13 / 42
第13話 最初の試練
「面白い。見せてもらうとしようか」
工房長のバルトークは、俺の挑戦的な態度に満足したのか、意地の悪い笑みを浮かべたまま俺に手招きをした。
「ついてこい。貴様のその大層な『目』とやらに、相応しい玩具を用意してやろう」
彼はそう言うと、俺を工房の奥へと案内し始めた。他の技師たちも、面白い見世物でも見つけたかのように、ぞろぞろと後をついてくる。リリアーナだけが、心配そうな表情で俺の隣を歩いていた。
「アレン、大丈夫ですか? バルトーク工房長は、ああ見えて国一番の腕を持つ技師です。ですが、プライドが高く、新参者には厳しい。あまり、挑発しない方が……」
「お気遣い、感謝します。ですが、ここで退くわけにはいきません」
俺はリリアーナにだけ聞こえるように、静かに答えた。彼女の心遣いは嬉しい。だが、これは俺自身の問題だ。俺が、俺の力で乗り越えなければならない壁だった。
やがてバルトークが足を止めたのは、工房の最も奥まった一角にある、巨大な鉄格子の扉の前だった。扉には『第五倉庫』という札がかけられている。彼が鍵束から一本の錆びついた鍵を取り出し、錠前を回すと、ギイィ、と耳障りな音を立てて扉が開かれた。
中から、カビと埃の混じった淀んだ空気が流れ出してくる。
倉庫の中は薄暗く、様々な魔道具の残骸が所狭しと積み上げられていた。そのどれもが、失敗作か、あるいは修理不能と判断された欠陥品のようだった。ここは、王立魔道具工房の『墓場』なのだ。
「さて、アレン君」
バルトークは倉庫の中央を指さした。そこには、台座の上に布がかけられた、一際大きな機械が鎮座している。
「君への課題は、あれだ」
一人の若い技師が、バルトークの指示で機械にかけられていた布を取り払う。
現れたのは、複雑なパイプと歯車、そして大小様々な魔晶石が不格好に組み合わさった、異様な見た目の装置だった。それはまるで、狂人が夢の中で設計した機械のようにも見えた。
「これは、『魔力圧縮式増幅器』の試作品だ」
バルトークが、説明を始めた。
「本来の目的は、微弱な魔力を内部で圧縮・増幅させ、大規模な魔道具を動かすための補助動力源となるはずだった。これが完成すれば、我が国の魔道具技術は飛躍的に進歩する。……はずだったのだがな」
彼の言葉には、棘があった。
「この装置は、過去に五度、試作品が作られた。だが、その全てが稼働実験の途中で魔力暴走を起こし、爆発した。幸い死者は出ていないが、三人の優秀な技師が再起不能の重傷を負った」
周囲の技師たちの顔から、嘲笑の色が消えていた。代わりに浮かんでいるのは、この機械に対する純粋な恐怖と、苦い記憶だった。
「以来、この装置の改良は工房の禁忌となり、誰も手をつけようとしなくなった。設計者本人でさえ、十年前に匙を投げて引退した代物だ。我々にとって、これは輝かしい工房の歴史に刻まれた、唯一の汚点なのだよ」
バルトークは、俺の目を真っ直ぐに見据えて言った。
「アレン君。君への試練は、この『魔力圧縮式増幅器』を改良し、安定して稼働させることだ。もしそれができたなら、君の才能を認め、工房の一員として迎え入れよう。だが……もしできなければ」
彼は言葉を切ったが、その先を言う必要はなかった。
できなければ、この工房から出ていけ。そういうことだ。
これは、ただの試験ではない。新参者に対する、悪意に満ちたいじめそのものだった。国中から集まったエリートたちが十年以上もかけて解決できなかった問題を、素性も知れない平民の少年にやれというのだ。できるはずがないと、誰もが確信していた。
技師たちの視線が、再び俺に集中する。
同情、憐憫、そして期待。俺がこの無謀な課題を前に、絶望し、泣き崩れるのを期待する、残酷な視線。
だが、俺は彼らが期待するような反応は見せなかった。
俺は黙って、目の前の欠陥装置へと近づいていく。そして、その冷たい金属の塊に、そっと手を触れた。
『魔力視』、発動。
刹那、俺の脳内に、凄まじい情報量の濁流が流れ込んできた。
視える。この機械の、魂の設計図が。
そして、それは俺が今まで見てきたどんな魔道具よりも、歪で、狂気に満ちていた。
回路が、無茶苦茶だ。
魔力を圧縮するための構造と、それを増幅するための構造が、互いに干渉し合っている。まるで、アクセルとブレーキを同時に踏み込んでいるようなものだ。これでは暴走して当然だった。
さらに、エネルギーの流れを制御するための調整弁が、構造的にありえない位置に取り付けられている。なぜこんな設計にしたのか、理解に苦しむ。設計者は、魔力の流れというものを根本的に勘違いしている。いや、あるいは、何か全く別の法則に基づいて、この機械を組み上げたのか?
