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第三話 怪人ライブwithヒーロー
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ヒーローとは、弱きを助け悪をくじく正義の象徴。
戦いの時にその武勇のさまを世間に見せつけるのはもちろんのことであるが、その他の特殊技能などの点においても人並み外れた頭角を現す、完全無欠の存在として描かれることが時々ある。
しかし、全てのヒーローがそうである保証はどこにもない。
昨日はシマウマ。その前はヒヨコ。さらにその前はアザラシ。
これは、なぞなぞなどではない。ここ最近のうちに、ヒーローが退治した怪人達の見かけの姿を端的に説明するとこうなるというだけのことだ。
「どいつもこいつも、ゆるキャラみたいなのばっかりだったわね」
KTHに設置されている丸イスに腰かけながら、美江は数日の間に起きた出来事を回想していた。
他の星から地球に襲来し、悪事を働く怪人を生け捕りにして元にいた星へと送り返すことを主な活動としているこのKTHに雇われてから、もうそれなりの日数が経過している。
美江は地域を救うヒーローの監視役という、あまりにも理解しがたい仕事に最初は戸惑うことも多かったが、最近は慣れてきて徐々にC級SF作品みたいな世界観を受け入れられるようになってきた……と思っていた。
だが、出没する怪人の悪事や容貌が変というか、脱力するものばかりで、どうにも気合が入らないのである。
「うちのヒーローもそうだけど、怪人も怪人らしくないような気が……」
勝手な偏見からすると、怪人というものはそれらしくおぞましい容姿をしていて、世間にそれなりの爪痕を残すような悪事を働き人々から恐れられるというイメージが強い。それがやけに愛らしい容姿であったり、例え容姿の方が当てはまらなかったにしても、働く悪事の内容が食い逃げや試食品の独占というのはおかしいだろう。地域を守る存在でありながら金の亡者であるヒーローの永山もそうだが、そんな怪人達もそれらしくないと言えるように思えてしまったりするのである。
「愛があればー♪ 何もいらないだろうー♪ さあー二人で行こうよー♪」
「……」
美江が脱力していると、さらに追い打ちをかけるように事務机の方から珍妙なメロディが聞こえてきた。
メロディの方を向くと、黒沢がデスクワークにいそしみながら真顔で口を小さく動かしていた。
「く、黒沢さん。何なんですか、その歌は」
「え、知らないの。ひねもす三郎の『二人でのたり』だよ。昭和の名曲だけど」
「はあ」
美江は説明を聞いてもなお、いまいちピンと来なかった。
こんな変わった曲調の歌、果たして存在していただろうか……?
しかしめげずに、黒沢は歌についての話を続ける。
「サビだったら、わかるかな。えっと……朝から晩までのたりのたーり♪二人の幸せのたりのたーり♪ ああー永遠にひねもすのたーり♪」
「あ、聞いたことがあるかもしれません。確か」
「確か?」
少し音が外れていて思い出すのに時間がかかってしまったが、このセンスの欠片もない歌詞から判断すと間違いないだろう。
美江は楽曲について思い出した情報を、忠実に伝えた。
「私の祖父が昔、酔っぱらった時にノリノリで歌ってました。祖父の青春を大変潤してくれた楽曲だとかで」
「お、おじいさんが? そ、そう……」
美江から歌に関しての情報を聞くなり、黒沢は急に陰鬱そうな表情をしてうつむいてしまった。
決してそのつもりはなかったのだが、もしかして祖父というワードが、彼の年齢問題に軽く触れてしまったのだろうか。
「あ、あの。黒沢さん? どうかしましたか」
「そうか……花咲君のおじいさん辺りの年代の方が好きな歌なのか。のたり、のたり……♪」
黒沢はせっかくの美声を台無しにした、ややフラット気味な音程で歌いながら、気分を紛らわすためか、猛スピードで仕事をこなし始めた。もはや、この状態では何も聞き出すことはできないだろう。
「らしくないのは、怪人とかだけでもないかも」
歌がサビに入って盛り上がってきて、少し元気が出た様子の黒沢を見ながら美江は溜め息をついた。
黒沢は特撮物のドラマなどで言うならば、ヒーローに指示を与える上官や司令官に当たるはずである。これまた勝手な偏見かもしれないが、戦隊ヒーローが登場する作品に出てくる上官などは、大体は真面目でお堅い感じであることが多いと思われる。少なくとも、年齢についての話題を出されただけで気分を損ねたり、ヒーローにコテンパンに言い込められて泣きそうになったり、休みをうまく取れないせいで嫁にいびり倒されたりしているイメージなんてみじんもないはずなのだ。もっとも、全国の子供達の夢を壊さないためにドラマなどではそういった描写を避けているという可能性も大いにあるが。
「ん、あっ。本部からだ」
パソコンから甲高い電子音が流れると、黒沢はピタッと歌唱をやめた。
どうやら、怪人に関する情報が本部から送られてきたらしい。
「これは、外道君に出勤してもらわないと駄目だな」
連絡は、怪人の出没についてのものであったようだ。
それを近くで聞いていた美江は、あまりの『らしくないラッシュ』のせいで「今度の奴は怪人らしい怪人であって欲しい」などと、つい不謹慎なことを願ってしまった。
「永山君。聞こえるかい」
黒沢は早速、素早いパソコン操作でヒーローに連絡をいれる。
すると、「はい?」という、いかにもかったるそうなトーンの声が流れてきた。
永山が連絡手段として使用しているKTシーバーのカメラ部分にテープが貼ってあるせいで、奴の姿がパソコン画面に映し出されないことは重々承知しているが、美江は二人の会話を聞き漏らさないために席を立って近づくことにした。
「今、どこにいるんだい。怪人が出たんだけど」
「今ですかあ? バイト中ですよ。日雇い労働に精を出しているところでしてねえ」
「本当かなあ……?」
黒沢は怪しみながら、ねちねちとした口調で問いかける。
この部分だけ切り取って見れば、彼が陰険な上司であるかのように思われかねないが、永山に疑ってかからずにいられないのも無理はない。
うちのヒーローは、知り得る限りだけでもかなりの回数の嘘をついており、その前科は計り知れない。話を素直に信じてもらえないのも、全て身から出た錆なのだ。
「うたぐり深い人ですねえ、黒沢さんは。性格悪いとか、よく言われません?」
「ははは。もし言われてたとしても、君ほどじゃないから大丈夫。で、そろそろ君がどこにいるのかを答えてくれないかな」
「地球ですね。それだけは、自信を持って間違いないと言えます」
「小学生みたいな、つまらない受け答えはやめようか」
「じゃあ、黒沢さんは俺にもっと面白いことを言えと? 芸人でもない俺に、無茶振りするのはいただけませんねえ」
「そういう意味じゃなくってねえ」
黒沢は、話し方こそはまだ穏やかであるが、その目つきを段々と険しいものへと変えつつある。
永山は物事の加減というものを察したのか、次に口に出したのは要望に沿うものであった。
「わかりましたよ。真面目に答えますから。今はですね、Z区の工事現場にいます。もっと細かく住所を言いますと……」
永山が詳細に自身がいるという場所についての情報を伝えると、黒沢は「ふーん。そう」と冷たく言ってからパソコンを操作した。
すると、画面にこの地域周辺を簡略化した地図が映し出され、その中で小さな点がポツンと点滅した。
「あ、めずらしい。本当に申告通りの場所にいるなんて」
「はい?」
パソコンから流れてくる永山の声には、明らかに動揺が入り混じっていた。
無論、今の言葉に反応を示したのは奴だけではなかった。
「く、黒沢さん。あの、まさか」
美江は事実を確認するために、パソコンに映る地図によく目を凝らす。
……間違いない。地図の中の点と、永山が自己申告した現在位置は完全に一致している。ということは、つまり。
「黒沢さん! KTシーバーにGPS機能を勝手につけたんですか。いつの間に……プライバシーの侵害ですよ!」
美江と同じ結論に行き着いたらしい永山は、状況を把握するなり声を荒らげて抗議をし始めた。
だが、黒沢は全く動じることなく真っ暗な画面を冷徹に見据える。
「君が大ぼらを吹きまくるから、こういった処置をとらせてもらったってだけだから。完全に、これは自業自得って奴だよ」
黒沢の言い分はごもっともである。何せ、相手は金のためなら何でもやりかねない外道なのだから。
「俺をずっと束縛するつもりですか? たまったもんじゃありませんよ。いくらヒーローだからって、プライベートを犠牲にする義務なんてないですよね」
