ヒーロー劣伝

山田結貴

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第一話 史上最低・最悪のヒーロー

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 気を取り直して扉の先に進むと、案の定地下へと続く階段があった。辺りを照らす蛍光灯が暗いせいか、足場が安定しない上にどこまで階段が続いているのかさえ把握できない。
「さっきの男、もしかしてKTHの社員だったのかしら」
 あんな人としてなっていないような奴まで雇っているから、コミュニケーションに長けているという人間を特に歓迎するという主旨の記述をチラシにしていたのだろうか。だとしたら、世も末である。
 色々と考えつつ階段を下りていくと、一風変わった空間に辿り着いた。
「な、何なのここは」 
 そこは端的に例えると、まるでどこかの秘密基地のようであった。
 地下であることもあり窓はなく、広さは一般的な会社のオフィスよりも狭いように感じる。
 部屋の真ん中辺りに大きな円卓と、それを囲むいくつかの丸イス。壁際には水晶らしき物体がついた用途不明の大きな機械や、おもちゃなのかハイテク機械なのか判断に苦しむ物体がごちゃごちゃと置かれている。
 奥にはノートパソコンが置かれている他、何かの書類と思しき紙やファイルが大量に積まれている事務机がある。その後ろには、レザー製と思われるチェアに座った男性がいた。
「あ、もしかしてさっきKTHに応募してくれた人?」
 想定外の景色に呆然としている美江に対し、男性は笑いかけた。
「貴方が黒沢さんですか」
「いかにも」
 黒沢は電話の時と同じように、気さくな美声で答えた。
 小ぎれいな短髪に、上下茶色のスーツ姿。知的な顔立ちで、歳はパッと見ただけだと三十代前半か半ばくらいだろうかと思う。だが、実際は若いのか老けているのかよくわからない、年齢不詳な雰囲気を持っているような気がしてならない。
「いやいやいや。まさか、駄目元で貼ったチラシで応募が本当に来るなんて。嬉しい限りだよ」
「あの、ここって一体」
 美江はおどおどしながら、何度も室内を見回す。ここは特撮ドラマの撮影スタジオか。それとも、近未来の地下都市の一部か。
「ここ? 電話でKTHだって言ったと思うんだけど」
「あの、詳しく聞こうと思ってたんですけど。KTHとは何でしょうか」
「怪人対策本部。略してKTH」
「……は?」
 カイジンタイサクホンブ? それは、SF作品に登場する組織でしょうか。
 いまいち状況を理解できない美江は、頭に鈍痛が走るのを感じた。
「あれ、ひょっとして理解してなかったのかな。チラシに豆みたいなちっさい字で細々と書いてあったと思うんだけど」
「理解も何も、怪人って……二十面相か何かですか」
「うーん、江戸川乱歩は一切関係ないんだけど」
 黒沢は困った顔をしながらも、話を進めていく。
「KTHというのは、本来は極秘の機関なんだ。だから、よくわからないだろうから一から説明するね。簡潔に言うと、ここは宇宙から地球に飛来して悪事を働く怪人を退治して、宇宙に送り返すという世界平和に貢献する活動をしているんだ。ま、ここは厳密に言うと本部ではなくて地方の支部なんだけど。あっ。それじゃあKTHじゃなくてKTSじゃないのって思ったかもしれないけど、そこはご愛嬌ってことでツッコまないでね」
 たった数分の間に意味不明かつ理解不能な世界観を一気に脳みそにぶち込まれたせいで、今にもショートしてしまいそうなのですが。
 美江は次元を超えた話のぶっ飛び具合に、ただただまばたきを繰り返すばかりである。
「あの、大丈夫?」
 そんな美江の様子を見て心配になったのか、黒沢が尋ねた。
「いや……その……」
 大丈夫なわけがない。今すぐにでも、きびすを返して帰ってしまおうか。
 ここにいるのがあまりにも場違いな気がしてきて、美江は思い詰め始めていた。
「あ、ひょっとして今の話を信じてないとか? それも仕方ないことかもしれないけど……。怪人といったって、見た目は特撮ヒーローものに出てくるような着ぐるみみたいな奴とか、仮装した人間みたいな奴ばっかりだもんなあ。もしそいつらを見たことがあったとしても、何かのショーのリハーサルくらいにしか思わないだろうからたいして気にもとめてないだろうし」
