Sランクパーティを追放されたヒーラーの俺、禁忌スキル【完全蘇生】に覚醒する。俺を捨てたパーティがボスに全滅させられ泣きついてきたが、もう遅い

夏見ナイ

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第5話 追放宣告

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アレンが最後の魔力を振り絞って放った《ヒール》の光が消える頃には、ティナの腕は元の美しい肌を取り戻していた。火傷の痕跡はどこにもない。彼女はまるで汚れたものでも払うかのように、アレンの手が触れていた箇所をローブで拭った。

「……これで、よろしいでしょうか」

アレンは掠れた声で尋ねた。ティナは返事もせず、ふいと顔を背ける。その態度が、何よりの答えだった。

広間には再び気まずい沈黙が流れた。ガリウスは腕を組み、壁に寄りかかって荒い息を整えている。その目は、何かを値踏みするように、じっとアレンを見つめていた。その視線は冷たく、アレンの存在そのものを否定しているかのようだった。

やがて、ガリウスは重々しく口を開いた。

「よし、決めた」

その一言に、全員の意識が彼に集中する。

「このダンジョンの攻略は、ここで一旦中断する。一度街に戻り、体制を立て直す」

それは賢明な判断だった。リーダーとしても、パーティの現状を考えれば当然の選択だ。リリアはほっとしたように胸を撫で下ろし、ジェイクも肩をすくめて同意の意を示した。

だが、ガリウスの言葉はそれで終わりではなかった。

「そして、体制を立て直すにあたって……不要なものは切り捨てる」

その言葉が誰に向けられたものか、アレンにはすぐに分かった。心臓が氷の塊に握り潰されたかのように、冷たく脈打つ。

ガリウスはゆっくりとアレンの方へ歩み寄ると、その目の前で立ち止まった。見下ろすその瞳には、もはや何の感情も浮かんでいない。ただ、不要な道具を処分する前の、無機質な光があるだけだった。

「アレン。お前は今日限りで【熾天の剣】をクビだ」

宣告は、あまりにもあっさりと、そして残酷に響き渡った。
アレンの思考が停止する。クビ?俺が?何を言っているんだ、この人は。理解が追いつかない。

「……え?」

「聞こえなかったのか?回復しかできない無能はもういらない、と言ったんだ」

ガリウスは心底うんざりしたように、言葉を繰り返した。

「お前はパーティの癌だ。お前がいるせいで、俺たちの戦術の幅は狭まる。お前の貧弱な回復を前提に動かねばならん。挙句の果てに、肝心な場面で魔力切れだと?冗談じゃない。そんなリスクを抱えて、Sランクパーティが務まるか」

一方的な理屈。自分の無謀な戦い方を棚に上げ、全ての責任をアレンに押し付ける、身勝手な論理。だが、その言葉には逆らうことのできない力があった。このパーティにおける、絶対的な王の言葉だったからだ。

「そ、そんな……俺は、ずっとみんなのために……」

「お前の『ため』など、誰も頼んでいない。お前はただ、俺たちの足手まといだった。それだけだ」

ガリウスは冷酷に言い放つ。その言葉を肯定するかのように、ティナが勝ち誇ったような笑みを浮かべた。

「当然ですわ、ガリウス様。こんな役立たず、もっと早くに追い出すべきでしたのよ」

そして、これまで傍観していたジェイクも、にやりと口の端を吊り上げてアレンに歩み寄った。

「ま、そういうこった。お疲れさん」

ジェイクはアレンの肩を軽く叩いた。それは慰めなどではなく、明確な侮蔑の仕草だった。

「正直、足手まといが消えてせいせいするぜ。お前の分の荷物持ちがいなくなるのはちと面倒だがな。まあ、その辺は新しいヒーラーでも雇ってやらせりゃいいか。ははっ」

嘲笑。追い打ちをかけるような、無慈悲な言葉の刃。
アレンは愕然として、仲間たちの顔を見回した。ガリウス、ティナ、ジェイク。誰もが自分を不要なものとして扱っている。その瞳に、かつての仲間への情など一片も残っていなかった。

最後の希望を託し、アレンはリリアに視線を向けた。
彼女だけは、と。幼馴染の彼女だけは、自分を見捨てないはずだと。

「リリア……」

助けを求めるように、その名を呼ぶ。リリアは青ざめた顔で、唇をわななかせていた。何かを言おうとしている。アレンを庇う言葉を、必死に探している。

だが、ガリウスがそのリリアを鋭く一瞥しただけで、彼女の言葉は喉の奥に消えた。
彼女は、何も言えなかった。
ただ、悲しげに瞳を潤ませ、アレンから視線を逸らすように俯くだけ。

その瞬間、アレンの中で何かが完全に砕け散った。
ああ、そうか。
もう、終わりなんだ。
このパーティに、俺の居場所はどこにもない。
誰も、俺を必要としていない。

アレンは、もう何も言わなかった。反論する気力も、懇願する気力も、残ってはいなかった。ただ、空っぽの目で、自分を囲む三人と、俯く一人の少女を眺めていた。

「分かったなら、さっさと失せろ。お前の装備は置いていけ。それはパーティの共有資産だ。お前個人のものじゃない」

ガリウスはそう言うと、アレンが身につけていた、わずかながらの防御力を持つ革鎧や、魔力を増幅する効果のある安物の杖を指さした。それはアレンがなけなしの金で揃えたものだったが、彼らにとってはパーティから支給した備品という認識らしかった。

アレンは無言のまま、言われた通りに装備を脱ぎ始めた。
革鎧を脱ぎ、ブーツを脱ぎ、杖を地面に置く。最後に、腰につけていたポーションや解毒薬が入ったポーチも外した。残ったのは、着古したシャツとズボンだけ。まるで、生まれたままの無力な姿に戻ったかのようだった。

「じゃあな、無能ヒーラー。二度と俺たちの前に顔を見せるなよ」

ガリ-ウスは最後の罵声を浴びせると、仲間たちに号令をかけた。

「行くぞ。こんな奴に構っている時間も惜しい」

彼らはアレンを一瞥もせず、ダンジョンの出口へと歩き始めた。
アレンは、その場に一人、立ち尽くしていた。
遠ざかっていく四人の背中。それは、彼がこれまで仲間だと信じて疑わなかった者たちの後ろ姿だった。

やがて彼らの姿は通路の闇に消え、足音も聞こえなくなった。
後に残されたのは、圧倒的な静寂と、床に転がるミノタウロスの亡骸、そして、全てを失ったアレンだけだった。
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