死闘を求めた戦闘狂、異世界で最強スキル【闘神】を授かる 〜強敵と戦うほど無限に強くなるので、神だろうが殴りに行きます〜

夏見ナイ

文字の大きさ
57 / 71

第五十六話 教団幹部との戦闘

しおりを挟む
「俺の戦いを邪魔する奴は、神だろうと悪魔だろうと、叩き潰すだけだ」

俺の言葉が荘厳な神殿に冷たく響いた。
それに答えたのは、リーダー格のローブの男の歪んだ笑い声だった。
「ククク……素晴らしい。その傲慢さ、その闘気。気に入りましたよ、ジン。あなたのような魂こそ、我らが主『旧神』に捧げるにふさわしい」

男はゆっくりとフードを取った。
現れたのは血のように赤い髪と、顔の半分を覆うおぞましい火傷の痕跡を持つ壮年の男だった。その瞳は狂信と純粋な戦闘への渇望で、爛々と輝いている。
その姿は嘆きの坑道のリッチ、ネビュロスとは全く違う。ネビュロスが静かなる死の王だとしたら、こいつは燃え盛る破壊の化身だ。

「我が名はザラガス。偉大なる『黄昏の教団』が七司祭が一人、『狂戦士』のザラガスだ。以後、お見知りおきを。まあ、すぐに死ぬあなた方に名乗る意味などありませんがね」

ザラガスはそう言うと、その両腕に禍々しい紋様の籠手を出現させた。
その全身から、これまでのどんな敵とも比較にならない純粋で暴力的な闘気が噴き上がる。
こいつ、強い。
リッチ・ロードに匹敵するか、あるいは純粋な戦闘能力だけならそれ以上かもしれない。

「さて、戯れはここまでです」
ザラガスが冷たく言い放つ。
「やれ。あの二人を殺し、ジンは生け捕りにしろ。貴重な供物です。傷つけてはいけませんよ」
その言葉を合図に、十数人の教団員たちが一斉にガロウとリリアナへと襲いかかった。

「させっかよ!」
ガロウが消耗した体に鞭打ち、咆哮を上げて立ちはだかる。
リリアナも最後の魔力を振り絞り、防御魔法の詠唱を開始した。

そして俺は、ザラガスと向き合った。
互いに動かない。
ただ視線だけで互いの力量を、魂の在り方を探り合っている。
こいつは俺と同じだ。
戦いそのものを至上の悦びとする、戦闘狂。

先に動いたのはザラガスだった。
「まずはご挨拶と行きましょうか!」
彼の姿がブレた。
次の瞬間、俺の目の前に岩のような拳が迫っていた。
速い。だが、見えない速さではない。

俺はその拳を最小限の動きで受け流した。
そして、カウンターの貫き手をがら空きになったその胸へと叩き込む。
だが、ザラガスは笑っていた。
彼は俺の攻撃を避けるでも防ぐでもなく、あえてその身で受け止めたのだ。

ゴッ、という鈍い音。
俺の手刀は確かに彼の肉体を捉えた。だが、その奥にある強靭な筋肉と邪悪な闘気の鎧に阻まれ、致命傷には至らない。

「クハハハハ! いい一撃だ! だが、ぬるい!」
ザラガスはダメージをものともせず、俺の腕を掴みそのまま力任せに投げ飛ばそうとしてきた。
俺は掴まれた腕を軸に体を回転させ、その遠心力を利用した回し蹴りを彼の側頭部に叩き込む。
轟音。
ザラガスは数メートル吹き飛んだが、すぐに体勢を立て直し、血を吐きながらもさらに楽しそうに笑っていた。

「素晴らしい! あなた、最高です! これほどの戦いは何年ぶりか!」
彼はもはや俺を生け捕りにすることなど忘れている。
ただ目の前の好敵手との戦いを、心の底から楽しんでいた。

一方、ガロウとリリアナの戦況は絶望的だった。
教団員たちは一人一人の実力はBランク程度だが、その連携は完璧だった。
邪悪な呪詛でガロウの動きを鈍らせ、回復魔法を阻害し、リリアナの詠唱を的確に妨害する。
ガロウの巨体には次々と新たな傷が刻まれていく。リリアナの顔色も魔力の枯渇によって、死人のように青白くなっていた。

「ガロウ様!」
「……くそっ、しぶとい野郎どもだ!」

俺はザラガスと打ち合いながらも、常に仲間たちの状況を把握していた。
このままではまずい。
俺がザラガスを倒す前に、二人がやられてしまう。

俺は短期決戦を決意した。
スキル【闘神】を第四段階まで一気に引き上げる。
仲間との死闘で掴んだ神殺しの力。
俺の全身が赤黒い蒸気のような闘気に包まれた。

「ほう……。まだそんな力を隠していましたか」
ザラガスの瞳がさらに狂的な輝きを増す。
「いい、いい! それこそ我が好敵手!」
彼もまた自らの闘気を爆発させた。その力は、旧神から与えられたという冒涜的なまでの破壊の力。

