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第82話:混沌の渦へ
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邪教団の本拠地が『混沌の渦』にあると特定した俺たちは、すぐさま連合軍の最高幹部たちによる緊急作戦会議を招集した。
俺が提示した、あまりにも伝説的で危険なその場所に、集まった各国の将軍たちは一様にどよめいた。
「混沌の渦だと!? 正気か、アルフォンス陛下!」
グライフ帝国のクラウス将軍が驚愕の声を上げた。「あそこは古代の神々が敗れた邪神を封じ込めたとされる禁断の海域! いかなる船も、いかなる飛竜も、その中心に近づくことさえできずに嵐と空間の歪みに飲み込まれると伝えられている!」
他の将軍たちも同意するように頷く。彼らにとって混沌の渦とは、軍事作戦の対象ではなく神話の世界の出来事だった。
「その神話が今、現実の脅威となっている」
俺は静かに、しかし有無を言わせぬ迫力で告げた。「邪教団はその禁足地の中心で、邪神復活の儀式を進めている。世界の龍脈を汚染するこの卑劣な戦術を止めるには、彼らの心臓部を直接叩く以外に道はない」
俺の揺るぎない覚悟を前に、将軍たちの間に重い沈黙が流れた。
やがてクラウスが意を決したように口を開いた。
「……だが、どうやってあそこへ? 我が帝国の誇る最新鋭の魔導飛行船団をもってしても、あの嵐を突破することは不可能だ」
「道は俺が開く」
俺はきっぱりと言い放った。
「俺の力は大地を操るだけではない。この星のあらゆる自然現象に干渉することができる。嵐を鎮め、道をこじ開ける。それは俺にしかできない役目だ」
「そして突入するのは少数精鋭の決死隊のみ。大軍での侵攻は敵に気づかれ、迎撃されるリスクが高すぎる」
作戦の骨子はすぐに決まった。
連合軍の主力艦隊が混沌の渦の周辺海域を包囲し、邪教団の増援や脱出を完全に封鎖する。
そして俺が率いる突入部隊が内部に侵入し、教団の首魁を討ち邪神復活の儀式を阻止する。
まさに世界の命運を賭けた一点突破作戦だった。
突入部隊のメンバーはすぐに選抜された。
俺とシルフィ、リズベット、フェンリル。
そして帝国最強の騎士であるクラウス将軍。
ドワーフの国を代表してボルガン。
さらに各国の軍から志願した、最も腕利きの勇士たちが数十名。
種族も国も超えた、史上最強のドリームチームだった。
決戦の前夜。
俺はアルカディアの聖銀樹の下にいた。
明日、俺はこの愛すべき故郷をしばし離れることになる。
生きて帰ってこられる保証はどこにもない。
俺は静かに聖銀樹の幹に手を触れ、この国に別れを告げた。
『――行ってくる。俺がいない間、この国を、皆を頼んだぞ』
聖銀樹が応えるかのように、その銀色の葉を優しく揺らめかせた。
「……アルフォンス」
背後から声がした。
シルフィとリズベットだった。
彼女たちは決戦用の新しい装備にその身を包んでいた。
シルフィのローブは聖銀樹の繊維で織られ、聖なる光を放っている。
リズベットの鎧はオリハルコンとディバインメタルを融合させた究極の逸品だった。
「お頭、水臭えじゃねえか」
リズベットが俺の隣に立ち、夜空を見上げた。「最後の夜かもしれねえってのに、一人で黄昏てんじゃねえよ」
「ええ。私たちはどんな時もあなたの傍にいます」
シルフィも静かに俺の反対側の隣に立った。
三人、肩を並べて自分たちの国を見下ろす。
眼下には家々の温かい明かりが、まるで地上の星空のように広がっていた。
「……必ず帰ってくる」
俺は呟いた。「そしてこの光景を、また三人で一緒に見よう」
「……当たり前だ」
「はい。約束ですよ」
彼女たちの温かい手が、俺の手を左右からそっと握りしめた。
言葉はもう必要なかった。
俺たちの心は固く、そして強く結ばれていた。
翌朝。
アルカディアの港には連合軍が誇る巨大な旗艦『ワールド・ホープ号』が、その威容を誇っていた。
俺たち突入部隊が乗り込む船だ。
港にはアルカディアの全ての民が集まっていた。
彼らは涙を浮かべながらも俺たちの名を呼び、旗を振り、その無事を祈ってくれていた。
俺は船の甲板から彼らに向かって、右手を力強く突き上げた。
「――行ってくる!」
うおおおおおおおっ!
