スキル【土いじり】でパーティを追放された俺、開墾した畑からダンジョンが生えてきた。

夏見ナイ

文字の大きさ
94 / 95

第99話:戴冠式と誓い

しおりを挟む
世界から邪神の脅威が去り、アルカディアには本当の意味での平和が訪れた。
連合軍の英雄たちがそれぞれの故郷へと帰還した後、俺たちの国は世界の復興と再生の中心地として、新たな役割を担うことになった。
各国からはアルカディアの進んだ農業技術や医療技術を学びたいという留学生が訪れ、リズベットの工房には大陸中から腕利きの職人たちが弟子入りを志願して集まってきた。
俺たちの小さな理想郷は、世界全体を照らす希望の灯台のような存在となっていた。

そんな新しい時代の幕開けを象徴する、一つの大きな式典が計画されていた。
それは俺の二度目の戴冠式。
前回は村人たちだけの内輪の式典だった。だが今度のそれは、連合軍に参加したすべての国々の王や代表者を招いて行われる、アルカディア王国の建国を全世界に正式に宣言するための盛大な国際式典だった。

「……やっぱり俺には、こういうのは性に合わないな」
戴冠式の当日。
王の正装としてシルフィと村の仕立て屋が聖銀樹の繊維と耐火綿花で仕立ててくれた純白の礼服に身を包みながら、俺は鏡に映る自分の姿を見てため息をついた。
その姿は農夫アルフォンスではなく、建国王アルフォンス・アルカディアというどこか遠い存在のように感じられた。

「何言ってやがんでい、お頭。最高に似合ってるぜ」
隣では同じくドワーフの国の正装である、精巧なミスリル製のドレスアーマーに身を包んだリズベットがニカッと笑った。「アタシたちの王様がみすぼらしい格好してたら、世界の笑いもんだからな。今日くらいはビシッと決めやがれ」

「ええ。リズベットの言う通りですわ、アルフォンス」
もう一方の隣では、エルフの森の最も格式の高い巫女の装束を纏ったシルフィが穏やかに微笑んでいた。月の光を編み込んだかのような幻想的なドレスは、彼女の美しさをさらに神々しいものへと引き立てている。
「今日はあなたという王の誕生を、世界中が祝福する日なのですから」

彼女たちはただの側近としてそこにいるのではなかった。
アルカディアを建国した三人の英雄。
その重要な一角として、俺と共にこの式典の主役を務めるのだ。
俺はそんな頼もしく、そしてあまりにも美しい二人の仲間たちを見て、少しだけ胸の鼓動が速くなるのを感じた。

戴冠式は、アルカディアの中央広場に新しく建設された白亜の王城の玉座の間で執り行われた。
玉座の間にはグライフ帝国の皇帝陛下をはじめ、大陸中の王侯貴族たちがずらりと顔を揃えている。彼らは皆、緊張と畏敬の念が入り混じった表情で、俺の登場を待っていた。

やがてファンファーレが鳴り響き、俺はシルフィとリズベットを両脇に従え、ゆっくりと玉座へと続く赤い絨毯の上を歩み始めた。
すべての視線が俺たち三人に注がれる。
俺は胸を張り、王としての威厳を保とうと努めた。
だが、その心の中はこれから始まる新しい人生への期待と、そしてほんの少しの不安でいっぱいだった。

玉座の前に立った俺に、連合軍の総意としてクラウス将軍が王冠を捧げ持ってきた。
それは前回リズベットが作ってくれたオリハルコンの王冠だった。
俺は静かに膝をついた。
クラウスがその王冠を、厳かに俺の頭上へと載せる。

その瞬間、玉座の間に集まったすべての王たちが一斉に立ち上がり、俺に向かって深く頭を下げた。
それは彼らが俺をただの一国の王としてではなく、この世界を救った英雄王として、そしてこれからの世界の新たな指導者として認めた証だった。

俺は立ち上がり、玉座に着いた。
そして眼下に広がる世界の指導者たちと、その向こう側にいるアルカディアの愛すべき民たちに向かって、国王としての最初で最後の誓いを立てた。
「俺は王として、君臨はしない。ただ、皆と共に歩むことを誓う」
「俺は力で支配はしない。ただ、皆と対話し、分かち合うことを誓う」
「そして俺は、この命ある限り、この世界の平和と繁栄のためにこの身を捧げることを、ここに誓う!」

