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第83話:唯一の弱点
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仲間たちの援護によって九死に一生を得た俺は、改めて不完全な魔神と対峙した。
その巨体は俺たちの攻撃を受けても傷一つついていない。それどころか、脈打つ肉塊から新たな触手を伸ばし、自己修oversightすら行っているようだった。
圧倒的な再生能力、そして尽きることのない魔力の奔流。
正攻法では絶対に勝てない。
それは火を見るより明らかだった。
『……ムシケラどもが……。マトマッテ……キエロ……』
魔神が地響きのような声で呟いた。
その歪な体の中央部分が巨大な口のように、ゆっくりと開かれていく。
その奥で凝縮された紫色の魔力が、太陽のように禍々しい光を放ち始めた。
ブレスだ。
全てを塵も残さず消し去る、破壊の奔流。
まずい。あれを撃たれたら俺だけでなく、頭上にいる仲間たちも一瞬で蒸発する。
(何か、何か手はないのか……!)
俺は脳内のゲーム知識を猛烈な勢いで検索した。
隠し設定、裏技、バグ。何でもいい。この化け物を倒すためのヒントは。
そして俺の記憶の片隅に、一つの極めてマイナーな情報が引っかかった。
それはゲームの開発者インタビューで、ライターがぽろりと漏らした没設定の一つだった。
『実は魔神ザルガードには、弱点として『体外に露出した心臓』という設定があったんです。でも、ラスボスがあまりに弱くなるのはどうかと思って、製品版ではオミットしたんですよね』
これだ。
俺は目の前の不完全な魔神を改めて観察した。
俺の術式ハッキングによってその体は歪な継ぎ接ぎだらけになっている。本来、体内に完璧に格納されるはずだった臓器の一部が、不完全な再生の過程で外部に露出していてもおかしくはない。
俺は自らの魔力探知能力を極限まで高めた。
そして探した。
魔神の巨大で混沌とした魔力の流れの中に、一つだけ他とは明らかに異なる生命力の源となる核(コア)の波動を。
あった。
それは魔神の背中、肩甲骨のちょうど中間あたり。
脈打つ肉塊の隙間に、赤黒く、そして力強く脈動する拳大の『心臓』が確かに露出していた。
あれがこの不完全な神の、唯一の、そして致命的な弱点。
だが、問題はどうやってそこを突くかだ。
魔神は俺を正面に捉え、ブレスの発射態勢に入っている。背中に回り込む隙などどこにもない。
それに、たとえ回り込めたとしても俺一人の攻撃で、あの心臓を破壊できる保証はない。
この状況を打開するには、仲間たちの力が必要不可欠だ。
俺は最後の賭けに出ることを決意した。
俺は精神感応で頭上の仲間たち全員に、同時に語りかけた。
『――皆、聞こえるか。今から俺の作戦を話す。一言も聞き漏らすな』
俺の切羽詰まった、しかし冷静な声に仲間たちが息を呑むのが分かった。
俺は弱点である心臓の存在とその位置を簡潔に伝えた。
そして、それぞれの役割を矢継ぎ早に指示していく。
『カイル、セレスティーナ。君たち二人がこの作戦の剣となる。俺が合図をしたら、同時にここへ飛び降りてこい。そして魔神の注意を全力で引きつけろ。奴の攻撃は全て俺とリリアーナが防ぐ。君たちはただ前だけを見て、奴を攪乱することに集中しろ』
『ルナ。君は後方支援だ。君の役目は二つ。一つは俺たちの足場を魔法で作ること。この空間は上下左右、全てが戦場になる。そしてもう一つは、敵の自己修復能力を阻害することだ。君の分析能力なら、奴の再生パターンの弱点を突けるはずだ』
『リリアーナ。君はこの作戦の盾だ。君の聖なる力の全てを防御に集中させろ。俺と共に仲間たちを魔神の攻撃から一瞬たりとも守り抜くんだ』
そして、俺は自らの役割を告げた。
『――俺は陽動になる』
その言葉に、仲間たちが絶句した。
『アレン様!?何を……!』
『陽動ですって!?一番危険じゃない!』
『合理的ではありません!貴方が倒れれば全てが終わる!』
仲間たちの悲痛な反対の声が俺の脳内に響く。
だが、俺は首を横に振った。
『いや。俺こそが陽動に最適だ。奴は俺を憎んでいる。俺をこの手で殺したいはずだ。その執着を利用する。俺が奴の意識を完全に引きつける。その隙に……』
俺はカイルに最後の指示を託した。
『――その隙に、カイル。お前が勇者の力で奴の心臓を貫くんだ』
それはあまりにも無謀で、そして俺の犠牲を前提としたかのような狂気の作戦。
だが、仲間たちはもう何も言わなかった。
彼らは理解したのだ。
これがこの絶望的な状況を覆すための、唯一の、そして最後の逆転のシナリオであることを。
そして彼らは俺を、リーダーを信じることを選んだ。
『……御意』
四人の覚悟に満ちた声が、俺の心に力強く響いた。
『――ブレス、来るぞ!』
俺は叫んだ。
魔神の口から全てを無に帰す紫色の破壊の光が、解き放たれようとしていた。
俺は、その光を真正面から睨みつけた。
逆転の作戦。
その幕が、今上がろうとしていた。
俺の胃はもはや痛みすら感じていなかった。
そこにあるのは仲間たちとの絆だけを頼りに神に挑む、一人の男の静かな、そして熱い覚悟だけだった。
その巨体は俺たちの攻撃を受けても傷一つついていない。それどころか、脈打つ肉塊から新たな触手を伸ばし、自己修oversightすら行っているようだった。
圧倒的な再生能力、そして尽きることのない魔力の奔流。
正攻法では絶対に勝てない。
それは火を見るより明らかだった。
『……ムシケラどもが……。マトマッテ……キエロ……』
魔神が地響きのような声で呟いた。
その歪な体の中央部分が巨大な口のように、ゆっくりと開かれていく。
その奥で凝縮された紫色の魔力が、太陽のように禍々しい光を放ち始めた。
ブレスだ。
全てを塵も残さず消し去る、破壊の奔流。
まずい。あれを撃たれたら俺だけでなく、頭上にいる仲間たちも一瞬で蒸発する。
(何か、何か手はないのか……!)
