Sランクパーティを追放されたヒーラーの俺、禁忌スキル【完全蘇生】に覚醒する。俺を捨てたパーティがボスに全滅させられ泣きついてきたが、もう遅い

夏見ナイ

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第4話 責任転嫁

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ミノタウロスが肉片となって四散した後、広間には重苦しい沈黙だけが残った。誰もが息を荒げ、疲労と緊張から解放されないでいる。リリアの聖魔法の光だけが、ガリウスのボロボロの体を淡く照らしていた。

アレンはティナに拒絶されたまま、その場で動けずにいた。彼女の腕の火傷は見るからに痛々しい。ヒーラーとして、すぐにでも癒すべき傷だ。しかし、ティナから放たれた明確な敵意が、アレンの足を縫い付けていた。

「はぁ……はぁ……あの野郎、俺にここまで使わせるとはな」

ガリウスはリリアの回復を受けながら、忌々しげに呟いた。彼の体からはまだ青白い闘気の残滓が揺らめいている。《リミットブレイク》の反動は凄まじく、最高級ポーションを飲んでもなお、全身の筋肉が悲鳴を上げているようだった。

やがて、ある程度動けるようになったガリウスは、よろめきながら立ち上がった。そして、その怒りに満ちた目をゆっくりとアレンに向けた。その瞳には、自分の失態を棚に上げた、理不尽な怒りの炎が燃え盛っていた。

「アレン」

地を這うような低い声。ガリウスは一歩、また一歩とアレンに近づいてくる。その威圧感に、アレンは息を呑んだ。

「てめえ……もう少しで俺たちが全滅するところだったぞ」

「そ、それは……」

「言い訳は聞かん!」

ガリウスの怒声が、アレンの言葉を遮った。彼はアレンの胸ぐらを乱暴に掴み上げ、その顔を至近距離で睨みつけた。

「なぜ、あの時ヒールが遅れた!お前の役目はなんだ!?俺を回復することだけだろうが!そのたった一つの仕事すら、なぜまともにできんのだ!」

「魔力が……ほとんど、残っていなくて……」

アレンはか細い声で答えるのが精一杯だった。事実を述べたに過ぎない。しかし、その言葉は火に油を注ぐだけだった。

「魔力管理もできないヒーラーなど、ただの木偶の坊だ!お前の無能さのせいで、俺は貴重な奥の手を使わされた!ティナまで怪我を負った!どう責任を取るつもりだ!」

ガリウスの唾がアレンの顔に飛ぶ。その剣幕に、ティナがここぞとばかりに便乗した。

「そうですわ、ガリウス様!全部こいつのせいです!こいつの回復がしっかりしていれば、ガリウス様が危険な技を使う必要もなかった!私がこんな火傷を負うこともなかったんですわ!」

ティナは爛れた腕をアレンに見せつけながら、悲劇のヒロインのように涙を浮かべる。その姿は、自分の非を認めず、全ての責任を弱い者になすりつける卑劣なものだった。

その理不尽な糾弾に、ついにリリアが耐えきれずに声を上げた。

「待ってください、ガリウスさん!ティナ!それは違います!」

彼女は震える声で、しかしはっきりと反論した。

「アレンは、ずっと限界だったんです!ガリウスさんの無茶な戦い方を支えるために、自分の魔力が尽きるまでヒールを使い続けてくれました!悪いのはアレンじゃありません!」

リリアの言葉は正論だった。この場にいる誰もが、心のどこかでは分かっているはずの事実。しかし、その正論は絶対的な権力者の前では無力だった。

「リリア!」

ガリウスはリリアをギロリと睨みつけた。その眼光の鋭さに、リリアはびくりと肩を竦ませる。

「お前はいつまで、そんなどうしようもない幼馴染の肩を持つんだ!こいつのせいで、俺たち全員が死にかけていたという事実から目を背けるな!それとも、お前もこいつと同類か!」

「そ、そんなことは……」

「なら黙っていろ!」

一喝され、リリアは唇を噛んで俯いた。悔しさに瞳が潤むが、もう何も言えない。彼女のささやかな抵抗は、いとも簡単に打ち砕かれた。アレンを庇う者は、もう誰もいなくなった。

ジェイクは壁に寄りかかったまま、この茶番を腕を組んで眺めているだけだ。彼はどちらの味方でもない。ただ、面倒事が早く終わるのを待っている。その冷めた態度は、アレンを見捨てているのと同義だった。

全ての責任を押し付けられ、アレンはただ胸ぐらを掴まれたまま耐えるしかなかった。悔しさよりも、深い悲しみが彼の心を支配していた。

なぜ、分かってくれないんだ。
俺だって、必死だった。パーティのために、仲間だと思っていたみんなのために、自分の全てを捧げてきたつもりだった。それなのに、返ってきたのはこれなのか。

ガリウスはアレンの抵抗しない姿に満足したのか、舌打ちを一つすると、ゴミでも捨てるかのように彼を突き飛ばした。

「ちっ、反論もできんか。自分の罪を認めたようだな」

アレンは尻餅をつき、呆然とガリウスを見上げた。その目には、もう何の光も宿っていなかった。

「おい、いつまで座ってる。さっさとティナの治療をしろ。それくらいはできるんだろうな、無能」

ガリウスはそう言い放ち、アレンに背を向けた。まるで、これ以上関わるのも汚らわしいとでも言うように。

アレンはゆっくりと立ち上がった。ふらつく足でティナのもとへ歩み寄り、震える手を彼女の火傷した腕にかざす。残った魔力を振り絞り、治癒の魔法を紡いだ。

「《ヒール》」

緑色の光がティナの腕を包む。焼け爛れた皮膚が、みるみるうちに再生していく。しかし、ティナの顔に感謝の色はなかった。彼女は治療を受けながらも、アレンを汚物でも見るかのような侮蔑の目で見下し続けていた。

その光景を、ガリウスは当然のように、ジェイクは無関心に、そしてリリアは涙を堪えながら見つめていた。

アレンはただ黙々と、自分の役目を果たした。
もう、このパーティは終わっている。
彼の心の中で、何かがぷつりと音を立てて切れた。それは、仲間への信頼という、か細く、しかし彼を支えていた最後の糸だった。
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