5 / 23
2章 私はいったい誰なのか
5話 捜索(美咲編1)
しおりを挟む
女性「はー、今日も掲示板に名前がないか。」
高瀬美咲(25歳)は、スマホを片手に今日も肩を落としていた。
震災の日から一ヶ月。美咲は緑山町に住んでいた恋人の消息を探していた。
学生時代に同じサークルだった彼は、隠すこともなく私に好意を向けてきていた。告白も一度は断ったけれど、最後は彼の熱意と誠実さに押されて付き合ってしまった。
付き合った期間は1年ちょっとくらいでそこまで長くはないが、仕事で疲れた私の愚痴《ぐち》を笑顔で聞いてくれてとても助かっていて、気がついたら私の方が彼をもっと好きになっていた。
美咲「はー、私ってこんな女々しい女だったんだ。」
大切な物は失ってから気づくとよく言われるが、まさしくその通りだった。
彼の消息が不明になってから、私の心には大きな穴が空いていた。スマホにLINEのマークが付く度に、彼からの連絡だと期待しては落胆する毎日だった。
彼は死んでしまったかもしれない、と恐ろしい推測が脳裏に何度もよぎり、それを振り払うため彼が住んでいた緑山町に足を運んだこともあった。
彼が住んでいた家は大きく崩れ、立入禁止の黄色いテープが貼られており、風が吹く度に砂埃が舞っていた。まさに地獄絵図だった。
彼の写真を持ち色々な避難所を周り聞き込みもした。そこでは彼の友人にも出会い、彼かもしれない男性を遠目で見たと証言をもらった。
その友人の一言の証言が今の私を支えており、彼の捜索を続ける根拠がそこにはあった。
美咲はスマホの電源を切り、ゆっくりと目を閉じた。彼と過ごした楽しい日々、これから彼と歩みたい輝いた未来。そんな光景が閉じたまぶたの裏にぼんやりと浮かぶ。
美咲「ゆうくん…、あなたは今どこにいるの?」
(八浜町での祐司と絵名)
祐司は突然夜に目が覚め、あたりを見渡した。
仮説住宅の中で、恋人の絵名が苦しそうな顔を浮かべ、隣で眠っている。
絵名「…いや…しなないで…」
弱々しい彼女の声が静かな仮設住宅に響き、胸が締め付けられる。
彼女の愛情に偽りはない、と信じている。ただ、彼女はなにか大きなものを背負っている。そして、まだ僕はそれを知らない…。
彼の直感がそう告げていた。
祐司「僕は記憶を取り戻し、早く君の隣に対等に立てる人間になりたいよ。」祐司はそうつぶやき、絵名の髪の毛を優しく撫でた。
高瀬美咲(25歳)は、スマホを片手に今日も肩を落としていた。
震災の日から一ヶ月。美咲は緑山町に住んでいた恋人の消息を探していた。
学生時代に同じサークルだった彼は、隠すこともなく私に好意を向けてきていた。告白も一度は断ったけれど、最後は彼の熱意と誠実さに押されて付き合ってしまった。
付き合った期間は1年ちょっとくらいでそこまで長くはないが、仕事で疲れた私の愚痴《ぐち》を笑顔で聞いてくれてとても助かっていて、気がついたら私の方が彼をもっと好きになっていた。
美咲「はー、私ってこんな女々しい女だったんだ。」
大切な物は失ってから気づくとよく言われるが、まさしくその通りだった。
彼の消息が不明になってから、私の心には大きな穴が空いていた。スマホにLINEのマークが付く度に、彼からの連絡だと期待しては落胆する毎日だった。
彼は死んでしまったかもしれない、と恐ろしい推測が脳裏に何度もよぎり、それを振り払うため彼が住んでいた緑山町に足を運んだこともあった。
彼が住んでいた家は大きく崩れ、立入禁止の黄色いテープが貼られており、風が吹く度に砂埃が舞っていた。まさに地獄絵図だった。
彼の写真を持ち色々な避難所を周り聞き込みもした。そこでは彼の友人にも出会い、彼かもしれない男性を遠目で見たと証言をもらった。
その友人の一言の証言が今の私を支えており、彼の捜索を続ける根拠がそこにはあった。
美咲はスマホの電源を切り、ゆっくりと目を閉じた。彼と過ごした楽しい日々、これから彼と歩みたい輝いた未来。そんな光景が閉じたまぶたの裏にぼんやりと浮かぶ。
美咲「ゆうくん…、あなたは今どこにいるの?」
(八浜町での祐司と絵名)
祐司は突然夜に目が覚め、あたりを見渡した。
仮説住宅の中で、恋人の絵名が苦しそうな顔を浮かべ、隣で眠っている。