俺の魂からの誓い。
それはこれまでのどんな王も口にしなかった、新しい王の在り方だった。
玉座の間は万雷の拍手に包まれた。
アルカディア王国の、そして新しい時代の輝かしい幕開けだった。

その夜、盛大な祝賀の宴が終わった後、俺は王城の最も高い場所にあるバルコニーで一人夜風に当たっていた。
眼下には宝石のようにきらめく、アルカディアの夜景が広がっている。

「……一人で黄昏てるのは、王様の趣味なのかしら」
不意に後ろから声がした。
シルフィとリズベットだった。
彼女たちは華やかな式典の装束を脱ぎ、いつもの動きやすい普段着に着替えていた。

「二人とも……」
「お疲れ様、お頭。いや、陛下とでも呼んだ方がいいかい?」
リズベットがからかうように笑う。
「やめてくれ」
俺は苦笑した。

俺たちは三人並んで、美しい夜景を見下ろした。
しばらく心地よい沈黙が流れた。
その沈黙を破ったのは俺だった。

「……なあ、二人とも」
俺は少し緊張しながら切り出した。「俺は王になった。この国を、そしてこれからはこの世界を背負っていかなければならない」
「ああ」
「分かってるわ」
二人は静かに頷く。

「……だが俺は、一人じゃ何もできない。これまでもそうだった。お前たちがいてくれたから、俺はここまで来れたんだ」
俺は彼女たちの手を取った。
その手は温かかった。
「だから、これからも俺の隣にいてほしい」
俺は彼女たちの目を真っ直ぐに見つめた。
「ただの仲間としてじゃない。俺の人生のパートナーとして。この国の王妃として。俺と共にこの国を、そして俺たちの未来を作っていってくれないか」

俺の精一杯の告白、そしてプロポーズ。
シルフィは顔を真っ赤にして俯いてしまった。
リズベットは驚いたように目を丸くした後、いつものように豪快に笑い飛ばした。

「……はっはっは! 当たり前じゃねえか、この朴念仁!」
彼女は俺の手を力強く握り返した。「アタシがいなきゃ、お頭は飯も食えねえただの土くれ人形だろうが。しょうがねえから、一生面倒見てやるよ!」

「……わ、わたくしも……」
シルフィも小さな声で、しかしはっきりと言った。「わたくしも、あなたの傍にいさせてください。アルフォンスの夢が、わたくしの夢ですから……」

二人の答え。
俺は胸が熱くなった。
俺は二人を優しく、そして力強く抱きしめた。
夜空には満月が輝いていた。
その優しい光が、固く結ばれた三人の新しい家族の誕生を静かに祝福してくれているかのようだった。

俺の誓いは終わった。
そしてここから、新しい誓いが始まる。
愛する妻たちと仲間たちと共に、この理想郷を永遠に育んでいくという、幸せな誓いが。
俺たちの物語は、まだ始まったばかりだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

《レベル∞》の万物創造スキルで追放された俺、辺境を開拓してたら気づけば神々の箱庭になっていた

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティーの雑用係だったカイは、魔王討伐後「無能」の烙印を押され追放される。全てを失い、死を覚悟して流れ着いた「忘れられた辺境」。そこで彼のハズレスキルは真の姿《万物創造》へと覚醒した。 無から有を生み、世界の理すら書き換える神の如き力。カイはまず、生きるために快適な家を、豊かな畑を、そして清らかな川を創造する。荒れ果てた土地は、みるみるうちに楽園へと姿を変えていった。 やがて、彼の元には行き場を失った獣人の少女やエルフの賢者、ドワーフの鍛冶師など、心優しき仲間たちが集い始める。これは、追放された一人の青年が、大切な仲間たちと共に理想郷を築き、やがてその地が「神々の箱庭」と呼ばれるまでの物語。

