死闘を求めた戦闘狂、異世界で最強スキル【闘神】を授かる 〜強敵と戦うほど無限に強くなるので、神だろうが殴りに行きます〜

夏見ナイ

文字の大きさ
56 / 71

第五十五話 黄昏の教団、再び

しおりを挟む
「侵入者を、排除する」
ガーディアンたちの合成音声が、荘厳な神殿に冷たく響き渡った。
次の瞬間、石の軍勢は完璧な統率の下に動き出した。

前衛の盾を持ったガーディアンが隙間のない壁となって前進する。その盾の隙間から槍を持ったガーディアンが鋭い突きを繰り出し、後方からは弓を構えたガーディアンたちが魔力を帯びた光の矢を雨のように降らせてきた。
それはもはや単なる魔物の群れではない。
数千年の時を超えて機能し続ける、古代の殺戮機械の軍団だった。

「ちっ、厄介極まりねえ!」
ガロウが不動の大盾を構え、最前線でその猛攻を受け止める。
光の矢が盾に突き刺さり火花を散らす。槍の穂先が盾を削り、甲高い金属音を立てる。
一体一体の攻撃はオークジェネラルに匹敵する。それが数十体、完璧な連携で襲いかかってくるのだ。
ガロウの巨体ですら、じりじりと後退を余儀なくされていた。

「大地の牢獄!」
リリアナが後方の弓兵部隊の足元を狙って魔法を放つ。
地面から岩の腕が伸び、数体のガーディアンの動きを封じた。だが、他のガーディアンが即座にその穴を埋め、陣形に乱れはない。
さらに、ガーディアンたちは高い魔力耐性を持っているらしく、リリアナの魔法では決定的なダメージを与えられずにいた。

このままではジリ貧だ。
俺は戦況を冷静に分析した。
この鉄壁の陣形を崩すには、頭を叩くしかない。
俺の視線は軍勢の中央、ひときわ大きく、そして豪華な装飾が施された一体のガーディアンに注がれた。
その手には巨大な両手剣。その佇まいは、まさしく王のそれだった。
あれが指揮官機だ。

「ガロウ! リリアナ! 俺が道をこじ開ける! 援護を頼む!」
「……へっ、言ってくれるぜ! 任せとけ!」
「はい!」

俺は地面を蹴った。
スキル【闘神】を最初から第三段階まで引き上げる。
赤黒い闘気が俺の全身から噴き上がった。

俺は盾の壁へと真正面から突っ込んだ。
「無駄だ!」
ガロウが叫ぶが、俺の狙いは壁を破壊することではない。

俺は盾を構えるガーディアンの、その盾そのものを足場にした。
盾を踏みつけ、その反動を利用して高く、高く跳躍する。
槍兵たちの頭上を飛び越え、軍勢のど真ん中に俺は着地した。

「な……!?」
ガーディアンたちの動きが一瞬だけ乱れた。
陣形の内部にこれほど容易く侵入されるとは、想定していなかったのだろう。

だが、彼らの立て直しは速かった。
周囲のガーディアンたちが即座に俺へと向き直り、その剣と槍の穂先を向ける。
完全な包囲網。逃げ場はない。

だが、俺は逃げるつもりなどなかった。
「――そこだ!」
俺は指揮官機であるガーディアン・ロードへと、一直線に駆け抜けた。
行く手を阻むガーディアンたちを、俺は殴り、蹴り、投げ飛ばす。
闘気を纏った俺の拳は、古代の魔法金属で作られた鎧すらも紙屑のように捻じ曲げた。

そして、ついに俺はガーディアン・ロードの前にたどり着いた。
「……挑戦者よ。その勇気、称えよう」
ロードが他のガーディアンとは違う、威厳のある声で言った。
そして、その巨大な両手剣を静かに構える。
その構え、その剣筋。それはただの機械的な動きではなかった。
壁画に描かれていた古代の英雄。その中でも最強と謳われた剣聖の動きを、完全に再現している。

