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第27話 虚弱体質の聖女
聖都エルピス。
その街は、噂に違わず、白亜の輝きに満ちていた。
整然と並ぶ建物は、全てが美しい乳白色の石で造られており、太陽の光を浴びてキラキラと輝いている。道にはゴミ一つ落ちておらず、道行く人々の表情も、どこか穏やかで満ち足りているように見えた。空気さえもが、清浄で、神聖な香りを運んでくるかのようだ。
「わぁ…! なんて、綺麗な街なのでしょう…!」
リリアは、まるで夢の世界に迷い込んだかのように、目を輝かせて周囲を見渡した。
ヒルダも、その荘厳な雰囲気に息を呑む。
「これが、聖都エルピス…。アストレア教の総本山。空気が、澄み切っている…」
騎士であった頃、一度は訪れてみたいと願った聖地。その神々しいまでの美しさに、彼女は素直に感動していた。
しかし、一行のうち一人だけ、その感動を全く共有していない男がいた。
「……む」
筋城丈は、腕を組み、眉間に深い皺を寄せていた。
「なんだ、この街は。空気が、軽すぎる」
「え?」
「重力が、他の地域よりわずかに低い気がする。それに、この平坦で整備されすぎた道。歩いていても、下半身に全く負荷がかからん。これでは、筋肉が弛緩してしまう」
タケルは、聖都の平和で美しい環境を、「筋肉を堕落させる、悪魔的な罠だ」と断じた。
「見てみろ、あの民衆の歩き方を。誰も彼も、体幹が緩みきっている。足腰も弱い。闘争本能が、完全に削ぎ落とされている。これは、一種のディストピアだ。筋肉にとってはな」
「でぃすとぴあ…」
リリアとヒルダは、もはや師匠の独特すぎる感性に、何も言うことができなかった。
三人は、街の中心にそびえ立つ、大神殿へと向かっていた。聖女セレスティーナは、そこにいるという。
神殿に近づくにつれて、人々の数が増していく。そして、神殿の前に広がる巨大な広場にたどり着いた時、三人はその異様な光景に息を呑んだ。
広場には、何百人という人々が、整然と列をなしていた。
その誰もが、病に苦しむ者、怪我を負った者、あるいはその家族だった。松葉杖をつく者、担架で運ばれてきた者、顔色が悪く、虚ろな目をしている者…。希望と、そして絶望が入り混じった、重苦しい空気が広場を支配していた。
「これが…聖女様の奇跡を求める人々の列…」
リリアが、胸を痛めたように呟く。
ヒルダも、その痛ましい光景に、顔を曇らせた。騎士として、守るべき民の苦しむ姿を見るのは、辛いことだった。
しかし、タケルだけは、その光景を、全く違う視点で見ていた。
「ふむ。対症療法だな」
「え…?」
「病や怪我の『原因』を取り除くのではなく、ただその『結果』だけを癒している。これでは、根本的な解決にはならん。生活習慣を改め、食生活を見直し、そして何より、適度なトレーニングで免疫力を高めなければ、また同じことの繰り返しだ」
タケルは、まるで非効率なトレーニングプログラムを眺めるかのように、その光景を分析していた。
その時だった。
わぁっ、という歓声と共に、広場の空気が一変した。
大神殿の巨大な扉が開かれ、そこから一人の女性が、数人の神官に付き添われて、静かに姿を現した。
その瞬間、その場にいた誰もが、息をするのを忘れた。
聖女セレスティーナ。
透き通るような白い肌。陽光を浴びて銀色に輝く、柔らかな髪。そして、この世の全ての慈愛をその内に秘めたかのような、穏やかで優しい青い瞳。
その姿は、あまりに美しく、あまりに儚げで、まるで今にも光の中に溶けて消えてしまいそうだった。
彼女が歩むたびに、その足元から、淡い光の粒子が舞い上がるように見える。
「聖女様…!」
「ああ、セレスティーナ様…!」
列をなしていた人々が、涙ながらにその名を呼び、祈りを捧げる。