絵名「…いや…しなないで…」
弱々しい彼女の声が静かな仮設住宅に響き、胸が締め付けられる。
彼女の愛情に偽りはない、と信じている。ただ、彼女はなにか大きなものを背負っている。そして、まだ僕はそれを知らない…。
彼の直感がそう告げていた。
祐司「僕は記憶を取り戻し、早く君の隣に対等に立てる人間になりたいよ。」祐司はそうつぶやき、絵名の髪の毛を優しく撫でた。
0
あなたにおすすめの小説
もう何も信じられない
ミカン♬
恋愛
ウェンディは同じ学年の恋人がいる。彼は伯爵令息のエドアルト。1年生の時に学園の図書室で出会って二人は友達になり、仲を育んで恋人に発展し今は卒業後の婚約を待っていた。
ウェンディは平民なのでエドアルトの家からは反対されていたが、卒業して互いに気持ちが変わらなければ婚約を認めると約束されたのだ。
その彼が他の令嬢に恋をしてしまったようだ。彼女はソーニア様。ウェンディよりも遥かに可憐で天使のような男爵令嬢。
「すまないけど、今だけ自由にさせてくれないか」
あんなに愛を囁いてくれたのに、もう彼の全てが信じられなくなった。
あなたの側にいられたら、それだけで
椎名さえら
恋愛
目を覚ましたとき、すべての記憶が失われていた。
私の名前は、どうやらアデルと言うらしい。
傍らにいた男性はエリオットと名乗り、甲斐甲斐しく面倒をみてくれる。
彼は一体誰?
そして私は……?
アデルの記憶が戻るとき、すべての真実がわかる。
_____________________________
私らしい作品になっているかと思います。
ご都合主義ですが、雰囲気を楽しんでいただければ嬉しいです。
※私の商業2周年記念にネップリで配布した短編小説になります
※表紙イラストは 由乃嶋 眞亊先生に有償依頼いたしました(投稿の許可を得ています)
【完結】16わたしも愛人を作ります。
華蓮
恋愛
公爵令嬢のマリカは、皇太子であるアイランに冷たくされていた。側妃を持ち、子供も側妃と持つと、、
惨めで生きているのが疲れたマリカ。
第二王子のカイランがお見舞いに来てくれた、、、、
退屈令嬢のフィクサーな日々
ユウキ
恋愛
完璧と評される公爵令嬢のエレノアは、順風満帆な学園生活を送っていたのだが、自身の婚約者がどこぞの女生徒に夢中で有るなどと、宜しくない噂話を耳にする。
直接関わりがなければと放置していたのだが、ある日件の女生徒と遭遇することになる。
悩める子爵と無垢な花
トウリン
恋愛
貴族でありながらウィリスサイド警邏隊副長の任に就くルーカス・アシュクロフトは、任務のさ中一人の少女を救った。可憐な彼女に一目で心を奪われたルーカス。だが、少女は一切の記憶を失っていた。彼女は身元が判らぬままフィオナという名を与えられ、警邏隊詰所に身を寄せることになった。失われたフィオナの過去故に、すぐ傍にいながらも最後の一歩を縮めることができずにいたルーカスだったが、ある事件をきっかけに事態は大きく動き始める。
※他サイトにも投稿します。
お兄様の指輪が壊れたら、溺愛が始まりまして
みこと。
恋愛
お兄様は女王陛下からいただいた指輪を、ずっと大切にしている。
きっと苦しい片恋をなさっているお兄様。
私はただ、お兄様の家に引き取られただけの存在。血の繋がってない妹。
だから、早々に屋敷を出なくては。私がお兄様の恋路を邪魔するわけにはいかないの。私の想いは、ずっと秘めて生きていく──。
なのに、ある日、お兄様の指輪が壊れて?
全7話、ご都合主義のハピエンです! 楽しんでいただけると嬉しいです!
※「小説家になろう」様にも掲載しています。
婚約者が記憶喪失になりました。
ねーさん
恋愛
平凡な子爵令嬢のセシリアは、「氷の彫刻」と呼ばれる無愛想で冷徹な公爵家の嫡男シルベストと恋に落ちた。
二人が婚約してしばらく経ったある日、シルベストが馬車の事故に遭ってしまう。
「キミは誰だ?」
目を覚ましたシルベストは三年分の記憶を失っていた。
それはつまりセシリアとの出会いからの全てが無かった事になったという事だった───
注:1、2話のエピソードは時系列順ではありません
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる