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第50話 Aランク昇格試験
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王宮からの使者がもたらした推薦状は、【黎明の翼】がAランク昇格試験を受けるための、ギルドからの公式な推薦を意味していた。それは、並の冒険者であれば、一生に一度手にできるかどうかの栄誉だ。ギルドにいた冒険者たちは、嫉妬と羨望の入り混じった視線で、その光景を見つめていた。
アレンは、国王の印章が押された羊皮紙を受け取り、その中身に目を通した。
「Aランク昇格試験……」
その文字を、彼は静かに読み上げる。
「試験内容は、大規模な討伐任務だ。複数のパーティと共同で、指定された目標を討伐する。詳細は、明日の朝、ギルドの作戦会議室で通達される、か」
ソフィアが、アレンの手から羊皮紙を覗き込み、にやりと笑った。
「複数のパーティとの共同任務ね。俺たちの実力を、他のAランク連中に見せつけてやる、いい機会じゃないか」
彼女の瞳には、強者との戦いを渇望する光が宿っている。
「……油断はできない」
カイは、冷静に釘を刺した。
「Aランクの冒-険者は、プライドが高い連中が多い。新参者の俺たちが、素直に連携に応じてくれるとは思えん」
彼の指摘は、的確だった。パーティ同士の連携は、個々の実力以上に、互いの信頼関係が重要になる。
アレンも、その点を懸念していた。
「カイの言う通りだ。明日の作戦会議が、最初の戦いになるだろうな。だが、やるしかない。これは、俺たちがさらに上へ行くために、避けては通れない道だ」
三人は、推薦状を手に、ギルドマスターのダリウスの元へと向かった。
ダリウスは、執務室で彼らを待っていた。
「来たか。話は聞いたな」
彼は、満足げな笑みを浮かべている。
「これは、ギルドがお前さんたちの実力を正式に認めたという証だ。だが、同時に、他のAランクパーティに対する顔見せでもある。失敗は許されんぞ」
「承知しています。それで、討伐目標は何なのですか?」
アレンが尋ねると、ダリウスの表情がわずかに曇った。
「……ドラゴンゾンビだ」
その名前に、ソフィアとカイの表情が引き締まる。
ドラゴンゾンビ。それは、死してなお強力な魔力によって動き続ける、アンデッドの竜。生前の力に加え、アンデッド特有の再生能力と、周囲に死の瘴気を振りまく厄介な能力を持つ。Sランク級の魔物にも匹敵するとされる、最悪の敵の一つだった。
「北方の『嘆きの山脈』で、一体のドラゴンゾンビが目撃された。もとは、その山脈の主だったエンシェントドラゴンが、何者かの邪悪な死霊術によって蘇らされたものらしい。すでに、周辺の村がいくつか壊滅的な被害を受けている」
「何者かの、死霊術……?」
アレンは、その言葉に引っかかった。『蛇の手』の幹部、ザルガスもまた、死霊術に似た呪術の使い手だった。この件も、奴らと無関係ではないのかもしれない。
「被害の拡大を食い止めるため、ギルドは近隣の支部から腕利きのAランクパーティを招集した。お前さんたち【黎明の翼】も、その討伐部隊の一員として参加してもらう。これが、お前さんたちの昇格試験だ。見事、ドラゴンゾンビを討伐し、生還することができれば、お前さんたちは正式にAランク冒険者となる」
それは、あまりにも過酷な試験だった。だが、三人の心は、すでに決まっていた。
彼らは、黙って頷き、ギルドマスターの部屋を後にした。
その夜、三人はいつもの宿屋ではなく、ギルドが用意した作戦会議室に併設された宿泊施設で、決戦前夜を過ごしていた。
部屋の窓からは、明日向かうことになる北の山脈が、月明かりの下で黒い影のように見えている。
ソフィアは、黙々と愛剣の手入れをしていた。その横顔は、これまでにないほど真剣だ。
カイは、目を閉じ、瞑想しているかのように静かに座っている。だが、その研ぎ澄まされた気配は、いつでも戦える状態にあることを示していた。
アレンは、そんな二人の仲間を見つめていた。
Dランクのゴブリン退治から始まった、このいびつなパーティ。幾多の死線を乗り越え、彼らは今、Aランクという頂きを目前にしている。
胸に、熱いものがこみ上げてきた。
「なあ」
アレンは、静かに二人に語りかけた。
「俺は、あんたたちに出会えて、本当によかったと思ってる」
その唐突な言葉に、ソフィアは剣を磨く手を止め、カイは薄く目を開けた。
「俺は、ずっと一人だった。仲間だと思っていた連中に裏切られ、全てを失った。もう二度と、誰も信じられないと思っていた」
アレンは、自嘲気味に笑った。
「だが、あんたたちがいた。ソフィア、あんたの不屈の魂が、俺に再び立ち上がる勇気をくれた。カイ、あんたの静かな優しさが、俺に仲間を信じることの大切さを教えてくれた」
彼は、二人に深く頭を下げた。
「ありがとう」
ソフィアは、照れくさそうに顔を背けた。
「……ば、馬鹿なことを言うな。礼を言うのは、こっちの方だ。あんたがいなきゃ、俺は今でも酒場の隅で腐ってたさ」
カイも、静かに頷いた。
「……俺もだ。アレン。あんたがいたから、俺は復讐の獣にならずに済んだ」
三人の間に、言葉にはならない、温かい絆が流れた。
アレンは、顔を上げた。その目には、リーダーとしての、揺るぎない決意が宿っている。
「明日は、これまでで最も厳しい戦いになるだろう。だが、俺たちは勝つ。そして、全員で、必ず生きてここへ帰ってくる」
彼は、二人の仲間に向かって、力強く宣言した。
