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学院長の受難
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合格発表の前日‥‥‥
ここは試験の採点をしている教員室。
「あのー、学院長。少しよろしいですか?」
「はい、何でしょうか?」
「魔法学の試験って満点にはならないように出来てるんですよね?」
「そうですよー、どうかしましたか?」
学院の入試問題、魔法学の最後の問題は宮廷魔術師達の解答不可能問題が記載されていた。
連立複層魔法陣の問題は王都の魔術師達が長年研究をしていたものであった。この問題がどういうものであるか少しでも記載があるだけでも中間点になるような問題であった。
「この子‥‥‥答えてるんです。そして多分合ってます‥‥‥よね?」
「はぁ!? 魔道師団で長年研究している魔法陣ですよ!? それを受験生が解いたというのですか?」
「どれ‥‥‥、!? なるほど、これは?」
「‥‥‥私も合ってると思います」
「確認のためこの解答用紙を早く研究本部へ!!」
「わかりました!」
一番若い教員が走って出ていった。
「‥‥‥まさかこんなことがあるとはな」
「その子の実技試験はどうなのですか?」
「それが‥‥‥実技は0点なんです」
「「「0点!?」」」
「‥‥‥それってどういう事ですか?」
「スキルの発動が確認出来れば少なくとも点は入るはずなのに‥‥‥」
「今まで全くスキルを使っていないのか‥‥‥、それともスキルが無いのか‥‥‥」
「「「あははははは!!!!」」」
教員達は一斉に笑い出した。
「スキルのない人なんていませんよー」
「学院長、冗談上手いですなぁ」
「ははは、すみませんねぇ。にしてもこの子はどう扱えば良いか迷いますなぁ‥‥‥」
「そうですね、学科の成績なら特待生で間違いなしですし」
「実技の成績は足切りですもんね」
「ふむ、足切りはルールですからね。いかに優秀でもそこは曲げられません」
「わかりました、じゃあこの子は不合格という事で‥‥‥」
エドガーの書類は失格者の箱に投げ入れられた。
「さぁ、まだまだ選考する人が残ってますよ! 頑張りましょう!」
「「「はーい」」」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「終わったー!!」
「皆さん、お疲れ様でしたー。上がってください」
「打ち上げ行きましょー♪ あれ? 学長は?」
「最終チェックをしますから。若い皆さんで楽しんできてください」
「じゃあお疲れ様でしたー」
「お先でーす」
一人残るセオドア。少し休憩してから最終チェックをしようか、とお気に入りのお茶を淹れていた。
ドンドンドン!!!!
「!? ! あっつ!!」
激しくドアが叩かれたその音にびっくりして手がブレ、注いでいたお茶を少し手にかけてしまった。
「開いてますよ、どうぞ!」
手を魔法で冷やしながら応えるセオドア。
「失礼します。学院長、急ぎのお手紙が届きました」
「‥‥‥手紙? 急ぎの手紙? 手紙くらいであんなにドアを叩かなくても‥‥‥。全く誰からですか?」
セオドアは淹れたてのお茶を口に含む。こだわりの淹れ方をするセオドアの譲れない瞬間である。
「それが‥‥‥どうやら陛下からでして」
ぷーーーーっ!!!! ケホケホッ‥‥‥
セオドアは派手に噴き出し、咽せてしまった。
「‥‥‥お預かりします。届けていただきありがとうございました」
「あ、いえ‥‥‥」
手紙を届けた教員はセオドアの様子を見て少し心配したが声を掛けて良いものかわからず、静かに退出した。
セオドア自身、王から手紙を受け取るという事自体が初めてである。
(早く読まないと‥‥‥、でも陛下からの手紙を封を開けて読んでいいのか!? あぁ、でも開けないと読めないし!)
動揺のあまり若干混乱していたが封を開けて読んでみた。
内容を要約すると、『試験を受けたエドガー・テオドールの実技試験は合格点とせよ』『エドガー・テオドールの知識は神の領域である』『エドガー・テオドール以外にも身分の上下に関係なく優秀な人材を集め、育てる事に専念せよ』
という事が書いてあった。
(エドガー・テオドール‥‥‥新しい貴族か? そんな子いたっけ?)
さすがに貴族の子供を落とすには強めの理由がいる。合格者の方にあるだろう、とセオドアは合格者の箱の中を確認する。
‥‥‥当然だがなかった。
(え、失格側に入っちゃってるのか?)