永山は自分の日頃の行いを棚に上げ、特徴のある声で早口にまくしたてる。
それを聞く黒沢は、しかめっ面ではあるものの、今のところは冷静だ。
「そういった義務はないけど、全ての発端は君の普段の素行にあるんだからね。品行方正に、なんて高望みは言わない。でもね、君がもう少し人としてマシな奴だったら、こんなことをされないで済んだんだよ。わかる? こうして君と無駄話をしている間にも、怪人による被害が増えてるかもしれないんだからね」
「おや、俺との討論を黒沢さんは無駄話であるときちんと認識なさっているのですか。それを自覚しているのであれば、もう少し端的にお話してはいかがです? ……まあ、仕方ありませんか。年寄りは話が長いって、世間でも言われているくらいですし」
「と、年寄りってねえ。僕はまだ、そこまでは……」
年齢ネタという名の憎まれ口が炸裂すると、黒沢の表情があからさまに歪んだ。
それをきっかけに話の主導権を握った永山は、さらに一気にたたみかけた。
「ま、そういう俺も話が長くなりそうなので、この辺でやめておいてあげますよ。二十六歳の若さで、年寄りの仲間入りなんてしたくありませんからね。では、仕事はちゃんとさせていただきますから、さっさとKTシーバーに怪人についての情報を送って下さい。あ、そうそう。仕事を中抜けした分の特別手当は後でしっかりいただきますから。以上」
「あっ」
言葉のマシンガンを一方的に打ち終えると、永山は通信を切ってしまった。
「また勝手に切って……本当にどうしようもない奴だなあ。あうう……」
黒沢は、胃の辺りを手で押さえながら深い溜め息をついた。
例えるなら、その姿はろくでもない部下を持ってしまった中間管理職が頭を痛める気の毒なさまによく似ている。
「色々な意味で大丈夫ですか」
美江は一応心配し、声をかけた。
「色々な意味で、やっぱり駄目だね」
言わずもがな、即答であった。
戦いの時にその武勇のさまを世間に見せつけるのはもちろんのことであるが、その他の特殊技能などの点においても人並み外れた頭角を現す、完全無欠の存在として描かれることが時々ある。
しかし、全てのヒーローがそうである保証はどこにもない。
昨日はシマウマ。その前はヒヨコ。さらにその前はアザラシ。
これは、なぞなぞなどではない。ここ最近のうちに、ヒーローが退治した怪人達の見かけの姿を端的に説明するとこうなるというだけのことだ。
「どいつもこいつも、ゆるキャラみたいなのばっかりだったわね」
KTHに設置されている丸イスに腰かけながら、美江は数日の間に起きた出来事を回想していた。
他の星から地球に襲来し、悪事を働く怪人を生け捕りにして元にいた星へと送り返すことを主な活動としているこのKTHに雇われてから、もうそれなりの日数が経過している。
美江は地域を救うヒーローの監視役という、あまりにも理解しがたい仕事に最初は戸惑うことも多かったが、最近は慣れてきて徐々にC級SF作品みたいな世界観を受け入れられるようになってきた……と思っていた。
だが、出没する怪人の悪事や容貌が変というか、脱力するものばかりで、どうにも気合が入らないのである。
「うちのヒーローもそうだけど、怪人も怪人らしくないような気が……」
勝手な偏見からすると、怪人というものはそれらしくおぞましい容姿をしていて、世間にそれなりの爪痕を残すような悪事を働き人々から恐れられるというイメージが強い。それがやけに愛らしい容姿であったり、例え容姿の方が当てはまらなかったにしても、働く悪事の内容が食い逃げや試食品の独占というのはおかしいだろう。地域を守る存在でありながら金の亡者であるヒーローの永山もそうだが、そんな怪人達もそれらしくないと言えるように思えてしまったりするのである。
「愛があればー♪ 何もいらないだろうー♪ さあー二人で行こうよー♪」
「……」
美江が脱力していると、さらに追い打ちをかけるように事務机の方から珍妙なメロディが聞こえてきた。
メロディの方を向くと、黒沢がデスクワークにいそしみながら真顔で口を小さく動かしていた。
「く、黒沢さん。何なんですか、その歌は」
「え、知らないの。ひねもす三郎の『二人でのたり』だよ。昭和の名曲だけど」
「はあ」
美江は説明を聞いてもなお、いまいちピンと来なかった。
こんな変わった曲調の歌、果たして存在していただろうか……?