大地を揺るがすほどの歓声。
その歓声を背に、ワールド・ホープ号はゆっくりと港を離れた。
目指すは世界の果て、禁断の魔境、混沌の渦。
人類の、そしてこの星の未来を賭けた最後の航海が今、始まった。
数日間の航海の末、俺たちの艦隊はついに目的の海域へと到達した。
空は分厚い鉛色の暗雲に閉ざされ、海は黒く荒れ狂っている。
そして、その中心。
天と海を繋ぐ巨大な紫色の雷の竜巻が、世界そのものに開いた傷のように不気味な咆哮を上げていた。
「……あれが混沌の渦」
甲板に立った誰もが、その人知を超えた光景に息を呑んだ。
船が激しく揺れる。
嵐が俺たちの船を飲み込もうと牙を剥く。
「……俺の出番だな」
俺は船の舳先に一人で立った。
そしてスキル【神の農園】の全ての力を解放する。
俺の体から金色のオーラが、天を突くほどの光の柱となって立ち上った。
「――道を開けよ! 我らが進むは、夜明けへの道なり!」
俺の叫びに星の意志が応えた。
金色の光が天を覆う暗雲を内側から焼き払っていく。
荒れ狂う黒い海がその波を鎮めていく。
そして、すべてを拒絶するように渦巻いていた巨大な雷の竜巻が、まるで王の到来を待っていたかのようにその中央から静かに左右に分かれていった。
雲が切れ、光が差し、嵐の海に一本の穏やかな『道』が生まれたのだ。
その道の先には禍々しい岩でできた邪教団の本拠地である巨大な要塞島が、そのおぞましい姿を現していた。
「……進め」
俺は静かに命じた。
ワールド・ホープ号は俺が切り開いた光の道を通って、敵の本拠地へと最後の突撃を開始した。
世界の運命を賭けた最終決戦の火蓋が、今切って落とされた。
俺が提示した、あまりにも伝説的で危険なその場所に、集まった各国の将軍たちは一様にどよめいた。
「混沌の渦だと!? 正気か、アルフォンス陛下!」
グライフ帝国のクラウス将軍が驚愕の声を上げた。「あそこは古代の神々が敗れた邪神を封じ込めたとされる禁断の海域! いかなる船も、いかなる飛竜も、その中心に近づくことさえできずに嵐と空間の歪みに飲み込まれると伝えられている!」
他の将軍たちも同意するように頷く。彼らにとって混沌の渦とは、軍事作戦の対象ではなく神話の世界の出来事だった。
「その神話が今、現実の脅威となっている」
俺は静かに、しかし有無を言わせぬ迫力で告げた。「邪教団はその禁足地の中心で、邪神復活の儀式を進めている。世界の龍脈を汚染するこの卑劣な戦術を止めるには、彼らの心臓部を直接叩く以外に道はない」
俺の揺るぎない覚悟を前に、将軍たちの間に重い沈黙が流れた。
やがてクラウスが意を決したように口を開いた。
「……だが、どうやってあそこへ? 我が帝国の誇る最新鋭の魔導飛行船団をもってしても、あの嵐を突破することは不可能だ」
「道は俺が開く」
俺はきっぱりと言い放った。
「俺の力は大地を操るだけではない。この星のあらゆる自然現象に干渉することができる。嵐を鎮め、道をこじ開ける。それは俺にしかできない役目だ」
「そして突入するのは少数精鋭の決死隊のみ。大軍での侵攻は敵に気づかれ、迎撃されるリスクが高すぎる」
作戦の骨子はすぐに決まった。
連合軍の主力艦隊が混沌の渦の周辺海域を包囲し、邪教団の増援や脱出を完全に封鎖する。
そして俺が率いる突入部隊が内部に侵入し、教団の首魁を討ち邪神復活の儀式を阻止する。
まさに世界の命運を賭けた一点突破作戦だった。
突入部隊のメンバーはすぐに選抜された。
俺とシルフィ、リズベット、フェンリル。
そして帝国最強の騎士であるクラウス将軍。
ドワーフの国を代表してボルガン。
さらに各国の軍から志願した、最も腕利きの勇士たちが数十名。