リリアも、その神々しいまでの姿に、思わず手を合わせた。
「なんて、お美しい…。本当に、女神様が舞い降りたかのようです…」
ヒルダも、その存在感に圧倒されていた。あれが、奇跡を起こす聖女。その神聖さは、疑いようもなかった。
しかし、タケルの目は、彼女の美しさや神々しさには、全く向いていなかった。
彼は、セレスティーナの「動き」を、食い入るように観察していた。
(ほう…あれが聖女か。なるほどな…)
彼の筋肉脳が、瞬時にその身体をスキャニングする。
(全身の筋肉量が、絶望的に少ない。特に、姿勢を保持するための脊柱起立筋と、内臓を支える腹筋群が、ほぼ機能していないに等しい。歩く姿も、体幹が安定せず、常にふらついている。あれでは、日常生活を送るだけで、多大なエネルギーを消耗するだろう。典型的な、カタボリック体質だ)
タケルが、そんな失礼極まりない身体測定をしているとは露知らず、セレスティーナは、列の先頭にいた、足に酷い怪我を負った少年の前に、静かに膝をついた。
彼女が、その小さな手にそっと触れる。
「痛かったでしょう。もう、大丈夫ですよ」
その声は、鈴の音のように清らかで、聞く者の心を優しく解きほぐす。
彼女の手のひらから、温かく、柔らかな光が溢れ出し、少年の足を包み込んだ。
すると、信じられないことが起こった。見るからに痛々しかった傷口が、光の中でみるみるうちに塞がっていき、数秒後には、傷跡一つない、綺麗な肌へと戻っていたのだ。
「す、すごい…! 歩ける! 痛くないよ!」
少年は、驚きと喜びの声を上げ、その場で飛び跳ねて見せた。
「おお…!」「聖女様の奇跡だ!」
広場が、歓喜と賞賛の声に包まれる。
セレスティーナは、にこりと微笑むと、次の者の元へと向かった。
一人、また一人と、彼女の奇跡の力によって、人々は苦しみから解放されていく。
リリアとヒルダは、その神聖な光景に、ただただ感動していた。
だが、タケルだけは、眉間の皺を、さらに深くしていた。
彼は、奇跡の現象そのものではなく、それを行使する、セレスティーナの身体の変化を見逃さなかった。
一人癒すたびに、彼女の顔から、血の気が引いていく。
二人癒すたびに、その呼吸が、わずかに浅く、速くなっていく。
三人癒すたびに、その額に、玉のような冷や汗が滲み始める。
そして、十人目を癒し終えた頃には、その足元は、明らかにふらついていた。付き添いの神官が、慌ててその身体を支える。
「セレスティーナ様、もう、今日はこの辺りで…!」
「いいえ…まだ、苦しんでいる方々が、いますから…」
彼女は、気丈にそう言うと、神官の手を振り払い、次の患者の元へと歩みを進める。その姿は、リリアやヒルダの目には、自己犠牲を厭わない、崇高な聖女の姿に映った。
しかし、タケルの目には、それは全く違って見えていた。
(馬鹿者め。あれは、自己犠牲などではない。ただの、無計画なオーバーワークだ。自分の限界を把握せず、無茶なトレーニングを続けた結果、身体が悲鳴を上げているだけだ。このまま続ければ、どうなるか…)
タケルの予測は、正しかった。
列の最後尾にいた、老婆の長年の病を癒し終え、その老婆が涙ながらに感謝の言葉を述べた、まさにその瞬間。
セレスティーナの身体から、完全に力が抜けた。
「……かはっ…!」
彼女の可憐な唇から、小さな咳と共に、一筋の血がこぼれ落ちた。
そして、その儚い身体は、糸が切れた人形のように、ゆっくりと、その場に崩れ落ちた。
「「セレスティーナ様!!」」
神官たちの悲鳴が、広場に響き渡る。
人々は、「聖女様が、我々のために…!」と、さらに熱心に祈りを捧げ始めた。
リリアとヒルダも、その痛々しい姿に、顔を青くしている。
しかし、タケルは、腕を組んだまま、静かに、そして冷たく呟いた。