二つの闘気が神殿の中で激突する。
壁画に描かれた英雄たちが、その衝撃で砕け散っていく。
俺たちの戦いはもはや技の応酬ではなかった。
魂そのものを削り合う、根源的な破壊の応酬。

俺の拳がザラガスの顔面を砕く。
ザラガスの蹴りが俺の肋骨を折る。
互いに防御を捨てた。
ただ、相手が倒れるまで殴り続ける。蹴り続ける。

「ハハハハハ! 死ね! そして俺の一部になれ!」
「黙れ!」

そして、数百合打ち合った後、ついに決着の時が訪れた。
互いに最後の一撃を放つべく拳を振りかぶる。
だが、俺の一撃の方がコンマ一秒速かった。

俺の拳はザラガスの心臓を、背中まで貫いていた。
「が……はっ……?」
ザラガスは信じられないといった顔で、自らの胸に空いた大穴を見下ろした。
そして、その狂的な瞳からゆっくりと光が消えていく。
「……あ……あ……。すばらしい……。これこそが……」
それが彼の最後の言葉だった。
狂戦士は、その生涯で最高の死闘の果てに満足げな笑みを浮かべたまま、塵となって消滅した。

俺はその場に膝をついた。
消耗が激しすぎる。
だが、休んでいる暇はない。

俺はよろめきながら立ち上がり、ガロウたちの元へと向かった。
指揮官を失った教団員たちは明らかに動揺していた。
「ザラガス様が……!?」
「馬鹿な! ありえない!」

その隙を俺が見逃すはずがなかった。
俺は残った最後の力を振り絞り、その混乱の中心へと飛び込んだ。
それはもはや戦いではなかった。
一方的な虐殺だった。

数分後、神殿には静寂が戻った。
後に残されたのは、ボロボロになった俺たち三人だけだった。

「……勝ったのか……」
ガロウが血の海の中に倒れ込みながら、かろうじて呟いた。
リリアナは完全に意識を失っている。

俺もまた立っているのがやっとだった。
だが、俺たちは勝ったのだ。
教団の七司祭が一人を打ち破った。

だが、その勝利の代償は大きかった。
そして、俺たちの勝利は完全なものではなかった。
俺がザラガスと死闘を繰り広げているその隙に、数人の教団員が神殿の奥にある祭壇へと侵入し、何かを回収して既にこの場から離脱していたのだ。

俺は祭壇があったであろう闇の奥を見据えた。
そこから旧神の、禍々しい気配の残滓が漂ってきていた。

俺たちは戦いには勝った。
だが、戦争には負けたのかもしれない。
黄昏の教団は、その目的を達成してしまったのだ。

俺は意識を失ったリリアナを抱え上げ、傷ついたガロウに肩を貸した。
今はとにかく、この魔境から生きて帰ることだけを考えなければならない。

俺たちの黄昏の教団との本格的な戦いは、今この瞬間から始まったのだ。
そして、その戦いは俺たちが思っているよりも、ずっと過酷で長いものになるだろう。
俺は新たな、そしてより巨大な敵の影を感じながら、静かにこの呪われた神殿を後にした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

異世界転生特典『絶対安全領域(マイホーム)』~家の中にいれば神すら無効化、一歩も出ずに世界最強になりました~

夏見ナイ
ファンタジー
ブラック企業で過労死した俺が転生時に願ったのは、たった一つ。「誰にも邪魔されず、絶対に安全な家で引きこもりたい!」 その切実な願いを聞き入れた神は、ユニークスキル『絶対安全領域(マイホーム)』を授けてくれた。この家の中にいれば、神の干渉すら無効化する究極の無敵空間だ! 「これで理想の怠惰な生活が送れる!」と喜んだのも束の間、追われる王女様が俺の庭に逃げ込んできて……? 面倒だが仕方なく、庭いじりのついでに追手を撃退したら、なぜかここが「聖域」だと勘違いされ、獣人の娘やエルフの学者まで押しかけてきた! 俺は家から出ずに快適なスローライフを送りたいだけなのに! 知らぬ間に世界を救う、無自覚最強の引きこもりファンタジー、開幕!

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

外れスキル【アイテム錬成】でSランクパーティを追放された俺、実は神の素材で最強装備を創り放題だったので、辺境で気ままな工房を開きます

夏見ナイ
ファンタジー
Sランクパーティで「外れスキル」と蔑まれ、雑用係としてこき使われていた錬金術師のアルト。ある日、リーダーの身勝手な失敗の責任を全て押し付けられ、無一文でパーティから追放されてしまう。 絶望の中、流れ着いた辺境の町で、彼は偶然にも伝説の素材【神の涙】を発見。これまで役立たずと言われたスキル【アイテム錬成】が、実は神の素材を扱える唯一無二のチート能力だと知る。 辺境で小さな工房を開いたアルトの元には、彼の作る規格外のアイテムを求めて、なぜか聖女や竜王(美少女の姿)まで訪れるようになり、賑やかで幸せな日々が始まる。 一方、アルトを失った元パーティは没落の一途を辿り、今更になって彼に復帰を懇願してくるが――。「もう、遅いんです」 これは、不遇だった青年が本当の居場所を見つける、ほのぼの工房ライフ&ときどき追放ざまぁファンタジー!