「だが、ここまでだ」
ロードの剣が閃いた。
それはアレクシスの『瞬光』をも上回る究極の斬撃。

だが、俺はもうあの頃の俺ではない。
俺はその神速の斬撃を予測していた。
剣が振るわれるコンマ一秒前、俺は既にその軌道の外側へと踏み込んでいた。

「な……!?」
ロードの動きに初めて動揺が走る。
俺は、その隙を見逃さない。
懐に潜り込み、その石の胴体に渾身の正拳突きを叩き込んだ。

轟音。
ロードの胸部の鎧が蜘蛛の巣のように砕け散る。
だが、その奥にある核には届かない。
ロードはダメージを無視し、カウンターの剣を薙ぎ払ってきた。

俺はそれをバックステップでかわす。
技と技の、力と力の応酬。
俺はこの戦いを心の底から楽しんでいた。
これだ。これこそが、俺が求めていた死闘。

俺たちの戦いは、周囲のガーディアンたちですら割り込めないほどの超高速の領域に達していた。
火花が散り、衝撃波が神殿を揺るがす。

そして、数十合打ち合った後、俺は確信した。
こいつの剣技は完璧だ。
だが、完璧すぎる故の弱点がある。
それはプログラムされた動きであるが故の、応用力のなさ。

俺はあえて大神流の型を捨てた。
荒々しく獣のように、予測不能な動きでロードを翻弄する。
彼の完璧な剣技の、さらにその先を行く野生の勘。

ロードの動きがわずかに乱れた。
俺の動きを、彼のデータベースが処理しきれなくなったのだ。

「……終わりだ」

俺はロードが繰り出した突きを左手で受け流す。
そして、がら空きになったその胸の中心、魔力の核が埋め込まれた一点に、右の拳を静かに、しかし深く突き入れた。

パリン、という軽い音。
ガーディアン・ロードの胸で輝いていた青い光が、ふっと掻き消えた。

指揮官を失った他のガーディアンたちもまた、一斉にその動きを止め、ただの石像へと戻っていった。
静寂が再び神殿を支配した。

「……はぁ、はぁ……。やったのか……」
ガロウがその場にへたり込む。
リリアナも安堵の表情で駆け寄ってきた。

俺たちが勝利の余韻に浸っていた、その時だった。
パチ、パチ、パチ……。
神殿の奥の闇から、場違いな拍手の音が響いてきた。

俺たちは即座に身構えた。
闇の中からゆっくりと一つの人影が現れる。
黒いローブを纏い、その顔は深いフードで隠されている。
だが、そのローブに刻まれた紋章を俺たちは知っていた。
沈みゆく太陽と、それを喰らう蛇。
『黄昏の教団』。

「……素晴らしい。実に見事な戦いでした、闘神旅団の皆様」
ローブの男は芝居がかった口調で言った。
その背後から同じローブを纏った者たちが、十数人ぞろぞろと姿を現す。

「おかげさまで助かりましたよ。この古代のガーディアンたちは、我々にとっても少々厄介でしたのでね」
男はフードの奥で、歪んだ笑みを浮かべた。
「あなた方がこの神殿の守りを打ち破ってくれたおかげで、我々は目的のものをようやく手にすることができる」

奴らの目的は最初からこれだったのだ。
俺たちにガーディアンを倒させ、その奥にある何かを漁夫の利で奪い取ること。
俺たちはまんまと利用されたのだ。

「さて、英雄の皆様にはここで退場していただきましょうか」
ローブの男が手を振る。
教団員たちが一斉に禍々しい魔力を放ち始めた。

「……舐めるなよ、三下どもが」
俺は静かに闘気を練り上げた。
疲労はまだ残っている。
だが、目の前の新たな敵を前に俺の魂は再び燃え上がっていた。

「お前らが何者だろうと関係ない」
俺は教団のリーダーらしき男を睨みつけた。
「俺の戦いを邪魔する奴は、神だろうと悪魔だろうと、叩き潰すだけだ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

異世界転生特典『絶対安全領域(マイホーム)』~家の中にいれば神すら無効化、一歩も出ずに世界最強になりました~

夏見ナイ
ファンタジー
ブラック企業で過労死した俺が転生時に願ったのは、たった一つ。「誰にも邪魔されず、絶対に安全な家で引きこもりたい!」 その切実な願いを聞き入れた神は、ユニークスキル『絶対安全領域(マイホーム)』を授けてくれた。この家の中にいれば、神の干渉すら無効化する究極の無敵空間だ! 「これで理想の怠惰な生活が送れる!」と喜んだのも束の間、追われる王女様が俺の庭に逃げ込んできて……? 面倒だが仕方なく、庭いじりのついでに追手を撃退したら、なぜかここが「聖域」だと勘違いされ、獣人の娘やエルフの学者まで押しかけてきた! 俺は家から出ずに快適なスローライフを送りたいだけなのに! 知らぬ間に世界を救う、無自覚最強の引きこもりファンタジー、開幕!

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

外れスキル【アイテム錬成】でSランクパーティを追放された俺、実は神の素材で最強装備を創り放題だったので、辺境で気ままな工房を開きます

夏見ナイ
ファンタジー
Sランクパーティで「外れスキル」と蔑まれ、雑用係としてこき使われていた錬金術師のアルト。ある日、リーダーの身勝手な失敗の責任を全て押し付けられ、無一文でパーティから追放されてしまう。 絶望の中、流れ着いた辺境の町で、彼は偶然にも伝説の素材【神の涙】を発見。これまで役立たずと言われたスキル【アイテム錬成】が、実は神の素材を扱える唯一無二のチート能力だと知る。 辺境で小さな工房を開いたアルトの元には、彼の作る規格外のアイテムを求めて、なぜか聖女や竜王(美少女の姿)まで訪れるようになり、賑やかで幸せな日々が始まる。 一方、アルトを失った元パーティは没落の一途を辿り、今更になって彼に復帰を懇願してくるが――。「もう、遅いんです」 これは、不遇だった青年が本当の居場所を見つける、ほのぼの工房ライフ&ときどき追放ざまぁファンタジー!