俺は脳内のゲーム知識を猛烈な勢いで検索した。
隠し設定、裏技、バグ。何でもいい。この化け物を倒すためのヒントは。
そして俺の記憶の片隅に、一つの極めてマイナーな情報が引っかかった。
それはゲームの開発者インタビューで、ライターがぽろりと漏らした没設定の一つだった。
『実は魔神ザルガードには、弱点として『体外に露出した心臓』という設定があったんです。でも、ラスボスがあまりに弱くなるのはどうかと思って、製品版ではオミットしたんですよね』
これだ。
俺は目の前の不完全な魔神を改めて観察した。
俺の術式ハッキングによってその体は歪な継ぎ接ぎだらけになっている。本来、体内に完璧に格納されるはずだった臓器の一部が、不完全な再生の過程で外部に露出していてもおかしくはない。
俺は自らの魔力探知能力を極限まで高めた。
そして探した。
魔神の巨大で混沌とした魔力の流れの中に、一つだけ他とは明らかに異なる生命力の源となる核(コア)の波動を。
あった。
それは魔神の背中、肩甲骨のちょうど中間あたり。
脈打つ肉塊の隙間に、赤黒く、そして力強く脈動する拳大の『心臓』が確かに露出していた。
あれがこの不完全な神の、唯一の、そして致命的な弱点。
だが、問題はどうやってそこを突くかだ。
魔神は俺を正面に捉え、ブレスの発射態勢に入っている。背中に回り込む隙などどこにもない。
それに、たとえ回り込めたとしても俺一人の攻撃で、あの心臓を破壊できる保証はない。
この状況を打開するには、仲間たちの力が必要不可欠だ。
俺は最後の賭けに出ることを決意した。
俺は精神感応で頭上の仲間たち全員に、同時に語りかけた。
『――皆、聞こえるか。今から俺の作戦を話す。一言も聞き漏らすな』
俺の切羽詰まった、しかし冷静な声に仲間たちが息を呑むのが分かった。
俺は弱点である心臓の存在とその位置を簡潔に伝えた。
そして、それぞれの役割を矢継ぎ早に指示していく。
『カイル、セレスティーナ。君たち二人がこの作戦の剣となる。俺が合図をしたら、同時にここへ飛び降りてこい。そして魔神の注意を全力で引きつけろ。奴の攻撃は全て俺とリリアーナが防ぐ。君たちはただ前だけを見て、奴を攪乱することに集中しろ』
『ルナ。君は後方支援だ。君の役目は二つ。一つは俺たちの足場を魔法で作ること。この空間は上下左右、全てが戦場になる。そしてもう一つは、敵の自己修復能力を阻害することだ。君の分析能力なら、奴の再生パターンの弱点を突けるはずだ』
『リリアーナ。君はこの作戦の盾だ。君の聖なる力の全てを防御に集中させろ。俺と共に仲間たちを魔神の攻撃から一瞬たりとも守り抜くんだ』
そして、俺は自らの役割を告げた。
『――俺は陽動になる』
その言葉に、仲間たちが絶句した。
『アレン様!?何を……!』
『陽動ですって!?一番危険じゃない!』
『合理的ではありません!貴方が倒れれば全てが終わる!』
仲間たちの悲痛な反対の声が俺の脳内に響く。
だが、俺は首を横に振った。
『いや。俺こそが陽動に最適だ。奴は俺を憎んでいる。俺をこの手で殺したいはずだ。その執着を利用する。俺が奴の意識を完全に引きつける。その隙に……』
俺はカイルに最後の指示を託した。
『――その隙に、カイル。お前が勇者の力で奴の心臓を貫くんだ』
それはあまりにも無謀で、そして俺の犠牲を前提としたかのような狂気の作戦。
だが、仲間たちはもう何も言わなかった。
彼らは理解したのだ。
これがこの絶望的な状況を覆すための、唯一の、そして最後の逆転のシナリオであることを。
そして彼らは俺を、リーダーを信じることを選んだ。
『……御意』
四人の覚悟に満ちた声が、俺の心に力強く響いた。
『――ブレス、来るぞ!』
俺は叫んだ。
魔神の口から全てを無に帰す紫色の破壊の光が、解き放たれようとしていた。
俺は、その光を真正面から睨みつけた。
逆転の作戦。
その幕が、今上がろうとしていた。
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