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酒場での異変

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 マール達3人は階段を駆け上がり、2階の部屋に飛び込んだ。
「ボス!! どうかしましたか!?」

「は、腹が‥‥‥! うああっ!!」
 金髪ロングの女性が腹を押さえてうずくまっていた。顔はイレズミだらけ、正直ちょっと怖い。

「ど、ど、どうしよう!?」
「い、医者か‥‥‥?」
「ポ、ポーション!! ど、どこだっけ!?」
 マール達3人はどうしたらいいかわからない状態で焦っている。

「‥‥‥俺が診ようか?」

「あっ! お前何入ってきてやがる!?」 
「子供は引っ込んでろ!」

 3人が凄んできた。が、ティナが俺と3人の間に割り込む。
「エドガー様は普通の子ではありません。エドガー様に従いなさい、その女性が手遅れになるかもしれませんよ」
「「「‥‥‥‥‥‥」」」
 ティナのオーラに3人は気圧され、黙るしかなかった。

 その隙に隙間を通ってボスのところへ。
「俺が診てもいいかな?」
 すごい脂汗、痛みのあまり涙も流れてる。

「お、お願い。助けて‥‥‥」
 消えるようなか細い声で頼まれた。
 藁にもすがるような気持ちというのはこういう時に使うのだろうな。

「ティナ、この人をそこのベッドに寝かせてあげて」
「はい! あなた達は邪魔です、どいてください」
 突っ立ってる3人を退かせたティナが入ってきて介助する。

「そこのお三方はもしポーションがあるのなら念のため取ってきて下さい」
 どこにあるのかわからないみたいだし三人まとめて追い出した方が良いだろう。
 俺の見立て通りならば尚更‥‥‥。
 違ってたら持ってきたポーションを使えば良い。

「「「は、はいっ!」」」
 三人は走って出て行った。

「ティナ、お腹を出して」
「はいっ!」

「いや、お前のじゃなくて」
「‥‥‥失礼しました」
  
「その人のへそから左右に指二、三本分の場所、この辺だな。何秒か押してみて」
「はいっ!」

 俺が自分でやらないのは力が弱いのと(多分)未婚の女性の腹部を触るのはマズイと思ったからだ。医者でもない男性に触られるのも嫌だろうし。訴えられても困る。

 言った所をティナがぐっと押すと‥‥‥

ぷぅーーーーーーーーーーーっ!!!

 やはりな。
 激しい腹痛の原因は『ガス溜まり』だ。
 そしてティナに押させた場所は胃腸の働きを活発にし、ガスの排出をサポートするといわれている『天枢(てんすう)』というツボだ。

 すっかり痛みが引いたのか目を見開いてるボス。そして俺と目が合うとみるみる顔が真っ赤になっていった。そして顔を手で覆って言った。
「あ、ありがとう。痛みがなくなったよ」

「どういたしまして」
「あ、あの‥‥‥三人には内緒にして‥‥‥」

「それはもちろん」
「さすがはエドガー様です。一瞬で治してしまうなんて」

「名乗ってなかったな、エドガーだ」
 俺は握手するべく手を差し出した。
 これくらいは大丈夫だろう。

 ボスは俺の手を握り返す。

「私はセリス。セリス・マッカートニーよ」
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