クラスごと異世界転移したら、俺だけジョブが『魔王』だったんだが? ~虐めてきた勇者(笑)ども、今からお前らを支配してやろうか~

夏見ナイ

文字の大きさ
49 / 100

第49話 力の誇示

しおりを挟む
「お前を、どうしてくれようか」

俺の冷たい問いかけに、アルフレッドは顔を上げた。その目には、もはや抵抗の色はなく、ただ運命を受け入れた者の静けさだけがあった。

「……好きにしろ、魔王。我らは敗れた。騎士として、敗軍の将がどのような末路を辿るか、覚悟はできている」
彼の言葉には、死をも恐れない、武人としての誇りが滲んでいた。

その潔い態度に、俺の隣に立つガロウが、感心したように「ふん」と鼻を鳴らした。人間の中にも、骨のある男がいるものだ、とでも言いたげな表情だ。

俺は、そんなアルフレッドの前に、ゆっくりと歩み寄った。そして、彼の目の前で立ち止まる。

「殺しはしない」

俺がそう告げると、アルフレッドだけでなく、彼の部下たちの顔にも驚きの色が浮かんだ。

「……なぜだ?」
アルフレッドが、訝しげに問い返す。
「我々を生かしておけば、必ずやお前の脅威となる。ここで我らを処刑することこそが、最も合理的な判断のはずだ」

「合理的、か」
俺は、小さく笑った。
「確かに、お前たちをここで殺すのは簡単だ。だが、それでは意味がない。俺の目的は、無意味な殺戮ではないからな」

俺は、アルフレッドの肩に手を置いた。そして、彼の目を見据えて、はっきりと告げる。
「お前たちには、生きて王都へ帰ってもらう。そして、お前たちが見たもの、聞いたもの、その全てを、ありのままにお前たちの王に伝えるのだ」

「……何?」
アルフレッドは、俺の意図が理解できず、困惑の表情を浮かべた。

「伝えろ。魔王レオンは、もはやお前たちが知る魔物の王ではない、と。我らは、規律ある軍隊と、豊かな国家、そしてお前たちを凌駕する知識を持っている。人間と魔族の力関係は、既に取り返しのつかないほどに逆転したのだ、と」

俺は、手を離し、一歩後ろに下がった。
「そして、こうも伝えろ。我らは、無意味な戦争を望んではいない、と」

その言葉に、アルフレ-ッドだけでなく、リリアナやガロウまでもが、驚いたように俺の顔を見た。

「レオン様……?」
リリアナが、戸惑いの声を上げる。

俺は、彼女たちを意に介さず、言葉を続けた。
「だが、もし人間たちが、旧態依然とした傲慢さから、我らを滅ぼすべき悪と断じ、戦いを挑んでくるのであれば……。その時は、我ら魔王軍は、一切の慈悲なく、人間国家の全てを灰燼に帰すだろう、と」

それは、最後通牒だった。
対話か、戦争か。
その選択を、人間たち自身に委ねるという、絶対的な強者だからこそできる、究極の恫喝。

アルフレッドは、しばらくの間、呆然と俺の顔を見つめていた。やがて、彼は俺の真意を理解したのだろう。その顔に、深い苦悩と、そしてほんの僅かな、安堵のような色が浮かんだ。

「……分かった。魔王レオン。あなたの言葉、確かに、我が王に伝えよう」
彼は、騎士として、その言葉に嘘偽りがないことを誓うように、胸に手を当てて言った。

「よろしい」
俺は満足し、ガロウに目配せをした。
「ガロウ。彼らの枷を解き、武器を返してやれ。そして、我が領地の境界まで、丁重に送り届けてやれ」

「……はっ。御意」
ガロウは、少し不満そうな顔をしながらも、俺の命令に素直に従った。オークの兵士たちが、アルフレッドたちの枷を解き、取り上げていた剣や鎧を返却していく。

解放されたアルフレッドは、部下たちをまとめると、改めて俺の前に進み出た。そして、騎士としての最敬礼を、俺に対して行った。

「……魔王レオン。いや、魔王陛下。この度の『もてなし』、感謝する」
その言葉は、皮肉ではなかった。彼の、心からの言葉だった。
「あなたの器の大きさ、確かに見届けた。この借りは、いずれ何かの形で返そう」

俺は、それに答えず、ただ静かに頷いた。
アルフレッドたちは、ガロウの案内の下、静かにその場を去っていった。
彼らの足音が完全に聞こえなくなった後、リリアナが心配そうに俺に近づいた。

「……よろしかったのですか、レオン様」
彼女の声には、不安が滲んでいた。
「彼らを生かして帰すなど……。虎を野に放つようなものでは?」

「虎ではない。ただの伝書鳩だ」
俺は、静かに答えた。
「リリアナ。戦争とは、ただ武力だけで行うものではない。情報戦、心理戦。その全てを制してこそ、真の勝利がある。俺は、彼らという駒を使って、人間国家の心に、楔を打ち込んだのだ」

「楔……?」

「そうだ。アルフレッドは、愚かな男ではない。彼は、俺が見せた力の差を、そして俺の言葉の真意を、正確に理解しただろう。彼が王に報告すれば、人間たちの内部は、必ずや割れる」

俺の脳裏には、未来の光景がはっきりと見えていた。
魔王との対話を模索する、アルフレッドのような現実主義の穏健派。
そして、魔王の力を認めず、ただ討伐のみを叫ぶ、赤城のような狂信的な強硬派。
人間国家は、一枚岩ではいられなくなる。彼らが内輪で揉めている間に、俺たちはさらに力を蓄えることができる。

「そして何より」
俺は、玉座へと戻りながら、続けた。
「俺は、王として、無用な血を流したくはない。魔族の民の血も、そして、愚かな人間の血もだ。もし、彼らが賢明な選択をするというのなら、それを受け入れる度量くらいは、持ち合わせている」

その言葉に、リリアナははっとしたように目を見開いた。そして、深く、深く、頭を下げた。
「……申し訳ございません。このリリアナ、あなた様の深遠なるお考えを、全く理解しておりませんでした。あなた様は、もはやただの復讐者ではない。大陸の未来を見据える、真の王でいらっしゃる」

彼女の瞳には、絶対的な信頼と、揺るぎない忠誠の光が、これまで以上に強く輝いていた。

俺は、何も言わず、玉座に深く腰を下ろした。
盤上の駒は、動かした。
あとは、相手がどう応じるか。
どちらに転んでも、俺の有利は揺るがない。
俺は、来るべき人間たちの反応を思い、静かに目を閉じた。戦いの主導権は、今や完全に、俺の手の中にあった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます

なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。 だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。 ……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。 これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。

クラス転移したからクラスの奴に復讐します

wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。 ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。 だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。 クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。 まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。 閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。 追伸、 雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。 気になった方は是非読んでみてください。

ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。 しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。 彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。 一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!

死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜

のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、 偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。 水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは―― 古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。 村を立て直し、仲間と絆を築きながら、 やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。 辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、 静かに進む策略と復讐の物語。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

処理中です...