【収納】スキルでダンジョン無双 ~地味スキルと馬鹿にされた窓際サラリーマン、実はアイテム無限収納&即時出し入れ可能で最強探索者になる~

夏見ナイ
ファンタジー
佐藤健太、32歳。会社ではリストラ寸前の窓際サラリーマン。彼は人生逆転を賭け『探索者』になるも、与えられたのは戦闘に役立たない地味スキル【無限収納】だった。 「倉庫番がお似合いだ」と馬鹿にされ、初ダンジョンでは荷物持ちとして追放される始末。 だが彼は気づいてしまう。このスキルが、思考一つでアイテムや武器を無限に取り出し、敵の魔法すら『収納』できる規格外のチート能力であることに! サラリーマン時代の知恵と誰も思いつかない応用力で、地味スキルは最強スキルへと変貌する。訳ありの美少女剣士や仲間と共に、不遇だった男の痛快な成り上がり無双が今、始まる!

チートスキルより女神様に告白したら、僕のステータスは最弱Fランクだけど、女神様の無限の祝福で最強になりました

Gaku
ファンタジー
平凡なフリーター、佐藤悠樹。その人生は、ソシャゲのガチャに夢中になった末の、あまりにも情けない感電死で幕を閉じた。……はずだった! 死後の世界で彼を待っていたのは、絶世の美女、女神ソフィア。「どんなチート能力でも与えましょう」という甘い誘惑に、彼が願ったのは、たった一つ。「貴方と一緒に、旅がしたい!」。これは、最強の能力の代わりに、女神様本人をパートナーに選んだ男の、前代未聞の異世界冒険譚である! 主人公ユウキに、剣や魔法の才能はない。ステータスは、どこをどう見ても一般人以下。だが、彼には、誰にも負けない最強の力があった。それは、女神ソフィアが側にいるだけで、あらゆる奇跡が彼の味方をする『女神の祝福』という名の究極チート! 彼の原動力はただ一つ、ソフィアへの一途すぎる愛。そんな彼の真っ直ぐな想いに、最初は呆れ、戸惑っていたソフィアも、次第に心を動かされていく。完璧で、常に品行方正だった女神が、初めて見せるヤキモチ、戸惑い、そして恋する乙女の顔。二人の甘く、もどかしい関係性の変化から、目が離せない! 旅の仲間になるのは、いずれも大陸屈指の実力者、そして、揃いも揃って絶世の美女たち。しかし、彼女たちは全員、致命的な欠点を抱えていた! 方向音痴すぎて地図が読めない女剣士、肝心なところで必ず魔法が暴発する天才魔導士、女神への信仰が熱心すぎて根本的にズレているクルセイダー、優しすぎてアンデッドをパワーアップさせてしまう神官僧侶……。凄腕なのに、全員がどこかポンコツ! 彼女たちが集まれば、簡単なスライム退治も、国を揺るがす大騒動へと発展する。息つく暇もないドタバタ劇が、あなたを爆笑の渦に巻き込む! 基本は腹を抱えて笑えるコメディだが、物語は時に、世界の運命を賭けた、手に汗握るシリアスな戦いへと突入する。絶体絶命の状況の中、試されるのは仲間たちとの絆。そして、主人公が示すのは、愛する人を、仲間を守りたいという想いこそが、どんなチート能力にも勝る「最強の力」であるという、熱い魂の輝きだ。笑いと涙、その緩急が、物語をさらに深く、感動的に彩っていく。 王道の異世界転生、ハーレム、そして最高のドタバタコメディが、ここにある。最強の力は、一途な愛! 個性豊かすぎる仲間たちと共に、あなたも、最高に賑やかで、心温まる異世界を旅してみませんか? 笑って、泣けて、最後には必ず幸せな気持ちになれることを、お約束します。

異世界帰りの元勇者、日本に突然ダンジョンが出現したので「俺、バイト辞めますっ!」

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
俺、結城ミサオは異世界帰りの元勇者。 異世界では強大な力を持った魔王を倒しもてはやされていたのに、こっちの世界に戻ったら平凡なコンビニバイト。 せっかく強くなったっていうのにこれじゃ宝の持ち腐れだ。 そう思っていたら突然目の前にダンジョンが現れた。 これは天啓か。 俺は一も二もなくダンジョンへと向かっていくのだった。

処理中です...