お荷物認定を受けてSSS級PTを追放されました。でも実は俺がいたからSSS級になれていたようです。

幌須 慶治
ファンタジー
S級冒険者PT『疾風の英雄』 電光石火の攻撃で凶悪なモンスターを次々討伐して瞬く間に最上級ランクまで上がった冒険者の夢を体現するPTである。 龍狩りの一閃ゲラートを筆頭に極炎のバーバラ、岩盤砕きガイル、地竜射抜くローラの4人の圧倒的な火力を以って凶悪モンスターを次々と打ち倒していく姿は冒険者どころか庶民の憧れを一身に集めていた。 そんな中で俺、ロイドはただの盾持ち兼荷物運びとして見られている。 盾持ちなのだからと他の4人が動く前に現地で相手の注意を引き、模擬戦の時は2対1での攻撃を受ける。 当然地味な役割なのだから居ても居なくても気にも留められずに居ないものとして扱われる。 今日もそうして地竜を討伐して、俺は1人後処理をしてからギルドに戻る。 ようやく帰り着いた頃には日も沈み酒場で祝杯を挙げる仲間たちに報酬を私に近づいた時にそれは起こる。 ニヤついた目をしたゲラートが言い放つ 「ロイド、お前役にたたなすぎるからクビな!」 全員の目と口が弧を描いたのが見えた。 一応毎日更新目指して、15話位で終わる予定です。 作品紹介に出てる人物、主人公以外重要じゃないのはご愛嬌() 15話で終わる気がしないので終わるまで延長します、脱線多くてごめんなさい 2020/7/26

『ゴミ掃除』が役立たずと追放されたが、実は『存在抹消』級のチートだった。勇者一行がゴミで溺れているが、俺は辺境で美少女と温泉宿を経営中なので

eringi
ファンタジー
「悪いが、お前のスキル『ゴミ掃除』は魔王討伐の役には立たない。クビだ」 勇者パーティの雑用係だったアレクは、戦闘の役に立たないという理由で、ダンジョンの最深部手前で追放されてしまう。 しかし、勇者たちは気づいていなかった。 彼らの装備が常に新品同様だったのも、野営地が快適だったのも、襲い来る高レベルモンスターの死体が跡形もなく消えていたのも、すべてアレクが『掃除』していたからだということに。 アレクのスキルは単なる掃除ではない。対象を空間ごと削り取る『存在抹消』レベルの規格外チートだったのだ。 一人になったアレクは、気ままに生こうと辺境の廃村にたどり着く。 そこでボロボロになっていた伝説のフェンリル(美少女化)を『洗浄』して懐かれたり、呪われたエルフの姫君を『シミ抜き』して救ったりしているうちに、いつの間にかそこは世界最高峰の温泉宿になっていて……? 一方、アレクを失った勇者パーティは、武器は錆びつき、悪臭にまみれ、雑魚モンスターの処理すら追いつかず破滅の一途をたどっていた。 「今さら戻ってきてくれと言われても、俺はお客さん(美少女)の背中を流すのに忙しいんで」 これは、掃除屋の少年が無自覚に最強の座に君臨し、幸せなスローライフを送る物語。

借金まみれの錬金術師、趣味で作ったポーションがダンジョンで飛ぶように売れる~探索者の間で【伝説のエリクサー】として話題に~

わんた
ファンタジー
「今日中に出ていけ! 半年も家賃を滞納してるんだぞ!」 現代日本にダンジョンとスキルが存在する世界。 渋谷で錬金術師として働いていた裕真は、研究に没頭しすぎて店舗の家賃を払えず、ついに追い出されるハメになった。 私物と素材だけが残された彼に残された選択肢は――“現地販売”の行商スタイル! 「マスター、売ればいいんですよ。死にかけの探索者に、定価よりちょっと高めで」 提案したのは、裕真が自作した人工精霊・ユミだ。 家事万能、事務仕事完璧、なのにちょっとだけ辛辣だが、裕真にとっては何物にも代えがたい家族でありパートナーでもある。 裕真はギルドの後ろ盾、そして常識すらないけれど、素材とスキルとユミがいればきっと大丈夫。 錬金術のスキルだけで社会の荒波を乗り切る。 主人公無双×のんびり錬金スローライフ!

