無能と罵られ追放された落ちこぼれ魔術師、実は世界で唯一【言語魔法】を使える最強賢者だった〜古代魔法と失われた知識で成り上がり見返してやる!~

夏見ナイ

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第三章:激化する対立と世界の異変

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第51話:フロンティアへの急報、バルカスの狂気

ドワーフ都市「ドゥル=アダール」の壮大な鍛冶場と、そこで得た新たな知識と力。リオ、リリアナ、グレイの三人は、アストライオスの問題解決への確かな手応えと、自らの成長を実感しながら、次なる目的地への期待に胸を膨らませていた。しかし、そんな彼らの元に届いたギルドの受付嬢サラからの緊急思念通信は、その楽観的な空気を一瞬にして吹き飛ばすものだった。

『リオさん! 大変です! バルカスが……バルカスが、新たな力を手に入れて、フロンティアで……!』

サラの声は、恐怖と焦りで震えており、通信も途切れがちだった。しかし、その内容は明確に、リオたちに最悪の事態を予感させた。バルカス・レイン。あの執念深く、傲慢な魔術師が、またしても彼らの前に立ちはだかろうとしている。しかも、今度は「新たな力」を携えて。

「バルカス……! またあいつか!」

リオの表情が険しくなる。以前、王国の刺客「影狼」を撃退した際、その背後にバルカスの影を感じてはいたが、まさかこれほど早く、そして直接的に行動を起こしてくるとは思っていなかった。

「新たな力……。一体、何を企んでいるのかしら……」リリアナも顔を青くしている。「サラさんの様子だと、フロンティアで何か良からぬことをしているのは間違いないわ」
「おそらく、我々をおびき出すための罠だろうな」グレイが冷静に分析する。「ドワーフの都にいる我々を直接狙うのは難しいと判断し、フロンティアで騒ぎを起こして、我々が戻ってくるのを待っているのだろう。あるいは……リオ、お前の『賢者』としての評判を、今度こそ完全に失墜させるための、大規模な計画かもしれん」

リオの脳裏に、以前「影狼」が仕掛けた失墜の罠が蘇る。あの時は、リオの機転と新たな魔法の応用で切り抜けることができたが、今回はどうだろうか。バルカスが「新たな力」を得ているとすれば、その罠はより巧妙で、より危険なものになっている可能性が高い。

「サラさんに、詳しい状況を聞けますか?」
「……通信が不安定で、詳細までは……。ただ、『街が……混乱……リオさんの助けが……』と、何度も繰り返していました。バルカスが、フロンティアの住民を巻き込むような、何か卑劣な手段を使っているのかもしれません」

リオの拳が、怒りに固く握り締められた。自分への憎悪はまだしも、無関係なフロンティアの人々を危険に晒すなど、許せることではない。

「……行かなければ」リオは、決然とした表情で言った。「フロンティアへ戻りましょう。バルカスの好きにはさせない」
「でも、リオさん、それは危険よ! バルカスの罠だと分かっているのに……!」リリアナが制止しようとする。
「罠だと分かっていても、行かなければならない時もある。フロンティアは、俺たちにとって大切な場所だ。見過ごすわけにはいかない」
「……ふん。どうやら、腹は決まっているようだな」グレイは、リオの覚悟を見抜き、短く言った。「だが、無策で突っ込むのは愚の骨頂だ。奴の『新たな力』とやらが何なのか、そして、どんな罠を仕掛けているのか……。可能な限り情報を集め、対策を練る必要がある」

三人の意見は一致した。危険を承知の上で、フロンティアへ戻り、バルカスの陰謀を阻止する。しかし、それは同時に、バルカスとの完全な決着をつけることをも意味していた。リオは、これまでの成長の全てをぶつけ、過去の屈辱を晴らすための戦いに、否応なく身を投じることになるのだ。

ドワーフの長ボルガンに事情を話し、急ぎフロンティアへ戻ることを告げると、彼は意外にも快く送り出してくれた。

「ふん、人間同士のくだらん争いには興味はないが……お前たちがこの都で示した力と誠意は、確かに認めている。無事に帰ってこいよ、賢者様。そして、またいつか、お前が鍛えたあの剣の続きを見せに来い」

ボルガンの言葉はぶっきらぼうだったが、その奥には確かな信頼と激励が込められていた。リオは「星影の剣」を握りしめ、深く頭を下げた。

ドワーフ都市「ドゥル=アダール」を後にし、三人は最短ルートでフロンティアを目指した。道中、リオは【言語魔法】で、フロンティアへ向かう旅人や商人たちから、街の情報を集めようと試みた。