種族も国も超えた、史上最強のドリームチームだった。
決戦の前夜。
俺はアルカディアの聖銀樹の下にいた。
明日、俺はこの愛すべき故郷をしばし離れることになる。
生きて帰ってこられる保証はどこにもない。
俺は静かに聖銀樹の幹に手を触れ、この国に別れを告げた。
『――行ってくる。俺がいない間、この国を、皆を頼んだぞ』
聖銀樹が応えるかのように、その銀色の葉を優しく揺らめかせた。
「……アルフォンス」
背後から声がした。
シルフィとリズベットだった。
彼女たちは決戦用の新しい装備にその身を包んでいた。
シルフィのローブは聖銀樹の繊維で織られ、聖なる光を放っている。
リズベットの鎧はオリハルコンとディバインメタルを融合させた究極の逸品だった。
「お頭、水臭えじゃねえか」
リズベットが俺の隣に立ち、夜空を見上げた。「最後の夜かもしれねえってのに、一人で黄昏てんじゃねえよ」
「ええ。私たちはどんな時もあなたの傍にいます」
シルフィも静かに俺の反対側の隣に立った。
三人、肩を並べて自分たちの国を見下ろす。
眼下には家々の温かい明かりが、まるで地上の星空のように広がっていた。
「……必ず帰ってくる」
俺は呟いた。「そしてこの光景を、また三人で一緒に見よう」
「……当たり前だ」
「はい。約束ですよ」
彼女たちの温かい手が、俺の手を左右からそっと握りしめた。
言葉はもう必要なかった。
俺たちの心は固く、そして強く結ばれていた。
翌朝。
アルカディアの港には連合軍が誇る巨大な旗艦『ワールド・ホープ号』が、その威容を誇っていた。
俺たち突入部隊が乗り込む船だ。
港にはアルカディアの全ての民が集まっていた。
彼らは涙を浮かべながらも俺たちの名を呼び、旗を振り、その無事を祈ってくれていた。
俺は船の甲板から彼らに向かって、右手を力強く突き上げた。
「――行ってくる!」
うおおおおおおおっ!
大地を揺るがすほどの歓声。
その歓声を背に、ワールド・ホープ号はゆっくりと港を離れた。
目指すは世界の果て、禁断の魔境、混沌の渦。
人類の、そしてこの星の未来を賭けた最後の航海が今、始まった。
数日間の航海の末、俺たちの艦隊はついに目的の海域へと到達した。
空は分厚い鉛色の暗雲に閉ざされ、海は黒く荒れ狂っている。
そして、その中心。
天と海を繋ぐ巨大な紫色の雷の竜巻が、世界そのものに開いた傷のように不気味な咆哮を上げていた。
「……あれが混沌の渦」
甲板に立った誰もが、その人知を超えた光景に息を呑んだ。
船が激しく揺れる。
嵐が俺たちの船を飲み込もうと牙を剥く。
「……俺の出番だな」
俺は船の舳先に一人で立った。
そしてスキル【神の農園】の全ての力を解放する。
俺の体から金色のオーラが、天を突くほどの光の柱となって立ち上った。
「――道を開けよ! 我らが進むは、夜明けへの道なり!」
俺の叫びに星の意志が応えた。
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荒れ狂う黒い海がその波を鎮めていく。
そして、すべてを拒絶するように渦巻いていた巨大な雷の竜巻が、まるで王の到来を待っていたかのようにその中央から静かに左右に分かれていった。
雲が切れ、光が差し、嵐の海に一本の穏やかな『道』が生まれたのだ。
その道の先には禍々しい岩でできた邪教団の本拠地である巨大な要塞島が、そのおぞましい姿を現していた。
「……進め」
俺は静かに命じた。
ワールド・ホープ号は俺が切り開いた光の道を通って、敵の本拠地へと最後の突撃を開始した。
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