Sランクパーティを追放されたヒーラーの俺、禁忌スキル【完全蘇生】に覚醒する。俺を捨てたパーティがボスに全滅させられ泣きついてきたが、もう遅い

夏見ナイ

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第91話 世界の危機

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クレリア村での穏やかな日々は長くは続かなかった。
アレンたちがリーナの快気祝いを終え、再び冒険者としての活動に戻ろうとしていた矢先のことだった。一羽の猛禽類の姿をした伝令鳥が、ギルドからの緊急通信を携えて空から舞い降りてきたのだ。

その通信筒に収められていた羊皮紙に記されていたのは、アークライトのギルドマスター、ダリウスからの簡潔にしてただならぬ内容の召集令状だった。

『【黎明の翼】へ。至急ギルド本部へ出頭されたし。大陸の存亡に関わる緊急事態が発生した』

「大陸の存亡……?」
ソフィアがその大げさな言葉に眉をひそめた。
「一体、何が起きたんだ」

「……分からない。だが、ダリウス殿がこれほどの言葉を使うということは尋常な事態ではないはずだ」
アレンの表情も険しいものに変わっていた。
カイは何も言わなかったが、その金色の瞳はすでに遥か北東、アークライトの方向を鋭く見据えていた。

三人はリーナと村人たちに別れを告げ、すぐさまアークライトへと向かった。彼らはBランク冒険者として、緊急時にはギルドの召集に応じる義務があった。
馬を乗り継ぎ最短ルートを駆け抜け、彼らがアークライトのギルドに到着したのは三日後のことだった。

ギルドの雰囲気は彼らが知るそれとは全く違っていた。
いつもは冒険者たちの喧騒で満ちているはずのロビーは水を打ったように静まり返り、そこにいる誰もが不安と緊張の入り混じった硬い表情をしていた。
壁の依頼掲示板には通常の依頼書は一枚もなく、ただ一枚だけ、大陸全土のギルドに向けた最高レベルの『非常事態宣言』が掲げられている。

彼らはギルド職員に案内され、重々しい雰囲気の作戦会議室へと通された。
そこにはダリウスだけでなく、近隣の支部のギルドマスターたちやAランクパーティのリーダーたちがすでに集結していた。ゴードンやシルフィ、ゼノンの顔も見える。彼らはアレンたちの姿を認めると、厳しい表情のまま深く頷いて見せた。

「……よく来てくれた、【黎-翼】」
ダリウスが重い口を開いた。その顔には深い疲労の色が刻まれている。
「単刀直入に言う。世界は今、危機の瀬戸際にある」

彼はテーブルの中央に広げられた巨大な大陸地図の一点を指さした。
そこは彼らにとっても因縁深い場所だった。

「……《奈落の口》」
アレンがその名を呟いた。

「そうだ」
ダリウスは頷いた。
「先日、あのダンジョンでSランクパーティ【熾天の剣】が全滅したことは、お前さんたちも知っているだろう」
その言葉にアレンの肩が微かに揺れた。

「問題は彼らが何に敗れたかだ。ギルドの調査隊が命がけで最深部の情報を持ち帰ってきた。そこで彼らが遭遇したのは……」

ダリウスは一度言葉を切り、そこにいる全員の顔を見渡した。
「……古の災厄竜(エンシェント・ドラゴン)だ」

その名前に会議室がどよめいた。
神話やおとぎ話にしか登場しない伝説の存在。世界の終焉を告げるとされる厄災の化身。
それが実在したというのか。

「【熾天の剣】がその眠りを妨げてしまったらしい。幸い竜はまだ最深部から動いてはいない。だが調査隊の魔力探知によれば、竜は急速に活動を活発化させている。目覚めた竜が地上に出てくるのはもはや時間の問題だ」

ダリウスの声は絶望的な響きを帯びていた。
「もしあれが地上に現れればどうなるか……。想像に難くない。一つの国が、いや、この大陸そのものが一夜にして焦土と化すだろう。これこそが大陸の存亡に関わる危機だ」

重い沈黙が会議室を支配した。
Aランクの猛者たちでさえ、そのあまりにも巨大すぎる脅威を前にして言葉を失っていた。

「……それで、我々に何をしろと?」
最初に沈黙を破ったのはゴードンだった。
「ギルドは総力を挙げてあの竜の討伐に挑むと? だが、Sランクパーティですら全滅した相手だ。我々だけでどうにかできるものなのか?」

「……そうだ。我々だけでは無理だろうな」
ダリウスはその言葉をあっさりと認めた。
そして彼は、その鷲のような鋭い瞳でまっすぐにアレンを見つめた。

「だが、我々には希望がある」

その場の全ての視線がアレン一人に集中した。

「【黎明の翼】。そしてそのリーダーである『辺境の聖者』アレン。お前さんたちこそが我々人類に残された最後の希望だ」

それはあまりにも重い期待の言葉だった。

「アレン殿。君がドラゴンゾンビとの戦いで見せたあの奇跡。あの力があればあるいは……。いや、君たちしかあの厄災を止めることはできん」

ダリウスは静かに、しかし有無を言わせぬ力強さで言った。
「ギルドは総力を挙げて君たちの支援を約束する。必要なものは何でも用意しよう。だから、お願いだ。この世界を救ってはくれんか」

それはもはや依頼ではなかった。
人類の未来を懸けた一人の英雄への懇願だった。
アレンは、その重圧を全身で受け止めていた。

《奈落の口》。
自分が全てを失った始まりの場所。
そこに世界の終わりを告げる竜が眠っている。
そしてその竜を討伐することが、自分に課せられた新たな使命。
運命とはなんと皮肉なものか。

彼は隣に立つ仲間たちの顔を見た。
ソフィアは不敵な笑みを浮かべている。これほどの強敵と戦えることに、武者震いを抑えきれないでいるのだ。
カイは静かに頷いている。彼の瞳はどんな困難が相手でも、この仲間たちとなら乗り越えられるとそう語っていた。

アレンは深く息を吸い込んだ。
そして決意を固めた顔で、ダリウスに向き直った。
「……分かりました」

その一言は静かだったが、その場にいる全ての者たちの心に希望の光を灯す、力強い響きを持っていた。
「その任務、我々【黎明の翼】がお受けします」

世界の危機を前にして、一人の追放されたヒーラーが人類の命運を背負って立ち上がった。
彼の伝説は今、まさにそのクライマックスを迎えようとしていた。
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