モブモンスターですが何か? ~VRMMOで魔物ロールプレイを満喫していたら、いつの間にか災害級になっていた件~

夏見ナイ

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エピソード52:ウロボロス掃討戦、開幕

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『災害級指定モンスター』『コード:ウロボロス掃討作戦』――運営(システム)による公式発表は、EFO世界全体を揺るがす巨大な波紋となって広がった。

各地の街や村では、冒険者たちが酒場で情報を交換し、興奮と恐怖が入り混じった声でゼロの噂を語り合っていた。
「おい、聞いたか? ついに運営があの化け物に災害指定を出したぞ!」
「ウロボロス、だっけ? エリアボスを単独で喰っちまうような奴だろ? 勝てるのかよ、あんなのに」
「報酬がヤバいらしいぜ! 限定称号にユニーク装備だろ? 一攫千金のチャンスじゃねえか!」
「馬鹿言え、命あっての物種だ。俺は遠巻きに見物させてもらうぜ」
「でも、ギルド単位での参加が推奨されてるし、大手ギルドは軒並み参加表明してるらしいぞ。ジャッジメント筆頭に、<竜騎士団>も<月影旅団>も動くって話だ」
「マジかよ……! これは、本物の『戦争』になるかもしれねえな……!」

プレイヤーたちの反応は様々だった。危険すぎると尻込みする者、莫大な報酬に目を輝かせる者、ただ祭りに参加したい者。しかし、トッププレイヤーや大手ギルドの多くは、この未曾有のイベントに強い関心を示していた。それは、名誉や報酬だけでなく、未知の災害級モンスターという存在そのものへの挑戦であり、自身の力を証明する絶好の機会でもあったからだ。

特に、長らくゼロを追跡してきたPKKギルド『ジャッジメント』にとっては、これは悲願達成の好機だった。ギルドマスターであるセラフィナの名の下、彼らは即座に他の大手ギルドや有力プレイヤーたちに呼びかけ、対ウロボロス連合軍の結成を主導した。

「諸君、ついに我らが断罪の刃を振るう時が来た! あの忌まわしき異物、ウロボロスは、もはや単なるモンスターではない。世界の法則を歪め、秩序を破壊する『災害』そのものだ!」
連合軍の作戦会議。 holographic map を前に、セラフィナが凛とした声で檄を飛ばす。その瞳には、正義の執行者としての確固たる意志と、ゼロに対する個人的な憎悪にも似た感情が燃えている。
「我々ジャッジメントは、総力を挙げてこの討伐作戦を主導する。各ギルド、各プレイヤーは、我々の指揮に従い、連携して目標を包囲、殲滅せよ! 目標の能力は未知数だが、これまでの情報から、高度な擬態、飛行能力、多彩な属性攻撃、そして捕食による自己進化が確認されている。特に、聖属性攻撃が有効である可能性が高い。各員、対抗策を怠るな!」

会議に参加しているギルドリーダーやトップランカーたちも、緊張した面持ちで頷く。その中には、蒼き疾風アルトの姿もあった。彼はセラフィナの演説には興味なさそうに腕を組んでいたが、その瞳の奥には、ゼロ――ウロボロスとの再戦への期待が灯っていた。

「……奴の現在位置は?」誰かが尋ねる。
「最後の目撃情報は北部ツンドラ地帯。現在、広域探査網と斥候部隊によって追跡中だ。発見次第、全軍で包囲網を形成する!」

一方、その頃。ゼロはツンドラ地帯からさらに北、極北の氷海に浮かぶ巨大な氷山の中に身を潜めていた。【万象擬態】で氷山の一部と同化し、内部に広大な空間を作り出して潜伏している。

『全世界がお祭り騒ぎ、か。ご苦労なこった』

【精神感応】と【魔力感知】を組み合わせることで、遠く離れた場所のプレイヤーたちの会話や、システムの動きを断片的にだが感じ取ることができる。討伐イベントの開始、連合軍の結成、そして自分に向けられる膨大な数の敵意と殺意。それらを、ゼロは冷静に受け止めていた。

(だが、ただ隠れているだけでは意味がない。奴らが包囲網を完成させる前に、こちらも動く必要がある)

ゼロの目的は、単なる生存ではない。進化し、世界の真実を知り、頂点に立つことだ。そのためには、この討伐イベントすらも利用し、糧とする必要がある。

(プレイヤー連合軍……格好の餌だ。トップランカーや、特殊なスキルを持つ者も多いだろう。彼らを喰らえば、俺はさらに進化できる)