「やはりな。筋肉が、限界を迎えたか」
彼にとって、それは悲劇でも、自己犠牲の美しい物語でもなかった。
ただの、「準備不足のトレーニーが、無謀な挑戦の末に、潰れた」という、当然の結果に過ぎなかった。
神官たちが、倒れたセレスティーナを慌てて抱きかかえ、神殿の奥へと運んでいく。
その光景を、タケルは、まるで重症患者を診る医師のような、厳しい目で見つめていた。
「師匠…」
リリアが、心配そうに声をかける。
「あの聖女様、大丈夫なのでしょうか…」
「大丈夫ではない。大問題だ」
タケルは、きっぱりと言い切った。
「あのままでは、彼女は、いずれその奇跡とやらの代償で、命を落とすだろう。才能の、完全な無駄遣いだ」
彼は、くるりと踵を返すと、大神殿の、固く閉ざされた巨大な門を、まっすぐに見据えた。
「やはり、俺の診断は正しかった。あの聖女、根本から叩き直す必要がある」
その言葉に、リリアとヒルダは、血の気が引くのを感じた。
「ま、待ってください、師匠! どこへ行くのですか!?」
「決まっているだろう。カウンセリングと、メディカルチェックだ。そして、彼女に最適な、トレーニングメニューを処方してやる」
「ダメです! 神殿ですよ!? 聖域です! 不敬罪で、処刑されてしまいます!」
ヒルダも、必死にタケルを止めようとする。
「神罰が下りますよ、師匠!」
すると、タケルは、心底不思議そうな顔で、二人を振り返った。
「神罰より、トレーニングを一日休むことによる、筋分解(カタボリック)の方が、よほど恐ろしい。お前たちも、そうだろう?」
その、あまりに純粋で、狂気じみた問いかけに、リリアとヒルダは、もはや返す言葉もなかった。
タケルは、そんな二人の返事を待つこともなく、大神殿の、荘厳な装飾が施された巨大な門へと、迷いのない足取りで、歩みを進めていく。
彼の筋肉哲学が、いよいよ、神の領域に、無遠慮なノックをしようとしていた。
その街は、噂に違わず、白亜の輝きに満ちていた。
整然と並ぶ建物は、全てが美しい乳白色の石で造られており、太陽の光を浴びてキラキラと輝いている。道にはゴミ一つ落ちておらず、道行く人々の表情も、どこか穏やかで満ち足りているように見えた。空気さえもが、清浄で、神聖な香りを運んでくるかのようだ。
「わぁ…! なんて、綺麗な街なのでしょう…!」
リリアは、まるで夢の世界に迷い込んだかのように、目を輝かせて周囲を見渡した。
ヒルダも、その荘厳な雰囲気に息を呑む。
「これが、聖都エルピス…。アストレア教の総本山。空気が、澄み切っている…」
騎士であった頃、一度は訪れてみたいと願った聖地。その神々しいまでの美しさに、彼女は素直に感動していた。
しかし、一行のうち一人だけ、その感動を全く共有していない男がいた。
「……む」
筋城丈は、腕を組み、眉間に深い皺を寄せていた。
「なんだ、この街は。空気が、軽すぎる」
「え?」
「重力が、他の地域よりわずかに低い気がする。それに、この平坦で整備されすぎた道。歩いていても、下半身に全く負荷がかからん。これでは、筋肉が弛緩してしまう」
タケルは、聖都の平和で美しい環境を、「筋肉を堕落させる、悪魔的な罠だ」と断じた。
「見てみろ、あの民衆の歩き方を。誰も彼も、体幹が緩みきっている。足腰も弱い。闘争本能が、完全に削ぎ落とされている。これは、一種のディストピアだ。筋肉にとってはな」
「でぃすとぴあ…」
リリアとヒルダは、もはや師匠の独特すぎる感性に、何も言うことができなかった。
三人は、街の中心にそびえ立つ、大神殿へと向かっていた。聖女セレスティーナは、そこにいるという。
神殿に近づくにつれて、人々の数が増していく。そして、神殿の前に広がる巨大な広場にたどり着いた時、三人はその異様な光景に息を呑んだ。
広場には、何百人という人々が、整然と列をなしていた。
