デバフ専門の支援術師は勇者パーティを追放されたので、呪いのアイテム専門店を開きます

夏見ナイ

文字の大きさ
88 / 89

第八十七話 七つの光、絶対の闇

しおりを挟む
創生の祭壇に、七つの光と絶対的な闇が激突した。

「行きます!」

クロエの赤い閃光が、戦いの口火を切った。彼女の斬撃は、音速を超え、魔王へと迫る。だが、魔王は指一本動かさない。クロエの大剣は、魔王に届く寸前で、空間そのものが歪んだかのように、その軌道を逸らされた。

「無駄だ。『支配の呪い』の前では、お前たちの物理法則は意味をなさない」

魔王の冷たい声が響く。

「ならば、理そのものを穿つ!」

エリオが、古代言語で複雑な魔法を詠唱する。空間を固定し、因果律を書き換える、禁断の魔法。だが、それすらも、魔王の闇に触れた途端、インクが水に滲むように、その効果を失っていった。

「くっ……! 私たちの力が、無力化されていく……!」

アカリの浄化の炎も、ミオの真空の刃も、ジンの大地の槍も、カイの聖なる水流も、全てが魔王の絶対的な虚無の前では、意味をなさなかった。

「なぜだ……。七つの力が合わさっても、届かないというのか……」

仲間たちが、次々と膝をついていく。その光景に、ノアは歯を食いしばった。

(違う。何かが、足りない……)

アルカナは言った。『彼を止められるのは、お前たち七つの力だけだ』と。だが、ただ力をぶつけるだけでは、勝てない。ならば、どうすれば。

その時、ノアの脳裏に、これまでの旅で出会ってきた人々の顔が、次々と浮かんだ。

自分の力を制御できずに苦しんでいた仲間たち。小さな悩みを抱え、それでも懸命に生きていた街の人々。追放された自分を、英雄と呼んでくれた人々。

彼らは皆、不完全で、弱くて、矛盾を抱えていた。だが、だからこそ、誰かを想い、支え合い、希望を紡いできた。

(そうか……。僕たちが戦う理由は、世界を救うなんて、大それたことじゃない)

ノアは、答えを見つけた。

「みんな! 聞いてくれ!」

ノアは、傷つき、倒れかけている仲間たちに叫んだ。

「僕たちの力は、魔王を倒すためのものじゃない! 僕たちが守りたい、大切な人たちの『想い』を、形にするための力なんだ!」

ノアは、胸元から一つのものを取り出した。それは、この旅が始まるきっかけとなった、ピート少年がくれた、ガラクタの手作りの小箱だった。

「この中には、父親を想う、子供の願いが込められていた。この想いが、千年の呪いさえも打ち破ったんだ! 僕たちの力は、僕たちだけのものじゃない。僕たちがこれまで出会ってきた、全ての人々の想いと、共にあるんだ!」

ノアの言葉に、仲間たちははっとした表情を浮かべた。

「そうだ……。私は、ノア様を守りたかった。ただ、それだけだった」
「僕も、真理を探求したかった。それは、誰かの未来を、明るく照らすためだった」
「私は、父様に認めてほしかった。そして、故郷の皆を、守りたかった」

仲間たち一人一人が、自分の力の原点、その根源にある純粋な『想い』を思い出した。

すると、彼らの体から放たれる光が、その質を変え始めた。それはもはや、ただの戦闘エネルギーではない。クロエの光は『信じる心』、エリオの光は『探求心』、アカリの光は『愛』……。一人一人の想いが、原初の力と結びつき、より高次元の概念へと昇華していく。

