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第36話:アレン先生の魔法教室
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フィオナの才能の片鱗を目の当たりにした俺は、その場で彼女に一つの提案をした。
「もし君が本気で魔法を学びたいなら、俺が教えてやってもいい」
その言葉に、フィオナは目を輝かせた。
「本当ですか!? ぜひ、お願いします、先生!」
「先生はやめろ。俺はアレンだ。ただの冒険者だ」
「ですが、あなたは私の師匠です! どうか、アレン先生とお呼びするのをお許しください!」
彼女は妙なところで頑固だった。その瞳は真剣そのもので、俺は根負けしてため息をついた。まあ、好きに呼ばせればいいか。
こうして、その日から俺とフィオナの奇妙な師弟関係が始まった。場所は、街の外れにある冒険者用の訓練場。ルナとシルフィには事情を話し、しばらくの間俺たちの訓練に付き合ってもらうことにした。
「ふーん。こいつが、あんたが見つけた新しいおもちゃか」
シルフィはフィオナを値踏みするように見ながら、相変わらずの毒舌を吐いた。フィオナは貴族としてのプライドからか、むっとした表情でシルフィを睨み返す。早くも、前途多難な雰囲気が漂っていた。
「まあまあ、シルフィさん。仲良くしましょうよ」
ルナが間に入って、なんとかその場を収めてくれた。
「さて、フィオナ。まずは君がどれだけ魔力を持っているか、見せてもらおうか」
俺は訓練場の隅にある、魔力測定用の的を指差した。
「的を狙って、さっきみたいに手のひらから魔力を放ってみろ。ただし、今度は少しだけ水路を広げるイメージで」
「はい、アレン先生!」
フィオナは真剣な表情で頷き、的の前で目を閉じた。彼女は俺の教えを忠実に守り、深く呼吸を整えていく。その集中力は、並大抵のものではなかった。
彼女の体から膨大な魔力が溢れ出す。それは、目に見えない圧力となって周囲の空気をビリビリと震わせた。
「……なんだ、この魔力は」
シルフィが驚愕の声を漏らす。エルフである彼女は魔力の流れに敏感だ。フィオナが放つ魔力の奔流が、どれほど規格外のものか、すぐに理解したのだろう。
フィオナの手のひらから放たれた魔力の光が、一直線に的へと飛んでいく。そして、的に着弾した瞬間、凄まじい爆発が起こった。
ドゴオオオオオン!
訓練場全体が揺れるほどの轟音。ミスリルで作られているはずの的は跡形もなく消し飛び、その後ろにあった岩壁に巨大なクレーターが穿たれていた。
「…………」
俺も、ルナも、シルフィも、あまりの威力に言葉を失った。
張本人のフィオナ自身が一番驚いていたようだった。彼女は自分の小さな手のひらと、破壊された岩壁を交互に見比べ、わなわなと震えている。
「わ、私が……これを……?」
「ああ。それが、君の力だ」
俺は冷静に告げた。だが、内心では冷や汗が止まらなかった。これは、とんでもない代物だ。少し教えただけで、これほどの破壊力を生み出すとは。まさに歩く戦略兵器だ。
「すごい……すごいです、フィオナさん!」
ルナが素直な称賛の声を上げる。シルフィも、驚きを隠せないといった表情でフィオナを凝視していた。
「だが、これではダメだ」
俺はあえて厳しい口調で言った。
「今の魔法は、ただ魔力をぶつけただけだ。いわばダムの決壊だな。威力は凄まじいが、全く制御できていない。これでは実戦では使い物にならない」
俺の指摘に、フィオナはハッとしたように顔を上げた。
「本当の魔法というのは、水の流れを自在に操るように魔力を制御することだ。細く鋭い流れにすることも、広く穏やかな流れにすることもできなければならない」
俺の【万物解析】は、彼女の魔力制御がまだ0点に近いことを示していた。
「これから、徹底的に制御の訓練を行う。まずはさっきの光の玉を、手のひらで維持し続けることからだ。大きさも形も、自分の思い通りに変えられるようになるまでやれ」
「はい、先生!」
そこから、地味で、しかし過酷な訓練が始まった。フィオナは、来る日も来る日もただひたすらに魔力制御の基礎を繰り返した。
最初は光の玉を数秒維持するだけで、魔力が暴発してしまっていた。だが、彼女の集中力と俺の的確なアドバイスによって、その時間は少しずつ伸びていく。
「違う、フィオナ。もっと体の芯を意識しろ。魔力の源泉はそこにある」
「呼吸が乱れている。焦るな。魔力は君の感情に正直に反応する」
俺の指導は、全てスキルに基づいていた。彼女の体内の魔力の流れ、精神状態、その全てを読み解き、その時々で最も必要な言葉をかける。それは、他の誰にも真似のできない究極の個人レッスンだった。
フィオナは、スポンジが水を吸うように俺の教えを吸収していった。一週間も経つ頃には、彼女は光の玉を自在に操れるようになっていた。球体を立方体に変えたり、いくつもの小さな光点に分裂させたり。その成長速度は、異常としか言いようがなかった。
「……化け物だな、あいつは」
訓練の様子を眺めながら、シルフィがぽつりと呟いた。その言葉には侮蔑ではなく、純粋な畏怖が込められていた。
ルナも目を丸くしてフィオ-フィオナの魔法に見入っている。
俺は二人に笑いかけた。
「ああ。だが、最高の仲間になりそうだろ?」
このパーティーはますます面白くなってきた。神速の獣人、呪いから解放されたエルフの魔剣士、そして規格外の魔力を持つ天才魔術師。
この三人娘を率いるのが、追放された鑑定士である俺なのだから、人生とは分からないものだ。