【収納】スキルでダンジョン無双 ~地味スキルと馬鹿にされた窓際サラリーマン、実はアイテム無限収納&即時出し入れ可能で最強探索者になる~

夏見ナイ
ファンタジー
佐藤健太、32歳。会社ではリストラ寸前の窓際サラリーマン。彼は人生逆転を賭け『探索者』になるも、与えられたのは戦闘に役立たない地味スキル【無限収納】だった。 「倉庫番がお似合いだ」と馬鹿にされ、初ダンジョンでは荷物持ちとして追放される始末。 だが彼は気づいてしまう。このスキルが、思考一つでアイテムや武器を無限に取り出し、敵の魔法すら『収納』できる規格外のチート能力であることに! サラリーマン時代の知恵と誰も思いつかない応用力で、地味スキルは最強スキルへと変貌する。訳ありの美少女剣士や仲間と共に、不遇だった男の痛快な成り上がり無双が今、始まる!

チートスキルより女神様に告白したら、僕のステータスは最弱Fランクだけど、女神様の無限の祝福で最強になりました

Gaku
ファンタジー
平凡なフリーター、佐藤悠樹。その人生は、ソシャゲのガチャに夢中になった末の、あまりにも情けない感電死で幕を閉じた。……はずだった! 死後の世界で彼を待っていたのは、絶世の美女、女神ソフィア。「どんなチート能力でも与えましょう」という甘い誘惑に、彼が願ったのは、たった一つ。「貴方と一緒に、旅がしたい!」。これは、最強の能力の代わりに、女神様本人をパートナーに選んだ男の、前代未聞の異世界冒険譚である! 主人公ユウキに、剣や魔法の才能はない。ステータスは、どこをどう見ても一般人以下。だが、彼には、誰にも負けない最強の力があった。それは、女神ソフィアが側にいるだけで、あらゆる奇跡が彼の味方をする『女神の祝福』という名の究極チート! 彼の原動力はただ一つ、ソフィアへの一途すぎる愛。そんな彼の真っ直ぐな想いに、最初は呆れ、戸惑っていたソフィアも、次第に心を動かされていく。完璧で、常に品行方正だった女神が、初めて見せるヤキモチ、戸惑い、そして恋する乙女の顔。二人の甘く、もどかしい関係性の変化から、目が離せない! 旅の仲間になるのは、いずれも大陸屈指の実力者、そして、揃いも揃って絶世の美女たち。しかし、彼女たちは全員、致命的な欠点を抱えていた! 方向音痴すぎて地図が読めない女剣士、肝心なところで必ず魔法が暴発する天才魔導士、女神への信仰が熱心すぎて根本的にズレているクルセイダー、優しすぎてアンデッドをパワーアップさせてしまう神官僧侶……。凄腕なのに、全員がどこかポンコツ! 彼女たちが集まれば、簡単なスライム退治も、国を揺るがす大騒動へと発展する。息つく暇もないドタバタ劇が、あなたを爆笑の渦に巻き込む! 基本は腹を抱えて笑えるコメディだが、物語は時に、世界の運命を賭けた、手に汗握るシリアスな戦いへと突入する。絶体絶命の状況の中、試されるのは仲間たちとの絆。そして、主人公が示すのは、愛する人を、仲間を守りたいという想いこそが、どんなチート能力にも勝る「最強の力」であるという、熱い魂の輝きだ。笑いと涙、その緩急が、物語をさらに深く、感動的に彩っていく。 王道の異世界転生、ハーレム、そして最高のドタバタコメディが、ここにある。最強の力は、一途な愛! 個性豊かすぎる仲間たちと共に、あなたも、最高に賑やかで、心温まる異世界を旅してみませんか? 笑って、泣けて、最後には必ず幸せな気持ちになれることを、お約束します。

異世界帰りの元勇者、日本に突然ダンジョンが出現したので「俺、バイト辞めますっ!」

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
俺、結城ミサオは異世界帰りの元勇者。 異世界では強大な力を持った魔王を倒しもてはやされていたのに、こっちの世界に戻ったら平凡なコンビニバイト。 せっかく強くなったっていうのにこれじゃ宝の持ち腐れだ。 そう思っていたら突然目の前にダンジョンが現れた。 これは天啓か。 俺は一も二もなくダンジョンへと向かっていくのだった。

処理中です...