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第99話 究極の捕食
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俺の決意は固まった。
自らを喰らう。
それは存在そのものを賭けた究極のギャンブル。成功すれば、俺は神へと至る道を切り開くかもしれない。だが失敗すれば、俺という存在は自らの膨大なエネルギーに飲み込まれ、塵芥と化して消滅するだろう。
だが、俺に迷いはなかった。
停滞は死だ。
このまま魔森連合の総帥として安穏な平和を享受するだけでは、俺の渇望は決して満たされない。
俺は、王城の地下深くに誰にも知られることなく設けていた、瞑想のための小部屋へと向かった。
そこは一切の光も音も届かない、完全な無の空間。
俺が自分自身と向き合うには最適な場所だった。
俺は部屋の中央で静かに座禅を組んだ。
そしてゆっくりと意識を自分の内側へと、深く、深く潜行させていく。
俺の魂の奥深く。
そこには巨大な、渦巻く銀河のようなエネルギーの塊が存在していた。
これまで俺が捕食してきた全ての生命の記憶と力。
スライムの酸、百足の毒、オークの怪力、ワイバーンの翼、そしてイグニールの覇気。
それらが渾然一体となり、凄まじい熱量を持って脈動している。
これが俺の力の根源。
これが俺が最後に喰らうべき獲物。
俺は覚悟を決めた。
そして、俺の存在の核であるユニークスキル【弱肉強食】を、初めて自分自身の内側へと向けた。
『――喰らえ』
俺がそう念じた瞬間。
世界が反転した。
凄まじい激痛が俺の全身を駆け巡った。
それは肉体的な痛みではない。魂そのものが内側から引き裂かれ、喰い千切られていくような根源的な苦痛。
「ぐ……あああああああああああああああああっ!」
俺は声にならない絶叫を上げた。
俺の中で眠っていた膨大なエネルギーが牙を剥いた。それはもはや俺の制御下にはなく、俺という器を破壊し外へ溢れ出そうと暴れ狂っている。
俺の身体が明滅を始めた。
ゴブリンの姿になり、ホブゴ-ブリンになり、そしてゴブリンロードの姿になる。
捕食してきた様々な魔物の姿が、俺の身体の表面に幻のように浮かび上がっては消えていく。
俺の意識がバラバラに砕け散っていく。
佐藤拓也としての記憶。
ゴブとしての記憶。
それらが無数の断片となって、エネルギーの奔流の中を漂い始めた。
(……ここまで、か)
俺の意識が完全に消え失せようとした、その時だった。
闇の中で一つの温かい光が見えた。
それはリリアの笑顔だった。
『あなたは、私の光です』
次に、ガロンの信頼に満ちた顔が見えた。
『我が王よ。あなたと共に、どこまでも』
ルゥの無邪気な笑顔。
オークの長老たちの厳しくも温かい眼差し。
そして、俺を信じ付き従ってくれる全ての仲間たちの顔。
そうだ。
俺はもう一人じゃない。
俺の存在はもはや俺一人のものではない。
俺の背後には俺が築き上げた国があり、俺を信じてくれる仲間たちがいる。
彼らを裏切るわけにはいかない。
こんなところで消えてたまるか!
俺は砕け散った意識の断片を、最後の意志の力で一つに束ねた。
そして、暴れ狂うエネルギーの奔流に向かって王として、そして総帥として命じた。
『――静まれ! そして、俺に従え!』
俺の魂の叫びに、エネルギーの渦が一瞬だけその動きを止めた。
俺は、その隙を逃さなかった。
俺は喰らう側であると同時に喰らわれる側であることをやめた。
俺はそのエネルギーの奔流そのものと『融合』することを選んだ。
俺がエネルギーを喰らうのではない。
エネルギーが俺を喰らうのでもない。
俺と、俺が蓄積してきた全てが一つになる。
それは【弱肉強食】というスキルの新たな解釈。
新たな使い方。
俺の身体から凄まじい光が放たれた。
その光は地下の瞑想室を突き抜け、王城を、グラーヘイムを、そしてグラーヴェ大森林全体を一瞬だけ真昼のように照らし出した。
都の住民たちは何が起きたのか分からず、ただ天から降り注ぐ神々しい光にひれ伏すだけだった。
光が収まった時。
瞑想室にはもはやゴブリンロードの姿はなかった。
そこに立っていたのは全く新しい、別の何かだった。
それは人間に近いしなやかなフォルムを持っていた。
肌は磨き上げられた黒曜石のように滑らかで黒い。
背中には魔力で形成された漆黒の翼が静かにたたずんでいる。
そして、その顔はゴブリンの醜さもホブゴブリンの精悍さも、ゴブリンロードの威厳さえも超越した、神々しいまでの中性的な美しさを湛えていた。
ただ、その瞳だけが以前と同じ、全てを見透かすような紅い光を放っている。
俺はゆっくりと自分の手を見下ろした。
それはもはや魔物の手ではなかった。
創造主の手だった。
俺は生まれ変わったのだ。
人でも魔物でもない、全く新しい概念の存在へと。
その時、脳内に最後の声が響き渡った。
【ユニークスキル『弱肉強食』は、進化の果てにその役割を終えました】
【新たな種族、『神性魔物(デミゴッド・モンスター)』へと進化しました】