しかしめげずに、黒沢は歌についての話を続ける。
「サビだったら、わかるかな。えっと……朝から晩までのたりのたーり♪二人の幸せのたりのたーり♪ ああー永遠にひねもすのたーり♪」
「あ、聞いたことがあるかもしれません。確か」
「確か?」
少し音が外れていて思い出すのに時間がかかってしまったが、このセンスの欠片もない歌詞から判断すと間違いないだろう。
美江は楽曲について思い出した情報を、忠実に伝えた。
「私の祖父が昔、酔っぱらった時にノリノリで歌ってました。祖父の青春を大変潤してくれた楽曲だとかで」
「お、おじいさんが? そ、そう……」
美江から歌に関しての情報を聞くなり、黒沢は急に陰鬱そうな表情をしてうつむいてしまった。
決してそのつもりはなかったのだが、もしかして祖父というワードが、彼の年齢問題に軽く触れてしまったのだろうか。
「あ、あの。黒沢さん? どうかしましたか」
「そうか……花咲君のおじいさん辺りの年代の方が好きな歌なのか。のたり、のたり……♪」
黒沢はせっかくの美声を台無しにした、ややフラット気味な音程で歌いながら、気分を紛らわすためか、猛スピードで仕事をこなし始めた。もはや、この状態では何も聞き出すことはできないだろう。
「らしくないのは、怪人とかだけでもないかも」
歌がサビに入って盛り上がってきて、少し元気が出た様子の黒沢を見ながら美江は溜め息をついた。
黒沢は特撮物のドラマなどで言うならば、ヒーローに指示を与える上官や司令官に当たるはずである。これまた勝手な偏見かもしれないが、戦隊ヒーローが登場する作品に出てくる上官などは、大体は真面目でお堅い感じであることが多いと思われる。少なくとも、年齢についての話題を出されただけで気分を損ねたり、ヒーローにコテンパンに言い込められて泣きそうになったり、休みをうまく取れないせいで嫁にいびり倒されたりしているイメージなんてみじんもないはずなのだ。もっとも、全国の子供達の夢を壊さないためにドラマなどではそういった描写を避けているという可能性も大いにあるが。
「ん、あっ。本部からだ」
パソコンから甲高い電子音が流れると、黒沢はピタッと歌唱をやめた。
どうやら、怪人に関する情報が本部から送られてきたらしい。
「これは、外道君に出勤してもらわないと駄目だな」
連絡は、怪人の出没についてのものであったようだ。
それを近くで聞いていた美江は、あまりの『らしくないラッシュ』のせいで「今度の奴は怪人らしい怪人であって欲しい」などと、つい不謹慎なことを願ってしまった。
「永山君。聞こえるかい」
黒沢は早速、素早いパソコン操作でヒーローに連絡をいれる。
すると、「はい?」という、いかにもかったるそうなトーンの声が流れてきた。
永山が連絡手段として使用しているKTシーバーのカメラ部分にテープが貼ってあるせいで、奴の姿がパソコン画面に映し出されないことは重々承知しているが、美江は二人の会話を聞き漏らさないために席を立って近づくことにした。
「今、どこにいるんだい。怪人が出たんだけど」
「今ですかあ? バイト中ですよ。日雇い労働に精を出しているところでしてねえ」
「本当かなあ……?」
黒沢は怪しみながら、ねちねちとした口調で問いかける。
この部分だけ切り取って見れば、彼が陰険な上司であるかのように思われかねないが、永山に疑ってかからずにいられないのも無理はない。
うちのヒーローは、知り得る限りだけでもかなりの回数の嘘をついており、その前科は計り知れない。話を素直に信じてもらえないのも、全て身から出た錆なのだ。
「うたぐり深い人ですねえ、黒沢さんは。性格悪いとか、よく言われません?」
「ははは。もし言われてたとしても、君ほどじゃないから大丈夫。で、そろそろ君がどこにいるのかを答えてくれないかな」
「地球ですね。それだけは、自信を持って間違いないと言えます」
「小学生みたいな、つまらない受け答えはやめようか」