危険は承知の上だ。だが、リスクなくして大きなリターンは得られない。ゼロは、自ら戦場を選ぶことにした。

ゼロは【混沌核】Lv.1を使い、自身の膨大な魔力を操作し、意図的に『偽りの痕跡』を作り出した。それは、ゼロが南下し、再び大陸中央部の山岳地帯に向かったかのように見せかけるための、微弱だが追跡可能な魔力の残滓だった。

案の定、ジャッジメントの探査網はこの偽の痕跡を捉えた。
「目標発見! 南部山岳地帯へ移動中!」
「よし! 全軍、追撃開始! 包囲網を形成せよ!」

連合軍の主力部隊が、ゼロの偽情報に釣られて移動を開始する。その動きを【魔力感知】で確認しながら、ゼロはほくそ笑んだ(比喩)。

『さて、最初の狩りの時間だ』

ゼロは氷山から飛び立ち、【飛行(竜翼)】Lv.2で高速移動を開始した。目標は、連合軍の後方に位置し、比較的警戒が手薄になっているであろう、中堅ギルドの部隊。

ゼロは【万象擬態】で嵐雲に姿を変え、音もなく目標部隊の上空に到達した。眼下では、20名ほどのプレイヤーたちが、意気揚々とゼロ(偽の痕跡)を追って行軍している。

(まずは、挨拶代わりだ)

ゼロは【天候操作(低級)】Lv.1を発動! 嵐雲(ゼロ)から、局地的な豪雨と、無数の氷の礫(【氷操作(初級)】との複合)を降らせた!

「うわっ!? なんだこの天気!?」
「雹だ! いや、氷の礫か! 痛え!」
「どこから……!?」

プレイヤーたちが混乱する中、ゼロは擬態を解除し、巨大な竜化進化体の姿を現す! そして、上空から【マグマブレス】Lv.1を叩き込んだ!

「敵襲ーーっ!! ウロボロスだ!!」
「馬鹿な!? なぜここに!?」

悲鳴と怒号が上がる。だが、もはや遅い。マグマブレスが部隊の中心に着弾し、数名のプレイヤーが瞬時に蒸発する。ゼロはそのまま急降下し、【形態変化戦闘(竜技)】で形成した竜腕で薙ぎ払い、さらに【腐食毒液】を撒き散らす!

中堅ギルドとはいえ、連携の取れた動きを見せるが、究極進化したゼロの圧倒的な力の前に、彼らはなすすべもなかった。物理攻撃は【装甲化(竜鱗)】に弾かれ、魔法攻撃は【魔法耐性】と【魔力抵抗】で軽減される。ゼロの多彩な属性攻撃と状態異常、そして竜の威圧の前に、部隊はわずか数分で壊滅状態に陥った。

ゼロは、瀕死のプレイヤーたちを容赦なく【捕食】した。彼らのスキルや経験値は、ゼロにとって微々たるものでしかなかったが、それでも塵も積もれば山となる。そして何より、この一方的な蹂躙は、連合軍に対する強烈な『警告』となるはずだ。

『さあ、次はどこを襲うか……』

ゼロは捕食を終えると、再び嵐雲に擬態し、戦場から離脱した。連合軍の主力部隊がこちらに気づき、方向転換するにはまだ時間がかかるだろう。その間に、別の手薄な部隊を襲撃し、ゲリラ的に損害を与え続ける。それが、ゼロの立てた作戦だった。

ウロボロス掃討作戦は、開幕と同時に、予想外の反撃によって混乱の渦に巻き込まれようとしていた。災害級モンスターは、ただ逃げ隠れするだけの存在ではなかったのだ。それは、自ら牙を剥き、狩る側のプレイヤーをも『餌』とする、真の捕食者だった。世界全体を巻き込んだ壮大な鬼ごっこは、始まったばかりだ。そして、鬼は一体、どちらなのか――それはまだ、誰にも分からない。

---

名前: ゼロ
種族: 名無し(原初の不定形)
称号: 千貌を喰らう者、星屑を宿す者、竜を喰らう者、嵐を喰らう者、世界を揺るがす災害
所属: 未定義

【能力値】
(※前話から微増)
体力: 112 → 113
魔力容量: 90 → 91
物理攻撃力: 40
物理防御力: 66 → 67
魔法攻撃力: 45
魔法防御力: 62 → 63
素早さ: 19

【スキル】
(※前話からのスキルレベル等変化なし。ただし、プレイヤー部隊との戦闘経験により、対集団戦術、ゲリラ戦術の習熟度が向上)
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