72時間ワンオペ死した元球児、女神の『ボッタクリ』通販と『絶対破壊不能』のノートPCで異世界最強のコンビニ・スローライフを始める

月神世一
ファンタジー
「剣? 魔法? いいえ、俺の武器は『鈍器になるノートPC』と『時速160kmの剛速球』です」 ​あらすじ ブラックコンビニで72時間連続勤務の末、過労死した元甲子園優勝投手・赤木大地。 目覚めた彼を待っていたのは、コタツでソシャゲ三昧のダメ女神・ルチアナだった。 ​「手違いで死なせちゃった☆ 詫び石代わりにこれあげる」 ​渡されたのは、地球のAmazonもGoogleも使える『絶対破壊不能』のノートPC。 ただし、購入レートは定価の10倍という超ボッタクリ仕様!? ​「ふざけんな! 俺は静かに暮らしたいんだよ!」 ​ブラック労働はもうこりごり。大地は異世界の緩衝地帯「ポポロ村」で、地球の物資とコンビニ知識、そして「うなる右腕(ジャイロボール)」を武器に、悠々自適なスローライフを目指す! ​……はずが、可愛い月兎族の村長を助けたり、腹ペコのエルフ王女を餌付けしたり、気づけば村の英雄に!? ​元球児が投げる「紅蓮の魔球」が唸り、女神の「ボッタクリ通販」が世界を変える! 異世界コンビニ・コメディ、開店ガラガラ!

​『追放された底辺付与術師、実は【全自動化】のチートスキル持ちでした〜ブラックギルドを追い出されたので、辺境で商会を立ち上げたら勝手に世界規

NagiKurou
ファンタジー
​「お前のような、一日中デスクに座って何もしない無能はクビだ!」 国内最大のギルド『栄光の剣』で、底辺の付与術師として働いていたアルスは、ある日突然、強欲なギルドマスターから追放を言い渡される。 しかし、彼らは知らなかった。ギルドの武器の自動修復、物流の最適化、資金管理に至るまで、すべてアルスの固有スキル【全自動化(ワークフロー構築)】によって完璧にシステム化され、回っていたことを。 「俺がいなくなったら、あの自動化システム、全部止まるけど……まあいいか」 管理権限を解除し、辺境へと旅立ったアルス。彼は自身のスキルを使って、圧倒的な耐久力を誇る銀色の四輪型重装ゴーレムを作り出し、気ままな行商を始める。 一度構築すれば無限に富を生み出す「全自動」のチートスキルで、アルスの商会は瞬く間に世界規模へとスケールしていく! 一方、すべてを失ったギルドは、生産ラインが崩壊し、絶望のどん底へと突き落とされていくのだった……。

「雑草係」と追放された俺、スキル『草むしり』でドラゴンも魔王も引っこ抜く~極めた園芸スキルは、世界樹すら苗木扱いする神の力でした~

eringi
ファンタジー
「たかが雑草を抜くだけのスキルなんて、勇者パーティには不要だ!」 王立アカデミーを首席で卒業したものの、発現したスキルが『草むしり』だった少年・ノエル。 彼は幼馴染の勇者に見下され、パーティから追放されてしまう。 失意のノエルは、人里離れた「魔の森」で静かに暮らすことを決意する。 しかし彼は知らなかった。彼のスキル『草むしり』は、対象を「不要な雑草」と認識すれば、たとえドラゴンであろうと古代兵器であろうと、根こそぎ引っこ抜いて消滅させる即死チートだったのだ。 「あれ? この森の雑草、ずいぶん頑丈だな(ドラゴンを引っこ抜きながら)」 ノエルが庭の手入れをするだけで、Sランク魔物が次々と「除草」され、やがて森は伝説の聖域へと生まれ変わっていく。 その実力に惹かれ、森の精霊(美女)や、亡国の女騎士、魔王の娘までもが彼の「庭」に集まり、いつしかハーレム状態に。 一方、ノエルを追放した勇者たちは、ダンジョンの茨や毒草の処理ができずに進行不能となり、さらにはノエルが密かに「除草」していた強力な魔物たちに囲まれ、絶望の淵に立たされていた。 「ノエル! 戻ってきてくれ!」 「いや、いま家庭菜園が忙しいんで」 これは、ただ庭いじりをしているだけの少年が、無自覚に世界最強に至る物語。

処理中です...