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ミカちゃん
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僕がまだ六歳の時、小学校に入学したばかりの頃。
当時の僕はとにかく人見知りが激しくて。
周りではどんどん友達のグループが作られる中で、僕はなかなかクラスに馴染む事が出来ずに焦燥感に駆られていたんだ。
そんなある日の放課後、集団下校の輪にも入って行けず、裏道を使って一人で帰っていた時の事。
背後からふと声を掛けられた。
「こんなとこでなにしてるの?」
そこに居たのは同い年くらいの女の子。
腰まで伸びた綺麗な黒髪に大きくてつぶらな瞳が印象的だった。
「・・・ともだち、いないから」
それだけ聞くと女の子はにこりと笑う。
「じゃあミカとおともだちになって!」
そのまま僕の腕を掴むと、彼女は勢い良く走り出した。
いきなりの事で、彼女のその強引さに驚いたけど、不思議と嫌な気はしなかった。
そして、彼女は後ろを振り返る事なくひたすら走る、走る、走る。
腕を引っ張られる僕はその速さに付いて行くのがやっとで、もつれそうになる足を何とか前へ前へと送り出す。
「ね、ねぇ!ミカちゃん‼︎どこまで、いくの⁉︎」
息も絶え絶え、心臓が痛い。
こんなに走ったのは人生で初めての事だった。
彼女はと言うと、表情は見えないが息を切らせた様子もなく、障害物をスイスイ避けながら平然と走って行く。
一瞬、こちらに振り返ると、あの大きな瞳で僕を見て、またにこりと笑った。
そして、また前方に視線を戻し何事もなかったように走り続ける。
・・・・・・何処まで行くんだろう?
そう思ったところで、彼女は急に足を止めた。
急に立ち止まるものだから、僕は走る勢いそのままに身体の前側から思いっきり転んでしまった。
擦りむいた膝からうっすらと血が滲む。
段々と熱を帯び、傷がジンジンと痛み出し、その痛さに泣きそうになった。
そんな僕に彼女は優しく手を差し伸べてくれて、痛みを止めるおまじないをしてくれた。
それで何故だか不思議と痛みが引いていくのが分かった。
そして僕の様子を見て、またあの笑顔でにこりを笑う。
「ミカちゃん。ここはどこなの?」
無我夢中で走っていたから、周りの景色を見る余裕なんてなくて、気付けば見知らぬ場所に居た。
あの当時は小さかったから分からなかったけれど、あれは神社だ。
周りに民家一つ無い古びた神社。
こっちこっち。上の方から声が掛かる。
いつの間にやら彼女は神社へと続く階段を駆け上がっていた。
「こっちきて!あそぼ!」
言われるままに、僕は震える脚を手で押さえながら彼女を追い掛けた。
階段を登り切ると、そこには大きな鳥居があって、彼女はその周りをクルクルと走り回っていた。
「ねえねえ、かくれんぼしよ」
そう言うと、まずは自分が鬼をやると言い出し、その場にしゃがみこんで数を数え始めた。
僕はただただ言われるままに隠れられそうな場所を探す。
何処なら見付からないだろうか?
辺りをウロウロしていると向こうの方から彼女の声が聴こえた。
こちらに近付いて来る足音がする。
急いで隠れなきゃ!
そこで焦ってしまったのが良くなかった。
前日の雨で泥濘む地面。
足下の泥で足を取られる。
更にそこの地面に傾斜があった所為で運悪くそのまま下に向かって転がり落ちてしまった。
本当に今日は良く転ぶ日みたいだ。
・・・・・・気付いたら何故かそこは自分の家だった。
訳も分からず動揺する僕の目の前には母が居て、当然、こっぴどく叱られたのは言うまでもない。
経緯は何であれ、かくれんぼの途中で帰ってしまった事に変わりはない。
母に彼女の事、神社でかくれんぼをしていた事を話した。
「あんた何言ってんの?そんな所に神社なんて無いわよ?」
大人になって知った事だが、うんと昔、確かにそこに神社はあったらしい。
だが、何百年も前の火事で焼失して、今はただ森があるだけ。
有名な神社でもなかったから地元の人でも知る人はあまり居ないそうで、そうなるとあの時、僕が見たのは何だったのかと、今思い出しても厭な汗が出る。
今でも時折、彼女の事を思い出す。
あの子は誰だったのか?