今年の合格倍率は約5倍‥‥‥、つまり不合格者は合格者200名の約4倍の数がいるという事。
「スタッフ、帰さなければ良かった‥‥‥」
結局その後不合格枠約800人の中からエドガーの書類を探し、約200人分の合格者の最終チェックを行う事になったセオドアであった。
ここは試験の採点をしている教員室。
「あのー、学院長。少しよろしいですか?」
「はい、何でしょうか?」
「魔法学の試験って満点にはならないように出来てるんですよね?」
「そうですよー、どうかしましたか?」
学院の入試問題、魔法学の最後の問題は宮廷魔術師達の解答不可能問題が記載されていた。
連立複層魔法陣の問題は王都の魔術師達が長年研究をしていたものであった。この問題がどういうものであるか少しでも記載があるだけでも中間点になるような問題であった。
「この子‥‥‥答えてるんです。そして多分合ってます‥‥‥よね?」
「はぁ!? 魔道師団で長年研究している魔法陣ですよ!? それを受験生が解いたというのですか?」
「どれ‥‥‥、!? なるほど、これは?」
「‥‥‥私も合ってると思います」
「確認のためこの解答用紙を早く研究本部へ!!」
「わかりました!」
一番若い教員が走って出ていった。
「‥‥‥まさかこんなことがあるとはな」
「その子の実技試験はどうなのですか?」
「それが‥‥‥実技は0点なんです」
「「「0点!?」」」
「‥‥‥それってどういう事ですか?」
「スキルの発動が確認出来れば少なくとも点は入るはずなのに‥‥‥」
「今まで全くスキルを使っていないのか‥‥‥、それともスキルが無いのか‥‥‥」
「「「あははははは!!!!」」」
教員達は一斉に笑い出した。
「スキルのない人なんていませんよー」
「学院長、冗談上手いですなぁ」
「ははは、すみませんねぇ。にしてもこの子はどう扱えば良いか迷いますなぁ‥‥‥」
「そうですね、学科の成績なら特待生で間違いなしですし」
「実技の成績は足切りですもんね」
「ふむ、足切りはルールですからね。いかに優秀でもそこは曲げられません」
「わかりました、じゃあこの子は不合格という事で‥‥‥」
エドガーの書類は失格者の箱に投げ入れられた。
「さぁ、まだまだ選考する人が残ってますよ! 頑張りましょう!」
「「「はーい」」」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「終わったー!!」
「皆さん、お疲れ様でしたー。上がってください」
「打ち上げ行きましょー♪ あれ? 学長は?」
「最終チェックをしますから。若い皆さんで楽しんできてください」
「じゃあお疲れ様でしたー」
「お先でーす」
一人残るセオドア。少し休憩してから最終チェックをしようか、とお気に入りのお茶を淹れていた。
ドンドンドン!!!!
「!? ! あっつ!!」
激しくドアが叩かれたその音にびっくりして手がブレ、注いでいたお茶を少し手にかけてしまった。
「開いてますよ、どうぞ!」
手を魔法で冷やしながら応えるセオドア。
「失礼します。学院長、急ぎのお手紙が届きました」
「‥‥‥手紙? 急ぎの手紙? 手紙くらいであんなにドアを叩かなくても‥‥‥。全く誰からですか?」
セオドアは淹れたてのお茶を口に含む。こだわりの淹れ方をするセオドアの譲れない瞬間である。
「それが‥‥‥どうやら陛下からでして」
ぷーーーーっ!!!! ケホケホッ‥‥‥
セオドアは派手に噴き出し、咽せてしまった。
「‥‥‥お預かりします。届けていただきありがとうございました」
「あ、いえ‥‥‥」
手紙を届けた教員はセオドアの様子を見て少し心配したが声を掛けて良いものかわからず、静かに退出した。
セオドア自身、王から手紙を受け取るという事自体が初めてである。
(早く読まないと‥‥‥、でも陛下からの手紙を封を開けて読んでいいのか!? あぁ、でも開けないと読めないし!)
動揺のあまり若干混乱していたが封を開けて読んでみた。
内容を要約すると、『試験を受けたエドガー・テオドールの実技試験は合格点とせよ』『エドガー・テオドールの知識は神の領域である』『エドガー・テオドール以外にも身分の上下に関係なく優秀な人材を集め、育てる事に専念せよ』
という事が書いてあった。
(エドガー・テオドール‥‥‥新しい貴族か? そんな子いたっけ?)
さすがに貴族の子供を落とすには強めの理由がいる。合格者の方にあるだろう、とセオドアは合格者の箱の中を確認する。
‥‥‥当然だがなかった。
(え、失格側に入っちゃってるのか?)
今年の合格倍率は約5倍‥‥‥、つまり不合格者は合格者200名の約4倍の数がいるという事。
「スタッフ、帰さなければ良かった‥‥‥」
結局その後不合格枠約800人の中からエドガーの書類を探し、約200人分の合格者の最終チェックを行う事になったセオドアであった。
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