「え、怪人って着ぐるみみたいなんですか?」
 黒沢の呟きに対し、美江は首をかしげた。
「あれ、もしかして怪人を見たことがあるとか」
「確証はないんですけど、ちょっと心当たりが」
 着ぐるみという言葉をきっかけに思い出したのは、数日前の夜の出来事だった。
 確かその日もいつものように職業安定所に突っぱねられ、日頃の溜まりきったストレスの発散にと思い屋台でグチグチ言いながら、女一人でやけ酒をしていた。
 そんなこんなで時間が経ち、酔いが回った頃、ふと後ろを向いた時に変な物体を目撃したのである。
 まるでどこかのゆるキャラにでもいそうな、額に角が生えた巨大なこんにゃく的な物体。それが、道路をテケテケと歩いていたのだ。
 その後酔い潰れてしまって記憶が曖昧なのだが、その物体は誰かにボコボコにされていたような……。
「ふーん。怪人って、認知度が低いわりには結構目撃されてるみたいだね。じゃあ、もしかしてうちのヒーローも見たことあったりする?」
「は?」
 怪人の次はヒーロー? この現代社会には、正義のヒーローまで実在しているというのか。
「まあそもそも、そのチラシで募集した監視役っていうのは、ヒーローの監視役って意味だったんだけどもね」
「は?」
 ヒーローという言葉に戸惑っている間に、またも理解しがたいことを言われてしまった。
 ヒーローの監視役を、チラシで一般公募した。……駄目だ。こんな短文の中に、信じられない量のツッコミどころが存在している。
 監視役をチラシなんかで一般公募するって。正義の存在であるヒーローが監視されるって。そもそも、ヒーローがこの世に存在してるって……。
「あの、大丈夫?」
 黒沢の口から、本日二度目の「大丈夫?」が出てしまった。
 だから、大丈夫なわけがないだろうと内心思いつつも、面と向かって正直に言うわけにもいかないので、美江は「あー……まあ」と適当にごまかしておいた。
 ……どうにかこの場をしのいだら、家に帰ってまた求人誌を読み漁ろう。うん、そうしよう。そう心に誓いながら。
「うーん、ここまで話を把握してなかったということは仕事内容についても、よくわからないままここに来たってことだよね。せっかく誠実で真面目そうな人が来てくれたのに、何だかもったいないな」
 仕事内容を詳しく把握できないまま応募した美江も美江であるが、チラシに詳しい情報を書かなかった黒沢も幾分か悪いような気がする。もっとも、チラシに正直な仕事内容をみっちりと書き込んだりしたら、誰も応募してこないような気もするが。
 しかし、一体どこの誰が「監視役」という言葉だけでヒーローのお目付け役という仕事内容に辿りつける超絶な発想力を持っているというのか。この点については厳しく追及したい所存である。
「きっと、この面接も辞退されてしまうんだろうなあ。仕事が仕事というだけに、お給料はそれなりの額を出させていただこうと思ってたんだけど」
「え?」
 文句と苦情が次々に頭に浮かんでいる最中、美江は「それなりの額」という部分にピクッと反応した。それをしっかりと目視した黒沢は、にんまりと微笑んで手招きをした。
「な、何ですか急に」
「いいから、ちょっと来て」
 言われるがままに近づくと、黒沢は事務机の引き出しから電卓を取り出して数字をパチパチと指先で叩きながら語り始めた。
「何で正義の存在であるはずのヒーローに監視役が必要なのかをまだ話してなかったね。信じられない話かもしれないけど、うちのヒーローって奴はね、とんでもない金の亡者なんだ。あいつは雇ってもらってる身だっていうのに、人の足元を見てことあるごとに給料の値上げを要求してくるんだ。ここ以外の地方のKTHのヒーローも多少の値上げ要求くらいならしてくるらしいと噂には聞いてるんだけどね、うちのはそれと比べものにはならないくらい群を抜いてひどいんだ。値上げの他にも交通費とか、経費とか、治療費とか、物品の修理費とかで特別手当をむしろうとするとか……思い出すだけで、気が滅入るよ。おまけに、ヒーローのくせして色々なバイトを掛け持ちしていてね、値上げの要求や特別手当の支払いを断ったら、何とバイトを優先して怪人退治を放り出すんだよ! 最低でしょ。だから、理不尽な給料の値上げ請求の防止や、怪人退治をちゃんとやるように促すために監視役を設けようという結論に至ったんだよね」