その誰もが、病に苦しむ者、怪我を負った者、あるいはその家族だった。松葉杖をつく者、担架で運ばれてきた者、顔色が悪く、虚ろな目をしている者…。希望と、そして絶望が入り混じった、重苦しい空気が広場を支配していた。
「これが…聖女様の奇跡を求める人々の列…」
リリアが、胸を痛めたように呟く。
ヒルダも、その痛ましい光景に、顔を曇らせた。騎士として、守るべき民の苦しむ姿を見るのは、辛いことだった。
しかし、タケルだけは、その光景を、全く違う視点で見ていた。
「ふむ。対症療法だな」
「え…?」
「病や怪我の『原因』を取り除くのではなく、ただその『結果』だけを癒している。これでは、根本的な解決にはならん。生活習慣を改め、食生活を見直し、そして何より、適度なトレーニングで免疫力を高めなければ、また同じことの繰り返しだ」
タケルは、まるで非効率なトレーニングプログラムを眺めるかのように、その光景を分析していた。
その時だった。
わぁっ、という歓声と共に、広場の空気が一変した。
大神殿の巨大な扉が開かれ、そこから一人の女性が、数人の神官に付き添われて、静かに姿を現した。
その瞬間、その場にいた誰もが、息をするのを忘れた。
聖女セレスティーナ。
透き通るような白い肌。陽光を浴びて銀色に輝く、柔らかな髪。そして、この世の全ての慈愛をその内に秘めたかのような、穏やかで優しい青い瞳。
その姿は、あまりに美しく、あまりに儚げで、まるで今にも光の中に溶けて消えてしまいそうだった。
彼女が歩むたびに、その足元から、淡い光の粒子が舞い上がるように見える。
「聖女様…!」
「ああ、セレスティーナ様…!」
列をなしていた人々が、涙ながらにその名を呼び、祈りを捧げる。
リリアも、その神々しいまでの姿に、思わず手を合わせた。
「なんて、お美しい…。本当に、女神様が舞い降りたかのようです…」
ヒルダも、その存在感に圧倒されていた。あれが、奇跡を起こす聖女。その神聖さは、疑いようもなかった。
しかし、タケルの目は、彼女の美しさや神々しさには、全く向いていなかった。
彼は、セレスティーナの「動き」を、食い入るように観察していた。
(ほう…あれが聖女か。なるほどな…)
彼の筋肉脳が、瞬時にその身体をスキャニングする。
(全身の筋肉量が、絶望的に少ない。特に、姿勢を保持するための脊柱起立筋と、内臓を支える腹筋群が、ほぼ機能していないに等しい。歩く姿も、体幹が安定せず、常にふらついている。あれでは、日常生活を送るだけで、多大なエネルギーを消耗するだろう。典型的な、カタボリック体質だ)
タケルが、そんな失礼極まりない身体測定をしているとは露知らず、セレスティーナは、列の先頭にいた、足に酷い怪我を負った少年の前に、静かに膝をついた。
彼女が、その小さな手にそっと触れる。
「痛かったでしょう。もう、大丈夫ですよ」
その声は、鈴の音のように清らかで、聞く者の心を優しく解きほぐす。
彼女の手のひらから、温かく、柔らかな光が溢れ出し、少年の足を包み込んだ。
すると、信じられないことが起こった。見るからに痛々しかった傷口が、光の中でみるみるうちに塞がっていき、数秒後には、傷跡一つない、綺麗な肌へと戻っていたのだ。
「す、すごい…! 歩ける! 痛くないよ!」
少年は、驚きと喜びの声を上げ、その場で飛び跳ねて見せた。
「おお…!」「聖女様の奇跡だ!」
広場が、歓喜と賞賛の声に包まれる。
セレスティーナは、にこりと微笑むと、次の者の元へと向かった。
一人、また一人と、彼女の奇跡の力によって、人々は苦しみから解放されていく。
リリアとヒルダは、その神聖な光景に、ただただ感動していた。
だが、タケルだけは、眉間の皺を、さらに深くしていた。
彼は、奇跡の現象そのものではなく、それを行使する、セレスティーナの身体の変化を見逃さなかった。
一人癒すたびに、彼女の顔から、血の気が引いていく。
二人癒すたびに、その呼吸が、わずかに浅く、速くなっていく。
三人癒すたびに、その額に、玉のような冷や汗が滲み始める。
そして、十人目を癒し終えた頃には、その足元は、明らかにふらついていた。付き添いの神官が、慌ててその身体を支える。
「セレスティーナ様、もう、今日はこの辺りで…!」
「いいえ…まだ、苦しんでいる方々が、いますから…」
彼女は、気丈にそう言うと、神官の手を振り払い、次の患者の元へと歩みを進める。その姿は、リリアやヒルダの目には、自己犠牲を厭わない、崇高な聖女の姿に映った。
しかし、タケルの目には、それは全く違って見えていた。
(馬鹿者め。あれは、自己犠牲などではない。ただの、無計画なオーバーワークだ。自分の限界を把握せず、無茶なトレーニングを続けた結果、身体が悲鳴を上げているだけだ。このまま続ければ、どうなるか…)
タケルの予測は、正しかった。
列の最後尾にいた、老婆の長年の病を癒し終え、その老婆が涙ながらに感謝の言葉を述べた、まさにその瞬間。
セレスティーナの身体から、完全に力が抜けた。
「……かはっ…!」
彼女の可憐な唇から、小さな咳と共に、一筋の血がこぼれ落ちた。
そして、その儚い身体は、糸が切れた人形のように、ゆっくりと、その場に崩れ落ちた。
「「セレスティーナ様!!」」
神官たちの悲鳴が、広場に響き渡る。
人々は、「聖女様が、我々のために…!」と、さらに熱心に祈りを捧げ始めた。
リリアとヒルダも、その痛々しい姿に、顔を青くしている。
しかし、タケルは、腕を組んだまま、静かに、そして冷たく呟いた。
「やはりな。筋肉が、限界を迎えたか」
彼にとって、それは悲劇でも、自己犠牲の美しい物語でもなかった。
ただの、「準備不足のトレーニーが、無謀な挑戦の末に、潰れた」という、当然の結果に過ぎなかった。
神官たちが、倒れたセレスティーナを慌てて抱きかかえ、神殿の奥へと運んでいく。
その光景を、タケルは、まるで重症患者を診る医師のような、厳しい目で見つめていた。
「師匠…」
リリアが、心配そうに声をかける。
「あの聖女様、大丈夫なのでしょうか…」
「大丈夫ではない。大問題だ」
タケルは、きっぱりと言い切った。
「あのままでは、彼女は、いずれその奇跡とやらの代償で、命を落とすだろう。才能の、完全な無駄遣いだ」
彼は、くるりと踵を返すと、大神殿の、固く閉ざされた巨大な門を、まっすぐに見据えた。
「やはり、俺の診断は正しかった。あの聖女、根本から叩き直す必要がある」
その言葉に、リリアとヒルダは、血の気が引くのを感じた。
「ま、待ってください、師匠! どこへ行くのですか!?」
「決まっているだろう。カウンセリングと、メディカルチェックだ。そして、彼女に最適な、トレーニングメニューを処方してやる」
「ダメです! 神殿ですよ!? 聖域です! 不敬罪で、処刑されてしまいます!」
ヒルダも、必死にタケルを止めようとする。
「神罰が下りますよ、師匠!」
すると、タケルは、心底不思議そうな顔で、二人を振り返った。
「神罰より、トレーニングを一日休むことによる、筋分解(カタボリック)の方が、よほど恐ろしい。お前たちも、そうだろう?」
その、あまりに純粋で、狂気じみた問いかけに、リリアとヒルダは、もはや返す言葉もなかった。
タケルは、そんな二人の返事を待つこともなく、大神殿の、荘厳な装飾が施された巨大な門へと、迷いのない足取りで、歩みを進めていく。
彼の筋肉哲学が、いよいよ、神の領域に、無遠慮なノックをしようとしていた。
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