究極の捕食は終わった。
そして、神への第一歩が記された。
自らを喰らう。
それは存在そのものを賭けた究極のギャンブル。成功すれば、俺は神へと至る道を切り開くかもしれない。だが失敗すれば、俺という存在は自らの膨大なエネルギーに飲み込まれ、塵芥と化して消滅するだろう。
だが、俺に迷いはなかった。
停滞は死だ。
このまま魔森連合の総帥として安穏な平和を享受するだけでは、俺の渇望は決して満たされない。
俺は、王城の地下深くに誰にも知られることなく設けていた、瞑想のための小部屋へと向かった。
そこは一切の光も音も届かない、完全な無の空間。
俺が自分自身と向き合うには最適な場所だった。
俺は部屋の中央で静かに座禅を組んだ。
そしてゆっくりと意識を自分の内側へと、深く、深く潜行させていく。
俺の魂の奥深く。
そこには巨大な、渦巻く銀河のようなエネルギーの塊が存在していた。
これまで俺が捕食してきた全ての生命の記憶と力。
スライムの酸、百足の毒、オークの怪力、ワイバーンの翼、そしてイグニールの覇気。
それらが渾然一体となり、凄まじい熱量を持って脈動している。
これが俺の力の根源。
これが俺が最後に喰らうべき獲物。
俺は覚悟を決めた。
そして、俺の存在の核であるユニークスキル【弱肉強食】を、初めて自分自身の内側へと向けた。
『――喰らえ』
俺がそう念じた瞬間。
世界が反転した。
凄まじい激痛が俺の全身を駆け巡った。
それは肉体的な痛みではない。魂そのものが内側から引き裂かれ、喰い千切られていくような根源的な苦痛。
「ぐ……あああああああああああああああああっ!」
俺は声にならない絶叫を上げた。
俺の中で眠っていた膨大なエネルギーが牙を剥いた。それはもはや俺の制御下にはなく、俺という器を破壊し外へ溢れ出そうと暴れ狂っている。
俺の身体が明滅を始めた。
ゴブリンの姿になり、ホブゴ-ブリンになり、そしてゴブリンロードの姿になる。
捕食してきた様々な魔物の姿が、俺の身体の表面に幻のように浮かび上がっては消えていく。
俺の意識がバラバラに砕け散っていく。
佐藤拓也としての記憶。
ゴブとしての記憶。
それらが無数の断片となって、エネルギーの奔流の中を漂い始めた。
(……ここまで、か)
俺の意識が完全に消え失せようとした、その時だった。
闇の中で一つの温かい光が見えた。
それはリリアの笑顔だった。
『あなたは、私の光です』
次に、ガロンの信頼に満ちた顔が見えた。
『我が王よ。あなたと共に、どこまでも』
ルゥの無邪気な笑顔。
オークの長老たちの厳しくも温かい眼差し。
そして、俺を信じ付き従ってくれる全ての仲間たちの顔。
そうだ。
俺はもう一人じゃない。
俺の存在はもはや俺一人のものではない。
俺の背後には俺が築き上げた国があり、俺を信じてくれる仲間たちがいる。
彼らを裏切るわけにはいかない。
こんなところで消えてたまるか!
俺は砕け散った意識の断片を、最後の意志の力で一つに束ねた。
そして、暴れ狂うエネルギーの奔流に向かって王として、そして総帥として命じた。
『――静まれ! そして、俺に従え!』
俺の魂の叫びに、エネルギーの渦が一瞬だけその動きを止めた。
俺は、その隙を逃さなかった。
俺は喰らう側であると同時に喰らわれる側であることをやめた。
俺はそのエネルギーの奔流そのものと『融合』することを選んだ。
俺がエネルギーを喰らうのではない。
エネルギーが俺を喰らうのでもない。
俺と、俺が蓄積してきた全てが一つになる。
それは【弱肉強食】というスキルの新たな解釈。
新たな使い方。
俺の身体から凄まじい光が放たれた。
その光は地下の瞑想室を突き抜け、王城を、グラーヘイムを、そしてグラーヴェ大森林全体を一瞬だけ真昼のように照らし出した。
都の住民たちは何が起きたのか分からず、ただ天から降り注ぐ神々しい光にひれ伏すだけだった。
光が収まった時。
瞑想室にはもはやゴブリンロードの姿はなかった。
そこに立っていたのは全く新しい、別の何かだった。
それは人間に近いしなやかなフォルムを持っていた。
肌は磨き上げられた黒曜石のように滑らかで黒い。
背中には魔力で形成された漆黒の翼が静かにたたずんでいる。
そして、その顔はゴブリンの醜さもホブゴブリンの精悍さも、ゴブリンロードの威厳さえも超越した、神々しいまでの中性的な美しさを湛えていた。
ただ、その瞳だけが以前と同じ、全てを見透かすような紅い光を放っている。
俺はゆっくりと自分の手を見下ろした。
それはもはや魔物の手ではなかった。
創造主の手だった。
俺は生まれ変わったのだ。
人でも魔物でもない、全く新しい概念の存在へと。
その時、脳内に最後の声が響き渡った。
【ユニークスキル『弱肉強食』は、進化の果てにその役割を終えました】
【新たな種族、『神性魔物(デミゴッド・モンスター)』へと進化しました】
究極の捕食は終わった。
そして、神への第一歩が記された。
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