「じゃあ、黒沢さんは俺にもっと面白いことを言えと? 芸人でもない俺に、無茶振りするのはいただけませんねえ」
「そういう意味じゃなくってねえ」
黒沢は、話し方こそはまだ穏やかであるが、その目つきを段々と険しいものへと変えつつある。
永山は物事の加減というものを察したのか、次に口に出したのは要望に沿うものであった。
「わかりましたよ。真面目に答えますから。今はですね、Z区の工事現場にいます。もっと細かく住所を言いますと……」
永山が詳細に自身がいるという場所についての情報を伝えると、黒沢は「ふーん。そう」と冷たく言ってからパソコンを操作した。
すると、画面にこの地域周辺を簡略化した地図が映し出され、その中で小さな点がポツンと点滅した。
「あ、めずらしい。本当に申告通りの場所にいるなんて」
「はい?」
パソコンから流れてくる永山の声には、明らかに動揺が入り混じっていた。
無論、今の言葉に反応を示したのは奴だけではなかった。
「く、黒沢さん。あの、まさか」
美江は事実を確認するために、パソコンに映る地図によく目を凝らす。
……間違いない。地図の中の点と、永山が自己申告した現在位置は完全に一致している。ということは、つまり。
「黒沢さん! KTシーバーにGPS機能を勝手につけたんですか。いつの間に……プライバシーの侵害ですよ!」
美江と同じ結論に行き着いたらしい永山は、状況を把握するなり声を荒らげて抗議をし始めた。
だが、黒沢は全く動じることなく真っ暗な画面を冷徹に見据える。
「君が大ぼらを吹きまくるから、こういった処置をとらせてもらったってだけだから。完全に、これは自業自得って奴だよ」
黒沢の言い分はごもっともである。何せ、相手は金のためなら何でもやりかねない外道なのだから。
「俺をずっと束縛するつもりですか? たまったもんじゃありませんよ。いくらヒーローだからって、プライベートを犠牲にする義務なんてないですよね」
永山は自分の日頃の行いを棚に上げ、特徴のある声で早口にまくしたてる。
それを聞く黒沢は、しかめっ面ではあるものの、今のところは冷静だ。
「そういった義務はないけど、全ての発端は君の普段の素行にあるんだからね。品行方正に、なんて高望みは言わない。でもね、君がもう少し人としてマシな奴だったら、こんなことをされないで済んだんだよ。わかる? こうして君と無駄話をしている間にも、怪人による被害が増えてるかもしれないんだからね」
「おや、俺との討論を黒沢さんは無駄話であるときちんと認識なさっているのですか。それを自覚しているのであれば、もう少し端的にお話してはいかがです? ……まあ、仕方ありませんか。年寄りは話が長いって、世間でも言われているくらいですし」
「と、年寄りってねえ。僕はまだ、そこまでは……」
年齢ネタという名の憎まれ口が炸裂すると、黒沢の表情があからさまに歪んだ。
それをきっかけに話の主導権を握った永山は、さらに一気にたたみかけた。
「ま、そういう俺も話が長くなりそうなので、この辺でやめておいてあげますよ。二十六歳の若さで、年寄りの仲間入りなんてしたくありませんからね。では、仕事はちゃんとさせていただきますから、さっさとKTシーバーに怪人についての情報を送って下さい。あ、そうそう。仕事を中抜けした分の特別手当は後でしっかりいただきますから。以上」
「あっ」
言葉のマシンガンを一方的に打ち終えると、永山は通信を切ってしまった。
「また勝手に切って……本当にどうしようもない奴だなあ。あうう……」
黒沢は、胃の辺りを手で押さえながら深い溜め息をついた。
例えるなら、その姿はろくでもない部下を持ってしまった中間管理職が頭を痛める気の毒なさまによく似ている。
「色々な意味で大丈夫ですか」
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