10 / 13
Side:凛 2
しおりを挟む陸の腕を掴んだまま、僕は無言で見下ろす。
すぐに、何かを言いたそうな目とぶつかる。
…何か言えよ、陸。
「…」
「…」
何も言わない陸を、僕は廊下の端まで引きずるように連れていった。
なんかあるだろ…!!
兄さんと圭は付き合ってたのか、とか…そういうことする仲だったなんて知らなかったとか…
僕は、陸を壁際まで追い詰める。
そこまでして、やっと陸が口を開いた。
しかし。
そこから聞こえてきたのは、そこからは僕が期待していたものとは違う、明後日の方向からで…
「あ、兄貴、さ。あんなところで、一人で、え、映画でも、見てたん、か…な」
なに言ってんだ!?
「はぁ!?…陸ってば、セックスも知らないの?」
「ちがっ!!」
今時中学生でも知ってるのに?って、陸はまだ中学生か。
「想い合ってる二人が、互いの…」
懇切丁寧に説明してやるよ。おしべとめしべでも描いてやろうか。
わざわざ僕が説明してるのに。眉毛をハの字にしながら陸が口を挟んだ。
「…ってか兄貴が…そんな…」
するんだよ!!
さっき!目の前で!見ただろ!!
陸の幼さと、陸が兄さんを見る目があまりにも純情過ぎて、僕は苛立つ。
そして。
口を開けば兄貴、兄貴…。
「僕も兄貴なんだけど?」
「お前とは双子だから!関係ねぇよ!!」
僕の方なんかちっとも見ない。
というか、さっきの生徒会室でみたこと…陸は、本当にわかってないのか?
「互いに好き合ってるなら、セックスくらいするでしょ」
「へ?」
…もういい。
この兄貴を神聖視する中坊は、正解を言わないとわからないらしい。
「兄さんなんて、昔っから、いっっっつもアイツを潤んだ目で見てたじゃん!どう見てもアイツしか見えてなかったよ!アイツだって同じだったよ…」
「…」
「誰がどう見たって、昔からあの二人は両思いだったよ!」
「…!」
兄さんには今、恋人がいる。陸が、自分と兄貴の間を邪魔するって思っていた相手…圭だ。
しかも、律と圭は長年互いに想い続けていた。
陸の入る隙なんてないんだよ!!
ヘナヘナと力が抜けるように、陸は壁に寄りかかった。相当ショックを受けたみたいだ。
まぁ仕方がない。
僕はそれに追い討ちをかける。
「それに気づかない陸…小さい頃から兄さん一筋、想い続けて何年?なんてばかなんだろうね」
今にも泣き出しそうに顔を歪める陸。立っているのもやっとだろう。
しかし、陸はフルフルと首を振る。
そんなことない…そんなことない…とでも言うように。
この期に及んで、まだ抵抗するのか!?
これでとどめだと、僕は言った。
「そろそろ現実見たら?」
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
4
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる