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第79話 呪いの核
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絶望的な闇が、津波のように俺とセシリアに迫る。それは魂を根こそぎ消滅させるほどの、純粋な破壊のエネルギーだった。もはや、この精神世界を塗り替えるだけでは防ぎきれない。
(ここまで、なのか……!)
俺が死を覚悟した、その瞬間。
『――まだよ!』
ノエルの声が、雷鳴のように頭の中に響き渡った。
『ルーク! 敵は、その身を捨てて最後の攻撃を仕掛けてきた! つまり、奴は今、完全に無防備だ! 思い出して! 森の主を倒した、あの一撃を!』
森の主……トレントとの戦い。そうだ、あの時と同じだ。俺の創生の力を、直接敵の核に叩き込む。
だが、どうやって? あの巨大な闇の塊に、どうやって近づけば……。
『道は私が作る!』
今度はリゼットの力強い声が響いた。まるで、現実世界で戦う彼女の闘志が次元を超えて俺に力を与えてくれるかのように。
その声に応えるように、俺の目の前の空間がわずかに歪んだ。そして、そこから一本の、銀色に輝く光の剣が姿を現した。
それはリゼットの愛剣そのものだった。いや、その魂の形を借りて、俺の創生の力が具現化した『魂の剣』とでも言うべきものだった。
俺は迷わずその剣を握りしめた。しっくりと手に馴染む。まるで、ずっと昔から俺の相棒であったかのように。
『行きなさい、ルーク!』
仲間たちの声が、俺の背中を押す。
俺はセシリアを振り返った。彼女は恐怖に震えながらも、その瑠璃色の瞳でまっすぐに俺を見つめていた。その瞳には俺への絶対的な信頼が宿っている。
「……信じてる。ルーク」
そのか細い声が、俺に最後の勇気をくれた。
俺は頷いた。そして、迫り来る闇の津波に向かって真正面から駆け出した。
『愚かな! 自ら死にに来るとは!』
呪いの核が嘲笑う。だが、今の俺に恐怖はなかった。
俺は魂の剣を構え、全身全霊の創生の力をその剣先に集中させる。剣が太陽のように眩い、黄金の輝きを放ち始めた。
闇と光が激突する。
凄まじい衝撃。俺の魂が軋むような悲鳴を上げる。だが、俺は一歩も引かなかった。
「お前に彼女の魂は渡さない!」
俺は雄叫びを上げ、闇の奔流を黄金の剣で切り裂いていく。闇が光に触れて、霧のように蒸発していく。
俺は闇の中心、呪いの核そのものである巨大な一つ目に向かって突き進んだ。
『ばかな……! ありえん! ただの人間の魂が、なぜこれほどの力を……!』
呪いの核が狼狽の声を上げる。
俺の力はただの創生の力ではない。ミストラル村の仲間たち、エリアナ、そして今、目の前にいるセシリア。守りたいと願う強い想い。その全てが俺の魂の力となっていたのだ。
ついに俺は、呪いの核の巨大な目の前まで到達した。
「これで、終わりだ!」
俺は魂の剣を力強く振り上げた。そして、その憎悪に満ちた瞳の中心に向かって、渾身の力を込めて突き刺した。
剣が吸い込まれるように、核の奥深くへと突き刺さる。
時間は止まった。
呪いの核の巨大な目が、信じられないといった風に俺を見つめている。
『……我ガ……消エル……? こンナ……光ニ……』
それが彼の最後の言葉だった。
次の瞬間。
俺の剣から創生の光が奔流となって溢れ出した。光は呪いの核を内側から浄化し、その存在そのものを光の粒子へと変えていく。
枯れ木だった巨体は眩い光に包まれ、やがて一本の若々しい苗木へと姿を変えた。
世界から闇が消えた。
鉛色の空はどこまでも澄み渡る青空へと変わり、温かい太陽の光が花咲き乱れる楽園を優しく照らし出していた。
俺は、その光景を呆然と見つめていた。
勝った。
俺は勝ったんだ。
だが、その安堵も束の間。俺の魂は最後の力を使い果たし、急速にその輪郭を失い始めていた。意識が遠のいていく。
(……ああ、俺もここまでか……)
仲間たちとの約束を守れそうにない。その無念が胸をよぎる。
その時。
小さな温かい手が、俺の手をそっと握った。
セシリアだった。彼女はいつの間にか俺の隣に立ち、その瑠璃色の瞳で俺を心配そうに見つめていた。
「……だめ。まだ、行っちゃだめ」
彼女はそう言うと、俺の手に自分の小さな手を重ねた。そして、その瞳を閉じ、静かに祈りを捧げ始めた。
すると彼女の体から、俺の創生水とはまた違う、清らかで神聖な月の光のような力が溢れ出し、俺の消えかけていた魂を優しく包み込んでいった。
『星の器』。その本来の力。それは他者の魂を癒し、導く慈愛の力だった。
俺の魂は彼女の光によって、再びその形を取り戻していく。
「……ありがとう、セシリア様」
俺がそう言うと、彼女ははにかむように微笑んだ。
「ううん。ありがとうは私のほう。……ルーク」
彼女は初めて俺を名前で呼んでくれた。
『ルーク! 聞こえる!?』
頭の中にノエルの、安堵に満ちた声が響いてくる。
『……よくやったね。本当に』
その声は涙で震えていた。
『帰ってこい、ルーク。みんなが、お前の帰りを待っている』
リゼットの声。
俺は頷いた。
セシリアと手を繋いだまま。
俺たちの体は温かい光に包まれ、ゆっくりと宙に浮き上がっていく。
目指すは現実の世界。
俺を待つ、かけがえのない仲間たちの元へ。
長かった魂の戦いは、今、終わりを告げた。
(ここまで、なのか……!)
