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第27話:錬金術師の秘密兵器
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パイク方陣とクロスボウ部隊の連携。それは確かに、グライフ軍の騎士団に対抗するための強力な布陣だった。だが、俺の目には、まだ勝利を確実にするには足りないものが見えていた。
戦場の勝敗は、兵力や武器の性能だけで決まるものではない。兵士たちの士気、指揮系統の混乱、そして「心理的な衝撃」。そういった目に見えない要素が、しばしば戦局を決定づける。
グライフ子爵が率いるのは、正規軍だけではない。王都で悪名高い傭兵団「鉄の爪」もいる。彼らは戦いのプロだ。こちらの戦術に気づけば、すぐに何らかの対策を打ってくるだろう。
彼らの戦意を根こそぎ奪い、指揮系統を完全に麻痺させるような、常識外の一手が必要だ。
俺が目を付けたのは、古代ギリシャや中国の戦史に登場する、原始的な化学兵器だった。
「リオ、これは一体何に使うの? こんなにたくさんの壺を集めて」
開発室を訪れたエリアーナが、部屋の隅に山と積まれた素焼きの壺を見て、訝しげに尋ねた。
「新しい武器を作るのさ。名付けて、『焼夷手榴弾』」
「しょうい……しゅりゅうだん?」
聞き慣れない言葉に、彼女は首を傾げる。
俺は一つの壺を手に取り、その構造を説明した。
「この壺の中に、燃えやすい油と、硫黄、そして砕いた炭を混ぜたものを詰める。そして、口に油を染み込ませた布で栓をする。使う時は、布の先に火をつけて、敵陣に投げ込むんだ」
「……ただの火炎瓶ではないの。それなら、昔からあるわ」
「違うのは、その中身だ」
俺は、もう一つの重要な材料を指し示した。それは、領内の洞窟から採取した、硝石(硝酸カリウム)だった。
「この白い粉を混ぜ込むことで、燃焼の仕方が劇的に変わる。ただ燃えるだけじゃない。爆発的に燃え広がり、水をかけても簡単には消えない、地獄の炎を生み出すんだ」
硫黄、木炭、硝石。それは、黒色火薬の原始的なレシピだった。この世界の人間が、誰も知らない禁断の知識。
エリアーナは、俺の説明を聞くうちに、その兵器が持つ本当の恐ろしさを理解したようだった。彼女の顔から、血の気が引いていく。
「そ、そんなものを戦場で使えば……どうなるか、分かっているの?」
「ああ。敵は炎に巻かれ、装備は溶け、陣形は崩壊するだろうな」
俺は、淡々と答えた。
「これは、錬金術師が作り出す、魔法の炎だ。敵兵はそう認識するだろう。未知の恐怖は、どんな屈強な兵士の心をも砕く」
さらに俺は、もう一つの兵器を用意した。
「そして、これが『煙幕弾』だ」
俺が示したのは、同じく素焼きの壺に、大量の湿った藁と、燃焼を助けるための油脂、そして大量の硫黄を詰め込んだものだった。
「これを燃やせば、視界を遮るほどの、濃くて、目にしみる有毒な煙が大量に発生する。敵陣の中央でこれを炸裂させれば、彼らは方向感覚を失い、指揮官の命令も届かなくなり、パニックに陥るだろう」
焼夷手榴弾による直接的なダメージと、煙幕弾による心理的なパニック。この二つの相乗効果で、敵の軍隊を内部から崩壊させる。それが俺の狙いだった。
エリアーナは、黙り込んでいた。彼女は、俺が生み出す兵器の非人道性を理解していた。だが、彼女はそれを止めようとはしなかった。
「……分かったわ。全ては、この領地を守るため。そうでしょう?」
「その通りだ」
俺たちの間には、重いが、確かな信頼関係が存在していた。
最後の仕上げに、俺はもう一人、この計画に不可欠な協力者を訪ねた。
シルフィの部屋だった。
彼女は、俺が持ち込んだ壺を、不思議そうに眺めていた。
「リオ、これなあに? なんだか、嫌な匂いがする……」
エルフの鋭い嗅覚が、壺に詰められた硫黄の匂いを捉えたのだろう。
俺は彼女に、正直に全てを話した。これから始まる戦争のこと。この壺が、多くの人を傷つけるための兵器であること。
シルフィの顔が、悲しげに曇った。
「……人を、傷つけるための道具なの?」
「ああ。そうだ」
