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第95話 浄化の光
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邪神が消滅した後に降り注いだ光の粒子は、王都全体を優しく包み込み、夜が明ける頃にはまるで奇跡のような光景を生み出していた。
邪教徒たちによって破壊された建物はその傷跡が嘘のように修復され、火災の煤に汚れていた壁は元の輝きを取り戻していた。戦闘で傷ついた騎士や民衆の傷は跡形もなく消え去り、誰もが長い悪夢から覚めたかのような晴れやかな顔をしていた。
王都は文字通り一夜にして浄化されたのだ。
大神殿の残骸の中で、俺たちは昇り始めた朝日に照らされながらその光景を呆然と眺めていた。
「……すごいな。ルークのあの一撃は」
リゼットが感慨深げに呟いた。
「うん。邪神を消滅させるだけじゃなく、その存在そのものを善なるエネルギーに変換して世界に還元したんだ。破壊の対極にある完全な創生。……薬師としてこんな現象、初めて見たよ」
ノエルも興奮した様子で分析している。
俺自身も自分の身に起きたことがまだ信じられなかった。あの力はもはや俺一人の力ではない。仲間たちの、そして遠い故郷からの想いが、俺という器を通して奇跡を起こしたのだ。
やがて王城の方から、国王アルトリウス七世が数名の近衛騎士だけを連れて自らこの場所へとやってきた。彼は崩壊した大神殿の惨状と、その中で朝日を浴びる俺たちの姿を認めると、馬から降りてゆっくりと歩み寄ってきた。
その顔には一国の王としての威厳ではなく、ただ民を愛する一人の男としての深い感謝の色が浮かんでいた。
彼は俺たちの前に立つと何も言わずに、ただ深く、深く頭を下げた。
「……言葉もない」
ようやく絞り出された彼の声は、感謝と感動で震えていた。
「お主たちはただ王都を救っただけではない。この国を、いや、この世界を終焉の危機から救ってくれた。この御恩はテオラシア王国の歴史が続く限り、決して忘れられることはないだろう」
国王のその言葉が、俺たちの戦いが本当に終わったのだということを実感させてくれた。
その日のうちに王都に残っていた『奈落の蛇』の残党は勢いを失い、王国騎士団によって次々と捕縛されていった。教主と幹部を失った彼らはもはや統率の取れた組織ではなく、ただの烏合の衆と化していた。
ゲオルグがもたらしたアジトの情報から、彼らの計画の全貌も明らかになった。王国の主要な貴族や大臣たちの中に既に何人もの協力者が潜んでおり、国を内側から蝕んでいたことも判明した。王都はこれから大きな粛清の嵐に見舞われることになるだろう。
そして、ゲオルグ自身は。
彼はあの日、俺に全てを告白した後、自ら神殿騎士団に出頭しその罪を全て認めたという。国王は彼が最後に国を救う情報をもたらしたことを鑑み、死罪だけは免じたが、彼の家名は剥奪され、その身は人里離れた大神殿の最北の修道院へと生涯幽閉されることになった。
彼がその場所で本当に自分の罪と向き合い、魂の救済を見つけられるのか。それは誰にも分からない。
数日後。
王都は復興と勝利の祝賀ムードに包まれていた。大神殿の再建も急ピッチで進められている。
そんな中、俺たち三人は再び国王の前に招かれていた。場所は王城の最も格式の高い謁見の間。そこには王国の全ての貴族と大臣、そして大神殿の幹部たちが勢揃いしていた。
その満場の聴衆の前で、国王アルトリウス七世は高らかに宣言した。
「ここに、我が国の、いや、世界の救世主たる三名の英雄を称える!」
玉座の横には回復した聖女セシリアが穏やかな笑みを浮かべて座っている。彼女の瑠璃色の瞳が誇らしげに俺たちを見つめていた。
「元王国騎士団、リゼット・フォン・アイゼン! その比類なき武勇と忠誠心に、王国最高の栄誉である『聖剣騎士』の称号を授ける!」
リゼットが騎士の礼を取り、国王から白銀に輝く美しい儀礼剣を受け取る。かつて彼女を追放した騎士団の者たちが、今は羨望と尊敬の眼差しで彼女を見つめていた。
「森の賢者、ノエル! その深遠なる知識と知恵に、王宮魔術師団及び大神殿の最高顧問の地位を与える! その知識を未来永劫、この国のために役立ててほしい!」
ノエルは少し面倒くさそうに、しかし、まんざらでもないといった顔で一礼した。
そして、最後に。
国王は俺の前に立った。その目はこれ以上ないほどの尊敬と感謝に満ちていた。
「そして、ルーク・アークライト! 『泥の聖者』よ! その奇跡の力と、何よりもその気高き自己犠牲の魂に、我らは何を以て報いるべきか言葉も見つからん」
彼は一呼吸置いた。
「よって、ここに大神殿の次期神官長の地位を、お主に与えることを聖女様の名の下に布告する! どうかその偉大なる力で、この大神殿を、そしてこの国を未来永劫導いてはくれまいか!」
その言葉に謁見の間は割れんばかりの拍手と歓声に包まれた。
次期神官長。
それは俺がかつて夢見ることすら許されなかった大神殿の最高位。俺を蔑み追放したこの場所の頂点に立つこと。
それはこれ以上ない名誉であり、そして完璧な復讐の完成を意味していた。
誰もが俺がその地位を喜んで受け入れるものだと信じて疑っていなかった。
