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第九十六話 創生の光
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俺――創生のアルケウスの光の手が、メフィストの仮面にそっと触れた。
その瞬間、彼の全身を覆っていた混沌の鎧、カオス・バハムートの巨体がまるで陽光に溶ける雪のように、急速に霧散し始めた。
「よせ……!私に触れるな!」
メフィストは、まるで聖なる炎に焼かれる悪魔のように苦悶の声を上げた。
彼の力は他者の苦しみと絶望を糧とする負のエネルギー。仲間たちの絆と希望から生まれた俺の純粋な正のエネルギーは、彼にとって致死の毒そのものだった。
彼を構成していた無数のプレイヤーたちの魂が、呪縛から解き放たれていく。
『ありがとう……』
『これで、ようやく……』
安らかな感謝の声が俺の脳裏に響き渡り、光の粒子となって天へと昇っていく。
「やめろ、やめろ、やめろ!それは私の力だ!私のものだ!」
メフィストは自らの力が砂の城のように崩れ落ちていくのを、為す術もなく見つめることしかできなかった。
やがて混沌の竜王は完全に消滅した。
後に残されたのは、漆黒のローブを纏ったただの人間の姿に戻ったメフィストだけだった。
彼は力なくその場に膝をついた。
俺は彼の前に静かに立った。
そしてその仮面に再び手を伸ばす。
「……お前の本当の顔を見せろ」
仮面がパリンと音を立てて砕け散った。
その下に現れたのは、俺たちの誰もが予想だにしなかった意外な素顔だった。
それはまだあどけなさの残る、一人の少年の顔だった。
その瞳は深い絶望と、そしてどこか救いを求めるかのような悲しい色をしていた。
「……なぜだ」
少年――メフィストは虚ろな声で呟いた。
「なぜお前は私を破壊しない?なぜ私を浄化しようとする?憎いのではないのか」
俺は静かに答えた。
「憎いさ。お前は俺の仲間を数えきれないほど傷つけた。それは決して許されることじゃない」
「だが」と俺は続けた。
「お前の魂の奥底に、深い悲しみと孤独が見えた。お前も誰かに傷つけられたんだ。この世界に」
俺の言葉にメフィストの肩がわずかに震えた。
彼はもともと、このM.M.O.を誰よりも愛していた一人の純粋なプレイヤーだったのかもしれない。
だがその純粋さはいつしかこの世界の理不尽さに裏切られ、歪められ、そして絶望へと変わった。
彼はこの世界を憎むあまり、自らがこの世界の理を破壊するバグそのものになってしまったのだ。
「……もう終わりにしよう。お前の長い孤独な戦いを」
俺のアルケウスの体から、最も優しく、そして最も温かい創生の光が溢れ出した。
それはメフィストの傷ついた魂を包み込む、慈愛の光。
「ひ……!く、来るな……!」
彼はその光を恐れた。
救われることを、癒やされることを彼はもう信じることができなかった。
彼は最後の力を振り絞り、黒い霧となってその場から逃れようとした。
だが俺の光は彼を逃がさない。
「お前はもう一人じゃない」
光が彼を完全に包み込んだ。
「あああああああああああああああっ!」
彼の絶叫が響き渡る。
それは苦痛の叫びか、あるいは解放の叫びか。
やがて絶叫は静かな嗚咽へと変わっていった。
彼の歪んでしまった魂が、その邪悪な部分だけを浄化され、元のただの純粋な魂へと還っていく。
光が収まった。
そこに、もうメフィストの姿はなかった。
ただ小さな光の蝶が一匹、静かに舞っていた。
そしてその蝶は俺に一礼するかのように羽ばたくと、星空の彼方へと消えていった。
完全なる浄化。
悪徳ギルド【パンデモニウム】は、その頂点を失い、今ここに完全に壊滅した。
俺のアルケウスの体もまたその役目を終え、ゆっくりと光の粒子となって分解を始めていた。
仲間たちの魂が俺から離れ、それぞれの元の体へと戻っていく。
俺の意識もまた神の視点から、一人の人間の視点へと戻ってきた。
気づけば俺は玉座の間の冷たい床の上に立っていた。
背後には意識を取り戻した仲間たちが、呆然と立ち尽くしている。
「……終わったのか」
カエデが呟いた。
「……ああ。終わったんだ」
リオが涙声で答えた。
俺たちはやったのだ。
この世界の最大の歪みを、俺たちの手で正したのだ。
長かった戦いが終わった。
俺は仲間たちの元へ歩み寄ろうとした。
だがその足はもつれ、俺の体は力なく前へと倒れ込んだ。
最後の創造の代償。
俺の全ての力は、もう残っていなかった。
薄れゆく意識の中、俺は仲間たちが俺の名前を呼びながら駆け寄ってくるのを感じていた。
温かい仲間の気配。
ああ、俺はこの温もりを守りたかったんだな。
そんな当たり前のことを思いながら。
俺の意識は静かな闇の中へと沈んでいった。
その瞬間、彼の全身を覆っていた混沌の鎧、カオス・バハムートの巨体がまるで陽光に溶ける雪のように、急速に霧散し始めた。
「よせ……!私に触れるな!」
メフィストは、まるで聖なる炎に焼かれる悪魔のように苦悶の声を上げた。
彼の力は他者の苦しみと絶望を糧とする負のエネルギー。仲間たちの絆と希望から生まれた俺の純粋な正のエネルギーは、彼にとって致死の毒そのものだった。
彼を構成していた無数のプレイヤーたちの魂が、呪縛から解き放たれていく。
『ありがとう……』
『これで、ようやく……』
安らかな感謝の声が俺の脳裏に響き渡り、光の粒子となって天へと昇っていく。
「やめろ、やめろ、やめろ!それは私の力だ!私のものだ!」
メフィストは自らの力が砂の城のように崩れ落ちていくのを、為す術もなく見つめることしかできなかった。
やがて混沌の竜王は完全に消滅した。
後に残されたのは、漆黒のローブを纏ったただの人間の姿に戻ったメフィストだけだった。
彼は力なくその場に膝をついた。
俺は彼の前に静かに立った。
そしてその仮面に再び手を伸ばす。
「……お前の本当の顔を見せろ」
仮面がパリンと音を立てて砕け散った。
その下に現れたのは、俺たちの誰もが予想だにしなかった意外な素顔だった。
それはまだあどけなさの残る、一人の少年の顔だった。
その瞳は深い絶望と、そしてどこか救いを求めるかのような悲しい色をしていた。
「……なぜだ」
少年――メフィストは虚ろな声で呟いた。
「なぜお前は私を破壊しない?なぜ私を浄化しようとする?憎いのではないのか」
俺は静かに答えた。
「憎いさ。お前は俺の仲間を数えきれないほど傷つけた。それは決して許されることじゃない」
「だが」と俺は続けた。
「お前の魂の奥底に、深い悲しみと孤独が見えた。お前も誰かに傷つけられたんだ。この世界に」
俺の言葉にメフィストの肩がわずかに震えた。
彼はもともと、このM.M.O.を誰よりも愛していた一人の純粋なプレイヤーだったのかもしれない。
だがその純粋さはいつしかこの世界の理不尽さに裏切られ、歪められ、そして絶望へと変わった。
彼はこの世界を憎むあまり、自らがこの世界の理を破壊するバグそのものになってしまったのだ。
「……もう終わりにしよう。お前の長い孤独な戦いを」
俺のアルケウスの体から、最も優しく、そして最も温かい創生の光が溢れ出した。
それはメフィストの傷ついた魂を包み込む、慈愛の光。
「ひ……!く、来るな……!」
彼はその光を恐れた。
救われることを、癒やされることを彼はもう信じることができなかった。
彼は最後の力を振り絞り、黒い霧となってその場から逃れようとした。
だが俺の光は彼を逃がさない。
「お前はもう一人じゃない」
光が彼を完全に包み込んだ。
「あああああああああああああああっ!」
彼の絶叫が響き渡る。
それは苦痛の叫びか、あるいは解放の叫びか。
やがて絶叫は静かな嗚咽へと変わっていった。
彼の歪んでしまった魂が、その邪悪な部分だけを浄化され、元のただの純粋な魂へと還っていく。
光が収まった。
そこに、もうメフィストの姿はなかった。
ただ小さな光の蝶が一匹、静かに舞っていた。
そしてその蝶は俺に一礼するかのように羽ばたくと、星空の彼方へと消えていった。
完全なる浄化。
悪徳ギルド【パンデモニウム】は、その頂点を失い、今ここに完全に壊滅した。
俺のアルケウスの体もまたその役目を終え、ゆっくりと光の粒子となって分解を始めていた。
仲間たちの魂が俺から離れ、それぞれの元の体へと戻っていく。
俺の意識もまた神の視点から、一人の人間の視点へと戻ってきた。
気づけば俺は玉座の間の冷たい床の上に立っていた。
背後には意識を取り戻した仲間たちが、呆然と立ち尽くしている。
「……終わったのか」
カエデが呟いた。
「……ああ。終わったんだ」
リオが涙声で答えた。
俺たちはやったのだ。
この世界の最大の歪みを、俺たちの手で正したのだ。
長かった戦いが終わった。
俺は仲間たちの元へ歩み寄ろうとした。
だがその足はもつれ、俺の体は力なく前へと倒れ込んだ。
最後の創造の代償。
俺の全ての力は、もう残っていなかった。
薄れゆく意識の中、俺は仲間たちが俺の名前を呼びながら駆け寄ってくるのを感じていた。
温かい仲間の気配。
ああ、俺はこの温もりを守りたかったんだな。
そんな当たり前のことを思いながら。
俺の意識は静かな闇の中へと沈んでいった。
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