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第66話:第一の封印確保
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星見の塔の内部は、外見以上に神秘的な空間だった。
壁はなく、俺たちが登る螺旋階段はまるで星空の中に浮かんでいるかのようだった。足元には銀河を模したかのような魔力の光が渦を巻き、頭上には本物と見紛うばかりの美しい星座がゆっくりと巡っている。
「これが塔の内部……。まるで宇宙そのもの……」
ルナが感嘆の息を漏らした。彼女ですら、これほどの規模の空間魔術は見たことがないのだろう。
だが俺たちに、この絶景を楽しむ余裕はなかった。
階段の要所要所に、古代の魔術によって生み出されたガーディアンたちが待ち構えていたのだ。
石でできた巨大なゴーレム、魔力の矢を放ってくる幻影の射手、そして登る者の精神を蝕む幻惑の霧。
それらは塔に侵入する者を排除するための、強力な防衛機構だった。
だが俺たち三人の前では、それらの罠も足止めにすらならなかった。
「ゴーレムの弱点は胸のコアだ! ルナ、一点集中で!」
「幻影はリリアーナの聖なる光で祓える! 恐れるな!」
俺はゲーム知識に基づいた完璧な攻略法を、次々と指示していく。
ルナの精密な攻撃魔法がゴーレムの弱点を正確に撃ち抜き、リリアーナの浄化の光が幻影を霧散させる。俺は二人の前に立ち、物理的な攻撃や精神攻撃を全て魔剣で受け止め弾き返した。
俺たちの連携は、もはや一つの生命体のように完璧な調和を見せていた。
どれほどの階層を登っただろうか。
やがて螺旋階段の先に、最上階へと続く最後の扉が見えてきた。
だがその扉の前には、一体のガーディアンが静かに佇んでいた。
それは白銀の鎧に身を包んだ騎士の姿をしていた。その手には星屑を鍛えて作ったかのような美しい長剣が握られている。その姿からは、これまでのガーディアンとは比較にならない圧倒的な威圧感が放たれていた。
『――我は、星の守護者。この先へ進むに値するか、その魂、試させてもらう』
騎士は感情のない声でそう告げた。
「こいつは……!」
俺は息を呑んだ。
原作ゲームにおける、このダンジョンのボスキャラクター。『星辰の騎士』だ。
並の攻撃は一切通用しない。倒す方法はただ一つ。
彼の放つ星の力を宿した必殺の剣技を、同じ力で打ち破ることだけ。
「二人とも、手出しは無用だ」
俺は前に進み出た。
「こいつの相手は俺がやる」
「アレン!? 無茶よ! あいつの魔力は尋常じゃないわ!」
ルナが初めて焦りの声を上げた。
だが、俺は振り返らなかった。
「大丈夫だ。俺を信じろ」
その言葉に、ルナとリリアーナは押し黙るしかなかった。
俺は星辰の騎士と静かに対峙した。
騎士がゆっくりと長剣を構える。その刃に、周囲の星々の光が吸い寄せられるように集まっていく。
『――受けてみよ。我が奥義、星屑の斬撃(スターダスト・スラッシュ)!』
騎士の姿が掻き消えた。
次の瞬間、俺の目の前に銀河そのものを凝縮したかのような無数の光の斬撃が殺到した。
それは回避不能の、絶対的な一撃。
だが、俺はその一撃を待っていた。
俺は目を閉じた。
そして自らの魔力を極限まで高める。
俺がイメージしたのは星空ではない。
全てを飲み込み、光さえも逃さない深淵。
宇宙の闇。
俺の魔剣が黒い光を纏い始めた。
「――喰らえ。俺の、全てを」
俺は迫り来る星屑の斬撃に向かって、魔剣をただ真っ直ぐに振り抜いた。
俺の剣から放たれたのは斬撃ではない。
それは空間そのものを切り裂き、飲み込む『無』の波動だった。
光と闇が激突する。
音のない衝撃。
星屑の斬撃は俺の放った『無』の中に、一筋、また一筋と吸い込まれ消滅していく。
やがて全ての光が闇に飲まれ、塔の最上階は一瞬だけ完全な静寂と暗闇に包まれた。
光が戻った時、星辰の騎士はその場に静かに膝をついていた。
その体はひび割れ、少しずつ光の粒子となって崩れ落ちていく。
『……見事。汝の力、星を超えるか。その資格、認めよう』
騎士は最後の言葉を残し、完全に消滅した。
後に残されたのは静寂と、そしてゆっくりと開かれていく最上階の扉だけだった。
俺は魔剣を下ろし、荒い息をついた。
さすがに今の全力の一撃は、俺の魔力をごっそりと持っていかれた。
「アレン様……!」
リリアーナとルナが駆け寄ってくる。
俺はそんな彼女たちに、大丈夫だと笑ってみせた。
そして開かれた扉の向こう側へと足を踏み入れた。
最上階は円形の、がらんとした部屋だった。
だがその中央、宙に浮かぶようにして一つの水晶が静かな光を放っていた。
『星詠みの宝珠』。
最初の封印のアーティファクト。
俺はゆっくりとそれに近づき、そっと手を伸ばした。
宝珠に触れた瞬間、温かい光が俺の体を包み込んだ。
そして俺の脳内に、一つの声が響いた。
『――よくぞ、参られた。我が力を継ぐ者よ』
それは古の賢者の思念の残滓だった。
俺は第一の封負を、確かに確保したのだ。
だが安堵したのも束の間、宝珠を手にした俺の脳裏に別のビジョンが流れ込んできた。
それは南の火山、西の森、そして王都の地下で同時に闇の教団が他のアーティファクトを手に入れようとしている、不吉な光景だった。
「……まずい」
俺は歯噛みした。
俺たちが一つを手に入れている間に、奴らもまた着々と計画を進めていたのだ。
残された時間は本当に少ない。
俺は手にした宝珠を強く握りしめた。
この戦いはまだ始まったばかりだ。
俺は仲間たちが待つ城へと戻るため、そして次の戦場へと向かうため、急いで塔を降り始めた。
俺の胃はつかの間の達成感と新たな焦燥感の板挟みになり、複雑な悲鳴を上げていた。
壁はなく、俺たちが登る螺旋階段はまるで星空の中に浮かんでいるかのようだった。足元には銀河を模したかのような魔力の光が渦を巻き、頭上には本物と見紛うばかりの美しい星座がゆっくりと巡っている。
「これが塔の内部……。まるで宇宙そのもの……」
ルナが感嘆の息を漏らした。彼女ですら、これほどの規模の空間魔術は見たことがないのだろう。
だが俺たちに、この絶景を楽しむ余裕はなかった。
階段の要所要所に、古代の魔術によって生み出されたガーディアンたちが待ち構えていたのだ。
石でできた巨大なゴーレム、魔力の矢を放ってくる幻影の射手、そして登る者の精神を蝕む幻惑の霧。
それらは塔に侵入する者を排除するための、強力な防衛機構だった。
だが俺たち三人の前では、それらの罠も足止めにすらならなかった。
「ゴーレムの弱点は胸のコアだ! ルナ、一点集中で!」
「幻影はリリアーナの聖なる光で祓える! 恐れるな!」
俺はゲーム知識に基づいた完璧な攻略法を、次々と指示していく。
ルナの精密な攻撃魔法がゴーレムの弱点を正確に撃ち抜き、リリアーナの浄化の光が幻影を霧散させる。俺は二人の前に立ち、物理的な攻撃や精神攻撃を全て魔剣で受け止め弾き返した。
俺たちの連携は、もはや一つの生命体のように完璧な調和を見せていた。
どれほどの階層を登っただろうか。
やがて螺旋階段の先に、最上階へと続く最後の扉が見えてきた。
だがその扉の前には、一体のガーディアンが静かに佇んでいた。
それは白銀の鎧に身を包んだ騎士の姿をしていた。その手には星屑を鍛えて作ったかのような美しい長剣が握られている。その姿からは、これまでのガーディアンとは比較にならない圧倒的な威圧感が放たれていた。
