死闘を求めた戦闘狂、異世界で最強スキル【闘神】を授かる 〜強敵と戦うほど無限に強くなるので、神だろうが殴りに行きます〜

夏見ナイ

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第五十四話 古代の遺跡

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どれほどの時間が経ったのか。
俺が目を覚ますと、隣で眠っていたガロウとリリアナもほぼ同時に意識を取り戻した。
言葉を交わすまでもない。俺たちの体力と魔力は完全に回復していた。
エンシェントドラゴンとの死闘は、俺たちの肉体を一度破壊し、そしてより強靭なものへと再構築したのだ。

俺たちは立ち上がり、目の前に開かれた第四階層へと続く螺旋階段を見下ろした。
その闇の奥から吹き上げてくる風は、もはや熱くも甘くもなかった。
それはひどく乾いていて、古い石と忘れ去られた時間の匂いがした。

「……行くか」
俺の言葉に、二人は力強く頷いた。
俺たちは躊躇なくその深淵へと足を踏み入れる。

階段はこれまでのどの階層よりも長かった。
まるで地球の核へと向かっているかのような果てしない下降。
やがて、その終わりが見えてきた。
階段の先には出口の光ではなく、広大な闇の空間が広がっている。

俺たちが最後の段を降り立った瞬間、パッ、パッ、パッと等間隔に並んだ巨大な水晶が自動的に青白い光を放ち始めた。
闇は払われ、俺たちの目の前に信じられない光景が広がる。

そこは都市だった。
地下に存在する巨大な古代都市。
天を突くほどの高さの塔、幾何学模様が刻まれた壮麗な神殿、そしてそれらを繋ぐようにして架けられた水晶の橋。
その全てが俺たちが知るどんな建築様式とも異なっていた。そこには人の手による温かみはなく、ただ絶対的な法則と秩序だけが存在していた。
そして、その都市は完全に静まり返っていた。
まるで住人たちが一瞬にして消え去ってしまったかのような、永遠の静寂。

「……なんだ、ここは……」
ガロウが呆然と呟いた。
「ダンジョンの中に、街があるなんて……」
「いいえ、これは街ではありません」
リリアナが震える声で訂正した。
「神殿……。あるいは墓標です。一つの文明が丸ごと眠っている……」

俺たちはそのゴーストタウンと化した遺跡の中を、慎重に歩き始めた。
道には塵一つ落ちていないが、そのあまりの静けさが逆に俺たちの警戒心を最大限に引き上げた。
ここには何かがいる。
この静寂を支配する主が。

俺たちは都市の中心にある、最も巨大な神殿へと向かった。
高さ百メートルはあろうかという巨大な扉は、俺たちが近づくと音もなくひとりでに開かれた。

神殿の内部はさらに壮観だった。
広大なホール。天井には本物の星空が描かれており、ゆっくりとまたたいている。
そして、そのホールの壁一面に巨大な壁画が刻まれてあった。

それは一つの壮大な叙事詩だった。
リリアナがその古代の文字を、食い入るように読み解いていく。

「……これは、創世の物語……」
彼女の声が静かなホールに響いた。
「世界が生まれた時、光の神々と共に闇から生まれし『旧神』と呼ばれる存在がいた、と……。彼らは混沌と破壊を司り、世界を無に帰そうとした……」

壁画には形容しがたい冒涜的な姿をした巨大な神々が描かれていた。
触手を持つ神、無数の目を持つ神、形なき闇そのもののような神。
それらが世界を破壊し蹂躙していく様が、克明に描かれている。

「ですが、その旧神に立ち向かう者たちがいました」
リリアナが壁画の別の部分を指差す。
そこには人間やエルフ、ドワーフ、獣人といった俺たちが知る種族の英雄たちが描かれていた。
彼らは光の神々から与えられたという伝説の武具を手に、絶望的な戦いを挑んでいた。

壁画の物語はクライマックスへと向かう。
英雄たちの多大な犠牲の果てに、旧神たちは完全に滅ぼすことはできず、世界の各地に封印された、と。
そして、その封印を守るため古代の英雄たちは自らの文明と共に歴史の闇へと姿を消した……。

「……黄昏の教団」
俺は静かに呟いた。
奴らの目的は、この封印された旧神を現代に復活させること。
嘆きの坑道での儀式は、そのための布石の一つだったのだ。

俺たちは世界の根幹を揺るがす、とてつもない秘密に触れてしまった。
このダンジョン『神々の墓場』そのものが、旧神の封印の一つ、あるいはその封印を守るための巨大な要塞なのかもしれない。

俺たちがその壮大な物語に圧倒されていた、その時だった。
カシャッ、という硬い音が神殿の静寂を破った。
音のした方を見ると、ホールに並んでいた数十体の石像が一斉に動き出していた。

それは古代の英雄たちを模した鎧姿の石像だった。
だが、その目があったであろう場所には、今はただ青白い魔力の光が灯っている。
遺跡の守護者、ガーディアンだ。

「……侵入者を、排除する」
ガーディアンたちが感情のない合成音声のような声で、一斉に呟いた。
そして、石の剣や斧を構え、じりじりと俺たちへの包囲網を狭めてくる。

「……へっ。ようやくお出ましか」
ガロウがウォーハンマーを構え、獰猛に笑った。
「相手が石ころだろうと関係ねえ。砕くだけだ!」

「皆さん、気をつけてください!」
リリアナが叫ぶ。
「彼らはただのゴーレムではありません! 英雄たちの戦闘技術がそのままプログラムされています!」

その言葉通り、ガーディアンたちの動きには一切の無駄がなかった。
統率された動き、完璧な陣形。
それはスケルトンナイトの軍勢を遥かに凌駕する、絶対的な戦闘集団だった。

静寂は破られた。
この古代遺跡で眠っていた、数千年の時を超えた戦いが今、始まろうとしていた。
俺は目の前の石の軍勢を見据え、静かに闘気を練り上げた。
相手が英雄の魂を宿すというのなら望むところだ。
俺の拳がその伝説を打ち破れるかどうか、試してみるまで。
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