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第七十話 真実の瞳
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幻術が破られたカジノタワーのホール。俺たちの目の前には、玉座に腰かけたまま信じられないという顔でこちらを見つめる幻惑のピエロがいた。彼の周囲には、先ほどまで俺たちを苦しめていた悪夢のモンスターたちが実体化した姿で、主を守るように陣形を組んでいる。
「……ありえない。僕の『ワンダーランド』が、破られるなんて……」
ピエロは未だに現実を受け入れられないようだった。その顔からは先ほどの狂気じみた余裕は消え、代わりに焦りと屈辱の色が浮かんでいる。
「お前の茶番は終わりだ」
カエデが冷たく言い放つ。
「仲間を傷つけ、この街を穢した罪。その身で償ってもらう」
「……面白い」
ピエロはやがて、ひきつった笑みを浮かべた。
「まさか、ここまでやるとはね。君たち、ただの雑魚じゃなかったみたいだ。いいよ、褒めてあげる。そして、僕の本当のショーのメインディッシュにしてあげる!」
彼が指を鳴らすと、周囲のモンスターたちが一斉に動き出した。
だが、幻術という最大の武器を失った今、彼らはもはや俺たちの敵ではなかった。
「リオ、ゴブ! 下がって!」
俺とカエデが前に出る。
カエデのレイピアが銀色の閃光となって、ブリキの人形たちの硬い装甲を貫いていく。俺もスライム軍団を展開し、トランプ兵たちの連携を分断し動きを封じる。
「マスター! 僕も!」
ゴブの杖から放たれるファイアボールが、一体また一体と悪夢の残骸を焼き払っていく。
戦闘は一方的だった。
数分後、ホールにはピエロただ一人が孤立無援で立ち尽くしていた。
「……なんで。なんで、僕の可愛いペットたちが……」
彼は自分の切り札が、こうもたやすく打ち破られたことが信じられないようだった。
「お前は幻術に頼りすぎた」
カエデが静かに告げる。
「幻に惑わされ、現実の力を見誤った。それがお前の敗因だ」
「だまれえええええ!」
ピエロが甲高い絶叫を上げた。彼は懐から二本の歪な形のダガーを抜き放つと、自ら俺たちに襲いかかってきた。その動きは道化師のように軽やかで予測不能。
だが、カエデはそのトリッキーな動きに一切惑わされない。
レイピアが最小限の動きで、ダガーの軌道を正確に弾き返す。
実力差は明らかだった。
「くそっ、くそっ!」
追い詰められたピエロは最後の手段に出た。
彼は高く跳躍すると、天井に設置されていた巨大なミラーボールに向かってダガーを投げつけた。
ダガーが突き刺さった瞬間、ミラーボールがまばゆい光を放ち始めた。
「目くらまし!?」
俺たちが咄嗟に腕で顔を覆う。
だが、それはただの目くらましではなかった。
『最後のマジックだよ! 分身幻術「ミラーハウス」!』
ピエロの勝ち誇った声が響く。
光が収まった時、俺たちの周囲には数十人ものピエロが同じ笑みを浮かべて俺たちを取り囲んでいた。
そのどれもが実体と見分けがつかない、完璧な分身。
「さあ、本物はどーれだ? 当ててごらんよ! 一つでも間違えれば、背中からグッサリだよ!」
分身たちが一斉にダガーを構える。
「まずい! どれが本物か……!」
カエデが焦りの声を上げる。
この状況で下手に動けば、四方八方からの一斉攻撃を受けることになる。
絶体絶命。
だが、俺たちのパーティにはあらゆる幻を見破る「真実の瞳」を持つ者がいた。
俺は後ろにいる仲間に静かに声をかけた。
「……リオさん」
「……うん。分かってる」
リオは恐怖に震えながらも一歩前に出た。