『――我は、星の守護者。この先へ進むに値するか、その魂、試させてもらう』
騎士は感情のない声でそう告げた。
「こいつは……!」
俺は息を呑んだ。
原作ゲームにおける、このダンジョンのボスキャラクター。『星辰の騎士』だ。
並の攻撃は一切通用しない。倒す方法はただ一つ。
彼の放つ星の力を宿した必殺の剣技を、同じ力で打ち破ることだけ。
「二人とも、手出しは無用だ」
俺は前に進み出た。
「こいつの相手は俺がやる」
「アレン!? 無茶よ! あいつの魔力は尋常じゃないわ!」
ルナが初めて焦りの声を上げた。
だが、俺は振り返らなかった。
「大丈夫だ。俺を信じろ」
その言葉に、ルナとリリアーナは押し黙るしかなかった。
俺は星辰の騎士と静かに対峙した。
騎士がゆっくりと長剣を構える。その刃に、周囲の星々の光が吸い寄せられるように集まっていく。
『――受けてみよ。我が奥義、星屑の斬撃(スターダスト・スラッシュ)!』
騎士の姿が掻き消えた。
次の瞬間、俺の目の前に銀河そのものを凝縮したかのような無数の光の斬撃が殺到した。
それは回避不能の、絶対的な一撃。
だが、俺はその一撃を待っていた。
俺は目を閉じた。
そして自らの魔力を極限まで高める。
俺がイメージしたのは星空ではない。
全てを飲み込み、光さえも逃さない深淵。
宇宙の闇。
俺の魔剣が黒い光を纏い始めた。
「――喰らえ。俺の、全てを」
俺は迫り来る星屑の斬撃に向かって、魔剣をただ真っ直ぐに振り抜いた。
俺の剣から放たれたのは斬撃ではない。
それは空間そのものを切り裂き、飲み込む『無』の波動だった。
光と闇が激突する。
音のない衝撃。
星屑の斬撃は俺の放った『無』の中に、一筋、また一筋と吸い込まれ消滅していく。
やがて全ての光が闇に飲まれ、塔の最上階は一瞬だけ完全な静寂と暗闇に包まれた。
光が戻った時、星辰の騎士はその場に静かに膝をついていた。
その体はひび割れ、少しずつ光の粒子となって崩れ落ちていく。
『……見事。汝の力、星を超えるか。その資格、認めよう』
騎士は最後の言葉を残し、完全に消滅した。
後に残されたのは静寂と、そしてゆっくりと開かれていく最上階の扉だけだった。
俺は魔剣を下ろし、荒い息をついた。
さすがに今の全力の一撃は、俺の魔力をごっそりと持っていかれた。
「アレン様……!」
リリアーナとルナが駆け寄ってくる。
俺はそんな彼女たちに、大丈夫だと笑ってみせた。
そして開かれた扉の向こう側へと足を踏み入れた。
最上階は円形の、がらんとした部屋だった。
だがその中央、宙に浮かぶようにして一つの水晶が静かな光を放っていた。
『星詠みの宝珠』。
最初の封印のアーティファクト。
俺はゆっくりとそれに近づき、そっと手を伸ばした。
宝珠に触れた瞬間、温かい光が俺の体を包み込んだ。
そして俺の脳内に、一つの声が響いた。
『――よくぞ、参られた。我が力を継ぐ者よ』
それは古の賢者の思念の残滓だった。
俺は第一の封負を、確かに確保したのだ。
だが安堵したのも束の間、宝珠を手にした俺の脳裏に別のビジョンが流れ込んできた。
それは南の火山、西の森、そして王都の地下で同時に闇の教団が他のアーティファクトを手に入れようとしている、不吉な光景だった。
「……まずい」
俺は歯噛みした。
俺たちが一つを手に入れている間に、奴らもまた着々と計画を進めていたのだ。
残された時間は本当に少ない。
俺は手にした宝珠を強く握りしめた。
この戦いはまだ始まったばかりだ。
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