常識外れの設計思想。破綻した構造。
それは、欠陥品と呼ぶのもおこがましいほどの、ただの鉄クズだった。
だが。
なぜだろう。
俺は絶望するどころか、その歪な回路を見つめているうちに、胸の奥から言いようのない興奮が湧き上がってくるのを感じていた。
これは、パズルだ。
これまで誰も解けなかった、最高に難解で、最高に面白い、究極のパズル。
俺は無意識に、口の端に笑みを浮かべていた。
「……なるほど。これはひどい」
俺の呟きは、静まり返った倉庫によく響いた。
技師たちは、俺が恐怖で正気を失ったとでも思ったのだろう。怪訝な顔で俺を見ている。
俺はゆっくりと彼らに向き直ると、工房長のバルトークに向かって、はっきりと告げた。
「面白い。この課題、受けさせてもらいます」
その言葉は、彼らの予想を完全に裏切るものだったらしい。
バルトークの顔から、余裕の笑みが消えた。他の技師たちも、信じられないといった表情で顔を見合わせている。
彼らの戸惑いをよそに、俺の頭脳は既にフル回転を始めていた。
この破綻した設計図を、どうすれば正しく組み直せるか。いや、組み直すだけでは足りない。設計者の意図を汲み取り、その上で、全く新しい概念の設計図をゼロから描き直す必要がある。
「ただし、条件があります」
俺は続けた。
「この装置の修理が終わるまで、俺に専用の作業場と、必要なだけの材料を与えてもらいたい。それと、俺の作業に、誰も一切の口出しをしないこと。以上です」
それは、新人とは思えないほど、尊大な要求だった。
だが、俺には確信があった。
俺なら、このパズルを解ける。
バルトークはしばらくの間、唖然として俺を見つめていたが、やがてその顔に怒りの色が浮かび、それが一周回って不気味な笑みへと変わった。
「……よかろう。面白い。そのふざけた要求、全て呑んでやる」
彼は、俺が自ら墓穴を掘ったと確信したのだろう。
「姫様も、よろしいですな?」
リリアーナは、俺とバルトークを交互に見比べ、やがて何かを決心したように、こくりと頷いた。
「……ええ。彼を信じます。工房の全てを、自由に使って構いません」
こうして、俺の王立魔道具工房での最初の仕事が始まった。
それは、誰もが不可能だと諦めた、呪われた装置の改良。
俺の存在価値を賭けた、孤独な戦いの幕開けだった。
工房長のバルトークは、俺の挑戦的な態度に満足したのか、意地の悪い笑みを浮かべたまま俺に手招きをした。
「ついてこい。貴様のその大層な『目』とやらに、相応しい玩具を用意してやろう」
彼はそう言うと、俺を工房の奥へと案内し始めた。他の技師たちも、面白い見世物でも見つけたかのように、ぞろぞろと後をついてくる。リリアーナだけが、心配そうな表情で俺の隣を歩いていた。
「アレン、大丈夫ですか? バルトーク工房長は、ああ見えて国一番の腕を持つ技師です。ですが、プライドが高く、新参者には厳しい。あまり、挑発しない方が……」
「お気遣い、感謝します。ですが、ここで退くわけにはいきません」
俺はリリアーナにだけ聞こえるように、静かに答えた。彼女の心遣いは嬉しい。だが、これは俺自身の問題だ。俺が、俺の力で乗り越えなければならない壁だった。
やがてバルトークが足を止めたのは、工房の最も奥まった一角にある、巨大な鉄格子の扉の前だった。扉には『第五倉庫』という札がかけられている。彼が鍵束から一本の錆びついた鍵を取り出し、錠前を回すと、ギイィ、と耳障りな音を立てて扉が開かれた。
中から、カビと埃の混じった淀んだ空気が流れ出してくる。
倉庫の中は薄暗く、様々な魔道具の残骸が所狭しと積み上げられていた。そのどれもが、失敗作か、あるいは修理不能と判断された欠陥品のようだった。ここは、王立魔道具工房の『墓場』なのだ。
「さて、アレン君」
バルトークは倉庫の中央を指さした。そこには、台座の上に布がかけられた、一際大きな機械が鎮座している。
「君への課題は、あれだ」
一人の若い技師が、バルトークの指示で機械にかけられていた布を取り払う。
現れたのは、複雑なパイプと歯車、そして大小様々な魔晶石が不格好に組み合わさった、異様な見た目の装置だった。それはまるで、狂人が夢の中で設計した機械のようにも見えた。
「これは、『魔力圧縮式増幅器』の試作品だ」
バルトークが、説明を始めた。
「本来の目的は、微弱な魔力を内部で圧縮・増幅させ、大規模な魔道具を動かすための補助動力源となるはずだった。これが完成すれば、我が国の魔道具技術は飛躍的に進歩する。……はずだったのだがな」