俺は、彼女の目をまっすぐに見つめた。
「だが、これを使わなければ、俺たちの領地はもっと多くの人が傷つき、殺されることになる。リリアナや、バルドや、ゴードンさんたちが、苦しむことになるんだ。シルフィ、俺はそれが耐えられない」
「……」
「君に、残酷なことを頼みに来たのは分かっている。だが、君の力が必要なんだ」
俺は、自分の計画を打ち明けた。
「この煙幕弾を、投石器で敵陣に投げ込む。その時、君の風の魔法で、煙が敵を包み込むように、風の流れを操作してほしいんだ」
シルフィは、俯いてしまった。彼女の魔法は、人を癒し、自然と調和するための力だ。それを、戦争の道具として使うことに、強い抵抗があるのだろう。
無理もない。彼女にこんな役目を背負わせるのは、酷すぎるかもしれない。
俺が諦めかけ、立ち去ろうとした、その時。
「……やる」
か細いが、凛とした声が、俺を引き止めた。
シルフィは、顔を上げていた。その翡翠色の瞳には、涙が滲んでいたが、同時に強い決意の光が宿っていた。
「私も、ここに住むみんなが好き。リリアナが、リオが、みんなが傷つくのは、嫌だ。だから……やる。私も、みんなを守るために、戦う」
彼女は、自らの意思で、戦うことを選んでくれたのだ。
俺は、彼女の小さな肩に、あまりにも重い荷物を背負わせてしまった罪悪感と、彼女の強さに対する感謝で、胸が締め付けられる思いだった。
「ありがとう、シルフィ。必ず、君を後悔させないと約束する」
俺は彼女の頭を、そっと撫でた。
こうして、俺たちの秘密兵器は完成した。
パイク方陣とクロスボウという「物理的」な防御システム。
そして、焼夷手榴弾と煙幕弾、シルフィの魔法という「心理的」な攻撃システム。
アシュフォード軍は、この世界の誰もが想像しえない、二重の切り札を手に入れたのだ。
俺は、静かに迫り来る決戦の日に向けて、思考を巡らせる。
これで、勝てる。
いや、勝つのではない。
圧倒するのだ。
敵に、二度と我々に刃向かう気力を起こさせないほど、徹底的に。
それが、この戦いで流される血を、最小限に抑えるための、唯一の方法だと信じて。
戦場の勝敗は、兵力や武器の性能だけで決まるものではない。兵士たちの士気、指揮系統の混乱、そして「心理的な衝撃」。そういった目に見えない要素が、しばしば戦局を決定づける。
グライフ子爵が率いるのは、正規軍だけではない。王都で悪名高い傭兵団「鉄の爪」もいる。彼らは戦いのプロだ。こちらの戦術に気づけば、すぐに何らかの対策を打ってくるだろう。
彼らの戦意を根こそぎ奪い、指揮系統を完全に麻痺させるような、常識外の一手が必要だ。
俺が目を付けたのは、古代ギリシャや中国の戦史に登場する、原始的な化学兵器だった。
「リオ、これは一体何に使うの? こんなにたくさんの壺を集めて」
開発室を訪れたエリアーナが、部屋の隅に山と積まれた素焼きの壺を見て、訝しげに尋ねた。
「新しい武器を作るのさ。名付けて、『焼夷手榴弾』」
「しょうい……しゅりゅうだん?」
聞き慣れない言葉に、彼女は首を傾げる。
俺は一つの壺を手に取り、その構造を説明した。
「この壺の中に、燃えやすい油と、硫黄、そして砕いた炭を混ぜたものを詰める。そして、口に油を染み込ませた布で栓をする。使う時は、布の先に火をつけて、敵陣に投げ込むんだ」
「……ただの火炎瓶ではないの。それなら、昔からあるわ」
「違うのは、その中身だ」
俺は、もう一つの重要な材料を指し示した。それは、領内の洞窟から採取した、硝石(硝酸カリウム)だった。
「この白い粉を混ぜ込むことで、燃焼の仕方が劇的に変わる。ただ燃えるだけじゃない。爆発的に燃え広がり、水をかけても簡単には消えない、地獄の炎を生み出すんだ」
硫黄、木炭、硝石。それは、黒色火薬の原始的なレシピだった。この世界の人間が、誰も知らない禁断の知識。
エリアーナは、俺の説明を聞くうちに、その兵器が持つ本当の恐ろしさを理解したようだった。彼女の顔から、血の気が引いていく。
「そ、そんなものを戦場で使えば……どうなるか、分かっているの?」
「ああ。敵は炎に巻かれ、装備は溶け、陣形は崩壊するだろうな」
俺は、淡々と答えた。
「これは、錬金術師が作り出す、魔法の炎だ。敵兵はそう認識するだろう。未知の恐怖は、どんな屈強な兵士の心をも砕く」
さらに俺は、もう一つの兵器を用意した。
「そして、これが『煙幕弾』だ」
俺が示したのは、同じく素焼きの壺に、大量の湿った藁と、燃焼を助けるための油脂、そして大量の硫黄を詰め込んだものだった。
「これを燃やせば、視界を遮るほどの、濃くて、目にしみる有毒な煙が大量に発生する。敵陣の中央でこれを炸裂させれば、彼らは方向感覚を失い、指揮官の命令も届かなくなり、パニックに陥るだろう」
焼夷手榴弾による直接的なダメージと、煙幕弾による心理的なパニック。この二つの相乗効果で、敵の軍隊を内部から崩壊させる。それが俺の狙いだった。
エリアーナは、黙り込んでいた。彼女は、俺が生み出す兵器の非人道性を理解していた。だが、彼女はそれを止めようとはしなかった。
「……分かったわ。全ては、この領地を守るため。そうでしょう?」
「その通りだ」
俺たちの間には、重いが、確かな信頼関係が存在していた。
最後の仕上げに、俺はもう一人、この計画に不可欠な協力者を訪ねた。
シルフィの部屋だった。
彼女は、俺が持ち込んだ壺を、不思議そうに眺めていた。
「リオ、これなあに? なんだか、嫌な匂いがする……」
エルフの鋭い嗅覚が、壺に詰められた硫黄の匂いを捉えたのだろう。
俺は彼女に、正直に全てを話した。これから始まる戦争のこと。この壺が、多くの人を傷つけるための兵器であること。
シルフィの顔が、悲しげに曇った。
「……人を、傷つけるための道具なの?」
「ああ。そうだ」
俺は、彼女の目をまっすぐに見つめた。
「だが、これを使わなければ、俺たちの領地はもっと多くの人が傷つき、殺されることになる。リリアナや、バルドや、ゴードンさんたちが、苦しむことになるんだ。シルフィ、俺はそれが耐えられない」
「……」
「君に、残酷なことを頼みに来たのは分かっている。だが、君の力が必要なんだ」
俺は、自分の計画を打ち明けた。
「この煙幕弾を、投石器で敵陣に投げ込む。その時、君の風の魔法で、煙が敵を包み込むように、風の流れを操作してほしいんだ」
シルフィは、俯いてしまった。彼女の魔法は、人を癒し、自然と調和するための力だ。それを、戦争の道具として使うことに、強い抵抗があるのだろう。
無理もない。彼女にこんな役目を背負わせるのは、酷すぎるかもしれない。
俺が諦めかけ、立ち去ろうとした、その時。
「……やる」
か細いが、凛とした声が、俺を引き止めた。
シルフィは、顔を上げていた。その翡翠色の瞳には、涙が滲んでいたが、同時に強い決意の光が宿っていた。
「私も、ここに住むみんなが好き。リリアナが、リオが、みんなが傷つくのは、嫌だ。だから……やる。私も、みんなを守るために、戦う」
彼女は、自らの意思で、戦うことを選んでくれたのだ。
俺は、彼女の小さな肩に、あまりにも重い荷物を背負わせてしまった罪悪感と、彼女の強さに対する感謝で、胸が締め付けられる思いだった。
「ありがとう、シルフィ。必ず、君を後悔させないと約束する」
俺は彼女の頭を、そっと撫でた。
こうして、俺たちの秘密兵器は完成した。
パイク方陣とクロスボウという「物理的」な防御システム。
そして、焼夷手榴弾と煙幕弾、シルフィの魔法という「心理的」な攻撃システム。
アシュフォード軍は、この世界の誰もが想像しえない、二重の切り札を手に入れたのだ。
俺は、静かに迫り来る決戦の日に向けて、思考を巡らせる。
これで、勝てる。
いや、勝つのではない。
圧倒するのだ。
敵に、二度と我々に刃向かう気力を起こさせないほど、徹底的に。
それが、この戦いで流される血を、最小限に抑えるための、唯一の方法だと信じて。
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というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!
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