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第100話(最終話) そして、神になる
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俺の進化は、グラーヘイムに静かだが根源的な変化をもたらした。
俺が瞑想室から一歩外へ出た瞬間、都にいた全ての住民がその歩みを止め、王城のある方角に向かって深く、深くひれ伏した。
彼らは俺の姿を見ていない。
だが、その魂で感じ取っていたのだ。
自分たちの王が、もはや自分たちと同じ次元の存在ではない、遥か高みの神に近い領域へと至ったことを。
それは、もはや【魔王の覇気】のような強制力による服従ではなかった。
生命としての絶対的な格の違いを前にした、純粋な畏敬の念。
ガロンとリリアが慌てて俺の元へと駆けつけてきた。
そして、彼らもまた俺の新たな姿を見て言葉を失った。
「……ボス……? いや……我が王よ……。そのお姿は……」
ガロンは、あまりの神々しさに直視することさえできず、その場に膝をついた。
「ゴブ様……」
リリアは涙を浮かべていた。その瞳には寂しさの色はもうなかった。
そこにあったのは、自分が信じた王が本当に神へと至ったことへの純粋な歓喜と、信仰にも似た深い愛情の色だった。
「……心配をかけたな。二人とも」
俺の声は、もはや肉声ではなかった。
俺がそう思念するだけで、その言葉は彼らの心に直接響き渡っていた。
俺は生まれ変わったのだ。
神性魔物(デミゴッド・モンスター)。
それは肉体という枷から半ば解き放たれ、その意志そのものが世界に干渉する力を持つ、新たな生命体。
俺はゆっくりと、玉座の間へと歩を進めた。
俺が歩くたびに床の石畳からかすかな魔力の光が生まれ、まるで王の歩みを祝福するかのようにキラキラと輝いた。
玉座に、俺は座った。
かつてはゴブリンロードの巨体ですら少し大きく感じた玉座が、今の俺には少し小さく感じられた。
俺は目を閉じた。
俺の意識は、もはやこの玉座の間にはない。
それはグラーヘイム全体を、グラーヴェ大森林全体を、そしてアークライト王国を、魔王軍の領土を、大陸の全てを一瞬にして俯瞰していた。
千里眼などというちっぽけな魔法ではない。
俺の意識そのものが世界に遍在し、その全てを観測しているのだ。
これが神の視点。
俺は、見た。
王都で俺の国の存在を前に苦悩する人間の王を。
魔王城で俺というジョーカーの存在にほくそ笑む魔王を。
そして、この世界の名もなき場所で懸命に生きる、無数の生命の営みを。
なんと小さく、なんと愛おしい世界か。
俺はこれまで自分のため、仲間たちのために戦ってきた。
だが、今の俺にはもっと大きなものが見える。
この世界そのものが、喰らうべき獲物に見えた。
だが、それは破壊するという意味ではない。
この不完全で争いに満ちた世界を俺という存在の中に一度取り込み、そして俺の望む新たな秩序の元に再構築する。
それこそが、神となった俺が為すべきこと。
それこそが、俺の最後の【弱肉強食】。
俺はゆっくりと目を開けた。
玉座の前にひれ伏すガロンとリリアを見下ろす。
「ガロン。リリア」
「「はっ!」」
「――世界を、獲りに行くぞ」
俺の言葉は静かだった。
だが、それはこの世界の歴史の新たな始まりを告げる神託だった。
ガロンは歓喜に顔を輝かせた。
リリアは穏やかに、しかしどこまでもついていくという決意を込めて微笑んだ。
玉座に座る神々しい姿の王。
その口元に、かつてのゴブリンだった頃を彷彿とさせる獰猛で不敵な笑みが浮かんだ。
「さて、次は……何を食ってやろうか」
彼の食欲と進化はまだ終わらない。
世界の頂点を目指す本当の戦いは、これからだ。
(完)
俺が瞑想室から一歩外へ出た瞬間、都にいた全ての住民がその歩みを止め、王城のある方角に向かって深く、深くひれ伏した。
彼らは俺の姿を見ていない。
だが、その魂で感じ取っていたのだ。
自分たちの王が、もはや自分たちと同じ次元の存在ではない、遥か高みの神に近い領域へと至ったことを。
それは、もはや【魔王の覇気】のような強制力による服従ではなかった。
生命としての絶対的な格の違いを前にした、純粋な畏敬の念。
ガロンとリリアが慌てて俺の元へと駆けつけてきた。
そして、彼らもまた俺の新たな姿を見て言葉を失った。
「……ボス……? いや……我が王よ……。そのお姿は……」
ガロンは、あまりの神々しさに直視することさえできず、その場に膝をついた。
「ゴブ様……」
リリアは涙を浮かべていた。その瞳には寂しさの色はもうなかった。
そこにあったのは、自分が信じた王が本当に神へと至ったことへの純粋な歓喜と、信仰にも似た深い愛情の色だった。
「……心配をかけたな。二人とも」
俺の声は、もはや肉声ではなかった。
俺がそう思念するだけで、その言葉は彼らの心に直接響き渡っていた。
俺は生まれ変わったのだ。
神性魔物(デミゴッド・モンスター)。
それは肉体という枷から半ば解き放たれ、その意志そのものが世界に干渉する力を持つ、新たな生命体。
俺はゆっくりと、玉座の間へと歩を進めた。
俺が歩くたびに床の石畳からかすかな魔力の光が生まれ、まるで王の歩みを祝福するかのようにキラキラと輝いた。
玉座に、俺は座った。
かつてはゴブリンロードの巨体ですら少し大きく感じた玉座が、今の俺には少し小さく感じられた。
俺は目を閉じた。
俺の意識は、もはやこの玉座の間にはない。
それはグラーヘイム全体を、グラーヴェ大森林全体を、そしてアークライト王国を、魔王軍の領土を、大陸の全てを一瞬にして俯瞰していた。
千里眼などというちっぽけな魔法ではない。
俺の意識そのものが世界に遍在し、その全てを観測しているのだ。
これが神の視点。
俺は、見た。
王都で俺の国の存在を前に苦悩する人間の王を。
魔王城で俺というジョーカーの存在にほくそ笑む魔王を。
そして、この世界の名もなき場所で懸命に生きる、無数の生命の営みを。
なんと小さく、なんと愛おしい世界か。
俺はこれまで自分のため、仲間たちのために戦ってきた。
だが、今の俺にはもっと大きなものが見える。
この世界そのものが、喰らうべき獲物に見えた。
だが、それは破壊するという意味ではない。
この不完全で争いに満ちた世界を俺という存在の中に一度取り込み、そして俺の望む新たな秩序の元に再構築する。
それこそが、神となった俺が為すべきこと。
それこそが、俺の最後の【弱肉強食】。
俺はゆっくりと目を開けた。
玉座の前にひれ伏すガロンとリリアを見下ろす。
「ガロン。リリア」
「「はっ!」」
「――世界を、獲りに行くぞ」
俺の言葉は静かだった。
だが、それはこの世界の歴史の新たな始まりを告げる神託だった。
ガロンは歓喜に顔を輝かせた。
リリアは穏やかに、しかしどこまでもついていくという決意を込めて微笑んだ。
玉座に座る神々しい姿の王。
その口元に、かつてのゴブリンだった頃を彷彿とさせる獰猛で不敵な笑みが浮かんだ。
「さて、次は……何を食ってやろうか」
彼の食欲と進化はまだ終わらない。
世界の頂点を目指す本当の戦いは、これからだ。
(完)
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完結お疲れ様です。
個人的には魔王たちと戦って欲しかったですね