『フロンティアがおかしなことになってるらしいぜ。なんでも、王都から来た偉い魔術師様が、奇妙な病を治すとか言って、人々を集めているとか……』
『でも、その治療を受けた人が、逆に具合が悪くなったり、正気を失ったりしてるって噂も……』
『賢者リオ様の評判を貶めるための、何かの陰謀じゃないかって、街の奴らは噂してるよ……』

断片的な情報だったが、バルカスの計画の輪郭が見えてきた。彼は、おそらく「新たな力」を使って、何らかの「治療」と称する行為を行い、それが失敗したり、あるいは有害な結果をもたらしたりすることで、リオの「賢者」としての名声を地に堕とし、同時に自身の力を誇示しようとしているのだろう。そして、その混乱の中で、リオをおびき出し、一網打尽にするつもりなのかもしれない。

「なんて卑劣な……!」リリアナは怒りに声を震わせた。「人々を実験台にするなんて、許せないわ!」
「おそらく、奴の『新たな力』とやらは、まともなものじゃないだろうな。古代の禁術か、あるいは何かの呪われた遺物でも手に入れたのかもしれん」グレイも、厳しい表情で推測する。

フロンティアが近づくにつれて、街の様子は明らかにおかしくなっていた。街道には、不安げな表情で行き交う人々の姿が増え、街の入り口には、通常よりも多くの衛兵が配置され、厳戒態勢が敷かれているようだった。

「……街の空気が、重い」

リオは、フロンティアの城壁を見上げながら呟いた。そこには、かつての活気はなく、代わりに、不穏な緊張感と、人々の不安が渦巻いているように感じられた。

三人は、人目を避けながら、裏道を使ってリリアナの研究室へと向かった。研究室の扉を叩くと、中から憔悴しきったサラが顔を出した。

「リオさん! リリアナ様! グレイさん! よかった……無事だったんですね!」

サラは涙ながらに三人を迎え入れた。彼女から語られたフロンティアの現状は、リオたちの予想を遥かに超える、深刻なものだった。

バルカスは、数日前に突如としてフロンティアに現れ、王都からの勅命であると称し、街の中央広場に巨大なテントを設営。そこで、「万病を癒す奇跡の秘術」とやらを披露し始めたのだという。最初は半信半疑だった人々も、彼の巧みな言葉と、派手な魔術の演出(おそらく、これも「新たな力」の一部だろう)に惑わされ、次々と治療を受け始めた。

しかし、その結果は悲惨なものだった。治療を受けた者の中には、一時的に症状が改善したように見えても、すぐに再発したり、あるいは別の奇妙な症状――幻覚、記憶障害、凶暴化など――が現れる者が続出したのだ。街の医者や神官たちも、その原因を特定できず、フロンティアはパニック寸前の状態に陥っていた。

そして、バルカスは、この混乱の原因を、あろうことか「賢者リオの偽りの治癒魔法による副作用」だと吹聴し始めたのだという。リオのこれまでの功績を全て否定し、彼をフロンティアの混乱の元凶に仕立て上げようとしていたのだ。

「なんてこと……!」リオは絶句した。バルカスの悪意は、彼の想像を遥かに超えていた。
「許せない……! 人々の善意と、リオさんの信頼を、こんな形で踏みにじるなんて!」リリアナも怒りに体を震わせる。
「……どうやら、奴は本気でリオを社会的に抹殺し、そしてフロンティアを自分の支配下に置こうとしているらしいな」グレイは冷静に状況を分析した。「そして、おそらく、我々が戻ってくるのを、今か今かと待ち構えているだろう」

サラによれば、バルカスは中央広場のテントに陣取り、強力な結界と、多数の部下(私兵と思われる屈強な者たち)で周囲を固めているという。そして、リオが現れ次第、彼を「フロンティアを混乱させた罪人」として捕縛し、王都へ連行すると公言しているらしい。

「……行くしかないですね」リオは、静かに、しかし確固たる意志を込めて言った。「バルカスの狂気を止め、フロンティアの人々を救うために。そして、俺自身の潔白を証明するために」
「ええ、もちろんよ!」
「……ああ。派手な決着になりそうだな」

リリアナとグレイも、リオの覚悟に呼応するように頷いた。

バルカスとの最終決戦の舞台は整った。それは、単なる個人的な復讐劇ではない。フロンティアの運命と、そして古代魔法を巡る大きな陰謀が絡み合った、避けられない戦いなのだ。

リオは、ドワーフの都で鍛え上げた「星影の剣」を握りしめた。その刀身に宿る、自身の魂の輝きを感じながら。彼の「賢者」としての真価が、そして仲間たちとの絆の強さが、今まさに試されようとしていた。
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