『……くだらん。感傷に浸ったところで、何も変わらんわ』

魔王は、その変化を鼻で笑う。

「変わるさ」

ノアは、静かに言った。彼は、仲間たちの七色の光を、再び自分の中へと集めていく。

「お前の言う『無』の世界には、想いがない。絆がない。だから、お前には決して理解できない。この、不完全な僕たちが紡ぎ出す、無限の可能性の力が!」

「【呪物錬成】!!」

ノアの最後の錬成が、始まった。その素材は、仲間たちの想い。そして、彼がこの旅で出会ってきた、全ての人々の願い。

ノアの手に、一つの『呪物』が創造された。それは、剣でも、盾でもない。ただ、温かい光を放つ、小さな『種』だった。

「『希望の種子(シード・オブ・ホープ)』……」

ノアは、その種を、創生の祭壇の中央、全ての魔力が生まれる源泉へと、そっと置いた。

種は、祭壇の力と、仲間たちの想いを吸い上げ、瞬く間に芽吹き、成長していく。それは、天を突くほどの巨大な、光の大樹となった。

大樹の枝葉は、世界中に広がり、その根は、人々の心と心とを繋いでいく。

『これは……!?』

魔王が、初めて狼狽の声を上げた。彼の『支配の呪い』が、効かない。人々の心が、希望の光で繋がり、彼の支配を拒絶しているのだ。

「終わりだ、魔王」

ノアは、仲間たちと共に、光の大樹の前に立った。七つの光が、完全に一つになる。

「僕たちは、お前を滅ぼさない。ただ、君にもう一度、思い出させるだけだ。君が、かつて持っていたはずの、温かい想いを」

七色の光が、魔王を優しく包み込んだ。それは、罰ではない。救済でもない。ただ、あるがままを受け入れる、世界の愛そのものだった。

魔王の瞳から、一筋の涙がこぼれ落ちた。それは、彼が何千年も前に失ってしまった、ただの人間だった頃の、悲しみの涙だった。

闇は、光の中に溶けていった。

世界の夜明けは、すぐそこまで来ていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

外れスキル【アイテム錬成】でSランクパーティを追放された俺、実は神の素材で最強装備を創り放題だったので、辺境で気ままな工房を開きます

夏見ナイ
ファンタジー
Sランクパーティで「外れスキル」と蔑まれ、雑用係としてこき使われていた錬金術師のアルト。ある日、リーダーの身勝手な失敗の責任を全て押し付けられ、無一文でパーティから追放されてしまう。 絶望の中、流れ着いた辺境の町で、彼は偶然にも伝説の素材【神の涙】を発見。これまで役立たずと言われたスキル【アイテム錬成】が、実は神の素材を扱える唯一無二のチート能力だと知る。 辺境で小さな工房を開いたアルトの元には、彼の作る規格外のアイテムを求めて、なぜか聖女や竜王(美少女の姿)まで訪れるようになり、賑やかで幸せな日々が始まる。 一方、アルトを失った元パーティは没落の一途を辿り、今更になって彼に復帰を懇願してくるが――。「もう、遅いんです」 これは、不遇だった青年が本当の居場所を見つける、ほのぼの工房ライフ&ときどき追放ざまぁファンタジー!

スキル【収納】が実は無限チートだった件 ~追放されたけど、俺だけのダンジョンで伝説のアイテムを作りまくります~

みぃた
ファンタジー
地味なスキル**【収納】**しか持たないと馬鹿にされ、勇者パーティーを追放された主人公。しかし、その【収納】スキルは、ただのアイテム保管庫ではなかった! 無限にアイテムを保管できるだけでなく、内部の時間操作、さらには指定した素材から自動でアイテムを生成する機能まで備わった、規格外の無限チートスキルだったのだ。 追放された主人公は、このチートスキルを駆使し、収納空間の中に自分だけの理想のダンジョンを創造。そこで伝説級のアイテムを量産し、いずれ世界を驚かせる存在となる。そして、かつて自分を蔑み、追放した者たちへの爽快なざまぁが始まる。

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。 洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。 レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。 しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。 スキルを手にしてから早5年――。 「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」 突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。 森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。 それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。 「どうせならこの森で1番派手にしようか――」 そこから更に8年――。 18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。 「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」 最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。 そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜

桜井正宗
ファンタジー
 能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。  スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。  真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

《レベル∞》の万物創造スキルで追放された俺、辺境を開拓してたら気づけば神々の箱庭になっていた

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティーの雑用係だったカイは、魔王討伐後「無能」の烙印を押され追放される。全てを失い、死を覚悟して流れ着いた「忘れられた辺境」。そこで彼のハズレスキルは真の姿《万物創造》へと覚醒した。 無から有を生み、世界の理すら書き換える神の如き力。カイはまず、生きるために快適な家を、豊かな畑を、そして清らかな川を創造する。荒れ果てた土地は、みるみるうちに楽園へと姿を変えていった。 やがて、彼の元には行き場を失った獣人の少女やエルフの賢者、ドワーフの鍛冶師など、心優しき仲間たちが集い始める。これは、追放された一人の青年が、大切な仲間たちと共に理想郷を築き、やがてその地が「神々の箱庭」と呼ばれるまでの物語。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

処理中です...