「俺たちの翼は、こんなところで折れたりはしない」
その言葉に、ソフィアとカイは、力強く頷き返した。
決戦前夜。
【黎明の翼】の三人は、それぞれの思いを胸に、静かに夜が明けるのを待っていた。
彼らの伝説が、また一つ、大きな飛躍を遂げようとしている。その輝かしい未来を、まだ誰も知らなかった。
アレンは、国王の印章が押された羊皮紙を受け取り、その中身に目を通した。
「Aランク昇格試験……」
その文字を、彼は静かに読み上げる。
「試験内容は、大規模な討伐任務だ。複数のパーティと共同で、指定された目標を討伐する。詳細は、明日の朝、ギルドの作戦会議室で通達される、か」
ソフィアが、アレンの手から羊皮紙を覗き込み、にやりと笑った。
「複数のパーティとの共同任務ね。俺たちの実力を、他のAランク連中に見せつけてやる、いい機会じゃないか」
彼女の瞳には、強者との戦いを渇望する光が宿っている。
「……油断はできない」
カイは、冷静に釘を刺した。
「Aランクの冒-険者は、プライドが高い連中が多い。新参者の俺たちが、素直に連携に応じてくれるとは思えん」
彼の指摘は、的確だった。パーティ同士の連携は、個々の実力以上に、互いの信頼関係が重要になる。
アレンも、その点を懸念していた。
「カイの言う通りだ。明日の作戦会議が、最初の戦いになるだろうな。だが、やるしかない。これは、俺たちがさらに上へ行くために、避けては通れない道だ」
三人は、推薦状を手に、ギルドマスターのダリウスの元へと向かった。
ダリウスは、執務室で彼らを待っていた。
「来たか。話は聞いたな」
彼は、満足げな笑みを浮かべている。
「これは、ギルドがお前さんたちの実力を正式に認めたという証だ。だが、同時に、他のAランクパーティに対する顔見せでもある。失敗は許されんぞ」
「承知しています。それで、討伐目標は何なのですか?」
アレンが尋ねると、ダリウスの表情がわずかに曇った。
「……ドラゴンゾンビだ」
その名前に、ソフィアとカイの表情が引き締まる。
ドラゴンゾンビ。それは、死してなお強力な魔力によって動き続ける、アンデッドの竜。生前の力に加え、アンデッド特有の再生能力と、周囲に死の瘴気を振りまく厄介な能力を持つ。Sランク級の魔物にも匹敵するとされる、最悪の敵の一つだった。
「北方の『嘆きの山脈』で、一体のドラゴンゾンビが目撃された。もとは、その山脈の主だったエンシェントドラゴンが、何者かの邪悪な死霊術によって蘇らされたものらしい。すでに、周辺の村がいくつか壊滅的な被害を受けている」
「何者かの、死霊術……?」
アレンは、その言葉に引っかかった。『蛇の手』の幹部、ザルガスもまた、死霊術に似た呪術の使い手だった。この件も、奴らと無関係ではないのかもしれない。
「被害の拡大を食い止めるため、ギルドは近隣の支部から腕利きのAランクパーティを招集した。お前さんたち【黎明の翼】も、その討伐部隊の一員として参加してもらう。これが、お前さんたちの昇格試験だ。見事、ドラゴンゾンビを討伐し、生還することができれば、お前さんたちは正式にAランク冒険者となる」
それは、あまりにも過酷な試験だった。だが、三人の心は、すでに決まっていた。
彼らは、黙って頷き、ギルドマスターの部屋を後にした。
その夜、三人はいつもの宿屋ではなく、ギルドが用意した作戦会議室に併設された宿泊施設で、決戦前夜を過ごしていた。
部屋の窓からは、明日向かうことになる北の山脈が、月明かりの下で黒い影のように見えている。
ソフィアは、黙々と愛剣の手入れをしていた。その横顔は、これまでにないほど真剣だ。
カイは、目を閉じ、瞑想しているかのように静かに座っている。だが、その研ぎ澄まされた気配は、いつでも戦える状態にあることを示していた。
アレンは、そんな二人の仲間を見つめていた。
Dランクのゴブリン退治から始まった、このいびつなパーティ。幾多の死線を乗り越え、彼らは今、Aランクという頂きを目前にしている。
胸に、熱いものがこみ上げてきた。
「なあ」
アレンは、静かに二人に語りかけた。
「俺は、あんたたちに出会えて、本当によかったと思ってる」
その唐突な言葉に、ソフィアは剣を磨く手を止め、カイは薄く目を開けた。
「俺は、ずっと一人だった。仲間だと思っていた連中に裏切られ、全てを失った。もう二度と、誰も信じられないと思っていた」
アレンは、自嘲気味に笑った。
「だが、あんたたちがいた。ソフィア、あんたの不屈の魂が、俺に再び立ち上がる勇気をくれた。カイ、あんたの静かな優しさが、俺に仲間を信じることの大切さを教えてくれた」
彼は、二人に深く頭を下げた。
「ありがとう」
ソフィアは、照れくさそうに顔を背けた。
「……ば、馬鹿なことを言うな。礼を言うのは、こっちの方だ。あんたがいなきゃ、俺は今でも酒場の隅で腐ってたさ」
カイも、静かに頷いた。
「……俺もだ。アレン。あんたがいたから、俺は復讐の獣にならずに済んだ」
三人の間に、言葉にはならない、温かい絆が流れた。
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彼は、二人の仲間に向かって、力強く宣言した。
「俺たちの翼は、こんなところで折れたりはしない」
その言葉に、ソフィアとカイは、力強く頷き返した。
決戦前夜。
【黎明の翼】の三人は、それぞれの思いを胸に、静かに夜が明けるのを待っていた。
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