。
「我が主、邪神様の完全なる復活。そのための最終儀式の準備ですわ」

彼女はゆっくりと祭壇の前へと歩みを進めた。
その祭壇の上には、一つの巨大なものが禍々しいオーラを放ちながら安置されている。
それは以前ガイウスの体を蝕んでいたあの黒い魔石。だが、その大きさは比較にならないほど巨大で、まるで巨大な心臓のようにどくどくと邪悪な脈動を繰り返していた。
『邪神の心臓』。
教団が数千年の時をかけて人々の負の感情を吸い上げ、育て上げてきた究極の魔道具。

「邪神様がこの世界に完全に降臨なされるためには、三つの『鍵』が必要ですの」
セレスティアはうっとりとした表情で、その心臓に頬ずりした。
「一つは『器』。邪神様の偉大なる魂をこの次元に繋ぎ止めるための肉体。それは、この『邪神の心臓』がもうすぐ完成させてくれますわ」

「二つ目は『扉』。あちら側の世界とこちら側の世界を繋ぐ巨大な次元の門。それは先日の儀式で、わたくしがこの魂を賭してすでにその楔を打ち込んでおきました。あとは時が満ちるのを待つだけ」

彼女はそこで言葉を区切った。
そして、水晶玉に映るアルカディアの平和な村の光景を指でなぞった。
「そして、最後の最も重要な三つ目の鍵。それは『贄』。扉を開き、器に魂を呼び込むための莫大な生命エネルギー」

「サンドワームやジャイアントがいくら暴れようとも、そこで失われる生命力などたかが知れています。ですが……」
彼女の瞳がぎらりと欲望の光を放った。
「……あのアルカディアは違う。あの土地そのものが星の生命力の結晶。そこに住む者たちの魂は、幸福と希望に極上の輝きを放っている。あれほどの『贄』は、この世界のどこを探しても他にはございません」

『影』は、そこでようやくセレスティアの真の目的を理解した。
各地の災厄は陽動であると同時に、アルフォンスたちアルカディアの最高戦力を意図的に村から引き離すための壮大な罠だったのだ。

「アルフォンス様と、あのエルフ、そしてドワーフ。あの三人がいては、さすがにアルカディアを内側から堕とすのは骨が折れますからね」
彼女は楽しそうに計画を語る。
「ですが、今あの村の守りはどうなっていますか? 残っているのは出来損ないのゴーレムと元農民の烏合の衆だけ。そして、彼らが心の拠り所としている王と二人の巫女は遠く離れた地にいる」
「これほど御しやすい状況はございませんわ」

セレスティアは祭壇の横に置かれたもう一つの小さな水晶玉に手をかざした。
水晶玉にはアルカディア村のいくつかの地点の光景が映し出されている。それは彼女が以前村に侵入した際に密かに設置しておいた監視用の『目』だった。

「わたくしはこれから彼らの心に囁きかけるのです。小さな小さな『疑念』と『不安』の種を」
彼女は水晶玉に映る村人たちの穏やかな顔を、舐め回すように見つめた。
「『王は本当に帰ってくるのだろうか?』」
「『我々は見捨てられたのではないか?』」
「『この村の富を独り占めするために、我々を生贄にするつもりではないのか?』」

「どんなに固い絆も、どんなに強い信頼も、内側から生まれ出る疑心暗鬼の前では脆いものですわ。幸福な魂ほど、それを失う恐怖には弱いのですから」
彼女の計画は武力による殲滅ではなかった。
人心を操り、内側から共同体を崩壊させ、人々の魂を希望から絶望へと堕とすこと。
そして、その絶望を邪神復活の最後の一押しとして利用すること。
それこそが『黄昏の蛇』が最も得意とする、最も残忍で最も効果的な戦術だった。

「さあ、始めましょう」
セレスティアは両腕を広げ、その身から人の心を惑わす邪悪な波動を放ち始めた。
その波動は次元を超え、彼女が設置した『目』を通じてアルカディア村の人々の心へと静かに、そして確実に浸透していく。
「絶望の収穫祭を」

その頃、俺たちはまだ何も知らなかった。
自分たちが故郷を離れたその瞬間から、愛する者たちが見えざる敵の最も卑劣な攻撃に晒され始めていることを。
俺は南の砂漠へと向かう飛竜の背の上で、ただ仲間と村の無事を祈ることしかできなかった。
世界の各地で三つの英雄譚が紡がれようとしている、その裏側で。
本当の、最も恐ろしい戦いは俺たちの故郷アルカディアで、静かに始まろうとしていた。
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