スキル【土いじり】でパーティを追放された俺、開墾した畑からダンジョンが生えてきた。

夏見ナイ

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第83話:邪教団幹部①との戦い

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俺がこじ開けた光の道を通って、ワールド・ホープ号は邪教団の本拠地である要塞島『ウロボロス・クレイドル』の岸壁にその巨体を接岸させた。
船が止まるや否や、俺たち突入部隊の面々は一斉に甲板へと飛び出した。
島全体が禍々しい紫色の瘴気に包まれ、空気は死と冒涜の匂いに満ちている。空には不気味な単眼を持つ翼の生えた魔物たちが、偵察するように飛び交っていた。

「ここが邪教団の本拠地……。いるだけで魂が腐っちまいそうだぜ」
リズベットがウォーハンマーを握りしめ、忌々しげに吐き捨てる。
「皆さん、気を引き締めてください。この瘴気には精神を蝕む呪いが込められています」
シルフィが聖銀樹の葉から作ったお守りを皆に配った。それを身につけると、まとわりつくような不快感が少し和らぐ。

俺たちの侵入はすでに敵に察知されていた。
島の中心部にそびえ立つ、蛇が絡みついたような形状の巨大な塔。その頂上から耳障りな警鐘の音が鳴り響いている。
要塞のあちこちから異形の影がわらわらと姿を現し始めた。
邪神の力でその身を変異させた下級の狂信者たちだ。その数は数百は下らないだろう。

「――陛下」
クラウス将軍が俺の隣に並び立ち、その鋼鉄の剣を抜き放った。「ここは我ら騎士にお任せを。陛下は仲間たちと共に塔の頂上を目指してください。敵の首魁を討つのが我らの勝利条件のはず」
「そうだぜ、アルフォンス!」ボルガンも大盾を構えながら叫んだ。「こいつらは俺たちが引き受ける! お前たちはさっさと蛇の頭を叩きに行け!」

各国の勇士たちも皆、同じ決意の目をしていた。
彼らは俺たちに未来を託してくれているのだ。
「……分かった。皆、死ぬなよ! 必ず生きてアルカディアで祝杯を挙げるぞ!」
「「「御意に!」」」

俺は仲間たちに頷くと、クラウスたちに背を向け塔へと向かって駆け出した。
俺たちの背後で、連合軍の精鋭たちと邪教団の狂信者たちの激しい戦闘の雄叫びが上がる。
俺たちは振り返らなかった。
ただひたすらに前へ。

塔の入り口は巨大な石の扉で固く閉ざされていた。
だが、リズベットがそのオリハルコンのウォーハンマーを一度振り下ろしただけで、扉は轟音と共に粉々に砕け散った。

塔の内部は広大な円形の広間になっていた。
壁には不気味な壁画が描かれ、中央には血のように赤い液体で満たされた儀式用の泉がある。
そして、その泉の前に一人の男が腕を組んで俺たちを待ち構えていた。

男は痩せぎすで、病人のように青白い顔をしていた。だが、その瞳だけが狂信的な熱を帯びて爛々と輝いている。その身に纏うローブにはセレスティアと同じ『黄昏の蛇』の幹部であることを示す紋章が刻まれていた。
「……ようこそ、おいでくださいました。大地の王アルフォンス様、御一行」
男は芝居がかった仕草で優雅に一礼した。「わたくしはグリード。邪神様の復活を司る七人の司祭が一人。貴方様のような極上の魂をお迎えできること、光栄の至りに存じます」

そのねっとりとした口調と獲物を見るような視線が、俺たちの神経を逆撫でする。
「てめえが幹部の一人か。ご丁寧に出迎えご苦労なこったな」
リズベットが前に出る。

「おやおや、なんと血気盛んなドワーフのお嬢さんだこと」
グリードはリズベットの挑発を柳に風と受け流した。「ですが、あなたの相手はわたくしではございません。――お前の出番だぞ、我が最高傑作よ」
彼が指を鳴らす。
すると中央の血の泉がごぽりと泡立ち、その中から巨大な何かがゆっくりと姿を現した。

それはこれまでに俺たちが戦ってきたどんな魔物とも違う、冒涜的な存在だった。
いくつもの死体を無理やり繋ぎ合わせたかのような巨大な肉塊。その体には人間の腕や獣の足、ドラゴンの翼などが脈打つ血管で無秩序に縫い付けられている。そして、その中心部には苦悶の表情を浮かべた何十もの顔が浮かび上がっていた。
『キメラ・アボミネーション』。
生命への冒涜そのもの。

「さあ、お楽しみください。この子は貴方様がた連合軍がこれまで討伐してこられた魔物たちの死骸をすべて集めて作り上げたのです。貴方様がたの『勝利』が、この子をより強く、より醜く育て上げたのですよ」
グリードは狂ったように高笑いした。

「……貴様……!」
シルフィの顔から血の気が引く。
俺たちが世界を救うために行ってきた戦いさえもが、この男によって利用されていたのだ。
「グルオオオオオッ!」
キメラが無数の顔で同時に絶望の咆哮を上げた。そして、その巨体を揺らし俺たちへと襲いかかってきた。

「こいつはアタシに任せな!」
リズベットが叫んだ。「こんなツギハギのガラクタ、アタシのハンマーで元の部品に戻してやる!」
彼女は一人、キメラへと突進していく。
だが、キメラの力は想像を絶していた。
無数の腕から放たれる攻撃は変幻自在で予測ができない。ドラゴンの翼で飛翔し、獣の足で大地を駆ける。リズベットの豪快な攻撃も、その不定形な巨体の前ではなかなか決定打を与えられない。

「アルフォンス、シルフィ! てめえらは先に行け!」
リズベットが激しい攻防の合間に叫んだ。「こいつはアタシが必ず仕留める! あのヘビ野郎を逃がすんじゃねえぞ!」
彼女の瞳は本気だった。
鍛冶師としての、そして生命を尊ぶドワーフとしての誇りをかけて、この冒涜的な存在を自分の手で葬り去るという強い意志がそこにはあった。

俺は一瞬躊躇った。
だが、シルフィが俺の背中をそっと押した。
「……行きましょう、アルフォンス。リズベットを信じるのです」
「……ああ!」

俺とシルフィ、そしてフェンリルはリズベットに背を向け、広間の奥にある上層へと続く螺旋階段へと駆け出した。
「――どこへ行かれるのです?」
グリードが嘲笑うかのように俺たちの前に立ちはだかろうとする。
だが、その彼の目の前に巨大なウォーハンマーが轟音と共に叩きつけられた。
「てめえの相手はアタシだと言っただろうが!」
リズベットの怒りの咆哮が広間全体に響き渡る。

俺たちは振り返らなかった。
ただ友の勝利を信じて、ひたすらに塔の上を目指した。
俺たちの邪教団本拠地への最初の戦いは、仲間との絆を試される過酷な幕開けとなった。
リズベットの激しい槌音が、俺たちの背中を力強く押してくれていた。
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