 話を聞いてわかったのは、ここに勤めているというヒーローとやらがその肩書きにはふさわしくないくらいに外道であるということくらいであった。
 思わず「そんなヒーロー、クビにすればいいのに」と言いかけてしまったが、黒沢の悩ましい表情で語る様子からヒーローを簡単にクビにすることができない事情があるということを何となく察してしまったので、それについては触れないでおくことにした。
「でも、そんなヒーローの監視役なんて雇ったら、余計に人件費とかかかりませんか。その監視役を雇うのって、えっと、KTHでしたっけ。ここのヒーローにかける出費を抑える役割も兼ねているんですよね」
「いやいやいや。あの、ヒーローが繰り出す目玉が飛び出る請求額に比べたら。で、もし貴女が監視役を引き受けてくれるなら、経費は別で毎月これくらいの給料を出そうと思ってたんだけど」
「……!」
 数字がはじき出された電卓を見せられるなり、美江は口元を手で覆いながら絶句してしまった。
 その額は派遣OL時代には決して考えられないような、破格の高値であった。下手をすると、そこらのエリートサラリーマンの給料なんかよりも、ずっと高い額でかもしれない。
「毎月、こんなに監視役に支払って大丈夫なんですか」
「ここ、給料だけは結構奮発して支払えるんだよね。何せ、こんなところでなんて誰も働きたがらないもんだから。しかも、ヒーローにむしられてる分がなくなると思えばこれくらい余裕で出せるよ。それに、うちのヒーローは本当にひどい奴なんだ。給料の値上げを断るごとにこっちの精神にグサグサくるようなことを平気で吐いてきて……おかげで、僕は胃を患ったよ。ついでにその痛みも緩和されるなら、これくらいドーンと払わないとバチがあたるってもんだよ」
 何か理不尽な給料の値上げの防止よりも、後半に話していた内容のために高給を支払う目的があるように感じられるのは気のせいだろうか。
 薬指に指輪が光る左手で胃の辺りをなでる黒沢の姿に、美江は哀愁に似た何かを感じた。
「あの、監視役って具体的にはどんな仕事をすればいいんですか」
「あ、仕事に興味持ってくれたの?」
「ま、まあ」
 その、破格の高給にちょっと。……という言葉は飲み込んでおいた。
「じゃあ、監視役についてもう少し詳しく話すね。簡単に言うと、怪人が出た時にヒーローを見張ってちゃんと義務を果たすかどうかとか、不正な経費の上乗せをもくろんでないかとかをチェックしてほしいんだ。労働時間は、怪人の出現率に依存するから不規則。でも、暇な時はとことん暇。それでこの給料はかなり美味しいと思うけど」
「給料が高くて美味しいのはよくわかりましたけど、そのヒーローって見張っていないと義務を果たすかどうかも怪しいんですか? 話だけで判断すると、本当にここのヒーローって外道ですよね」
「だって、実際外道だし。さっきも言ったけど、怪人退治より掛け持ちのバイトを優先するような奴だから。ここだけの話、僕はあいつのことを影では外道君って呼んでるんだ」
「……」
 それなりの事情があるとはいえ、ここまでボロカスに言われるヒーローって一体。
「それはともかく、監視役を引き受けてみる勇気はある? 僕の方は貴女を雇う気満々なんだけど」
「あっ」
 そうだ。今までわけのわからないことを連発されてすっかり忘れていたが、これはれっきとした採用面接だった。
 美江は、はたと気がついて目を泳がせた。
「悪い話じゃないとは思うんだけどね。多少の覚悟は必要だとは思うけど。で、どうする?」
「どうすると言われましても……」
 美江が返事に困っていると、黒沢の目の前にあるノートパソコンから甲高い電子音が流れた。
 何かのクラシック音楽に似ているが、微妙に音が外れているのか楽曲名までは特定できない。
「何なんですか、この音」
「噂をすれば何とやら。怪人が出没したみたいだね」
 黒沢は至極冷静に言うと、キーボードを素早い手つきで打ってノートパソコンを操作し始めた。
 瞬く間に、画面の中に様々な情報が映し出されていく。
「あー。またナーゾノ星人か」
「?」
 ナーゾノセイジン? 