俺が死を覚悟した、その瞬間。
『――まだよ!』
ノエルの声が、雷鳴のように頭の中に響き渡った。
『ルーク! 敵は、その身を捨てて最後の攻撃を仕掛けてきた! つまり、奴は今、完全に無防備だ! 思い出して! 森の主を倒した、あの一撃を!』
森の主……トレントとの戦い。そうだ、あの時と同じだ。俺の創生の力を、直接敵の核に叩き込む。
だが、どうやって? あの巨大な闇の塊に、どうやって近づけば……。
『道は私が作る!』
今度はリゼットの力強い声が響いた。まるで、現実世界で戦う彼女の闘志が次元を超えて俺に力を与えてくれるかのように。
その声に応えるように、俺の目の前の空間がわずかに歪んだ。そして、そこから一本の、銀色に輝く光の剣が姿を現した。
それはリゼットの愛剣そのものだった。いや、その魂の形を借りて、俺の創生の力が具現化した『魂の剣』とでも言うべきものだった。
俺は迷わずその剣を握りしめた。しっくりと手に馴染む。まるで、ずっと昔から俺の相棒であったかのように。
『行きなさい、ルーク!』
仲間たちの声が、俺の背中を押す。
俺はセシリアを振り返った。彼女は恐怖に震えながらも、その瑠璃色の瞳でまっすぐに俺を見つめていた。その瞳には俺への絶対的な信頼が宿っている。
「……信じてる。ルーク」
そのか細い声が、俺に最後の勇気をくれた。
俺は頷いた。そして、迫り来る闇の津波に向かって真正面から駆け出した。
『愚かな! 自ら死にに来るとは!』
呪いの核が嘲笑う。だが、今の俺に恐怖はなかった。
俺は魂の剣を構え、全身全霊の創生の力をその剣先に集中させる。剣が太陽のように眩い、黄金の輝きを放ち始めた。
闇と光が激突する。
凄まじい衝撃。俺の魂が軋むような悲鳴を上げる。だが、俺は一歩も引かなかった。
「お前に彼女の魂は渡さない!」
俺は雄叫びを上げ、闇の奔流を黄金の剣で切り裂いていく。闇が光に触れて、霧のように蒸発していく。
俺は闇の中心、呪いの核そのものである巨大な一つ目に向かって突き進んだ。
『ばかな……! ありえん! ただの人間の魂が、なぜこれほどの力を……!』
呪いの核が狼狽の声を上げる。
俺の力はただの創生の力ではない。ミストラル村の仲間たち、エリアナ、そして今、目の前にいるセシリア。守りたいと願う強い想い。その全てが俺の魂の力となっていたのだ。
ついに俺は、呪いの核の巨大な目の前まで到達した。
「これで、終わりだ!」
俺は魂の剣を力強く振り上げた。そして、その憎悪に満ちた瞳の中心に向かって、渾身の力を込めて突き刺した。
剣が吸い込まれるように、核の奥深くへと突き刺さる。
時間は止まった。
呪いの核の巨大な目が、信じられないといった風に俺を見つめている。
『……我ガ……消エル……? こンナ……光ニ……』
それが彼の最後の言葉だった。
次の瞬間。
俺の剣から創生の光が奔流となって溢れ出した。光は呪いの核を内側から浄化し、その存在そのものを光の粒子へと変えていく。
枯れ木だった巨体は眩い光に包まれ、やがて一本の若々しい苗木へと姿を変えた。
世界から闇が消えた。
鉛色の空はどこまでも澄み渡る青空へと変わり、温かい太陽の光が花咲き乱れる楽園を優しく照らし出していた。
俺は、その光景を呆然と見つめていた。
勝った。
俺は勝ったんだ。
だが、その安堵も束の間。俺の魂は最後の力を使い果たし、急速にその輪郭を失い始めていた。意識が遠のいていく。
(……ああ、俺もここまでか……)
仲間たちとの約束を守れそうにない。その無念が胸をよぎる。
その時。
小さな温かい手が、俺の手をそっと握った。
セシリアだった。彼女はいつの間にか俺の隣に立ち、その瑠璃色の瞳で俺を心配そうに見つめていた。
「……だめ。まだ、行っちゃだめ」
彼女はそう言うと、俺の手に自分の小さな手を重ねた。そして、その瞳を閉じ、静かに祈りを捧げ始めた。
すると彼女の体から、俺の創生水とはまた違う、清らかで神聖な月の光のような力が溢れ出し、俺の消えかけていた魂を優しく包み込んでいった。
『星の器』。その本来の力。それは他者の魂を癒し、導く慈愛の力だった。
俺の魂は彼女の光によって、再びその形を取り戻していく。
「……ありがとう、セシリア様」
俺がそう言うと、彼女ははにかむように微笑んだ。
「ううん。ありがとうは私のほう。……ルーク」
彼女は初めて俺を名前で呼んでくれた。
『ルーク! 聞こえる!?』
頭の中にノエルの、安堵に満ちた声が響いてくる。
『……よくやったね。本当に』
その声は涙で震えていた。
『帰ってこい、ルーク。みんなが、お前の帰りを待っている』
リゼットの声。
俺は頷いた。
セシリアと手を繋いだまま。
俺たちの体は温かい光に包まれ、ゆっくりと宙に浮き上がっていく。
目指すは現実の世界。
俺を待つ、かけがえのない仲間たちの元へ。
長かった魂の戦いは、今、終わりを告げた。
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