彼女は俺とカエデに守られるだけのか弱い商人ではない。彼女にしかできない、彼女だけの戦い方がある。
「スキル、『千里眼』!」
翠玉色の光がリオの瞳に宿る。
彼女はその瞳で、数十人のピエロたちを一人一人、ゆっくりと見据えていく。
幻影のピエロたちは魔力で作られた中身のない人形。だが、一人だけ。その魂の奥に本物の恐怖と焦りの色を宿している者がいる。
『や、やめろ……! その目で俺を見るな!』
ピエロの動揺した声が響く。
そして、ついに。
リオの瞳が、その一点を捉えた。
彼女は震える指で、群衆の中の一人、最も余裕のあるフリをして俺たちを嘲笑っているそのピエロを、まっすぐに指差した。
「……あなたでしょ。本物は」
その言葉が最後の引き金だった。
ピエロの顔から笑みが消える。
「――今だ!」
俺の叫びとカエデが動くのは同時だった。
カエデはリオが指差したその一点に向かって、一直線に地を蹴った。
「しまっ……!」
本物のピエEロが回避しようとする。
だが、もう遅い。
「これで、チェックメイトだ」
カエデのレイピアがピエロの胸を正確に貫いた。
「あ……が……」
ピエロは信じられないという顔で、自分の胸に突き刺さる剣を見下ろした。
彼の体がゆっくりと光の粒子となって崩れ落ちていく。
同時に、彼が生み出した全ての分身も蜃気楼のように掻き消えていった。
静寂。
ホールには俺たち四人だけが残された。
床にはピエロがドロップしたいくつかのアイテムと、一枚の奇妙な仮面が転がっている。
「……やった」
リオがその場にへたり込んだ。
「……やったんだ、私たち」
俺たちはついに、パンデモニウムの幹部を一人打ち破ったのだ。
幻惑のピエロを倒し、賭博街の支配を打ち砕いた。
その時、タワーの外から割れんばかりの歓声が聞こえてきた。
バルガンたちが外の敵の掃討を完了させたのだ。
俺たちは顔を見合わせ、笑った。
第一関門、突破。
俺たちの反撃の狼煙は、今、確かにアビス全体へと広がり始めた。
だが、これはまだ始まりに過ぎない。
俺たちは次の試練が待つ、第二のエリアへと駒を進めなければならない。
休んでいる暇はなかった。
「……ありえない。僕の『ワンダーランド』が、破られるなんて……」
ピエロは未だに現実を受け入れられないようだった。その顔からは先ほどの狂気じみた余裕は消え、代わりに焦りと屈辱の色が浮かんでいる。
「お前の茶番は終わりだ」
カエデが冷たく言い放つ。
「仲間を傷つけ、この街を穢した罪。その身で償ってもらう」
「……面白い」
ピエロはやがて、ひきつった笑みを浮かべた。
「まさか、ここまでやるとはね。君たち、ただの雑魚じゃなかったみたいだ。いいよ、褒めてあげる。そして、僕の本当のショーのメインディッシュにしてあげる!」
彼が指を鳴らすと、周囲のモンスターたちが一斉に動き出した。
だが、幻術という最大の武器を失った今、彼らはもはや俺たちの敵ではなかった。
「リオ、ゴブ! 下がって!」
俺とカエデが前に出る。
カエデのレイピアが銀色の閃光となって、ブリキの人形たちの硬い装甲を貫いていく。俺もスライム軍団を展開し、トランプ兵たちの連携を分断し動きを封じる。
「マスター! 僕も!」
ゴブの杖から放たれるファイアボールが、一体また一体と悪夢の残骸を焼き払っていく。
戦闘は一方的だった。
数分後、ホールにはピエロただ一人が孤立無援で立ち尽くしていた。
「……なんで。なんで、僕の可愛いペットたちが……」
彼は自分の切り札が、こうもたやすく打ち破られたことが信じられないようだった。
「お前は幻術に頼りすぎた」
カエデが静かに告げる。
「幻に惑わされ、現実の力を見誤った。それがお前の敗因だ」
「だまれえええええ!」
ピエロが甲高い絶叫を上げた。彼は懐から二本の歪な形のダガーを抜き放つと、自ら俺たちに襲いかかってきた。その動きは道化師のように軽やかで予測不能。
だが、カエデはそのトリッキーな動きに一切惑わされない。
レイピアが最小限の動きで、ダガーの軌道を正確に弾き返す。
実力差は明らかだった。
「くそっ、くそっ!」
追い詰められたピエロは最後の手段に出た。
彼は高く跳躍すると、天井に設置されていた巨大なミラーボールに向かってダガーを投げつけた。
ダガーが突き刺さった瞬間、ミラーボールがまばゆい光を放ち始めた。
「目くらまし!?」
俺たちが咄嗟に腕で顔を覆う。
だが、それはただの目くらましではなかった。
『最後のマジックだよ! 分身幻術「ミラーハウス」!』
ピエロの勝ち誇った声が響く。
光が収まった時、俺たちの周囲には数十人ものピエロが同じ笑みを浮かべて俺たちを取り囲んでいた。
そのどれもが実体と見分けがつかない、完璧な分身。
「さあ、本物はどーれだ? 当ててごらんよ! 一つでも間違えれば、背中からグッサリだよ!」
分身たちが一斉にダガーを構える。
「まずい! どれが本物か……!」
カエデが焦りの声を上げる。
この状況で下手に動けば、四方八方からの一斉攻撃を受けることになる。
絶体絶命。
だが、俺たちのパーティにはあらゆる幻を見破る「真実の瞳」を持つ者がいた。
俺は後ろにいる仲間に静かに声をかけた。
「……リオさん」
「……うん。分かってる」
リオは恐怖に震えながらも一歩前に出た。
彼女は俺とカエデに守られるだけのか弱い商人ではない。彼女にしかできない、彼女だけの戦い方がある。
「スキル、『千里眼』!」
翠玉色の光がリオの瞳に宿る。
彼女はその瞳で、数十人のピエロたちを一人一人、ゆっくりと見据えていく。
幻影のピエロたちは魔力で作られた中身のない人形。だが、一人だけ。その魂の奥に本物の恐怖と焦りの色を宿している者がいる。
『や、やめろ……! その目で俺を見るな!』
ピエロの動揺した声が響く。
そして、ついに。
リオの瞳が、その一点を捉えた。
彼女は震える指で、群衆の中の一人、最も余裕のあるフリをして俺たちを嘲笑っているそのピエロを、まっすぐに指差した。
「……あなたでしょ。本物は」
その言葉が最後の引き金だった。
ピエロの顔から笑みが消える。
「――今だ!」
俺の叫びとカエデが動くのは同時だった。
カエデはリオが指差したその一点に向かって、一直線に地を蹴った。
「しまっ……!」
本物のピエEロが回避しようとする。
だが、もう遅い。
「これで、チェックメイトだ」
カエデのレイピアがピエロの胸を正確に貫いた。
「あ……が……」
ピエロは信じられないという顔で、自分の胸に突き刺さる剣を見下ろした。
彼の体がゆっくりと光の粒子となって崩れ落ちていく。
同時に、彼が生み出した全ての分身も蜃気楼のように掻き消えていった。
静寂。
ホールには俺たち四人だけが残された。
床にはピエロがドロップしたいくつかのアイテムと、一枚の奇妙な仮面が転がっている。
「……やった」
リオがその場にへたり込んだ。
「……やったんだ、私たち」
俺たちはついに、パンデモニウムの幹部を一人打ち破ったのだ。
幻惑のピエロを倒し、賭博街の支配を打ち砕いた。
その時、タワーの外から割れんばかりの歓声が聞こえてきた。
バルガンたちが外の敵の掃討を完了させたのだ。
俺たちは顔を見合わせ、笑った。
第一関門、突破。
俺たちの反撃の狼煙は、今、確かにアビス全体へと広がり始めた。
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