俺は日に日に自信をつけていくフィオナの姿を、満足げに見守っていた。だが、彼女の心にはまだ乗り越えなければならない大きな壁が存在していることを、俺のスキルはすでに見抜いていた。
「もし君が本気で魔法を学びたいなら、俺が教えてやってもいい」
その言葉に、フィオナは目を輝かせた。
「本当ですか!? ぜひ、お願いします、先生!」
「先生はやめろ。俺はアレンだ。ただの冒険者だ」
「ですが、あなたは私の師匠です! どうか、アレン先生とお呼びするのをお許しください!」
彼女は妙なところで頑固だった。その瞳は真剣そのもので、俺は根負けしてため息をついた。まあ、好きに呼ばせればいいか。
こうして、その日から俺とフィオナの奇妙な師弟関係が始まった。場所は、街の外れにある冒険者用の訓練場。ルナとシルフィには事情を話し、しばらくの間俺たちの訓練に付き合ってもらうことにした。
「ふーん。こいつが、あんたが見つけた新しいおもちゃか」
シルフィはフィオナを値踏みするように見ながら、相変わらずの毒舌を吐いた。フィオナは貴族としてのプライドからか、むっとした表情でシルフィを睨み返す。早くも、前途多難な雰囲気が漂っていた。
「まあまあ、シルフィさん。仲良くしましょうよ」
ルナが間に入って、なんとかその場を収めてくれた。
「さて、フィオナ。まずは君がどれだけ魔力を持っているか、見せてもらおうか」
俺は訓練場の隅にある、魔力測定用の的を指差した。
「的を狙って、さっきみたいに手のひらから魔力を放ってみろ。ただし、今度は少しだけ水路を広げるイメージで」
「はい、アレン先生!」
フィオナは真剣な表情で頷き、的の前で目を閉じた。彼女は俺の教えを忠実に守り、深く呼吸を整えていく。その集中力は、並大抵のものではなかった。
彼女の体から膨大な魔力が溢れ出す。それは、目に見えない圧力となって周囲の空気をビリビリと震わせた。
「……なんだ、この魔力は」
シルフィが驚愕の声を漏らす。エルフである彼女は魔力の流れに敏感だ。フィオナが放つ魔力の奔流が、どれほど規格外のものか、すぐに理解したのだろう。
フィオナの手のひらから放たれた魔力の光が、一直線に的へと飛んでいく。そして、的に着弾した瞬間、凄まじい爆発が起こった。
ドゴオオオオオン!
訓練場全体が揺れるほどの轟音。ミスリルで作られているはずの的は跡形もなく消し飛び、その後ろにあった岩壁に巨大なクレーターが穿たれていた。
「…………」
俺も、ルナも、シルフィも、あまりの威力に言葉を失った。
張本人のフィオナ自身が一番驚いていたようだった。彼女は自分の小さな手のひらと、破壊された岩壁を交互に見比べ、わなわなと震えている。
「わ、私が……これを……?」
「ああ。それが、君の力だ」
俺は冷静に告げた。だが、内心では冷や汗が止まらなかった。これは、とんでもない代物だ。少し教えただけで、これほどの破壊力を生み出すとは。まさに歩く戦略兵器だ。
「すごい……すごいです、フィオナさん!」
ルナが素直な称賛の声を上げる。シルフィも、驚きを隠せないといった表情でフィオナを凝視していた。
「だが、これではダメだ」
俺はあえて厳しい口調で言った。
「今の魔法は、ただ魔力をぶつけただけだ。いわばダムの決壊だな。威力は凄まじいが、全く制御できていない。これでは実戦では使い物にならない」
俺の指摘に、フィオナはハッとしたように顔を上げた。
「本当の魔法というのは、水の流れを自在に操るように魔力を制御することだ。細く鋭い流れにすることも、広く穏やかな流れにすることもできなければならない」
俺の【万物解析】は、彼女の魔力制御がまだ0点に近いことを示していた。
「これから、徹底的に制御の訓練を行う。まずはさっきの光の玉を、手のひらで維持し続けることからだ。大きさも形も、自分の思い通りに変えられるようになるまでやれ」
「はい、先生!」
そこから、地味で、しかし過酷な訓練が始まった。フィオナは、来る日も来る日もただひたすらに魔力制御の基礎を繰り返した。
最初は光の玉を数秒維持するだけで、魔力が暴発してしまっていた。だが、彼女の集中力と俺の的確なアドバイスによって、その時間は少しずつ伸びていく。
「違う、フィオナ。もっと体の芯を意識しろ。魔力の源泉はそこにある」
「呼吸が乱れている。焦るな。魔力は君の感情に正直に反応する」
俺の指導は、全てスキルに基づいていた。彼女の体内の魔力の流れ、精神状態、その全てを読み解き、その時々で最も必要な言葉をかける。それは、他の誰にも真似のできない究極の個人レッスンだった。
フィオナは、スポンジが水を吸うように俺の教えを吸収していった。一週間も経つ頃には、彼女は光の玉を自在に操れるようになっていた。球体を立方体に変えたり、いくつもの小さな光点に分裂させたり。その成長速度は、異常としか言いようがなかった。
「……化け物だな、あいつは」
訓練の様子を眺めながら、シルフィがぽつりと呟いた。その言葉には侮蔑ではなく、純粋な畏怖が込められていた。
ルナも目を丸くしてフィオ-フィオナの魔法に見入っている。
俺は二人に笑いかけた。
「ああ。だが、最高の仲間になりそうだろ?」
このパーティーはますます面白くなってきた。神速の獣人、呪いから解放されたエルフの魔剣士、そして規格外の魔力を持つ天才魔術師。
この三人娘を率いるのが、追放された鑑定士である俺なのだから、人生とは分からないものだ。
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