俺は静かに国王の前に進み出た。そして、満場の聴衆が見守る中、ゆっくりとその口を開いた。
俺の答えは、彼らの誰もが予想だにしなかったものだった。
邪教徒たちによって破壊された建物はその傷跡が嘘のように修復され、火災の煤に汚れていた壁は元の輝きを取り戻していた。戦闘で傷ついた騎士や民衆の傷は跡形もなく消え去り、誰もが長い悪夢から覚めたかのような晴れやかな顔をしていた。
王都は文字通り一夜にして浄化されたのだ。
大神殿の残骸の中で、俺たちは昇り始めた朝日に照らされながらその光景を呆然と眺めていた。
「……すごいな。ルークのあの一撃は」
リゼットが感慨深げに呟いた。
「うん。邪神を消滅させるだけじゃなく、その存在そのものを善なるエネルギーに変換して世界に還元したんだ。破壊の対極にある完全な創生。……薬師としてこんな現象、初めて見たよ」
ノエルも興奮した様子で分析している。
俺自身も自分の身に起きたことがまだ信じられなかった。あの力はもはや俺一人の力ではない。仲間たちの、そして遠い故郷からの想いが、俺という器を通して奇跡を起こしたのだ。
やがて王城の方から、国王アルトリウス七世が数名の近衛騎士だけを連れて自らこの場所へとやってきた。彼は崩壊した大神殿の惨状と、その中で朝日を浴びる俺たちの姿を認めると、馬から降りてゆっくりと歩み寄ってきた。
その顔には一国の王としての威厳ではなく、ただ民を愛する一人の男としての深い感謝の色が浮かんでいた。
彼は俺たちの前に立つと何も言わずに、ただ深く、深く頭を下げた。
「……言葉もない」
ようやく絞り出された彼の声は、感謝と感動で震えていた。
「お主たちはただ王都を救っただけではない。この国を、いや、この世界を終焉の危機から救ってくれた。この御恩はテオラシア王国の歴史が続く限り、決して忘れられることはないだろう」
国王のその言葉が、俺たちの戦いが本当に終わったのだということを実感させてくれた。
その日のうちに王都に残っていた『奈落の蛇』の残党は勢いを失い、王国騎士団によって次々と捕縛されていった。教主と幹部を失った彼らはもはや統率の取れた組織ではなく、ただの烏合の衆と化していた。
ゲオルグがもたらしたアジトの情報から、彼らの計画の全貌も明らかになった。王国の主要な貴族や大臣たちの中に既に何人もの協力者が潜んでおり、国を内側から蝕んでいたことも判明した。王都はこれから大きな粛清の嵐に見舞われることになるだろう。
そして、ゲオルグ自身は。
彼はあの日、俺に全てを告白した後、自ら神殿騎士団に出頭しその罪を全て認めたという。国王は彼が最後に国を救う情報をもたらしたことを鑑み、死罪だけは免じたが、彼の家名は剥奪され、その身は人里離れた大神殿の最北の修道院へと生涯幽閉されることになった。
彼がその場所で本当に自分の罪と向き合い、魂の救済を見つけられるのか。それは誰にも分からない。
数日後。
王都は復興と勝利の祝賀ムードに包まれていた。大神殿の再建も急ピッチで進められている。
そんな中、俺たち三人は再び国王の前に招かれていた。場所は王城の最も格式の高い謁見の間。そこには王国の全ての貴族と大臣、そして大神殿の幹部たちが勢揃いしていた。
その満場の聴衆の前で、国王アルトリウス七世は高らかに宣言した。
「ここに、我が国の、いや、世界の救世主たる三名の英雄を称える!」
玉座の横には回復した聖女セシリアが穏やかな笑みを浮かべて座っている。彼女の瑠璃色の瞳が誇らしげに俺たちを見つめていた。
「元王国騎士団、リゼット・フォン・アイゼン! その比類なき武勇と忠誠心に、王国最高の栄誉である『聖剣騎士』の称号を授ける!」
リゼットが騎士の礼を取り、国王から白銀に輝く美しい儀礼剣を受け取る。かつて彼女を追放した騎士団の者たちが、今は羨望と尊敬の眼差しで彼女を見つめていた。
「森の賢者、ノエル! その深遠なる知識と知恵に、王宮魔術師団及び大神殿の最高顧問の地位を与える! その知識を未来永劫、この国のために役立ててほしい!」
ノエルは少し面倒くさそうに、しかし、まんざらでもないといった顔で一礼した。
そして、最後に。
国王は俺の前に立った。その目はこれ以上ないほどの尊敬と感謝に満ちていた。
「そして、ルーク・アークライト! 『泥の聖者』よ! その奇跡の力と、何よりもその気高き自己犠牲の魂に、我らは何を以て報いるべきか言葉も見つからん」
彼は一呼吸置いた。
「よって、ここに大神殿の次期神官長の地位を、お主に与えることを聖女様の名の下に布告する! どうかその偉大なる力で、この大神殿を、そしてこの国を未来永劫導いてはくれまいか!」
その言葉に謁見の間は割れんばかりの拍手と歓声に包まれた。
次期神官長。
それは俺がかつて夢見ることすら許されなかった大神殿の最高位。俺を蔑み追放したこの場所の頂点に立つこと。
それはこれ以上ない名誉であり、そして完璧な復讐の完成を意味していた。
誰もが俺がその地位を喜んで受け入れるものだと信じて疑っていなかった。
俺は静かに国王の前に進み出た。そして、満場の聴衆が見守る中、ゆっくりとその口を開いた。
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