もしかしたらまだあの神社で僕を捜しているのかも知れない・・・。
「みーつけた」
————彼女の声を聞いた気がした。
当時の僕はとにかく人見知りが激しくて。
周りではどんどん友達のグループが作られる中で、僕はなかなかクラスに馴染む事が出来ずに焦燥感に駆られていたんだ。
そんなある日の放課後、集団下校の輪にも入って行けず、裏道を使って一人で帰っていた時の事。
背後からふと声を掛けられた。
「こんなとこでなにしてるの?」
そこに居たのは同い年くらいの女の子。
腰まで伸びた綺麗な黒髪に大きくてつぶらな瞳が印象的だった。
「・・・ともだち、いないから」
それだけ聞くと女の子はにこりと笑う。
「じゃあミカとおともだちになって!」
そのまま僕の腕を掴むと、彼女は勢い良く走り出した。
いきなりの事で、彼女のその強引さに驚いたけど、不思議と嫌な気はしなかった。
そして、彼女は後ろを振り返る事なくひたすら走る、走る、走る。
腕を引っ張られる僕はその速さに付いて行くのがやっとで、もつれそうになる足を何とか前へ前へと送り出す。
「ね、ねぇ!ミカちゃん‼︎どこまで、いくの⁉︎」
息も絶え絶え、心臓が痛い。
こんなに走ったのは人生で初めての事だった。
彼女はと言うと、表情は見えないが息を切らせた様子もなく、障害物をスイスイ避けながら平然と走って行く。
一瞬、こちらに振り返ると、あの大きな瞳で僕を見て、またにこりと笑った。
そして、また前方に視線を戻し何事もなかったように走り続ける。
・・・・・・何処まで行くんだろう?
そう思ったところで、彼女は急に足を止めた。
急に立ち止まるものだから、僕は走る勢いそのままに身体の前側から思いっきり転んでしまった。
擦りむいた膝からうっすらと血が滲む。
段々と熱を帯び、傷がジンジンと痛み出し、その痛さに泣きそうになった。
そんな僕に彼女は優しく手を差し伸べてくれて、痛みを止めるおまじないをしてくれた。
それで何故だか不思議と痛みが引いていくのが分かった。
そして僕の様子を見て、またあの笑顔でにこりを笑う。
「ミカちゃん。ここはどこなの?」
無我夢中で走っていたから、周りの景色を見る余裕なんてなくて、気付けば見知らぬ場所に居た。
あの当時は小さかったから分からなかったけれど、あれは神社だ。
周りに民家一つ無い古びた神社。
こっちこっち。上の方から声が掛かる。
いつの間にやら彼女は神社へと続く階段を駆け上がっていた。
「こっちきて!あそぼ!」
言われるままに、僕は震える脚を手で押さえながら彼女を追い掛けた。
階段を登り切ると、そこには大きな鳥居があって、彼女はその周りをクルクルと走り回っていた。
「ねえねえ、かくれんぼしよ」
そう言うと、まずは自分が鬼をやると言い出し、その場にしゃがみこんで数を数え始めた。
僕はただただ言われるままに隠れられそうな場所を探す。
何処なら見付からないだろうか?
辺りをウロウロしていると向こうの方から彼女の声が聴こえた。
こちらに近付いて来る足音がする。
急いで隠れなきゃ!
そこで焦ってしまったのが良くなかった。
前日の雨で泥濘む地面。
足下の泥で足を取られる。
更にそこの地面に傾斜があった所為で運悪くそのまま下に向かって転がり落ちてしまった。
本当に今日は良く転ぶ日みたいだ。
・・・・・・気付いたら何故かそこは自分の家だった。
訳も分からず動揺する僕の目の前には母が居て、当然、こっぴどく叱られたのは言うまでもない。
経緯は何であれ、かくれんぼの途中で帰ってしまった事に変わりはない。
母に彼女の事、神社でかくれんぼをしていた事を話した。
「あんた何言ってんの?そんな所に神社なんて無いわよ?」
大人になって知った事だが、うんと昔、確かにそこに神社はあったらしい。
だが、何百年も前の火事で焼失して、今はただ森があるだけ。
有名な神社でもなかったから地元の人でも知る人はあまり居ないそうで、そうなるとあの時、僕が見たのは何だったのかと、今思い出しても厭な汗が出る。
今でも時折、彼女の事を思い出す。
あの子は誰だったのか?
もしかしたらまだあの神社で僕を捜しているのかも知れない・・・。
「みーつけた」
————彼女の声を聞いた気がした。
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