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Side:凛 2

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  陸の腕を掴んだまま、僕は無言で見下ろす。

  すぐに、何かを言いたそうな目とぶつかる。


…何か言えよ、陸。




「…」

「…」


  何も言わない陸を、僕は廊下の端まで引きずるように連れていった。


  なんかあるだろ…!!
  兄さんと圭は付き合ってたのか、とか…そういうことする仲だったなんて知らなかったとか…


  僕は、陸を壁際まで追い詰める。


  そこまでして、やっと陸が口を開いた。


  しかし。
  そこから聞こえてきたのは、そこからは僕が期待していたものとは違う、明後日の方向からで…


「あ、兄貴、さ。あんなところで、一人で、え、映画でも、見てたん、か…な」


  なに言ってんだ!?


「はぁ!?…陸ってば、セックスも知らないの?」

「ちがっ!!」


  今時中学生でも知ってるのに?って、陸はまだ中学生か。


「想い合ってる二人が、互いの…」


  懇切丁寧に説明してやるよ。おしべとめしべでも描いてやろうか。


  わざわざ僕が説明してるのに。眉毛をハの字にしながら陸が口を挟んだ。


「…ってか兄貴が…そんな…」


  するんだよ!!

  さっき!目の前で!見ただろ!!



  陸の幼さと、陸が兄さんを見る目があまりにも純情過ぎて、僕は苛立つ。


  そして。
  口を開けば兄貴、兄貴…。



「僕も兄貴なんだけど?」

「お前とは双子だから!関係ねぇよ!!」



  僕の方なんかちっとも見ない。






  というか、さっきの生徒会室でみたこと…陸は、本当にわかってないのか?




「互いに好き合ってるなら、セックスくらいするでしょ」

「へ?」


  …もういい。
  この兄貴を神聖視する中坊は、正解を言わないとわからないらしい。


「兄さんなんて、昔っから、いっっっつもアイツを潤んだ目で見てたじゃん!どう見てもアイツしか見えてなかったよ!アイツだって同じだったよ…」

「…」

「誰がどう見たって、昔からあの二人は両思いだったよ!」

「…!」



  兄さんには今、恋人がいる。陸が、自分と兄貴の間を邪魔するって思っていた相手…圭だ。

  しかも、律と圭は長年互いに想い続けていた。


  陸の入る隙なんてないんだよ!!






  ヘナヘナと力が抜けるように、陸は壁に寄りかかった。相当ショックを受けたみたいだ。
  まぁ仕方がない。


  僕はそれに追い討ちをかける。


「それに気づかない陸…小さい頃から兄さん一筋、想い続けて何年?なんてばかなんだろうね」


  今にも泣き出しそうに顔を歪める陸。立っているのもやっとだろう。


  しかし、陸はフルフルと首を振る。
  そんなことない…そんなことない…とでも言うように。


  この期に及んで、まだ抵抗するのか!?  






  これでとどめだと、僕は言った。


「そろそろ現実見たら?」


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