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第三十話 鷲ノ巣山へ
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俺たちの次の目的地は、アステリアの北方にそびえる霊峰、鷲ノ巣山に決まった。空の王者グリフォンを討伐し、その素材『風切羽』を手に入れる。それが、俺の飛行モンスター創造の最後の希望だった。
だが、鷲ノ巣山はアステリア周辺でも屈指の高難易度エリアとして知られている。リオが集めてきた情報によれば、麓から中腹にかけては、雪男イエティや氷の精霊アイスエレメンタルといった、氷雪地帯特有の強力なモンスターが徘徊しているという。
「しかも、山全体が特殊なフィールド効果に覆われてるみたい。継続的に寒気ダメージを受け続けるし、スタミナの消耗も激しいんだって」
リオが、眉をひそめながら地図を指差す。
「山頂にたどり着く前に、寒さで全滅したパーティも少なくないとか」
「寒さ対策が必須、ということか」
カエデが、冷静に分析する。
「防寒具と、体を温めるアイテムがなければ、話にならないな」
俺たちは、早速準備に取り掛かった。アステリアの市場で、最高級の毛皮を使った防寒コートや、炎の魔石を組み込んだカイロを買い揃える。体が温まる効果のある、ジンジャー入りのホットドリンクも、リオが大量に用意してくれた。
そして、俺の出番だ。
俺は工房に籠もり、寒さ対策に特化した、新たなスライムの創造に取り掛かった。
ベースにするのは、熱を蓄える性質を持つ『溶岩石の欠片』と、保温性の高い『イエティの毛皮』。これを、体内に熱源を持つ特殊なスライムと配合する。
「創造!」
俺の手の中に生まれたのは、ほんのりと赤みがかっており、触れるとカイロのように温かいスライムだった。
【ヒータースライム】
スキル:発熱、熱伝導
このスライムを懐に入れておけば、防寒具の効果と合わせて、極寒の地でも体温を維持できるはずだ。俺はパーティの人数分、四体のヒータースライムを創造した。
「すごい!これがあれば、吹雪の中でも安心だね!」
リオは、温かいスライムを嬉しそうに抱きしめている。
カエデも、「あなたの創造術は、本当に戦いの常識を変えるな」と、感心しきりだった。
万全の準備を整え、俺たちはアステリアの北門から、鷲ノ巣山へと向かった。
街を離れて半日も歩くと、緑豊かだった風景は、徐々に荒涼とした冬景色へと変わっていく。地面は固く凍りつき、木々は枯れ果て、冷たい風が容赦なく俺たちの体を打ち付けた。
「うう……さむい……」
リオが、小さく身を震わせる。
「ヒータースライムを、もっと体に密着させてください。体温が奪われるのを防げます」
俺のアドバイスに、リオとゴブはこくりと頷いた。
山の麓にたどり着く頃には、空からちらちらと雪が舞い始めていた。目の前には、どこまでも続く白銀の世界と、雲を突き破るようにそびえ立つ、巨大な山のシルエット。あれが、鷲ノ巣山。その威容は、神々しくも、挑戦者を拒絶するかのような厳しさがあった。
俺たちは、ついにその第一歩を踏み出した。
一歩進むごとに、足が雪に沈み、体力を奪われる。視界は吹雪で白く染まり、数メートル先すら見通せない。
「マスター、前方より敵性反応!二体!」
ゴブが、索敵魔法でいち早く敵の接近を察知した。
吹雪の中から、巨大な白い影が二つ、ぬっと現れる。全身が毛むくじゃらの雪男、イエティだ。そのレベルは40を超えている。
「グオオオオ!」
イエティは咆哮を上げ、巨大な氷の塊をこちらへ投げつけてきた。
「私が前に出る!」
カエデが盾を構え、氷塊を受け止める。凄まじい衝撃に、彼女の体がわずかに後退した。
「ゴブ、援護を!」
「承知!ウィンドカッター!」
ゴブの杖から、鋭い風の刃が放たれる。だが、イエティの分厚い毛皮は魔法への耐性も高いらしく、思うようにダメージが通らない。
「こいつら、厄介だね!」
リオが、後方で歯噛みする。
吹雪で視界が悪く、足場も不安定。おまけに、敵は寒さに強い。状況は、圧倒的に不利だった。
俺は、この状況を打開するための策を、瞬時に組み立てていた。
「カエデさん!一体の足止めをお願いします!もう一体は、俺がなんとかします!」
「分かった!」
カエデは一体のイエティと交戦を開始する。俺は、もう一体のイエティに向き合った。
そして、アイテムボックスから、スライム印のポーションの材料として大量にストックしてあった、あるものを配合したスライムを取り出した。
それは、『アシッド・スライムの粘液』をベースに、『火薬草』をギリギリの割合で混ぜ込んだ、極めて不安定なスライム。
【ボム・スライム】
スキル:自爆
「ごめん、一発頼む!」
俺は、野球のピッチャーのように振りかぶると、ボム・スライムをイエティの顔面めがけて全力で投げつけた。
べちゃり、とスライムが顔に張り付く。イエティは、それが何か分からず、鬱陶しそうに振り払おうとした。
その瞬間、俺はスキルを発動させた。
「起爆!」
轟音。
イエティの顔面で、スライムが小規模な爆発を起こした。凄まじい威力ではない。だが、至近距離での爆発は、イエティの視力と聴力を一時的に奪うには十分だった。
「グギャアアアア!?」
イエティは目を押さえて苦しみもがいている。その全身は、爆発によって分厚い毛皮が焼け焦げ、防御力が低下していた。
「今です、ゴブ!」
「はい、マスター!ファイアボール!」
ゴブの炎魔法が、防御力の低下したイエティに直撃する。毛皮に火が燃え移り、イエティは火だるまになって雪の上を転げ回った。
俺たちが一体を無力化している間に、カエデももう一体のイエティを追い詰めていた。彼女は、敵の攻撃パターンを完全に見切り、的確なカウンターでHPを削っていく。
やがて、二体のイエティは光の粒子となって消えていった。
「はぁ、はぁ……。なんて奴らだ」
カエデが、荒い息をつきながら言った。
「ユーさんの爆弾スライムがなかったら、もっと苦戦してたかもね」
リオの言葉に、俺は少しだけ胸を張った。
俺たちは、お互いの弱点を補い合いながら、険しい山道を登っていく。
氷の精霊の吹雪を、ヒータースライムの発熱で相殺し、
雪に潜む巨大な狼の群れを、ゴブの範囲魔法で焼き払う。
一つ、また一つと困難を乗り越えるたびに、俺たちのパーティとしての練度は、確実に上がっていった。
何時間も登り続けた頃だろうか。吹雪が、ふっと止んだ。
俺たちの目の前には、比較的開けた、雪のない岩場が広がっていた。どうやら、中腹の風が当たらないエリアにたどり着いたらしい。
「少し、休憩しようか」
俺が提案すると、仲間たちはこくりと頷いた。
リオが温かいドリンクを配り、俺たちは岩陰で束の間の休息を取る。
その、時だった。
空気が、震えた。
今まで感じたことのない、圧倒的なプレッシャーが、空から降り注いでくる。
俺たちは、弾かれたように空を見上げた。
雲の切れ間から、巨大な影が、ゆっくりと降下してくる。
ライオンのしなやかな体躯。
鷲の鋭い鉤爪と、誇り高き頭。
そして、広げれば十メートルはあろうかという、雄大な翼。
その黄金色の瞳は、俺たち侵入者を、絶対的な王者の威厳をもって見下ろしていた。
「……あれが」
カエデが、息を呑んで呟いた。
空の王者、グリフォン。
その姿は、神話の挿絵から抜け出してきたかのように、美しく、そして猛々しかった。
俺たちの最大の試練が、今、始まろうとしていた。
だが、鷲ノ巣山はアステリア周辺でも屈指の高難易度エリアとして知られている。リオが集めてきた情報によれば、麓から中腹にかけては、雪男イエティや氷の精霊アイスエレメンタルといった、氷雪地帯特有の強力なモンスターが徘徊しているという。
「しかも、山全体が特殊なフィールド効果に覆われてるみたい。継続的に寒気ダメージを受け続けるし、スタミナの消耗も激しいんだって」
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「山頂にたどり着く前に、寒さで全滅したパーティも少なくないとか」
「寒さ対策が必須、ということか」
カエデが、冷静に分析する。
「防寒具と、体を温めるアイテムがなければ、話にならないな」
俺たちは、早速準備に取り掛かった。アステリアの市場で、最高級の毛皮を使った防寒コートや、炎の魔石を組み込んだカイロを買い揃える。体が温まる効果のある、ジンジャー入りのホットドリンクも、リオが大量に用意してくれた。
そして、俺の出番だ。
俺は工房に籠もり、寒さ対策に特化した、新たなスライムの創造に取り掛かった。
ベースにするのは、熱を蓄える性質を持つ『溶岩石の欠片』と、保温性の高い『イエティの毛皮』。これを、体内に熱源を持つ特殊なスライムと配合する。
「創造!」
俺の手の中に生まれたのは、ほんのりと赤みがかっており、触れるとカイロのように温かいスライムだった。
【ヒータースライム】
スキル:発熱、熱伝導
このスライムを懐に入れておけば、防寒具の効果と合わせて、極寒の地でも体温を維持できるはずだ。俺はパーティの人数分、四体のヒータースライムを創造した。
「すごい!これがあれば、吹雪の中でも安心だね!」
リオは、温かいスライムを嬉しそうに抱きしめている。
カエデも、「あなたの創造術は、本当に戦いの常識を変えるな」と、感心しきりだった。
万全の準備を整え、俺たちはアステリアの北門から、鷲ノ巣山へと向かった。
街を離れて半日も歩くと、緑豊かだった風景は、徐々に荒涼とした冬景色へと変わっていく。地面は固く凍りつき、木々は枯れ果て、冷たい風が容赦なく俺たちの体を打ち付けた。
「うう……さむい……」
リオが、小さく身を震わせる。
「ヒータースライムを、もっと体に密着させてください。体温が奪われるのを防げます」
俺のアドバイスに、リオとゴブはこくりと頷いた。
山の麓にたどり着く頃には、空からちらちらと雪が舞い始めていた。目の前には、どこまでも続く白銀の世界と、雲を突き破るようにそびえ立つ、巨大な山のシルエット。あれが、鷲ノ巣山。その威容は、神々しくも、挑戦者を拒絶するかのような厳しさがあった。
俺たちは、ついにその第一歩を踏み出した。
一歩進むごとに、足が雪に沈み、体力を奪われる。視界は吹雪で白く染まり、数メートル先すら見通せない。
「マスター、前方より敵性反応!二体!」
ゴブが、索敵魔法でいち早く敵の接近を察知した。
吹雪の中から、巨大な白い影が二つ、ぬっと現れる。全身が毛むくじゃらの雪男、イエティだ。そのレベルは40を超えている。
「グオオオオ!」
イエティは咆哮を上げ、巨大な氷の塊をこちらへ投げつけてきた。
「私が前に出る!」
カエデが盾を構え、氷塊を受け止める。凄まじい衝撃に、彼女の体がわずかに後退した。
「ゴブ、援護を!」
「承知!ウィンドカッター!」
ゴブの杖から、鋭い風の刃が放たれる。だが、イエティの分厚い毛皮は魔法への耐性も高いらしく、思うようにダメージが通らない。
「こいつら、厄介だね!」
リオが、後方で歯噛みする。
吹雪で視界が悪く、足場も不安定。おまけに、敵は寒さに強い。状況は、圧倒的に不利だった。
俺は、この状況を打開するための策を、瞬時に組み立てていた。
「カエデさん!一体の足止めをお願いします!もう一体は、俺がなんとかします!」
「分かった!」
カエデは一体のイエティと交戦を開始する。俺は、もう一体のイエティに向き合った。
そして、アイテムボックスから、スライム印のポーションの材料として大量にストックしてあった、あるものを配合したスライムを取り出した。
それは、『アシッド・スライムの粘液』をベースに、『火薬草』をギリギリの割合で混ぜ込んだ、極めて不安定なスライム。
【ボム・スライム】
スキル:自爆
「ごめん、一発頼む!」
俺は、野球のピッチャーのように振りかぶると、ボム・スライムをイエティの顔面めがけて全力で投げつけた。
べちゃり、とスライムが顔に張り付く。イエティは、それが何か分からず、鬱陶しそうに振り払おうとした。
その瞬間、俺はスキルを発動させた。
「起爆!」
轟音。
イエティの顔面で、スライムが小規模な爆発を起こした。凄まじい威力ではない。だが、至近距離での爆発は、イエティの視力と聴力を一時的に奪うには十分だった。
「グギャアアアア!?」
イエティは目を押さえて苦しみもがいている。その全身は、爆発によって分厚い毛皮が焼け焦げ、防御力が低下していた。
「今です、ゴブ!」
「はい、マスター!ファイアボール!」
ゴブの炎魔法が、防御力の低下したイエティに直撃する。毛皮に火が燃え移り、イエティは火だるまになって雪の上を転げ回った。
俺たちが一体を無力化している間に、カエデももう一体のイエティを追い詰めていた。彼女は、敵の攻撃パターンを完全に見切り、的確なカウンターでHPを削っていく。
やがて、二体のイエティは光の粒子となって消えていった。
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氷の精霊の吹雪を、ヒータースライムの発熱で相殺し、
雪に潜む巨大な狼の群れを、ゴブの範囲魔法で焼き払う。
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