彼の言葉には、棘があった。
「この装置は、過去に五度、試作品が作られた。だが、その全てが稼働実験の途中で魔力暴走を起こし、爆発した。幸い死者は出ていないが、三人の優秀な技師が再起不能の重傷を負った」
周囲の技師たちの顔から、嘲笑の色が消えていた。代わりに浮かんでいるのは、この機械に対する純粋な恐怖と、苦い記憶だった。
「以来、この装置の改良は工房の禁忌となり、誰も手をつけようとしなくなった。設計者本人でさえ、十年前に匙を投げて引退した代物だ。我々にとって、これは輝かしい工房の歴史に刻まれた、唯一の汚点なのだよ」
バルトークは、俺の目を真っ直ぐに見据えて言った。
「アレン君。君への試練は、この『魔力圧縮式増幅器』を改良し、安定して稼働させることだ。もしそれができたなら、君の才能を認め、工房の一員として迎え入れよう。だが……もしできなければ」
彼は言葉を切ったが、その先を言う必要はなかった。
できなければ、この工房から出ていけ。そういうことだ。
これは、ただの試験ではない。新参者に対する、悪意に満ちたいじめそのものだった。国中から集まったエリートたちが十年以上もかけて解決できなかった問題を、素性も知れない平民の少年にやれというのだ。できるはずがないと、誰もが確信していた。
技師たちの視線が、再び俺に集中する。
同情、憐憫、そして期待。俺がこの無謀な課題を前に、絶望し、泣き崩れるのを期待する、残酷な視線。
だが、俺は彼らが期待するような反応は見せなかった。
俺は黙って、目の前の欠陥装置へと近づいていく。そして、その冷たい金属の塊に、そっと手を触れた。
『魔力視』、発動。
刹那、俺の脳内に、凄まじい情報量の濁流が流れ込んできた。
視える。この機械の、魂の設計図が。
そして、それは俺が今まで見てきたどんな魔道具よりも、歪で、狂気に満ちていた。
回路が、無茶苦茶だ。
魔力を圧縮するための構造と、それを増幅するための構造が、互いに干渉し合っている。まるで、アクセルとブレーキを同時に踏み込んでいるようなものだ。これでは暴走して当然だった。
さらに、エネルギーの流れを制御するための調整弁が、構造的にありえない位置に取り付けられている。なぜこんな設計にしたのか、理解に苦しむ。設計者は、魔力の流れというものを根本的に勘違いしている。いや、あるいは、何か全く別の法則に基づいて、この機械を組み上げたのか?
常識外れの設計思想。破綻した構造。
それは、欠陥品と呼ぶのもおこがましいほどの、ただの鉄クズだった。
だが。
なぜだろう。
俺は絶望するどころか、その歪な回路を見つめているうちに、胸の奥から言いようのない興奮が湧き上がってくるのを感じていた。
これは、パズルだ。
これまで誰も解けなかった、最高に難解で、最高に面白い、究極のパズル。
俺は無意識に、口の端に笑みを浮かべていた。
「……なるほど。これはひどい」
俺の呟きは、静まり返った倉庫によく響いた。
技師たちは、俺が恐怖で正気を失ったとでも思ったのだろう。怪訝な顔で俺を見ている。
俺はゆっくりと彼らに向き直ると、工房長のバルトークに向かって、はっきりと告げた。
「面白い。この課題、受けさせてもらいます」
その言葉は、彼らの予想を完全に裏切るものだったらしい。
バルトークの顔から、余裕の笑みが消えた。他の技師たちも、信じられないといった表情で顔を見合わせている。
彼らの戸惑いをよそに、俺の頭脳は既にフル回転を始めていた。
この破綻した設計図を、どうすれば正しく組み直せるか。いや、組み直すだけでは足りない。設計者の意図を汲み取り、その上で、全く新しい概念の設計図をゼロから描き直す必要がある。
「ただし、条件があります」
俺は続けた。
「この装置の修理が終わるまで、俺に専用の作業場と、必要なだけの材料を与えてもらいたい。それと、俺の作業に、誰も一切の口出しをしないこと。以上です」
それは、新人とは思えないほど、尊大な要求だった。
だが、俺には確信があった。
俺なら、このパズルを解ける。
バルトークはしばらくの間、唖然として俺を見つめていたが、やがてその顔に怒りの色が浮かび、それが一周回って不気味な笑みへと変わった。
「……よかろう。面白い。そのふざけた要求、全て呑んでやる」
彼は、俺が自ら墓穴を掘ったと確信したのだろう。
「姫様も、よろしいですな?」
リリアーナは、俺とバルトークを交互に見比べ、やがて何かを決心したように、こくりと頷いた。
「……ええ。彼を信じます。工房の全てを、自由に使って構いません」