 またも飛び出した、よくわからない単語に美江は顔をしかめた。
「あの、それって何ですか」
「え? ナーゾノ星人は、ナーゾノ星という月の裏側にある小惑星から最近よく地球に飛来する宇宙人だよ。日本語に限りなく近い言語を話す奴らで、日本にばかり出没しては何かと悪事を働くんだ。ここ数日だけで、何人のナーゾノ星人を捕まえて本部に送りつけたことやら」
 ここの世界観は、B級特撮番組並、またはそれ以下なのだろうか。
 美江は真顔で馬鹿馬鹿しい話を語る黒沢の姿に、つい吹き出しそうになってしまった。
 第一に、ナーゾノ星という名称はあまりにも滑稽というか、センスがないにもほどがあるだろう。
 第二に、月の裏側にそんな変な名前の小惑星がいつ湧いて出たというのだ。
 第三に、何よりもこんなくだらない話を、知的な顔立ちな男性が真剣に語るのが不釣り合いでたまらない。
 他にも思うところはあるが、キリがなくなりそうなのでこの辺りでやめておくことにした。
「さて、じゃあヒーローに連絡して怪人を捕まえてもらうことにしようか」
 黒沢はそう言うと、キーボードを打ってパソコンを操作した。
「呼び出し、と」
「……何ですか、黒沢さん」
 最後にエンターキーが押されると、パソコンから男の声が流れてきた。
 パソコンを使ってヒーローとやらと通信しているようだが、その画面は真っ暗で何も映っていない。これは、音声のみの通信手段なのだろうか。
「あ、またカメラのところにテープ貼ってるね。せっかくのKTシーバー付属のテレビ通話機能が台無しじゃないか」
 今の黒沢の発言で、美江は脱力のあまりずっこけそうになってしまった。
 通信手段のカメラ部分にわざわざテープを貼り、相手に顔を見えなくするヒーローなんて前代未聞だ。
「だって、このKTシーバーの小型カメラは俺の顔だけではなく、俺の周りの景色まで黒沢さんのパソコン画面に映すじゃないですか。それって、プライバシーの侵害になりませんかね」
 ヒーローであるらしい通信相手は、実に嫌味ったらしい口調で自論を述べる。
 その声は特徴的で、どこかで聞いたことがあるような気がした。
「プライバシーの侵害ってねえ。こういった通信をする時に、ちょっとばかし僕に姿を見られるだけじゃないか」
「それが困ると言ってるんです。もし、黒沢さんが連絡をよこしてきた時に俺がキャッシュカードを片付けている時だったり、暗証番号をメモしたりしている時だったらそれは大事ですよ。下手をしたら、俺の個人情報が黒沢さんにダダ漏れしてしまう危険性があるじゃないですか。この通信記録って、パソコンに全て自動的に保存されているわけでしょう?」
「君のその口振りだと、まるで僕が君のお金を盗もうとしていると疑っているように聞こえるんだけど」
「それは誤解ですよ。黒沢さんみたいなチキンハートをお持ちの方が、現在の地位を捨ててまで犯罪に手を染めるとは考えてませんから。俺は、黒沢さんのパソコンがハッキングされて情報が流出することを恐れているんですよ」
「チキンハートってねえ……。あと、パソコンのハッキング対策はバッチリだからね。君に心配されなくても、僕がちゃんと細心の注意を払ってるから」
「黒沢さんがやってるって言うから、こっちは心配なんですけど」
「君って奴は本当にサラッと毒を吐いてくれるよね。僕、君のそういうところ好きになれないな」
「ははは、何を今更。大丈夫、そんなのお互い様ですよ」
「……」
 一連のやりとりを横から聞いていてわかったのは、ヒーローが相当な屁理屈屋で猛毒持ちだということだった。こんな奴を毎日のように相手にしていては、胃を患うのも無理はない。
「で、雑談はここまでにして、さっさと要件を話してくれませんかね。俺、今はバイト中で忙しいんです。孤独に耐えきれずに会話したかっただけなら容赦なく切りますよ」
 ヒーローは自分が仕掛けた舌戦を一方的に切り上げると、今度はイライラしたようなトーンで言った。
「僕は孤独じゃないし、勝手に通信切ったら駄目だから。面倒になってきたから簡潔に言うけど、A区に怪人が出たんだよ。具体的な情報はKTシーバーに送るから、それで色々確認して早急に向かって」
「早急に? それは嫌ですね」
「はい?」
 ヒーローからのまさかの出動拒否に、黒沢の眉がつり上がった。
「どういう意味かな、それは」
「言葉の通りの意味ですけど。だって、また俺にバイトの中抜けしろって言ってるんでしょ。少し前にバイトを強引に中抜けしたせいで、そのままクビになってしまったという話をしたばかりですよね」
「それは、君がヒーローとバイトを掛け持ちでやってるのが悪いだろ」
「今の世知辛いご時世、ヒーローだけじゃ食っていけないんですよ。もし黒沢さんが正義感という心持ちだけで怪人を倒す善意のヒーローをお求めになるのであれば、今すぐ俺をクビにして新しいヒーローをお雇い下さい。しかし、並のサラリーマンより少々高いくらいの給料で地球の平和を命がけで守ってくれるようなすんばらしいお方は、どこをほっつき歩いてもぜーったいに見つからないと思いますけどね!」
「ま、また痛いところを。でも、君が言ってることも矛盾してるだろ。独身でサラリーマンより高い給料もらっておいて、食っていけてないわけが……」
「人の揚げ足を取るのに必死になる前に、俺がどうすれば怪人退治に赴く気になるかを真剣に考えた方がいいと思いますけどね。以上」
「あっ」
 結局、ヒーローからの通信は一方的に切られてしまった。
「ああ! もうあの外道! やっぱり人選ミスだったあ」
 黒沢は悔しそうに叫ぶと、強く頭をかきむしった。
「あの。ヒーローってまさか、黒沢さんが選んで雇ったんですか」
 美江がおそるおそる尋ねると、黒沢は、コクッとうなずいた。
「こっちにも色々事情があってね。ある日、ここで働いていた前のヒーローが突然やめちゃってさ。最初は本部に連絡して人材派遣の要求をしたんだけど、ヒーローなんて誰にでもできるような仕事じゃないから本部も人材不足だったらしくて、きっぱり断られたんだ。それで、仕方なくこの地域で一般公募してみたら、来たのはどいつもこいつもヒーローショーのスーツアクターの募集と勘違いした人ばかり。仕事内容を話したら、みんなしっぽを巻いて逃げたよ。ほんの一部だけ正義に燃えてヒーローをやりたがった人達もいたんだけど、そういった人に限って運動能力が低過ぎたり、虚弱だったりで戦えそうな人はゼロ。外道君だけだったんだよね。仕事内容を聞いても逃げ帰らなかった上に、怪人と戦えそうなくらい強かったのは。でも、面と向かって言われた第一声が『この仕事、いくらもらえるんですか』だった時点で彼の本性に気がつくべきだったんだよなあ」
 とにかく、こんなことになってしまったのには深い事情があるらしいということはわかった。
「うう、胃が痛い。こんなことが続いたら、上に怒られるのは僕だってのに。うー……」
 ストレスがピークに達してしまったのか、黒沢はとうとう胃を押さえてうめき始めてしまった。
 多分、役職としても中間管理職くらいなのだろう。上と下からの精神攻撃に、だいぶ参っているようだ。
「あの、大丈夫ですか」
「駄目」
 美江が一応心配して声をかけると、黒沢は何のためらいもなく即答した。
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