追放された【ガチャ師】の俺、鑑定不能のゴミアイテムばかり出ると思いきや、実は神話級の遺物だった件

夏見ナイ

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第二十話 旅立ちの決意

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蹴破られた扉の向こう、逆光の中に立つ神官長の顔は、怒りと憎悪で醜く歪んでいた。その目は、自由になったエリアナと、その隣に立つレクスに一直線に向けられている。

「貴様らか! よくも……よくも我々の神聖な儀式を邪魔してくれたな!」

神官長がわめくと、その両脇から槍を構えた兵士たちが五人、聖堂の中へと踏み込んできた。彼らは村の衛兵ではない。神官長の私兵だ。その目つきは、命令ならば無抵抗の少女すら殺しかねない冷酷さを宿している。

「儀式だと? 少女一人を鎖に繋いで、村人を騙すのがお前たちの儀式か」

レクスはエリアナを背後にかばい、ロングソードを静かに構えた。彼の冷たい声に、神官長は一瞬怯んだが、すぐに怒りで顔を赤くする。

「黙れ、よそ者が! その娘は呪われているのだ! 地下の邪気を封じるための、尊い生贄なのだぞ!」
「その嘘ももう終わりだ。地下の邪気は、あんたたちが管理を怠った結果だろう」
「なっ……!?」

図星を突かれ、神官長は言葉に詰まった。彼は全てを理解した上で、エリアナを利用していたのだ。

「もう問答は無用だ! その男を捕らえろ! 聖女を誑かした罪で処刑してくれる! 娘もだ! もう一度、今度は決して逃げられぬよう封印し直せ!」

神官長の号令一下、兵士たちが一斉に襲いかかってきた。狭い聖堂の中、槍の穂先が四方からレクスを狙う。
レクスは冷静だった。彼は床を蹴り、最も近くにいた兵士の懐へと飛び込む。槍は長い分、接近されると脆い。レクスは兵士の槍を柄の部分で弾くと、そのまま剣の柄を相手の鳩尾に叩き込んだ。

一体を戦闘不能にしたが、残りの四人がすぐに陣形を立て直す。彼らは訓練されている。連携を取りながら、レクスに反撃の隙を与えない。
一人が正面から突きを繰り出す。レクスがそれをいなすと、側面から別の槍が襲いかかる。彼はそれを最小限の動きでかわすが、じりじりと壁際に追い詰められていった。

「レクスさん!」

背後からエリアナの悲鳴が聞こえる。彼女は自分のせいでレクスが危険に陥っていることに、唇を噛み締めていた。
(私に、何かできることは……)

彼女は祈るように胸のペンダントを握りしめた。その時、彼女の脳裏に、力の使い方が流れ込んでくる。癒やしだけではない。聖なる力は、光そのもの。光は、道を照らし、時に敵の目を眩ませ、時に形を成して盾ともなる。

一人の兵士が、レクスから離れたエリアナを捕らえようと近づいてきた。そのいやらしい笑みを見て、エリアナの恐怖は怒りへと変わった。

「その人に、近づかないで!」

彼女は咄嗟に、兵士に向かって手をかざした。指先から放たれたのは、治癒の光ではない。眩い閃光だった。

「ぐわっ!?」

不意の光に目を焼かれた兵士は、たまらず顔を覆って後ずさる。聖なる光は彼の目にダメージを与え、一時的に視力を奪ったのだ。
エリアナ自身も、自分の力がそんな風に使えることに驚いていた。だが、レクスを守りたいという一心で、彼女はさらに力を解放した。

「光よ、彼の者を縛れ!」

エリアナが叫ぶと、レクスの足元を狙っていた別の兵士の影から、光でできた蔓が伸び、その足に絡みついた。兵士はバランスを崩し、その場に転倒する。

「な、なんだこの力は!?」
兵士たちが動揺する。エリアナの完璧な支援によって、彼らの連携は完全に崩壊した。

レクスがその好機を逃すはずもなかった。
「助かるぜ、エリアナ!」

彼は反撃に転じた。敵の動きは、もう手に取るように分かる。エリアナの光が敵の位置を正確に示し、その動きを鈍らせてくれる。
レクスは流れるような剣さばきで、兵士たちの槍を弾き、峰打ちで次々と無力化していく。それはもはや戦闘ではなく、一方的な制圧だった。

数分後。聖堂の床には、呻き声を上げる兵士たちだけが転がっていた。
残ったのは、腰を抜かしてその場にへたり込んでいる神官長だけだ。

「ひぃ……! ば、化け物……」

彼はレクスとエリアナを交互に見ながら、恐怖に震えている。
レクスは剣の切っ先を神官長に向けた。
「お前たちの好きにはさせない。この村のことも、いずれ王都の調査団が来るように手配しておく」

その言葉に、神官長は絶望の表情を浮かべた。
レクスは彼に背を向け、エリアナに手を差し伸べる。
「行こう、エリアナ。俺たちの旅は、まだ始まったばかりだ」

「はい!」

エリアナは力強く頷き、その手をしっかりと握った。彼女の瞳にもう、恐怖の色はない。あるのは、新たな世界への希望と、隣に立つ男への絶対的な信頼だけだった。

二人は崩れた扉から差し込む朝日の中へと歩き出す。
呪縛から解き放たれた本物の聖女と、神話の力を手にした追放者。
彼らの伝説は、今まさに、その第一歩を踏み出したのだった。
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