こうして、俺の王立魔道具工房での最初の仕事が始まった。
それは、誰もが不可能だと諦めた、呪われた装置の改良。
俺の存在価値を賭けた、孤独な戦いの幕開けだった。
あなたにおすすめの小説
空港清掃員58歳、転生先の王宮でも床を磨いたら双子に懐かれ、国王に溺愛される
木風
恋愛
羽田空港で十五年、黙々と床を磨いてきた清掃員・田中幸子(58)は事故死し、没落寸前の子爵令嬢エルシアとして転生する。
婚約破棄の末に家を追われた彼女が選んだのは、王宮の清掃員――前世の技で空気まで変わるほど磨き上げていく仕事だった。
やがて母を亡くした双子王子王女に懐かれ、荒れた執務室の主である喪中の国王とも距離が縮まり……。
「泣くなら俺の胸で」――床も心も磨き直す、清掃令嬢の溺愛成り上がり。
傍観している方が面白いのになぁ。
志位斗 茂家波
ファンタジー
「エデワール・ミッシャ令嬢!貴方にはさまざな罪があり、この場での婚約破棄と国外追放を言い渡す!」
とある夜会の中で引き起こされた婚約破棄。
その彼らの様子はまるで……
「茶番というか、喜劇ですね兄さま」
「うん、周囲が皆呆れたような目で見ているからな」
思わず漏らしたその感想は、周囲も一致しているようであった。
これは、そんな馬鹿馬鹿しい婚約破棄現場での、傍観者的な立場で見ていた者たちの語りである。
「帰らずの森のある騒動記」という連載作品に乗っている兄妹でもあります。
「子守唄しか能がない女は要らぬ」と追い出された令嬢——3日後、王宮から眠りが消えた
歩人
ファンタジー
リディアは「眠りの歌い手」——声で人の精神を調律し、安らかな眠りに導く宮廷職。
王の安眠、騎士団の心的外傷ケア、外交使節の睡眠管理まで、宮廷の「夜」を支えてきた。
だが第二王子オスカーは嗤った。「子守唄しか能がない女は要らぬ」
リディアが王宮を去って3日後、王宮から眠りが消えた。
誰も眠れない。王も大臣も近衛騎士も。不眠は判断力を奪い、外交を狂わせ、王国を蝕む。
辺境で新たな居場所を見つけたリディアに、王宮から帰還要請が届く。
「おやすみなさい——はもう、言いません」
「身分が違う」って言ったのはそっちでしょ?今さら泣いても遅いです
ほーみ
恋愛
「お前のような平民と、未来を共にできるわけがない」
その言葉を最後に、彼は私を冷たく突き放した。
──王都の学園で、私は彼と出会った。
彼の名はレオン・ハイゼル。王国の名門貴族家の嫡男であり、次期宰相候補とまで呼ばれる才子。
貧しい出自ながら奨学生として入学した私・リリアは、最初こそ彼に軽んじられていた。けれど成績で彼を追い抜き、共に課題をこなすうちに、いつしか惹かれ合うようになったのだ。
地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした
阿里
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。
婚約破棄されたので四大精霊と国を出ます
今川幸乃
ファンタジー
公爵令嬢である私シルア・アリュシオンはアドラント王国第一王子クリストフと政略婚約していたが、私だけが精霊と会話をすることが出来るのを、あろうことか悪魔と話しているという言いがかりをつけられて婚約破棄される。
しかもクリストフはアイリスという女にデレデレしている。
王宮を追い出された私だったが、地水火風を司る四大精霊も私についてきてくれたので、精霊の力を借りた私は強力な魔法を使えるようになった。
そして隣国マナライト王国の王子アルツリヒトの招待を受けた。
一方、精霊の加護を失った王国には次々と災厄が訪れるのだった。
※「小説家になろう」「カクヨム」から転載
※3/8~ 改稿中
婚約破棄された人たらし悪役令嬢ですが、 最強で過保護な兄たちと義姉に溺愛されています
由香
ファンタジー
婚約破棄のその日、
悪役令嬢リリアーナは――弁明すら、しなかった。
王太子と“聖女”に断罪され、すべてを失った彼女。
だがその裏で、王国最強と名高い三人の兄と、冷静沈着な義姉が、静かに動き始めていた。
再検証によって暴かれる“聖女の嘘”。
広場で語られる真実。
そして、無自覚に人を惹きつけてしまうリリアーナの優しさが、次々と味方を増やしていく――。
これは、悪役令嬢として断罪された少女が、「誰かの物語の脇役」ではなく、自分自身の人生を取り戻す物語。
過保護すぎる兄たちと義姉に溺愛されながら、彼女は静かに、そして確実に幸せへ向かっていく。