スキル【土いじり】でパーティを追放された俺、開墾した畑からダンジョンが生えてきた。

夏見ナイ

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第86話:故郷へ

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「くそっ! くそったれがああああっ!」

崩壊する塔の中で、俺はただ天に向かって吠えることしかできなかった。
瓦礫が雨のように降り注ぐ。
俺は咄嗟にシルフィと、そしてもはや抜け殻のようになって立ち尽くすセレスティアを、スキルで作り出した土のドームで守った。
轟音と振動がすべてを飲み込んでいく。

やがて揺れが収まった時、俺たちがいた巨大な要塞島『ウロボロス・クレイドル』は跡形もなく消え去っていた。
それは邪神復活の儀式を終えた自爆装置のようなものだったのだろう。
後に残されたのは、荒れ狂う混沌の渦の中心で小さな土のドームだけが奇跡のように浮かんでいる、絶望的な光景だけだった。

「……アルカディアが……」
シルフィが震える声で呟いた。
俺の脳裏にも故郷の平和な光景が浮かび上がる。
仲間たちの笑顔。
子供たちの笑い声。
そのすべてが今、邪教団の卑劣な罠によって踏みにじられようとしている。

怒りが体の芯から沸騰する。
だが、今は感情に任せている場合ではなかった。
一刻も早く帰らなければならない。
愛する故郷へ。

「シルフィ、リズベットは!?」
俺が叫ぶと、土のドームの外から瓦礫をかき分ける音がして、泥だらけのリズベットが顔を出した。
彼女は気絶したグリードを小脇に抱えている。
「……へっ、しぶてえBBAで悪かったな。どうやらアタシのハンマーは、てめえの土壁より頑丈だったらしいぜ」
彼女は悪態をつきながらも、その目には俺と同じ燃えるような怒りの炎が宿っていた。

俺たちは合流し、眼下の荒れ狂う海を見下ろした。
ワールド・ホープ号をはじめとする連合軍の艦隊は、島の崩壊に巻き込まれないよう大きく距離を取っている。
ここからどうやって帰るか。
「……お頭、飛竜はもういねえぞ」

その時、俺たちの隣でセレスティアがふらりと立ち上がった。
その瞳にはもはや何の光も宿っていない。
「……わたくしのせいですわ」
彼女は虚ろな声で言った。「わたくしが信じたばかりに……。わたくしの愚かな信仰が、すべてを終わらせてしまう……」
彼女は自嘲するように笑った。
「もういいのです。どうせこの世界は終わるのですから……」

彼女がその身を荒れ狂う海へと投じようとした、その瞬間。
パンッ、という乾いた音が響いた。
シルフィがセレスティアの頬を、平手で力いっぱい引っぱたいていたのだ。

「……目を覚ましなさい!」
シルフィは涙を浮かべながら叫んだ。「あなたの悲劇は同情します! ですが、だからといって世界を諦める理由にはならない! あなたが絶望したその先の世界を信じようと、足掻いている人たちがいるのです!」
「アルフォンスがいるのです!」

シルフィの魂からの叫び。
それはセレスティアの凍りついた心に、わずかな波紋を起こしたようだった。
彼女は驚いたように目を見開き、シルフィの、そして俺の顔を見た。

俺はセレスティアの前に進み出た。
「……まだ何も終わってなんかいない」
俺は静かに、しかし力強く言った。「俺の国は、俺の仲間たちはそんなにヤワじゃない。あいつらは必ず持ちこたえる。俺が帰るまで」
俺は彼女に手を差し伸べた。

「お前が本当に自分の過ちを悔いているのなら。お前が本当にこの世界にわずかでも未練があるのなら。――俺たちに力を貸せ」
「……え?」
「お前が使ったあの空間転移の魔術。それを使えば、俺たちは一瞬でアルカディアに帰ることができるはずだ」

俺のあまりにも突拍子もない提案。
シルフィもリズベットも驚いて言葉を失っている。
敵だった相手に協力を求めるなど。
だが、俺には確信があった。
彼女の心の奥底に、まだかつての聖女としての光がわずかに残っていることを。

セレスティアは震える目で、俺の差し伸べられた手と俺の顔を交互に見た。
その瞳にほんの少しだけ生気が戻ったようだった。
「……なぜ」
彼女はかすれた声で尋ねた。「なぜ、わたくしを……? わたくしはあなた様からすべてを奪おうとした敵ですのに……」

「ああ、そうだ。お前は俺の敵だ」
俺はきっぱりと言った。「だが今はそんなことどうでもいい。俺たちの故郷が燃えようとしている。それを見過ごせるほど俺は器用じゃない」
「それに」と俺は続けた。「お前もただの被害者だ。邪教団に、そしてこのどうしようもない世界に絶望させられた、ただの一人の……」
俺は言葉を探した。
「……ただの一人の、女の子だ」

その言葉が彼女の最後の心の壁を打ち砕いた。
セレスティアの瞳から大粒の涙が溢れ出した。
それは邪教伝の司祭としての涙でも、聖女としての涙でもない。
ただの一人の少女、セレスティアとして生まれて初めて流す涙だったのかもしれない。

彼女は震える手で、俺の差し伸べた手をそっと握った。
「……分かりました」
彼女は涙を流しながら、しかしどこか吹っ切れたような笑顔で言った。
「わたくしの最後の力、あなた様にお貸ししましょう。この愚かな罪の償いのために」

彼女は立ち上がると、残された左手で複雑な印を結び始めた。
彼女の体から聖なる力と邪なる力が混じり合った、不安定な、しかし強大な魔力が溢れ出す。
「行きますわよ! しっかり捕まっていてください!」
彼女の叫びと共に、俺たちの体を空間を捻じ曲げる眩い光が包み込んだ。

アルカディアへの最後の希望。
それは皮肉にも、俺たちの最大の敵であった一人の聖女の、最後の贖罪によってもたらされたのだ。
光の中で、俺はただ故郷の無事を祈り続けた。
待っていてくれ、皆。
今、帰る――!
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