スキル【土いじり】でパーティを追放された俺、開墾した畑からダンジョンが生えてきた。

夏見ナイ

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第81話:各地の魔物討伐

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対邪教団連合軍の結成は世界に希望の光をもたらした。だが、それは同時に邪教団の活動をさらに過激化させる結果となった。
セレスティアの指揮の下、教団は世界各地で眠っていた古代の魔物を次々と復活させ、あるいは新たな魔獣を創造し、人々の暮らしを脅かし始めた。それは連合軍の結束を試し、その戦力を分散させるための巧妙な嫌がらせだった。

連合軍総司令官となった俺の最初の任務は、それらの魔物を討伐し世界の秩序を取り戻すことだった。
俺はアルカディアの中央司令部で作戦を立案し、各国から集まった精鋭部隊を最適な戦場へと派遣していった。

「クラウス将軍。あなた率いる帝国第一機甲師団は、西方の平原に出現した『キマイラ・ロード』の群れの討伐をお願いしたい」
「御意に」
クラウスは帝国軍人らしい簡潔な敬礼で応えた。

「ボルガン殿。あなた率いるドワーフの重装兵団は、東の山脈を荒らす『アース・タイタン』を。その巨体にはドワーフの力が不可欠だ」
「おう、任せておけ! アルフォンス!」
リズベットの父であるドワーフ王の代理として参陣したボルガンは、かつての仲間として力強く頷いた。

連合軍の強さはその多様性にあった。
帝国の規律、ドワーフの剛健、エルフの魔術、砂漠の民の機動力。それぞれの国の得意分野を組み合わせ、最適な部隊を編成する。俺の【神の農園】スキルは、大地を通じて世界中の戦場の地形や状況をリアルタイムで把握することができた。それは司令官としてこの上ない強力な武器だった。

そして、アルカディアが生み出す規格外の装備が、連合軍の戦力をさらに飛躍的に向上させた。
リズベットの工房は二十四時間体制で稼働し、ディバインメタル製の武具やゴンスケ部隊の簡易量産型である『アース・ソルジャー』を生産し、各部隊へと供給した。
シルフィの医療院はエリクサーリーフを元にした、どんな重傷でも数分で完治させる『ミラクルポーション』を量産し、連合軍の兵士たちの命を幾度となく救った。

連合軍は連戦連勝だった。
各地で暴れまわっていた魔物たちは、アルカディアの支援を受けた精鋭部隊の前に次々と討伐されていった。
世界は少しずつ、だが確実に安定を取り戻していく。
人々は連合軍の勝利に歓喜し、その中心にいる俺たちアルカディアを救世主として称賛した。

だが、俺の心は晴れなかった。
これらの戦いは、あまりにも順調すぎたのだ。
まるで敵がわざと負けているかのように。

「……おかしい」
その夜、俺は中央司令部の作戦室で、世界地図に記された無数の勝利の印を眺めながら呟いた。
「邪教団は確かに強力な魔物を放っている。だが、セレスティアをはじめとする教団の『幹部』クラスの人間が一切姿を見せない」
「ええ」隣で戦況を分析していたシルフィも同意した。「まるで自分たちの手駒を私たちにわざと討伐させて、何かを待っているかのようです」

「……あるいは、何かを育てているのかもな」
リズベットが工房から戻り、腕を組みながら言った。「戦場で回収された魔物の死骸を調べてみたんだ。どれも不自然なほど邪神の魔力で汚染されていた。だがその魔力は、死と共に消えるんじゃなく霧散して、大気に、そして大地に染み込んでいってるように感じた」

リズベットの言葉に、俺はハッとした。
「……まさか」

俺は目を閉じ、スキル【神の農園】の感覚を世界全体へと広げた。
以前よりも遥かに広大な範囲を、そして遥かに深いレベルで、この星の『呼吸』を感じることができる。
そして俺は気づいてしまった。
この世界の大地を流れる『龍脈』が、わずかに、しかし確実に黒く淀み始めていることを。

魔物の死骸から放たれた邪神の魔力。
それはまるで毒のように、この星の血管である龍脈を少しずつ、少しずつ汚染し蝕んでいたのだ。
俺たちが魔物を討伐すればするほど、その死骸から放たれる汚染は広がり、世界は内側から邪神が降臨しやすい環境へと作り変えられていく。
とんでもない悪循環。
そして恐ろしく長期的な罠。

「……セレスティアめ。これが、お前の本当の狙いか」
俺は歯噛みした。
俺たちは勝利していると思っていた。だがその実、敵の掌の上で踊らされていただけだったのだ。
このままでは、たとえ全ての魔物を討伐したとしても、その時には世界は邪神の毒に完全に取り込まれてしまうだろう。

「どうすれば……」
シルフィが青ざめた顔で呟く。
「汚染の源を断つしかねえ」
リズベットがきっぱりと言った。「魔物を生み出し、世界に毒をばら撒いている大元。邪教団の本拠地を叩くんだ!」

彼女の言う通りだった。
もはや受け身でいる時間は残されていない。
こちらから打って出るしかないのだ。

俺は決断した。
「連合軍のすべての諜"諜報"部隊に指令を出す。これより全戦力を挙げ、邪教団『黄昏の蛇』の本拠地の特定を最優先事項とする」
「だが、奴らはどこに……」

俺は静かに、ガイウスが遺したあの黒い魔石を取り出した。
そしてシルフィが聖銀樹から抽出した浄化の液体を、その上に一滴垂らす。
魔石は悲鳴のような甲高い音を立て、激しく反応した。
そして、その表面に一瞬だけ一つの禍々しい紋様が浮かび上がった。
それはセレスティアのローブにも描かれていた、蛇が自らの尾を喰らう『ウロボロス』の紋様。

そして、その紋様がこの世界のどの方向から最も強く共鳴しているかを、俺の【神の農園】スキルは明確に捉えていた。

俺は世界地図の一点を指差した。
そこはいかなる地図にもその名は記されていない禁断の土地。
一年中暗雲と雷に閉ざされ、生きて帰った者はいないと伝えられる魔の海域。

「――『混沌の渦』」

俺は静かにその名を告げた。
「邪教団の本拠地は、そこだ」

俺たちの反撃の目標が定まった。
それは神々さえも恐れるという伝説の魔境。
だが、俺たちの心にもはや迷いはなかった。
たとえその先が地獄の釜の底であろうとも。
俺たちは進む。
この世界を救うために。
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